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第一章
過去の話① side廼華
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授業時間の終わりを告げるチャイムの音が響く。
その途端にガヤガヤと賑やかになる教室。
休み時間は次の授業の教科書を用意する以外さして何もすることがない私は、軽く頬杖をつき住宅街の見える窓の外を見つめた。
「あの駅前に最近出来たパンケーキが美味しくてぇ」
「今5組の方なんかヤバイくない?」
「アレさ、急に三期から作画変わってさー」
「4組のリョウ君カッコイイって話だけど、私は断然3組の…」
クラスのそこかしこから、噂話、オシャレの話、恋バナだとかアニメの話とか、笑い声に混じって多種多様な話内容が聞こえる。クラスメイトの話題は、大抵私にはよく分からない話が多い。
私は常時お喋りを楽しむような性格ではないため、友達と呼べる人は少ない。そもそも、友達という概念がイマイチ分からない。でも今のところ学校生活は難なく過ごせているため、別に気にしていない。
私は何に対しても気持ちの抑揚が少ないため、会話であれだけ盛り上がれる周りのクラスメイト達が ただ凄いと思った。
高校2年の秋。肌寒くなった以外は、私の日常はいつも通り 大して代わり映えのない日々を過ごしていた。
まだ中学の時の方が楽しかったのかもしれない。あの時は三人一緒で、今と違って毎日が賑やかで楽しかった。
「よ、廼華」
不意に頭上から声が掛けられた。良く知る声。瞳だけ上に移す。
明るめの茶髪、小さく微笑む顔立ちの良い男子生徒。幼稚園からの幼馴染、洌崎 見好(すざき みよし)だ。
中学は3年間、彼とは同じクラスだったが、高校に入ってからはクラスが違う。
ちなみに私の教室は1組、彼は少し離れた3組にいる。
何しに来たの、という意味を込めて見好の瞳をじっと見つめる。
「遊びに来た」
見好はそう言って目を伏せ、頬杖をつく私の机の上に肘を組んで乗せてその場にしゃがむ。何故さり気なく人の机を占領するんだろうか。机は二人で使うものではないのに。
「…後ろ、空いてる」
私の前の席の人は今日は休んでいる。
見好のすぐ後ろの席が空いているから、そっちを使って、狭い。という意味で言う。見好は「んー」頷き、前の席の椅子に腰掛け、私の机に再度組んだ肘と頭を乗せる。
…だから何故 人の机を占領するのか。
「狭い」
私が一言苦情を言う。
見好が私を見上げて「この時間だけだから」と言ってまた目を伏せる。
それからの沈黙…教室の騒めきがまた近くに聞こえる。
見好はこうしていつも、何か話すわけでもなく、しょっ中こうして休み時間が終わるまで私の所に来る。
見好は私のように無口とまでは行かないが、どちらかと言うと静かな部類に入る。落ち着いていると言うか、余裕があると言うか。
クラスメイトとも仲が良いし、本当に何をしに来ているんだろうか。
「…最近 紡、どう?」
見好が 俯いたまま、ふと聞いてくる。いつもと変わらないように見えるけど、声は低く、深刻そうな表情をしている。見好の様子を見て、やっぱりに紡に何かあったんだ、ということを察せられる。
紡、ツムグは私の双子の弟。高校生になってから、クラスが離れ、ほとんど学校では会えなくなってしまった。
紡が居るクラスは5組。用がない時は只でさえ他のクラスに行くことが禁止されているのに、5組だけ校舎が違っていて、とても行きにくい。
5組は噂で、問題児ばかりが集められたクラスと言われいるらしく、私達は前々から紡を心配していた。
「…家でも元気がない。学校の話も聞かないし…それに紡は何か隠している感じがする」
「俺も学校で会った時は、そんな感じだった。なんか無理してる」
高1の時は、クラスが違っても放課後は毎日三人で帰っていた。なのに、高2に上がって暫くした頃から、紡は放課後の居残りが多くなり、今では一緒に帰る事もなくなってしまった。何故居残りをしているのか聞いても、はぐらかされてばかりだ。
私は双子だから家で毎日顔を見合わせているけど、見好はそうではない。
「一昨日、紡に会いに休み時間行ったんだけどさ、会えなかったし教室に近づく事も出来なかった」
その言葉に私は疑問に思った。
「近づくことも? …先生、いたの?」
見好は首を振り、少し苦い顔する。
