召喚失敗から始まる異世界生活

思惟岳

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第36話 第三城壁

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 翌日。

 オレたちは、朝から『第二城壁』の外に出た。
 『第三城壁』を造るためだ。

 魔物は、『第二城壁』があれば十分。
 今回は、竜騎士に城門を開けられたから、魔物の侵入を許しただけだ。
 
 だから、『第三城壁』が必要な理由は、ひとつ。
 『王国軍が、攻めて来る可能性が高い』からだ。

 エルフの剣士エミールさんが、吐き捨てるように言った。

 「まったく、ばかげた話だぜ!」
 「その馬鹿げたことを、立て続けにやられたわけじゃからの。
  備えないわけにも、いかんのじゃ…」

 「宰相は、是が非でも、ミルフィーユを奪い取りたいでしょうからね」
 「貴族たちを従わせるためには、『上級ポーション』と『魔石』は不可欠だからの」
 「魔物じゃ、街を落とせねえと知れば、軍を送ってくるだろうぜ」

 「ただ、今はまだ。我々が、魔物に攻め込まれている、と思い込んでいるはずです」
 「だから、宰相が様子見をしているうちに、『第三城壁』を造っておきたいのよ」

 「ふつうなら、そんな短期間で、城壁なんぞ造れるわけがねえんだが…」
 「今は、ジュン殿がいるからの。
  ジュン殿の魔力で、『大質量の壁』を造って貰えば、あとは我らドワーフで、『城壁』としての体裁を整えることができるはずじゃ」

 __なるほどな

 アニメやラノベのように、いきなり、立派な『城壁』を造るのは、オレには無理だと思う。
 でも、『でっかい壁』を造るだけなら、何とでもなりそうだ。


 __それにしても

 「なんで、みんな、『第二城壁』の上に行ったんだ?」

 今、オレの近くには、セーラしかいない。
 もちろん、ライムは、頭に乗っかってるけど。

 『第三城壁』の建設位置は、『第二城壁』からけっこう離れてる。
 だから、『第二城壁』の上にいるアルベールさんたちが、ちいさく見えた。

 「不測の事態に備えて、避難してもらってますのニャ」
 「そうだよね。ジュンくんだから、何が起きてもおかしくないよね」

 __いやいや

 オレは、おっきな壁を造るだけだぞ。

 攻撃魔法をぶっぱなすわけじゃあるまいし。
 なんで、避難する必要があるんだ?

 「とにかく、安全第一ですニャ!」
 「そうそう。ボクたちと違って、ニンゲンは脆弱だからね!」

 
 __まあ、いいか

 正直言って、魔法で『壁』を造るなんて、昔のアニキャラみたいでカッコイイ。
 いや。アレは、錬金術だったっけ?
 とにかく、すでに、イメージは完璧だ。

 オレは、さっそく、片膝をついた。
 そして、手のひらを、地面に叩きつけた。


 ばんっ!

 ごおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!

 
 なぜか。いっしゅん、視界が、ブレた。
 視界が回復すると、目の前には、青空が広がっていた。
 
 __え?

 ここは?


 「やはり、こうなりましたかニャ!」
 「さすが、ジュンくん!期待を裏切らないよね!」

 
 ………………


 まもなく、現状が把握できた。

 どうやら、オレは、『塔』の上にいるらしい。
 いや、『塔』というのは、おこがましい。
 おそらく、単なる『円筒』だから。
 ただ、高さが、ハンパないらしい。

 なにしろ。見下ろすと、山々と森の間に、小さな『城塞都市』が見えるのだ。
 アレは、たぶん、ミルフィーユの街だろう。

 __うーん

 オレは、目の前に、巨大な壁を造るつもりだった。
 しかし、どうやら、足元に、巨大な円筒を造ってしまったらしい。
 眼下を見下ろすと、ちょっとした航空写真のようになっていた。


 「とにかくっ!」

 そう言って、セーラは、オレにぎゅっと抱きついた。

 「もう、コレは、『キャンセル』するしかないよ!」
 
 そういって、オレを見上げたセーラの背中から、白い翼が広がった。
 セーラの身体の何倍もあるような、大きな翼だった。

 __おおっ!

 まるで、本物の女神のようだ。いや、本物だけど…。

 「キャンセル」

 唱えた瞬間、がくりと体が落ちた。
 でも、セーラが抱きついてくれている。
 だから、高高度から墜落するのは、免れた。
 もう、すでに、『円筒』は消えていた

 「ボクに、しっかりつかまって!でないと…」
 「…背骨を、へし折られるかもしれませんのニャ」

 セーラとライムが、怖いことを言っていた。
 オレは、セーラをぎゅっと抱きしめた。背骨は大切だ。

 思いの外、セーラは、ゆっくりと下降してくれた。
 そして、オレの胸に、顔を押し付けたまま、小さな声で言った。


 「あの家には、ね。大神さまでも戸惑うほどの高度な『魔法鍵』が掛かってたんだよ」
 「そうか」

 「でもね。ボクが触れた瞬間、鍵が開いたの」
 「そう…だったんだ」
 
 「だからね…」
 
 きゅうに、おとなびたような顔で、セーラは、オレを見上げた。
 淡い光を帯びた瞳に、戸惑うオレの顔が映った。

 「…ボクは、『三人目』なんだよ」

 __『三人目』って?

 問返そうとした瞬間、セーラのぬくもりが消えた。
 驚く間もなく、足は、地面に着いていた。



 *


 何度かの試行錯誤を繰り返した後。
 『第二城壁』をぐるりと囲む、巨大な『壁』が完成した。
 
 『高さ』は、10階建てのマンションくらい?
 もちろん、レギンさんたちの、リクエストに合わせた高さだ。
 かなりの『厚さ』があるから、『壁』というよりは、『建物はこ』って感じだ。

 
 「さて、ここからが、我らドワーフの腕の見せどころじゃぞ!」
 「「「「「「おおーーっ!」」」」」」
 

 レギンさんが、力強く叫ぶと、ドワーフたちが拳を振り上げた。
 

  
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