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第一章
48話 呪いの解き方
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【呪いによる干渉、同調を開始】
[呪いによる負の感情を感知しました]
一人の女性が、朽ちた木柱に身体を縛られている情景。
鮮やかな紅の瞳の先には、氷の剣を持つ一人の男。
その男を見た時に感じるのは、戸惑い、混乱、哀しみ、そして…。
この人を守りたかったのに、この人に殺された。
愛していた。
剣で無防備な心臓を刺された時の痛み、苦痛。なによりも、愛した人に騙されたという悲しさ。
その感情は、深く煮え沸る感情へと変化する。
『殺せッ魔女を殺せーーッ』
『厄災の魔女めッ死ね!!』
『殺せ、醜い悪魔め、早く死にやがれッ』
その声は、かつて優しかった人々の声。
その光景は、余りにも、ナーシアが殺されそうになった時と瓜二つで。
大切な人を守ろうとして自分を犠牲にする悲しさ。
信じていた人に裏切られる辛さ。
愛していた人に愛されなかった辛さ。
謂れもない罪で大勢の人間に悪者にされる残酷さ。
味方が誰もいない孤独さ。
知っている。
人間が、どれだけ残酷なのか、僕は知っている。
『ワタシ、ハ』
ーうん。
『ーーシハ』
辛いよね。…憎いよね。…生きたかった。
…理不尽な事ばかりだ。
再び暗い感情が腹の底から押し寄せてくる。
同じ人間だったら。守る力がもっとあれば。
理不尽に奪われてばかりで、孤独で、追い込まれていく。そんな世界が嫌だったんだ。
頭がヂカヂカと痛むように、視界が黒く歪んでいく。
そんな世界なんて消えてしまえば良い。
そう願ったって、良い。
どうでも良くなってしまっても、良い。
…。
でもさ、君って違うよね?
記憶の中の赤い瞳に、笑いながら問いかける。
『…、ワタシ、ハ』
ナーシアの血の中で、呪いの芯が戸惑うように揺れた。
君は…さ、強かったんだよね?
騙されたと気付いた時点で殺しても良かった。
それなのに殺さなかった。
おかしいよね。
黒魔力で、呪いの中にズブズブと深く入っていく。
『あ、ぅア、ワタシ、ハ』
ーこの呪いが、そもそもクローゼル家の男性には効かないのが一番不思議だ。
愛した人から裏切られる呪い、それなら復讐として呪うのも理解できる。
怨むべきは人は生かして、その周囲を呪う呪い。
騙されたからとか、殺されたから憎いんじゃない。
本当はさ、
『愛していた男』が、『他の女を愛していたこと』自体が『気に入らなかった』んだよね?
『ワタシは、わタ、ワタシは』
だから、呪いを使って、愛した男の血にまで潜り込んでクローゼル家の女の人だけを呪って執着して、肝心の血を絶やす事はせずに、何代にもわたって、ずっと、ずっと、血縁と共に存在してきた。
愛憎一体とは言うけど、それは唯の嫉妬と愛に飢えた妄執。空虚なもの。
そこに復讐や憎しみなんて、本当はない。
ね。
分かるよ。その感情は良く分かる。
繋がっているから、手に取るように分かってしまう。
怨念や呪いと言うには、余りにもお粗末で、ズレた感情が。
愛した人の為に、邪魔な王や側近を殺した。全ては、愛した人の為。女王となって、愛した人を伴侶にしたかった。でもそれは叶わなかった。
だから、呪った。
結果君は…満足してるんだよね。
どんな形であれ、『愛した人の血の中に居続けられる事』に。
君と僕は違う。
魔族って凄いね。そんな感情だけで、理不尽な程強い呪いを掛けられるんだから。
僕の感情とは違う。
繋がった黒魔力の部分から、今度は僕の感情を流していく。
『あ、アああ、ワ、わだ、シは、わタシハ、わ』
その呪いは器が立派なだけ。そこに意思も意味も重みも何もない。軽い。意味のない無駄な呪い。
呪いの元となる記憶のような感情に、自分の感情を繋げていく。
[呪い主の負の感情をオーバーしました]
【呪いの上書きが可能になります】
呪いの表皮が溶けると、そこにはドロドロした呪主の狂った執着愛だけが血に絡み付いていた。
暗く重い黒い海がドロドロしたそれを飲み込み、呪いの器ごと塗り替える。
【特殊スキル:黒神術のレベルが上がりました】
[呪いを負のエネルギーへと変換可能]
『ワタ゛しは、わた、ア……違う、もう君じゃない。僕だ』
魔女の呪いは僕の一部となって、黒魔力の中に吸収された。
[世ーーーにアクセス。現在接続率33.72%]
[世ーーーとの接続率から、黒曜竜オルシヴィオンのレベルが上がりました]