「5組の後田って知ってる?教室向かう途中そいつに会って、散々嫌味を言われて、近づけなかった」
後田 幸次郎は、問題児として有名だから少し知っている。
私が見かけた時は、カシスレッドと言うピンクに近い髪色に染めて、ピアスをつけたチャラそうな男だった。教師によく突っかかったり、生徒間でのトラブルが絶えないと噂になっている。
私は噂は情報として記憶しているが、事実としては受け止めていない。しかし、実際学校で後田を見たことがあるが、あまり素行の良い生徒ではないように感じられた。
しかし、いきなり初対面で嫌味を言ってくる人間は少ないだろう。
何が嫌味を言われるような事があったのだろうか。
「知り合いだったの?」
私がそう聞くと、見好が首を振る。
「いや、初対面。話したことなんて一回も無い」
見好の言葉に驚く。見好が言うには、教室に行こうとしたら、向こうから後田が歩いてきて、喧嘩腰で話しかけられたらしい。知り合いに用があると目的を言っても、『来んな、帰れ』との一点張り。そのうち5組の後田の仲間に囲まれだして、不穏な状況になって来たから止む無く退散して来たらしい。本人は紡の事を考えて、強行突破してれば良かった、情けないと後悔している。
それに対してはしょうがないと宥める。
後田は過去暴力事件を起こしたらしいし、恐らく気に入らない見好を怒らせて喧嘩を起こさせようとしたのだろう。
見好は基本穏やかで、怒る事は滅多に無いが、怒ると怖いことは知っている。要は喧嘩はしない方が良いに越した事がないから見好の判断で良いだろう。
「それにしても何で俺の名前を知っているのか不思議」と見好は呟くけど、それについては不思議では無い。
恐らく見好の名前が有名になったきっかけは高校一年の校内バスケ大会だろう。
私はあの時のバスケの大会の見好の活躍ぶりを思い返した。
****
見好は昔から何でもそつなくこなすタイプだったが、やらなければならない時以外は最低限しか力を出さない事が多かった。
しかし、バスケは各クラス対抗。勝ち残りたい男子クラスメイト達が見好に本気を出して欲しいと頼んだらしい。
男子と女子は別々で、男子がバスケをするときはクラスの女子が応援しに行き、また女子がバスケをする時はクラスの男子が応援する。
そのため、クラスが違う私にも、バスケで点を一際稼ぐ幼馴染の姿を見ることが出来た。クラスメイトに頼まれたから、と本気でバスケをする幼なじみの姿は、確かに周りの男子生徒とは身のこなしが逸脱して格好が付いてたように思う。
結果、バスケ大会の一年の部ではスポーツクラスを倒して普通科の見好のクラスが優勝。
しかし、これでまだ終わりではなかった。
一年、二年、三年、このそれぞれの学年で優勝したクラスは各学年の代表クラスとなり、次はその代表クラス同士で学年対抗試合をする。
つまり見好達は一年の代表クラスとなった。
学年代表試合、先輩達は後輩に負けられない意地や同学年のプレッシャーからか、その本気度は増し増しだ。その結果、毎年校内バスケ大会では1位3年、2位2年、3位1年 と予想通りの結果になるらしい。(担任の先生談)
当時、見好のクラスはスポーツ科でもない普通科のクラス。唯一居るのはサッカーとバスケの部員が数人。しかし
スタメンはバスケ部員の一人だけ。
今年の男子1年代表クラスが優勝するのは有り得ない。それは当たり前かのように思われた。
見好のクラスの試合を観ていない…正しくは見好の存在を知らない2、3年の先輩達には特にそう思えただろう。
そして迎えた、クラス対抗ではなく男子学年対抗試合。
3年は主将なので、始まりは1年と2年の試合から。授業は、自分達学年の代表クラスと応援となり、一二年の全クラスが体育館で応援。その様は、まるでスタジアムのような熱気だった。
試合が始まる前に、何故か見好のクラスの男子が見好に土下座して拝んでいるところが、体育館の二階席から見えた。見好が期待以上の活躍をしてしまって代表クラスになってしまい、後に引けなくなり、全ては見好頼みらしかった。
見好は見好で、先輩打倒してくれと同学年からのエールを貰っていたらしい。
そして、見好のクラスは2年に勝った。いや、正しくは見好無双だ。見好のクラスの男子は可哀相に極度の緊張か、顔面蒼白で震えていて、ボールを目で追うことも出来ていなかった。
あの時の1年の応援席の盛り上がりは凄かった。対して2年の応援席は誰もが自分達代表のクラスに失望の目を向けていた。
