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第31話 ミルフィーユの街(4)
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がるるるるるるるーーーーーーーっ!がるる!
突如として現れた、二匹の銀狼は、イレーヌに襲いかかるウルフの大群に、牙を剥いた。
銀狼の全身から立ち上る、強烈な魔力は、青い炎のように見える。
イレーヌに襲いかかろうとしていた、ウルフの群れは、じりじりと後ずさりした。
「な、なんとか、なりそう…ね」
「ああ…。たしかに、格が違いすぎるぜ」
「ええ。よほど強力な『新手』でも現れないかぎり、イレーヌは、なんとかなりそうですね」
「…ふむ。強力な新手…のう」
そう言って、レギンが、城壁の向こうに目をやった時、ある違和感に気づいた。
「みな。城壁の外を見てみい。魔物どものようすがおかしいぞ」
レギンの声につられて、三人は、城壁の外へと視線を向けた。
「何だよ。何にも、おかしくねえだろう。
ただ、魔物どもの目から、攻撃色が消えただけじゃねえか」
「バカね。それが、おかしいって言ってんのよ」
たしかに、ついさきほどまで、城壁の外は、真っ赤に染まっていた。
城壁を取り囲む魔物たちの、攻撃色ともいえる、赤い目の輝きのせいだった。
しかし、その燃えるような光が、今は、すっかり消えている。
「城壁の外だけでは、ありませんよ」
城門付近にも、すでに赤い光は見当たらない。
それどころか。
城門から、広場に向かって、だんだんと赤い光が消えて言った。
「魔物の、攻撃色が、消えていく!」
思わず、レギンは、声を上げた。
朱に染まっていたミルフィーユの街が、しだいに、闇に閉ざされてゆく。
その闇を、地響きが、揺らした。
どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど……
「なにあれ、いったいどうなってのよ…」
「魔物が、森に戻っておるのか?」
「戻ってるなんてもんじゃねえよ。ありゃ…」
「…逃げているとしか、思えませんね」
異変は、火柱に照らされたウルフたちを見ても明らかだった。
広場のウルフたちは、みなそろって、後ろを振り向いていた。
そして、明らかに、何かに怯えていた。
ミルフィーユの街へと向かってきている、『何か』に。
「おいおい。マジで、『新手』が来たのか?冗談じゃねえぞ」
「あれだけの魔物が、あわてて逃げ出す『新手』って、何なのよ」
たちまち、広場のウルフたちも、いっせいに外に向かって駆け出した。
彼らは、恐怖に支配されていた。
足をもつれさせて転がり、他のウルフに踏みつけられているものすら、あちこちに見受けられる。
ただ、銀狼だけは、落ち着き払っていた。
犬座りをして、後ろ足で、耳の裏を掻いたりしていた。
広場から、アルベールの放った火柱が、残り火のように小さくなった頃。
あたりは、静寂を取り戻した。
「おかしいですね。竜の群れでも、やってくるかと思ったのですが…」
「おいおい。やめてくれよ。冗談にもならねえよ」
「まったくだわ。こんなときに…」
「まあ、よいではないか。とにかく。助かったのじゃから」
そんな軽口をたたきながら、四人は、イレーヌを迎えに広場へと向かった。
銀狼に、近づくにつれ、四人は、それとなく身構えた。
たしかに、銀狼は、イレーヌを救ってくれた。
しかし、魔物は魔物。
彼らの長年の習性は、そう簡単には払拭できない。
ところが、銀狼は、そんな四人には目もくれずに、とつぜん、外に向かって駆け出した。
その姿は、嬉しそうにも見えた。
「おや?銀狼たちの主でも、来たんじゃろうかの?」
「主って、テイマーのことか?ありえねえよ」
「そうね。さすがに、Sクラスの希少種をテイムするなんてねえ…」
アルベールは、そんな話には加わらずに、娘に駆け寄った。
九死に一生を得た、愛しい娘を、抱きしめてやりかった。
ところが。
そんな父親には、目もくれずに、愛娘まで駆け出した。
「銀狼ちゃーん。どこに行くのーっ!」
父は、ようやく、この時になって、娘が、大の犬好きであったことを思い出した。
「相変わらず、じゃのう」
