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第1章
その日3
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ハリーから何も詳しい説明もないまま、王城に着いてしまった。
あれではまるで、暴走を止められるのは、シルヴィを守れるのは、自分しかいないような口ぶりだ。
魔力も使えない自分に、どうやってそんなことができるのだろう。
うろたえながら、シルヴィが歩く先々で王城勤めの人々から笑顔を引き出しているのを眺めていた。さすが、シルヴィだ。こんなときなのに頬が緩みそうになる。
殿下の部屋が近づいてくると、自分の体温が下がっていくのを感じた。
血を吐き出した殿下の姿、目からも血を流して倒れたライザ殿の姿が蘇る。
隣を歩くシルヴィを見て、無理やり頭を切り替える。
今、肝心なのはシルヴィの暴走だ。結局、どうすればいいのか分からない。
殿下の倒れた姿がシルヴィに置き換わり、さらに体温が下がって吐き気までしてきた。
シルヴィだけは守りたい…!
封印を解いたシルヴィに抱き着かれ、癒しの魔力が流れ込み、自分の全てが浮上した。
『可愛い』
当たり前のことが漏れ出ていた。おじ様とハリーには笑われたが。
部屋には疲労から魔力が薄くなっている魔法使いたちが、倒れこんでいた。
そして、殿下が寝ていた。
顔色の悪さがひどく、呼吸も聞いているこちらがつらいほど喘鳴がきつい。
毒見をできなかった不甲斐なさが鋭く身を貫く。
シルヴィが殿下に声をかけ、治癒を始める様子を見せた。
「無事にシルヴィが力を使えるよう、祈っている。」
薄い青色の瞳を、祈りを込めて見つめた。
これしかできないのか!
もどかしくやり切れない思いを持て余していると
『全力でシルヴィの魔力を感じていろ。』
深い声が染み込んだ。
『私が何者を連れ込んだか、敵は探り出す可能性が高い。私はそれに集中する。』
シルヴィは囮なのか…!
『私の意図の詮索は後だ。今、お前のなすべきことに集中しろ!』
腹立たしいがその通りだった。僕は深く息を吸い込み目を閉じて、シルヴィの淡い白金の魔力の流れを感じ取った。
シルヴィの魔力が殿下に流れ込む。それを感じながら他の魔力にも気が付く。シルヴィの身体に銀の魔力がまとわりついている。いつもの眩さに対して、この銀の薄さは恐らく無意識に向けられたものだろう。 ハリーのやつ、やっぱりどうしたって守っているじゃないか。
殿下の毒が集まっていると思われる個所がシルヴィの魔力で和らいだものの、完全には癒されない。シルヴィの魔力は底をつきかけている。
殿下の体力がどこまで持つか見極めながら、日数をかけてまた繰り返すしかないと考えたが、シルヴィは違った。
彼女は微かに魔力を城の庭へと動かし始めた。意図が分からず驚いているうちに、彼女は木々を癒しはじめ命の光を強めていった。
彼女の意図が分かり、僕は竦んだ。
シルヴィに叫んで止めさせたかったが、もう木々と彼女の間に魔素の流れ道ができてしまっている。集中を乱すことは暴走につながりかねない。止めさせる時機を逸してしまった。
僕より小さいシルヴィの身体に魔素がとめどなく流れ込んでいく。シルヴィは上手に量を調節しながら取り込んでいて、安堵したとき、いきなり銀の魔力が薄れ、白金の魔力も揺らいだ。
魔素が瞬時に彼女に大量に流れ込む。
あまりの量に見ているだけでもめまいが引き起こされる。
遠くで銀の魔力が流れを断ち切り、シルヴィが必死に魔素を魔力に変換させて抑え込んでいた。苦しいだろうに慎重に魔力を殿下に送り込んでいる。
僕に、できることはないのか…!
殿下の毒がついに消えた。これ以上注ぎ込むと殿下の弱った体では限界がすぐ来てしまう。シルヴィも殿下への流れをゆっくりと切り離した。
終わった…?
そのとき、銀の魔力が遠くで鋭く弾けた。同時に、シルヴィの魔力が波を食らったかのように逆流し、光が爆発した。
気が付くと、ただただ白い世界に投げ出されていた。
自分の手足も感じられない。
何もない世界に飲み込まれていく気がした。
ハリーに教わった暴走した魔法使いの世界の説明通りと気が付くと、頭がはっきり動き始めた。
自分の意識がシルヴィの世界に取り込まれたらしい。それなら、シルヴィに呼びかけることができれば、まだ引き戻す機会があるはずだ。
彼女の意識の存在を感じ取ろうと、ひたすら感覚を研ぎ澄ます。
何もない世界に感覚が吸収され、シルヴィの存在がつかめない。
どこだ、どこにいる?
音もない世界に焦りが増す。
『お前の存在が、鍵だ』
ハリーの言葉が蘇る。
鍵たる僕が見つけられず、シルヴィは消えるのか?
殿下が血を吐いた姿が蘇る。耐えられない恐怖がよぎった。
嫌だ…!
その瞬間、体が熱を帯びた。自分の手足どころか細胞までも感じられる。体の全てが息づく感覚に満ちた。
これが、魔力か!
