『闇属性黒猫の異世界救出物語』〜魔物転生!?いや人間になりたい!

藤村ゆんた

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第一章 

40話 神聖皇国エメストリア①

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出発当日、ゼフィルスさんは王家から紹介してもらった信用のおける冒険者や護衛達に屋敷を引き続き見張って貰う事にした。屋敷の主人が居なくなるので、ビュラさんが総監督をするそう。

僕?

僕は勿論ナーシアに付いていく。司祭の協力が一番ナーシアの呪いを解けやすい方法だと思うんだけど、なんだか胡散臭いし…何かあった時のために常に側に居たい。

ナーシアが司祭が連れてきた聖職者達に囲まれながら、屋敷の玄関に向かうところが見えた。
ナーシアは聖職者達に身体を支えられてゆっくりと歩いている。その様子を見て息を呑んだ。
顔色が真っ青だ、酷く咳き込んでいる。呪いの影響だ。僕が 見ない間に、ここまで身体が弱くなっているなんて。
辛そうに、ふらふらと歩く我が子の様子に、ゼフィルスさんは胸が潰れそうな面持ちでそっと身体を支えた。
二人の様子を見て、一刻も早く呪いが消える事を祈る。大丈夫、もし神聖皇国に行って呪いが解けなかったとしても、その時は身代わりになるから。


屋敷の外の上空には、鯨に羽が生えたような形の恐らく飛行艇が浮かんでいた。見たこともない形の大きなものが上空に浮かんでいる、そのことに物凄く不思議な感覚がした。

「あれは私のアーティファクトです。あの飛行艇に入るための転送用の魔法陣を起動しますので、少々お待ちを」

司祭はそう言って、白い杖を振ると、青く光る大きな魔法陣が地面に現れた。
結界魔法陣と変わらない、ただの魔法陣だ。と思ったら、円形の一枚の魔法陣が上下に二つに分かれて、円柱の光る空間になった。

「では、まず貴方達からこの中にお立ち下さい」

司祭が自国の聖職者達をはじめに魔法陣の中に立たせる。すると、天井の魔法陣がゆっくりと下がっていき、魔法陣に消されるように聖職者達の頭から身体がスーと消えていく。
そして再び一枚の魔法陣に戻った後、また上下に分かれる。円柱の中にはもう聖職者達は見当たらない。

ほうー、こうやってスキャンするみたいに転送されていくんだ。

そうして次々に5人づつ転送されて行き、最後にナーシア達親子の番。

この時に気付いた。僕は内緒の同行者、神聖皇国の人が忌み嫌う黒い魔物…転送魔法陣入ったら、間違いなくバレて一悶着おきる予感がする…!うわッ…!!!魔法陣の先は飛行艇だ、急いで飛行艇に向かわなきゃ!

カラスになって必死にばたつきながら飛行艇にたどり着いた。が、飛行艇には入口が見当たらない。黒霧で擦り抜けようとすると、跳ね返される。

うわ、うわどうしよう、、、。頭の中はパニックになっていた。

飛行艇の尻尾の部分に黒霧ではなく粘度を高くしたような黒いアメーバのような形状になって張り付く。

ッうわ、ピリピリする。芯から冷たいあの感覚、気持ち悪い。嫌悪感からか、アメーバ状の身体がブクブクと沸騰したようになっている。このゾッとする冷たさも気持ち悪いけど、他の人から見たら自分の姿の方がよっぽど気持ち悪いことになっているんだろうなぁ…と思いながら耐える。教会の時と似たような感覚だけど、まだ前より我慢できる感覚だ。

飛行艇の翼がゆっくりと動き始めた。飛行艇はグングンと空を登り、丁度雲の上に浮かぶように進んでいく。
眼下に見えた街や建物が綺麗だった。ここまで高いところをカラスの姿で飛んだことがない。景色を眺めるためだけに飛んでも良いかも知れない。

飛行艇の速度はゆっくり進んでいるように見えるけど、風速から考えてかなり早く進んでいる。カラスでは追いつけない速さだ。黒竜なら余裕で追いつけると思うけど、流石に今、オルシヴィオンに変化するのは怖い。