【特殊スキル:黒神術の操作可能範囲が上昇します】
[呪いによる負の感情を感知しました]
一人の女性が、朽ちた木柱に身体を縛られている情景。
鮮やかな紅の瞳の先には、氷の剣を持つ一人の男。
その男を見た時に感じるのは、戸惑い、混乱、哀しみ、そして…。
この人を守りたかったのに、この人に殺された。
愛していた。
剣で無防備な心臓を刺された時の痛み、苦痛。なによりも、愛した人に騙されたという悲しさ。
その感情は、深く煮え沸る感情へと変化する。
『殺せッ魔女を殺せーーッ』
『厄災の魔女めッ死ね!!』
『殺せ、醜い悪魔め、早く死にやがれッ』
その声は、かつて優しかった人々の声。
その光景は、余りにも、ナーシアが殺されそうになった時と瓜二つで。
大切な人を守ろうとして自分を犠牲にする悲しさ。
信じていた人に裏切られる辛さ。
愛していた人に愛されなかった辛さ。
謂れもない罪で大勢の人間に悪者にされる残酷さ。
味方が誰もいない孤独さ。
知っている。
人間が、どれだけ残酷なのか、僕は知っている。
『ワタシ、ハ』
ーうん。
『ーーシハ』
辛いよね。…憎いよね。…生きたかった。
…理不尽な事ばかりだ。
再び暗い感情が腹の底から押し寄せてくる。
同じ人間だったら。守る力がもっとあれば。
理不尽に奪われてばかりで、孤独で、追い込まれていく。そんな世界が嫌だったんだ。
頭がヂカヂカと痛むように、視界が黒く歪んでいく。
そんな世界なんて消えてしまえば良い。
そう願ったって、良い。
どうでも良くなってしまっても、良い。
…。
でもさ、君って違うよね?
記憶の中の赤い瞳に、笑いながら問いかける。
『…、ワタシ、ハ』
ナーシアの血の中で、呪いの芯が戸惑うように揺れた。
君は…さ、強かったんだよね?
騙されたと気付いた時点で殺しても良かった。
それなのに殺さなかった。
おかしいよね。
黒魔力で、呪いの中にズブズブと深く入っていく。
『あ、ぅア、ワタシ、ハ』
ーこの呪いが、そもそもクローゼル家の男性には効かないのが一番不思議だ。
愛した人から裏切られる呪い、それなら復讐として呪うのも理解できる。
怨むべきは人は生かして、その周囲を呪う呪い。
騙されたからとか、殺されたから憎いんじゃない。
本当はさ、
『愛していた男』が、『他の女を愛していたこと』自体が『気に入らなかった』んだよね?
『ワタシは、わタ、ワタシは』
だから、呪いを使って、愛した男の血にまで潜り込んでクローゼル家の女の人だけを呪って執着して、肝心の血を絶やす事はせずに、何代にもわたって、ずっと、ずっと、血縁と共に存在してきた。
愛憎一体とは言うけど、それは唯の嫉妬と愛に飢えた妄執。空虚なもの。
そこに復讐や憎しみなんて、本当はない。
ね。
分かるよ。その感情は良く分かる。
繋がっているから、手に取るように分かってしまう。
怨念や呪いと言うには、余りにもお粗末で、ズレた感情が。
愛した人の為に、邪魔な王や側近を殺した。全ては、愛した人の為。女王となって、愛した人を伴侶にしたかった。でもそれは叶わなかった。
だから、呪った。
結果君は…満足してるんだよね。
どんな形であれ、『愛した人の血の中に居続けられる事』に。
君と僕は違う。
魔族って凄いね。そんな感情だけで、理不尽な程強い呪いを掛けられるんだから。
僕の感情とは違う。
繋がった黒魔力の部分から、今度は僕の感情を流していく。
『あ、アああ、ワ、わだ、シは、わタシハ、わ』
その呪いは器が立派なだけ。そこに意思も意味も重みも何もない。軽い。意味のない無駄な呪い。
呪いの元となる記憶のような感情に、自分の感情を繋げていく。
[呪い主の負の感情をオーバーしました]
【呪いの上書きが可能になります】
呪いの表皮が溶けると、そこにはドロドロした呪主の狂った執着愛だけが血に絡み付いていた。
暗く重い黒い海がドロドロしたそれを飲み込み、呪いの器ごと塗り替える。
【特殊スキル:黒神術のレベルが上がりました】
[呪いを負のエネルギーへと変換可能]
『ワタ゛しは、わた、ア……違う、もう君じゃない。僕だ』
魔女の呪いは僕の一部となって、黒魔力の中に吸収された。
[世ーーーにアクセス。現在接続率33.72%]
[世ーーーとの接続率から、黒曜竜オルシヴィオンのレベルが上がりました]
【特殊スキル:黒神術の操作可能範囲が上昇します】
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