『闇属性黒猫の異世界救出物語』〜魔物転生!?いや人間になりたい!

藤村ゆんた

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第一章 

37話 クローゼル家と地下保管庫②

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ベットの隣にある小さな籠。その中には丸まった黒猫(残念ながら黒い塊にしか見えない)。僕は地下保管庫に居る身体を消して、部屋にいる身体を本体として合流する。

そっとベットの上を見ると、ビュラさんが静かな寝息を立てて寝ていた。良かった、気付かれていない。

安心した僕は、さっき読んだ解呪のページについて思い出す。


呪いは、呪いの種類によって解呪方法は様々らしい。どこかの物語のように、王子様のキスとか、真実の愛とか、特定の道具を使ってとかで解ける呪いもある。
このように特定の条件下で解ける呪いは比較的弱い呪いのようだ。

だけど共通して言える呪いの解呪方法とは、以下の条件。

・呪いは呪主(呪いをかけた主)が満足したり、感情を失ったり、亡くなったら呪いは消える。
・呪主は呪いを解く事が容易にできる。
・呪者(呪いをかけられた者)の負の感情あるいは正の感情が呪主を上回れば、呪いは無効化される。※呪主より強い呪いをかけられるほどの思念が必要である。
・どんな呪いも、神聖属性に伴う聖なるものの前では効力が弱まり、神聖魔法で浄化される。
・同じ呪術者(呪術魔法を扱う者)であれば、呪者の呪いを(呪主より上位の呪いでなければならないが)上書きする事が可能。
・呪術者は、自身の呪いを身代わりとして他人に移す事が可能。しかし他人の呪いを自ら身代わりとして受け入れた場合、身代わりは不可能。

地下保管庫のクローゼル家の歴史書に書いてあったが、昔レネイア国を滅ぼしかけた魔女を討伐したのが先代のクローゼル家の当主だったとのこと。
魔女は、魔大陸から来た魔物らしく、そのため何世代にも渡り続ける恐ろしく強い呪いをかける事ができたと言われている。実際に呪いをかけたのが魔女なのか分からないが、魔女を倒した事で王家から非常に大きな恩を受け、魔女を倒した褒美としてその後呪術書を渡された、らしい。
王家はクローゼル家に呪いが掛けられたことを知っていような書き方だった。

何方にしても、人間でも、魔女でも、クローゼル家に呪いを掛けた呪主はこの世にとっくに存在しない。
呪主になんとかしてもらう方法は無理か…。

呪者が呪主より上位の呪いをかけられるほど強い感情を持つ…って条件だけど、これも無理そうだな。…ナーシアは心優しい女の子。ナーシアが怒った所なんて想像すらつかないぐらい。
負や正の感情ってそもそもなんだろう。高まる感情さえ有れば呪いって解けるって事?気合?違うよね。

あ…確か…呪うのに相性が良いのが深い憎しみだとすれば、一番相性が悪いのが深い愛情って描いてあったなぁ。大抵の呪いは親子に効きづらいみたいだし。
でもナーシアもゼフィルスさんも充分過ぎるくらい愛情があると思うのに。まぁ、それだけクローゼル家に掛けられた呪いが強いって事か。

神聖魔法で浄化する方法だけど、これってナーシアが頻繁に通っている教会でやってもらってる事じゃ…ないのか。そういえば、屋敷に来ている聖職者達を鑑定してみたけど、【神聖魔法】というスキルは見覚えがない。代わりに、聖職者達全員に共通しているのは【光属性】だって事ぐらいかな。闇を打ち払う光だから聖職者として合っているんだけど…もしかして呪いは打ち払えないのか。

魔物である僕は聖職者達に近寄り難い感覚がしたけど、それよりも教会の建物自体に脅威を感じる。あの芯まで痛むような冷たさは今でも忘れられない。もしかして、教会自体は神聖属性で作られたものかもしれない。ナーシアがいる部屋もだんだん冷たいあの嫌な感じになってきている気がするから、きっと聖職者達が神聖な物を置いてくれているのかもしれないけど…この条件から考えると効力が弱まるだけで神聖魔法ではない限り完全に浄化は出来ないようだ。
僕が神聖魔法を使える人を呼び寄せたいところだけど…多分ナーシアの所へ行かせる前に、浄化されてしまう気がする。恐らく聖なる物に僕の身体は苦痛を感じるから、神聖魔法では……(とりあえず物凄く嫌な予感がするのは確かだ)

神聖魔法を使える人を呼び寄せるのは、一旦保留にしよう。

最後に残っているのはこの二つ。

・同じ呪術者(呪術魔法を扱う者)であれば、呪者の呪いを(呪主より上位の呪いでなければならないが)上書きする事が可能。
・呪術者は、自身の呪いを身代わりとして他人に移す事が可能。しかし他人の呪いを自ら身代わりとして受け入れた場合、身代わりは不可能。

オルシヴィオンという黒曜竜には《呪術魔法》のスキルがあるから、変化すれば恐らく僕にも扱えると思う。まだ一回も使った事がないスキルだけど…。

つまり僕も呪術者だから、この二つの条件は満たしている。呪いを更に強い呪いで上書きするというのは出来るけど、そうしたら元も子もない。論外!

他人の呪いを自ら身代わりとして受け入れる方法。これが僕が現実的にナーシアを助けられる一番の方法だ。

呪術者は自分に掛けられた呪いを他人になすり付ける事ができるのに、逆に自分が身代わりになった途端にそれが出来なくなるなんて、なんというか…呪術者は悪い道しか進めないようになっているみたいだ。

そういえば、呪術王はこの身代わりの方法で王へと上り詰め、今は亡き呪国、オヴヴィアスを統一したらしい。

呪術王は名前もない貧民街の孤児だったらしい。スキルも無く、加護も無く、魔力も体力も才能もない体の弱い少年だった。そんな彼は、人一倍この世の不条理を憎み、生きる為に凡ゆる悪事に手を染め、やがて邪神教の存在を知り、彼はそこで呪術魔法を取得してやがて教祖へと成り上がる。そして当時迫害されていた邪神教の者や呪術者達を纏め上げ、呪術によって国を乗っ取る事に成功。
邪神教を国教とし、呪術魔法を扱える物を尊ぶ風潮にする。
当時オヴヴィアスは小さな国だった。当然呪術王は周囲の国から嫌悪され、何度も攻められる。呪術王は、魔物ではなく人間だった為、魔物のような呪力を持たなかったが、呪いの研究によって『呪術者は掛けられた呪いを他人に移す事が出来る』のを知った。
途方もなく多くの人間に呪術王は怨まれる事によって、その呪いを糧にして呪い、呪術王は勢力を伸ばした。(呪術王が使ったこの方法を『身代わりの再呪』と呼ぶ)
だけど結局、神聖皇国エメストリアの当時の聖女には何の抵抗も出来ずに神聖魔法で国全体を浄化されて滅却されてしまったらしい。

多くの人に恨まれた呪いの王様。
多分、僕が思うよりずっと呪術王は恐ろしい人だったんだろうけど…。

『呪術者は他者を陥れる事は幾らでも出来るが、愛する者を守ることは出来ない。呪術者は、永遠に孤独なのだ』

呪術書の最後のページにはそう締めくくられていた。

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