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第二章
56話 聖獣の森
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【ルシオス・ヴェルグノイド 】
年齢:17
種族 : 人族(男)
彼の名はルシオス。17歳…高校2年生くらい、か。
苗字が立派だけど、ナーシアのようにミドルネーム?がない。レネイアではミドルネームがあると貴族なんだけど、ルシオスはどうなんだろう。
服は血や泥でボロボロだけど、よく見たら装飾のついた高貴な服を来ている。もしかしたら貴族なのかもしれない。
とりあえず、失った血を回復させるために食べ物を食べさせないと。彼と分身の黒狼を巨木の洞窟に置いて森を散策する。
亜神のように超人ではないから、黒神術で細胞を作り出したりする事は出来ない。だから彼を治すことは僕には出来ない。そんな事が出来たら、細胞から人間に変化してるのに…。
森には傷口を早く治す薬や滋養効果の高い食物があるかもしれない。人里離れた森にはアイピスと言う傷を癒す花や、回復魔法を使う生き物がいる可能性もある。
一刻も早くそれらを見つける為、影裂界から黒魔力をズンズンと引き出し、黒霧を森中に広げる。木漏れ日が眩しい明るい森が、徐々に暗くおどろおどろしい魔の森に変化していく。空から見ると、森の一部だけ円形の暗い影が差し掛かっているようだ。
滋養効果の高そうな果実や植物を次々と見つけて影裂界に放り込む。可哀想だけど、一応人の食料として兎も狩っておこう…。生きたまま兎をポイっと影裂界に入れる。
ん?
どんどん黒霧の支配域を拡大していると、途中黒霧が磁石のように反発して入れない場所があった。その場所の黒霧を一箇所に集めて黒猫になる。
薄らと張る真っ白な魔力の壁。神聖魔法で作られた結界だ。一瞬にして緊張が走る。何でここに…いや、聖女が作る結界にしては弱過ぎる。警戒しながら、黒猫から黒竜に変化して結界の中に踏み入った瞬間、森の空気が変わった。
白い魔力の粒があちこちを照らし、仄かに森全体が発光し、植物は瑞々しく、花は咲き乱れ、艶やかで甘そうな果実が幾つも実る。御伽噺の中の森のように美しい。
そんな中、神聖魔力に当てられた鱗がビリビリと震える。その光も澄んだ空気も、僕にとっては毒のように身体を蝕むものだった。
大丈夫、分身は残してある。もしかしたらここは森の聖域かもしれない。それなら行ってみる価値がある。
聖域は、聖獣や精霊などが守護する神聖魔力に富んだ場所。聖女や勇者程、強烈な気配ではないけど…確かにこの先には神聖属性の生き物の気配を感じる。
その辺に実った果実に黒魔力で触れるとヒリヒリした。ここにある動植物は薄らと神聖魔力を纏っているようだ。
吐き気がするほど嫌な感覚がしながらもその先へ進む。ここなら神聖花のアイピスを見つけられる可能性が高いかもしれない。
地面に触れる度にシュゥシュゥと黒い煙が噴き出す。火傷しながら歩いているみたいだ。
よし。(我慢の限界だ)。飛ぼう。
一気に聖域の中心方向に向かって飛び立つ。中心にはきっと神聖属性のボスがいるだろうから、勿論そこまで近付かない。大体ソレが居る位置はなんとなく分かるから、なるべく大きく距離を取って降りる。
足元にすぐ、普通の花に混じってポツポツと咲くキラキラと青く輝くガラスの花を見つけた。やった、アイピスだ!
神聖皇国の象徴らしいけど、予想よりとても小さく可憐な花だった。これが…傷を癒す花。
持って帰らないと…あ!?