「もう、お嫁にいってもいい年頃なのにね」
「まあ、イレーヌらしいんじゃねえの」
銀狼を追って、たちまち遠ざかっていく、イレーヌの後ろ姿を見ながら、四人は、ふたたび、盛大なため息をついた。
突如として現れた、二匹の銀狼は、イレーヌに襲いかかるウルフの大群に、牙を剥いた。
銀狼の全身から立ち上る、強烈な魔力は、青い炎のように見える。
イレーヌに襲いかかろうとしていた、ウルフの群れは、じりじりと後ずさりした。
「な、なんとか、なりそう…ね」
「ああ…。たしかに、格が違いすぎるぜ」
「ええ。よほど強力な『新手』でも現れないかぎり、イレーヌは、なんとかなりそうですね」
「…ふむ。強力な新手…のう」
そう言って、レギンが、城壁の向こうに目をやった時、ある違和感に気づいた。
「みな。城壁の外を見てみい。魔物どものようすがおかしいぞ」
レギンの声につられて、三人は、城壁の外へと視線を向けた。
「何だよ。何にも、おかしくねえだろう。
ただ、魔物どもの目から、攻撃色が消えただけじゃねえか」
「バカね。それが、おかしいって言ってんのよ」
たしかに、ついさきほどまで、城壁の外は、真っ赤に染まっていた。
城壁を取り囲む魔物たちの、攻撃色ともいえる、赤い目の輝きのせいだった。
しかし、その燃えるような光が、今は、すっかり消えている。
「城壁の外だけでは、ありませんよ」
城門付近にも、すでに赤い光は見当たらない。
それどころか。
城門から、広場に向かって、だんだんと赤い光が消えて言った。
「魔物の、攻撃色が、消えていく!」
思わず、レギンは、声を上げた。
朱に染まっていたミルフィーユの街が、しだいに、闇に閉ざされてゆく。
その闇を、地響きが、揺らした。
どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど……
「なにあれ、いったいどうなってのよ…」
「魔物が、森に戻っておるのか?」
「戻ってるなんてもんじゃねえよ。ありゃ…」
「…逃げているとしか、思えませんね」
異変は、火柱に照らされたウルフたちを見ても明らかだった。
広場のウルフたちは、みなそろって、後ろを振り向いていた。
そして、明らかに、何かに怯えていた。
ミルフィーユの街へと向かってきている、『何か』に。
「おいおい。マジで、『新手』が来たのか?冗談じゃねえぞ」
「あれだけの魔物が、あわてて逃げ出す『新手』って、何なのよ」
たちまち、広場のウルフたちも、いっせいに外に向かって駆け出した。
彼らは、恐怖に支配されていた。
足をもつれさせて転がり、他のウルフに踏みつけられているものすら、あちこちに見受けられる。
ただ、銀狼だけは、落ち着き払っていた。
犬座りをして、後ろ足で、耳の裏を掻いたりしていた。
広場から、アルベールの放った火柱が、残り火のように小さくなった頃。
あたりは、静寂を取り戻した。
「おかしいですね。竜の群れでも、やってくるかと思ったのですが…」
「おいおい。やめてくれよ。冗談にもならねえよ」
「まったくだわ。こんなときに…」
「まあ、よいではないか。とにかく。助かったのじゃから」
そんな軽口をたたきながら、四人は、イレーヌを迎えに広場へと向かった。
銀狼に、近づくにつれ、四人は、それとなく身構えた。
たしかに、銀狼は、イレーヌを救ってくれた。
しかし、魔物は魔物。
彼らの長年の習性は、そう簡単には払拭できない。
ところが、銀狼は、そんな四人には目もくれずに、とつぜん、外に向かって駆け出した。
その姿は、嬉しそうにも見えた。
「おや?銀狼たちの主でも、来たんじゃろうかの?」
「主って、テイマーのことか?ありえねえよ」
「そうね。さすがに、Sクラスの希少種をテイムするなんてねえ…」
アルベールは、そんな話には加わらずに、娘に駆け寄った。
九死に一生を得た、愛しい娘を、抱きしめてやりかった。
ところが。
そんな父親には、目もくれずに、愛娘まで駆け出した。
「銀狼ちゃーん。どこに行くのーっ!」
父は、ようやく、この時になって、娘が、大の犬好きであったことを思い出した。
「相変わらず、じゃのう」
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