でも、やはり一番凄かったのは、最後の3年と1年(見好のクラス)の試合だ。
その途端にガヤガヤと賑やかになる教室。
休み時間は次の授業の教科書を用意する以外さして何もすることがない私は、軽く頬杖をつき住宅街の見える窓の外を見つめた。
「あの駅前に最近出来たパンケーキが美味しくてぇ」
「今5組の方なんかヤバイくない?」
「アレさ、急に三期から作画変わってさー」
「4組のリョウ君カッコイイって話だけど、私は断然3組の…」
クラスのそこかしこから、噂話、オシャレの話、恋バナだとかアニメの話とか、笑い声に混じって多種多様な話内容が聞こえる。クラスメイトの話題は、大抵私にはよく分からない話が多い。
私は常時お喋りを楽しむような性格ではないため、友達と呼べる人は少ない。そもそも、友達という概念がイマイチ分からない。でも今のところ学校生活は難なく過ごせているため、別に気にしていない。
私は何に対しても気持ちの抑揚が少ないため、会話であれだけ盛り上がれる周りのクラスメイト達が ただ凄いと思った。
高校2年の秋。肌寒くなった以外は、私の日常はいつも通り 大して代わり映えのない日々を過ごしていた。
まだ中学の時の方が楽しかったのかもしれない。あの時は三人一緒で、今と違って毎日が賑やかで楽しかった。
「よ、廼華」
不意に頭上から声が掛けられた。良く知る声。瞳だけ上に移す。
明るめの茶髪、小さく微笑む顔立ちの良い男子生徒。幼稚園からの幼馴染、洌崎 見好(すざき みよし)だ。
中学は3年間、彼とは同じクラスだったが、高校に入ってからはクラスが違う。
ちなみに私の教室は1組、彼は少し離れた3組にいる。
何しに来たの、という意味を込めて見好の瞳をじっと見つめる。
「遊びに来た」
見好はそう言って目を伏せ、頬杖をつく私の机の上に肘を組んで乗せてその場にしゃがむ。何故さり気なく人の机を占領するんだろうか。机は二人で使うものではないのに。
「…後ろ、空いてる」
私の前の席の人は今日は休んでいる。
見好のすぐ後ろの席が空いているから、そっちを使って、狭い。という意味で言う。見好は「んー」頷き、前の席の椅子に腰掛け、私の机に再度組んだ肘と頭を乗せる。
…だから何故 人の机を占領するのか。
「狭い」
私が一言苦情を言う。
見好が私を見上げて「この時間だけだから」と言ってまた目を伏せる。
それからの沈黙…教室の騒めきがまた近くに聞こえる。
見好はこうしていつも、何か話すわけでもなく、しょっ中こうして休み時間が終わるまで私の所に来る。
見好は私のように無口とまでは行かないが、どちらかと言うと静かな部類に入る。落ち着いていると言うか、余裕があると言うか。
クラスメイトとも仲が良いし、本当に何をしに来ているんだろうか。
「…最近 紡、どう?」
見好が 俯いたまま、ふと聞いてくる。いつもと変わらないように見えるけど、声は低く、深刻そうな表情をしている。見好の様子を見て、やっぱりに紡に何かあったんだ、ということを察せられる。
紡、ツムグは私の双子の弟。高校生になってから、クラスが離れ、ほとんど学校では会えなくなってしまった。
紡が居るクラスは5組。用がない時は只でさえ他のクラスに行くことが禁止されているのに、5組だけ校舎が違っていて、とても行きにくい。
5組は噂で、問題児ばかりが集められたクラスと言われいるらしく、私達は前々から紡を心配していた。
「…家でも元気がない。学校の話も聞かないし…それに紡は何か隠している感じがする」
「俺も学校で会った時は、そんな感じだった。なんか無理してる」
高1の時は、クラスが違っても放課後は毎日三人で帰っていた。なのに、高2に上がって暫くした頃から、紡は放課後の居残りが多くなり、今では一緒に帰る事もなくなってしまった。何故居残りをしているのか聞いても、はぐらかされてばかりだ。
私は双子だから家で毎日顔を見合わせているけど、見好はそうではない。
「一昨日、紡に会いに休み時間行ったんだけどさ、会えなかったし教室に近づく事も出来なかった」
その言葉に私は疑問に思った。
「近づくことも? …先生、いたの?」
見好は首を振り、少し苦い顔する。
「5組の後田って知ってる?教室向かう途中そいつに会って、散々嫌味を言われて、近づけなかった」
後田 幸次郎は、問題児として有名だから少し知っている。