触れると、シャラッと儚い音を残して宙に砕けるアイピス。そ、そんな、貴重な花を砕いてしまった…。
目を凝らして見渡せば、周りにまだ幾つか残っている。今度は慎重に黒魔力を糸のように伸ばして、アイピスの茎をポキッと折る。
よよよよし、このまま、このまま。
そっと開いた影裂界に入れる。ほっと安堵した時、影裂界の中のアイピスが破裂して無くなった。
戸惑いながらも、もう一回アイピスを掴む。今度は掴んだままにしよう。しかし掴んでいたアイピスが黒魔力を吸い取り、アイピスが一瞬で強く白く輝きながら膨張して砕け散った。嘘でしょ…僕はアイピスを持ち運べないのか!?その後3回とも失敗し、神話にも出てくる超貴重な花を何輪も砕いてしまった事で僕の心も砕けた。
くっ、他に何か探そう。諦めて周りを見回っていると、光る神秘の泉を発見した。
【癒しの泉】
【聖域にごく稀に発生する回復効果のある泉。聖域から持ち出した泉の水は回復効果を失ってしまう】
これだ、これだ!ここに彼を浸からせよう。
影裂界を開き、未だに目を覚さないルシオスをこの場に連れてくる。
そして、彼をそっと泉に浸らせた。ジワジワと傷口が塞がっていく。よし、回復している。
『ウォォォォォン』
回復する彼を見守る中、森の奥から狼のような遠吠えが響き渡った。この聖域の主の声のようだ。森の向こうから神聖魔力の気配が強まる。不味い、気付かれた。
ルシオスはまだ全回復には程遠い。思ったよりも回復速度が遅い。せめて損傷した内臓の回復をさせたい。
…だめだ、こっちに向かってくる。
仕方ない。泉に浸らせていた彼を影裂界に入れ、森の向こうから姿を現した者と対面する。
『ーー穢らわしい魔物め』
その姿は魔竜よりも大きい白銀の狼だった。この聖域の主は狼の聖獣か。
『よくも我の支配する森を汚してくれたなぁぁッ』
牙を剥き出して、神聖魔力を纏う鉤爪を振るう聖獣。さっと飛んでその攻撃を交わす。
言葉を話す聖獣…念話か?もしかしたら、レッドウルフになれば獣話が使えるかもしれない。
魔竜から黒狼に変化し、咄嗟に吠える。
『話を聞いテ下さい!』
白銀の狼は少し目を見開き、一瞬動きを止めたのを確認して続けて話す。
『勝手に踏み入ってすみマせん。怪我ヲしている人間を治療する為二、この森に入リました。どうか治療を』
しかし話は聖獣の攻撃によって遮られた。
『穢らわしい上に小賢しい。下等で愚かな人間の治療だと?笑わせるなァァ』
魔物だから信じてもらえなくて当たり前だ。
必死に攻撃を交わしながら話す。
『どうカ人間の手当てをしテもらえまセんか!?』
『諄いッオマエを切り裂くのが先だァァァ』
駄目だ、聖獣は目の敵のように攻撃を止めない。ルシオスを治療してもらいたいけど、どうも無理そうだ。
ルシオスの身体は弱まるばかりだ。この聖獣さえ、どうにか出来れば…。やるしかないか。
影裂界を開いて黒魔力を宙に広げる。すぐに消失していく黒魔力。亜神は言っていた。形が無い純粋な黒魔力だから消えてしまう。それなら形を与えれば良い。
パキッと幾重もの薄氷が割れる音。黒曜石のような結晶が静止した雨のように宙に浮かぶ。異変に気付いた聖獣が辺りを見回した。この結晶は、黒霧を超圧縮したモノ。そう簡単には消えない。
バチバチと黒い雷を体に纏う。
覚悟は決めた。
《紫電化》
音速を超えたスピードで聖獣の後ろに回り込み、《絶波断》で首筋を切り裂く。
『グアァァァァァッ』
魔物なら確実に首を切り落とせている筈の攻撃だが、聖獣の纏う神聖魔力と相殺するせいで攻撃が浅い。
怒りに吼えながら黒狼に喰らい掛かる聖獣だが、紫電化した黒狼には追いつかない。
小さな結晶から結晶へ。それは暗い光を放つ電気そのもの。ジグザグと黒い軌跡を残して瞬間的な移動を繰り返し、《絶波断》を使って連続的に切り裂く。空中に浮遊する結晶に帯電しながら、聖獣を視覚から攻撃する。卑怯で、残酷で、罰当たりなんだけど…油断したら一瞬で殺されるのが僕だ。彼を助けるためにはこうするしかない…。
弱まる神聖魔力。あぁ、これでやっと攻撃が通る。
一撃で確実に殺す為に、太い黒魔力で聖獣の核を貫いた。
『厄災を…生む、モノめ…ユ、許さ…ァ…』
…。
くぐもった唸り声でそう言い残し、聖獣の身体が消えて行く。地面に残ったのは、聖獣の心臓と思われる割れた核だった。
すぐに影裂界からルシオスを取り出し泉に浸らせようとして、ふと気付く。泉の水に光が無い。
そんな、嘘だ…、。
焦りながら鑑定した。嫌な予感は的中する。
癒しの泉は、ただの泉になっていた。
ばっと辺りを見る。聖域の結界は無くなり、この地に満ちていた筈の神聖魔力は徐々に消えていく。植物は枯れ、果実は腐り、あれほど幻想的だった森は普通の森に変化していく。
あぁ、ぐッ、そういう事だったのか…聖獣が死んだから聖域ではなくなったのか…!