アーティファクトとかいう神具?がどういうものか分からないし…。

皇国に着くまで暇だから、僕がへばりついているこの飛行艇を鑑定してみた。

【第3ウィング4-MC】
【神々が作り出した神器の構造を真似て造られた飛行艇型神具。アーティファクトとも言う。エネルギーに神聖魔力を用いる。皇国エメストリアの移動に用いられる。所有者:マヌグエル・ロイター】

おー、この世界には神が作り出した神器というものがあるんだ。
しかも普通の魔力の他に神聖魔力なんてあるのか。僕は使うのは黒魔力だし。
神聖魔力でふと気づいた。黒と白、闇と光、邪と聖というような感じで、僕は闇属性に属する魔物だから、聖なるものや神聖魔力が弱点なのかもしれない。教会とかで一度死にそうな程悍しい感覚がしたし、レネイアの聖職者達が魔物除けのお香を炊いた時も、みんなは普通の顔をしていたのに、僕だけすっごい臭く感じた。
…そういう事だったのか。今は正体がバレていないだけで、僕って魔物だし、聖なるものを嫌うし、ゲームで言うと思いっきり倒される側だ。嫌だな…悪役じゃないか。今更だけど僕はただ、普通の人間として平凡に生きたかったな。

***

圧巻の青く輝く美しい、巨大な城が中心に聳え立ち、その周りに整然と美しく並んだ青白い街並みが円状に広がっている。ゴシック建築風の巨大な城の周りには、青い花の大きなモチーフが描かれた教会風の建物が均等に置かれているのも見える。規模が違うけど、ユミフィトニア領の建物と違って、整っていて美しい代わりに無機質な印象を受ける建物が多かった。


教会飛行艇が降下し始めた所は、そんなエメストリアの宮殿の周りにある大きな教会の一つ、城のような建物だった。
あの言葉を失うような宮殿の大きさと比べたら随分小さく見える教会だけど、ナーシアのお家の屋敷より大きい。青い花のステンドグラスの窓や、レリーフが十字架のように刺さっていなければ、城だと思ってしまう。

飛行艇の尾からぺりっと剥がれ、カラスになってその教会の屋根へ降りる。飛行艇で既に慣れた嫌な冷たい感覚が足先から感じた。

教会の前に転送魔法陣が現れると、二つに分かれてその中からナーシア達が現れる。ナーシアは乗る前と違って、かなり顔色が良くなっていた。呪いはこの地にある神聖魔力で随分と抑えられているのかもしれない。良かったぁ。

「メイサール宮殿は本で拝見した事があるが、実際に目にしたのは初めてだ」
「青く輝くあの塗料は一体…」

ナーシアの護衛騎士達が感嘆とした様子で話す。

「さぁ、移動にお疲れでしょう。是非中へ」

司祭が教会内へ案内する後をこっそり着いていく。
小さな猫になって、教会の床に足が触れた途端、神経が凍るような痛みに襲われる。

くっ、またこの感覚だ。はぁ、大丈夫ッ、前より、多分全然平気。

人間だったら、今頃冷や汗で全身が濡れているだろう。ピンポン玉サイズの小さな黒い猫の身体をガタガタと震わせながら、足を動すことだけに集中した。
ツキンツキンと、神経痛のような痛みを身体の隅々で感じるが、前回のように意識を失いたくなるような感じでもない。十分耐えられる痛みだ。
ナーシア達が真っ直ぐと遠くに進んでいるのに気付き、慌てて追いかける。

「我が屋敷は、聖教会と一つになっております。女神象が建てられたあのホールは礼拝堂になっており、普段は日中彼方を解放しております。
さて、こちらが応接間になりますが…皆様慣れない長距離移動でお疲れの所でしょう。御令嬢の負担も考え、今日はゆっくりお休みになってください。御令嬢の予定については明日からお話しします。では、詳しい事は使用人にお聞きください」

追いついた時には、司祭はそう言ってナーシア達とさっさと別れる所だった。すぐに白い服を纏った使用人がざっと現れ、各部屋へ案内していく。僕はこっそりナーシアの部屋まで付いて行った。
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