私が見かけた時は、カシスレッドと言うピンクに近い髪色に染めて、ピアスをつけたチャラそうな男だった。教師によく突っかかったり、生徒間でのトラブルが絶えないと噂になっている。
私は噂は情報として記憶しているが、事実としては受け止めていない。しかし、実際学校で後田を見たことがあるが、あまり素行の良い生徒ではないように感じられた。
しかし、いきなり初対面で嫌味を言ってくる人間は少ないだろう。
何が嫌味を言われるような事があったのだろうか。
「知り合いだったの?」
私がそう聞くと、見好が首を振る。
「いや、初対面。話したことなんて一回も無い」
見好の言葉に驚く。見好が言うには、教室に行こうとしたら、向こうから後田が歩いてきて、喧嘩腰で話しかけられたらしい。知り合いに用があると目的を言っても、『来んな、帰れ』との一点張り。そのうち5組の後田の仲間に囲まれだして、不穏な状況になって来たから止む無く退散して来たらしい。本人は紡の事を考えて、強行突破してれば良かった、情けないと後悔している。
それに対してはしょうがないと宥める。
後田は過去暴力事件を起こしたらしいし、恐らく気に入らない見好を怒らせて喧嘩を起こさせようとしたのだろう。
見好は基本穏やかで、怒る事は滅多に無いが、怒ると怖いことは知っている。要は喧嘩はしない方が良いに越した事がないから見好の判断で良いだろう。
「それにしても何で俺の名前を知っているのか不思議」と見好は呟くけど、それについては不思議では無い。
恐らく見好の名前が有名になったきっかけは高校一年の校内バスケ大会だろう。
私はあの時のバスケの大会の見好の活躍ぶりを思い返した。
****
見好は昔から何でもそつなくこなすタイプだったが、やらなければならない時以外は最低限しか力を出さない事が多かった。
しかし、バスケは各クラス対抗。勝ち残りたい男子クラスメイト達が見好に本気を出して欲しいと頼んだらしい。
男子と女子は別々で、男子がバスケをするときはクラスの女子が応援しに行き、また女子がバスケをする時はクラスの男子が応援する。
そのため、クラスが違う私にも、バスケで点を一際稼ぐ幼馴染の姿を見ることが出来た。クラスメイトに頼まれたから、と本気でバスケをする幼なじみの姿は、確かに周りの男子生徒とは身のこなしが逸脱して格好が付いてたように思う。
結果、バスケ大会の一年の部ではスポーツクラスを倒して普通科の見好のクラスが優勝。
しかし、これでまだ終わりではなかった。
一年、二年、三年、このそれぞれの学年で優勝したクラスは各学年の代表クラスとなり、次はその代表クラス同士で学年対抗試合をする。
つまり見好達は一年の代表クラスとなった。
学年代表試合、先輩達は後輩に負けられない意地や同学年のプレッシャーからか、その本気度は増し増しだ。その結果、毎年校内バスケ大会では1位3年、2位2年、3位1年 と予想通りの結果になるらしい。(担任の先生談)
当時、見好のクラスはスポーツ科でもない普通科のクラス。唯一居るのはサッカーとバスケの部員が数人。しかし
スタメンはバスケ部員の一人だけ。
今年の男子1年代表クラスが優勝するのは有り得ない。それは当たり前かのように思われた。
見好のクラスの試合を観ていない…正しくは見好の存在を知らない2、3年の先輩達には特にそう思えただろう。
そして迎えた、クラス対抗ではなく男子学年対抗試合。
3年は主将なので、始まりは1年と2年の試合から。授業は、自分達学年の代表クラスと応援となり、一二年の全クラスが体育館で応援。その様は、まるでスタジアムのような熱気だった。
試合が始まる前に、何故か見好のクラスの男子が見好に土下座して拝んでいるところが、体育館の二階席から見えた。見好が期待以上の活躍をしてしまって代表クラスになってしまい、後に引けなくなり、全ては見好頼みらしかった。
見好は見好で、先輩打倒してくれと同学年からのエールを貰っていたらしい。
そして、見好のクラスは2年に勝った。いや、正しくは見好無双だ。見好のクラスの男子は可哀相に極度の緊張か、顔面蒼白で震えていて、ボールを目で追うことも出来ていなかった。
あの時の1年の応援席の盛り上がりは凄かった。対して2年の応援席は誰もが自分達代表のクラスに失望の目を向けていた。
でも、やはり一番凄かったのは、最後の3年と1年(見好のクラス)の試合だ。
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