昂った感情に乗って黒魔力が暴走し、周辺の木々が倒壊するが、ルシオスが側にいた事を思い出して冷静さを取り戻す。
聖獣を倒したのは失敗だった。人間達が神の使いと崇拝する森の守護者、そんな聖獣を意味もなく殺してしまった。
…今は後悔している暇はない。彼はとても危険な状態だ。ルシオスを再び影裂界に入れている時、聖獣の残した核が目に触れた。
書物では生き物から稀に取れる核も貴重と書いてある。
核を黒魔力で触れると、スッと消えた。その途端、何か異物が入り込み、身体を書き換えていくような気持ちの悪い感覚が全身を襲った。
【黒神術のレベルが上がりました】
【特殊スキル:《神聖魔法》を取得しました】
【《レッドウルフ》が《シャドーウルフ》に進化しましました】
【黒神術:《状態変化》が《形質変化》に変更されました】
年齢:17
種族 : 人族(男)
彼の名はルシオス。17歳…高校2年生くらい、か。
苗字が立派だけど、ナーシアのようにミドルネーム?がない。レネイアではミドルネームがあると貴族なんだけど、ルシオスはどうなんだろう。
服は血や泥でボロボロだけど、よく見たら装飾のついた高貴な服を来ている。もしかしたら貴族なのかもしれない。
とりあえず、失った血を回復させるために食べ物を食べさせないと。彼と分身の黒狼を巨木の洞窟に置いて森を散策する。
亜神のように超人ではないから、黒神術で細胞を作り出したりする事は出来ない。だから彼を治すことは僕には出来ない。そんな事が出来たら、細胞から人間に変化してるのに…。
森には傷口を早く治す薬や滋養効果の高い食物があるかもしれない。人里離れた森にはアイピスと言う傷を癒す花や、回復魔法を使う生き物がいる可能性もある。
一刻も早くそれらを見つける為、影裂界から黒魔力をズンズンと引き出し、黒霧を森中に広げる。木漏れ日が眩しい明るい森が、徐々に暗くおどろおどろしい魔の森に変化していく。空から見ると、森の一部だけ円形の暗い影が差し掛かっているようだ。
滋養効果の高そうな果実や植物を次々と見つけて影裂界に放り込む。可哀想だけど、一応人の食料として兎も狩っておこう…。生きたまま兎をポイっと影裂界に入れる。
ん?
どんどん黒霧の支配域を拡大していると、途中黒霧が磁石のように反発して入れない場所があった。その場所の黒霧を一箇所に集めて黒猫になる。
薄らと張る真っ白な魔力の壁。神聖魔法で作られた結界だ。一瞬にして緊張が走る。何でここに…いや、聖女が作る結界にしては弱過ぎる。警戒しながら、黒猫から黒竜に変化して結界の中に踏み入った瞬間、森の空気が変わった。
白い魔力の粒があちこちを照らし、仄かに森全体が発光し、植物は瑞々しく、花は咲き乱れ、艶やかで甘そうな果実が幾つも実る。御伽噺の中の森のように美しい。
そんな中、神聖魔力に当てられた鱗がビリビリと震える。その光も澄んだ空気も、僕にとっては毒のように身体を蝕むものだった。
大丈夫、分身は残してある。もしかしたらここは森の聖域かもしれない。それなら行ってみる価値がある。
聖域は、聖獣や精霊などが守護する神聖魔力に富んだ場所。聖女や勇者程、強烈な気配ではないけど…確かにこの先には神聖属性の生き物の気配を感じる。
その辺に実った果実に黒魔力で触れるとヒリヒリした。ここにある動植物は薄らと神聖魔力を纏っているようだ。
吐き気がするほど嫌な感覚がしながらもその先へ進む。ここなら神聖花のアイピスを見つけられる可能性が高いかもしれない。
地面に触れる度にシュゥシュゥと黒い煙が噴き出す。火傷しながら歩いているみたいだ。
よし。(我慢の限界だ)。飛ぼう。
一気に聖域の中心方向に向かって飛び立つ。中心にはきっと神聖属性のボスがいるだろうから、勿論そこまで近付かない。大体ソレが居る位置はなんとなく分かるから、なるべく大きく距離を取って降りる。
足元にすぐ、普通の花に混じってポツポツと咲くキラキラと青く輝くガラスの花を見つけた。やった、アイピスだ!
神聖皇国の象徴らしいけど、予想よりとても小さく可憐な花だった。これが…傷を癒す花。
持って帰らないと…あ!?
触れると、シャラッと儚い音を残して宙に砕けるアイピス。そ、そんな、貴重な花を砕いてしまった…。
目を凝らして見渡せば、周りにまだ幾つか残っている。今度は慎重に黒魔力を糸のように伸ばして、アイピスの茎をポキッと折る。
よよよよし、このまま、このまま。
そっと開いた影裂界に入れる。ほっと安堵した時、影裂界の中のアイピスが破裂して無くなった。
戸惑いながらも、もう一回アイピスを掴む。今度は掴んだままにしよう。しかし掴んでいたアイピスが黒魔力を吸い取り、アイピスが一瞬で強く白く輝きながら膨張して砕け散った。嘘でしょ…僕はアイピスを持ち運べないのか!?その後3回とも失敗し、神話にも出てくる超貴重な花を何輪も砕いてしまった事で僕の心も砕けた。
くっ、他に何か探そう。諦めて周りを見回っていると、光る神秘の泉を発見した。
【癒しの泉】
【聖域にごく稀に発生する回復効果のある泉。聖域から持ち出した泉の水は回復効果を失ってしまう】
これだ、これだ!ここに彼を浸からせよう。
影裂界を開き、未だに目を覚さないルシオスをこの場に連れてくる。
そして、彼をそっと泉に浸らせた。ジワジワと傷口が塞がっていく。よし、回復している。
『ウォォォォォン』
回復する彼を見守る中、森の奥から狼のような遠吠えが響き渡った。この聖域の主の声のようだ。森の向こうから神聖魔力の気配が強まる。不味い、気付かれた。
ルシオスはまだ全回復には程遠い。思ったよりも回復速度が遅い。せめて損傷した内臓の回復をさせたい。
…だめだ、こっちに向かってくる。
仕方ない。泉に浸らせていた彼を影裂界に入れ、森の向こうから姿を現した者と対面する。
『ーー穢らわしい魔物め』
その姿は魔竜よりも大きい白銀の狼だった。この聖域の主は狼の聖獣か。
『よくも我の支配する森を汚してくれたなぁぁッ』
牙を剥き出して、神聖魔力を纏う鉤爪を振るう聖獣。さっと飛んでその攻撃を交わす。
言葉を話す聖獣…念話か?もしかしたら、レッドウルフになれば獣話が使えるかもしれない。
魔竜から黒狼に変化し、咄嗟に吠える。
『話を聞いテ下さい!』
白銀の狼は少し目を見開き、一瞬動きを止めたのを確認して続けて話す。
『勝手に踏み入ってすみマせん。怪我ヲしている人間を治療する為二、この森に入リました。どうか治療を』
しかし話は聖獣の攻撃によって遮られた。
『穢らわしい上に小賢しい。下等で愚かな人間の治療だと?笑わせるなァァ』
魔物だから信じてもらえなくて当たり前だ。
必死に攻撃を交わしながら話す。
『どうカ人間の手当てをしテもらえまセんか!?』
『諄いッオマエを切り裂くのが先だァァァ』
駄目だ、聖獣は目の敵のように攻撃を止めない。ルシオスを治療してもらいたいけど、どうも無理そうだ。
ルシオスの身体は弱まるばかりだ。この聖獣さえ、どうにか出来れば…。やるしかないか。
影裂界を開いて黒魔力を宙に広げる。すぐに消失していく黒魔力。亜神は言っていた。形が無い純粋な黒魔力だから消えてしまう。それなら形を与えれば良い。
パキッと幾重もの薄氷が割れる音。黒曜石のような結晶が静止した雨のように宙に浮かぶ。異変に気付いた聖獣が辺りを見回した。この結晶は、黒霧を超圧縮したモノ。そう簡単には消えない。
バチバチと黒い雷を体に纏う。
覚悟は決めた。
《紫電化》
音速を超えたスピードで聖獣の後ろに回り込み、《絶波断》で首筋を切り裂く。
『グアァァァァァッ』
魔物なら確実に首を切り落とせている筈の攻撃だが、聖獣の纏う神聖魔力と相殺するせいで攻撃が浅い。
怒りに吼えながら黒狼に喰らい掛かる聖獣だが、紫電化した黒狼には追いつかない。
小さな結晶から結晶へ。それは暗い光を放つ電気そのもの。ジグザグと黒い軌跡を残して瞬間的な移動を繰り返し、《絶波断》を使って連続的に切り裂く。空中に浮遊する結晶に帯電しながら、聖獣を視覚から攻撃する。卑怯で、残酷で、罰当たりなんだけど…油断したら一瞬で殺されるのが僕だ。彼を助けるためにはこうするしかない…。
弱まる神聖魔力。あぁ、これでやっと攻撃が通る。
一撃で確実に殺す為に、太い黒魔力で聖獣の核を貫いた。
『厄災を…生む、モノめ…ユ、許さ…ァ…』
…。
くぐもった唸り声でそう言い残し、聖獣の身体が消えて行く。地面に残ったのは、聖獣の心臓と思われる割れた核だった。
すぐに影裂界からルシオスを取り出し泉に浸らせようとして、ふと気付く。泉の水に光が無い。
そんな、嘘だ…、。
焦りながら鑑定した。嫌な予感は的中する。
癒しの泉は、ただの泉になっていた。
ばっと辺りを見る。聖域の結界は無くなり、この地に満ちていた筈の神聖魔力は徐々に消えていく。植物は枯れ、果実は腐り、あれほど幻想的だった森は普通の森に変化していく。
あぁ、ぐッ、そういう事だったのか…聖獣が死んだから聖域ではなくなったのか…!
昂った感情に乗って黒魔力が暴走し、周辺の木々が倒壊するが、ルシオスが側にいた事を思い出して冷静さを取り戻す。
聖獣を倒したのは失敗だった。人間達が神の使いと崇拝する森の守護者、そんな聖獣を意味もなく殺してしまった。
…今は後悔している暇はない。彼はとても危険な状態だ。ルシオスを再び影裂界に入れている時、聖獣の残した核が目に触れた。
書物では生き物から稀に取れる核も貴重と書いてある。
核を黒魔力で触れると、スッと消えた。その途端、何か異物が入り込み、身体を書き換えていくような気持ちの悪い感覚が全身を襲った。
【黒神術のレベルが上がりました】
【特殊スキル:《神聖魔法》を取得しました】
【《レッドウルフ》が《シャドーウルフ》に進化しましました】
【黒神術:《状態変化》が《形質変化》に変更されました】
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