全身でそれを認識した途端、魔力が体から溢れ出た。
かすかに何かが動いたのを感じた。
『シルヴィ!!!』
自分のつかんだばかりの魔力を全て出して叫んだ。
「シルヴィ」の意識がしっかりと浮かび上がった。赤や黄の光も入り込んできて、彼女を包んだ。
そして白い世界は消え去り、僕は意識が自分の身体に戻っていることを感じた。
だけど、シルヴィが魔力を庭に開放したのを見届けると、せっかく戻った意識は薄れていった。
かすかに
『よくやった。』
と頭に響く声がした気がした。
あれではまるで、暴走を止められるのは、シルヴィを守れるのは、自分しかいないような口ぶりだ。
魔力も使えない自分に、どうやってそんなことができるのだろう。
うろたえながら、シルヴィが歩く先々で王城勤めの人々から笑顔を引き出しているのを眺めていた。さすが、シルヴィだ。こんなときなのに頬が緩みそうになる。
殿下の部屋が近づいてくると、自分の体温が下がっていくのを感じた。
血を吐き出した殿下の姿、目からも血を流して倒れたライザ殿の姿が蘇る。
隣を歩くシルヴィを見て、無理やり頭を切り替える。
今、肝心なのはシルヴィの暴走だ。結局、どうすればいいのか分からない。
殿下の倒れた姿がシルヴィに置き換わり、さらに体温が下がって吐き気までしてきた。
シルヴィだけは守りたい…!
封印を解いたシルヴィに抱き着かれ、癒しの魔力が流れ込み、自分の全てが浮上した。
『可愛い』
当たり前のことが漏れ出ていた。おじ様とハリーには笑われたが。
部屋には疲労から魔力が薄くなっている魔法使いたちが、倒れこんでいた。
そして、殿下が寝ていた。
顔色の悪さがひどく、呼吸も聞いているこちらがつらいほど喘鳴がきつい。
毒見をできなかった不甲斐なさが鋭く身を貫く。
シルヴィが殿下に声をかけ、治癒を始める様子を見せた。
「無事にシルヴィが力を使えるよう、祈っている。」
薄い青色の瞳を、祈りを込めて見つめた。
これしかできないのか!
もどかしくやり切れない思いを持て余していると
『全力でシルヴィの魔力を感じていろ。』
深い声が染み込んだ。
『私が何者を連れ込んだか、敵は探り出す可能性が高い。私はそれに集中する。』
シルヴィは囮なのか…!
『私の意図の詮索は後だ。今、お前のなすべきことに集中しろ!』
腹立たしいがその通りだった。僕は深く息を吸い込み目を閉じて、シルヴィの淡い白金の魔力の流れを感じ取った。
シルヴィの魔力が殿下に流れ込む。それを感じながら他の魔力にも気が付く。シルヴィの身体に銀の魔力がまとわりついている。いつもの眩さに対して、この銀の薄さは恐らく無意識に向けられたものだろう。 ハリーのやつ、やっぱりどうしたって守っているじゃないか。
殿下の毒が集まっていると思われる個所がシルヴィの魔力で和らいだものの、完全には癒されない。シルヴィの魔力は底をつきかけている。
殿下の体力がどこまで持つか見極めながら、日数をかけてまた繰り返すしかないと考えたが、シルヴィは違った。
彼女は微かに魔力を城の庭へと動かし始めた。意図が分からず驚いているうちに、彼女は木々を癒しはじめ命の光を強めていった。
彼女の意図が分かり、僕は竦んだ。
シルヴィに叫んで止めさせたかったが、もう木々と彼女の間に魔素の流れ道ができてしまっている。集中を乱すことは暴走につながりかねない。止めさせる時機を逸してしまった。
僕より小さいシルヴィの身体に魔素がとめどなく流れ込んでいく。シルヴィは上手に量を調節しながら取り込んでいて、安堵したとき、いきなり銀の魔力が薄れ、白金の魔力も揺らいだ。
魔素が瞬時に彼女に大量に流れ込む。
あまりの量に見ているだけでもめまいが引き起こされる。
遠くで銀の魔力が流れを断ち切り、シルヴィが必死に魔素を魔力に変換させて抑え込んでいた。苦しいだろうに慎重に魔力を殿下に送り込んでいる。
僕に、できることはないのか…!
殿下の毒がついに消えた。これ以上注ぎ込むと殿下の弱った体では限界がすぐ来てしまう。シルヴィも殿下への流れをゆっくりと切り離した。
終わった…?
そのとき、銀の魔力が遠くで鋭く弾けた。同時に、シルヴィの魔力が波を食らったかのように逆流し、光が爆発した。
気が付くと、ただただ白い世界に投げ出されていた。
自分の手足も感じられない。
何もない世界に飲み込まれていく気がした。
ハリーに教わった暴走した魔法使いの世界の説明通りと気が付くと、頭がはっきり動き始めた。
自分の意識がシルヴィの世界に取り込まれたらしい。それなら、シルヴィに呼びかけることができれば、まだ引き戻す機会があるはずだ。
彼女の意識の存在を感じ取ろうと、ひたすら感覚を研ぎ澄ます。
何もない世界に感覚が吸収され、シルヴィの存在がつかめない。
どこだ、どこにいる?
音もない世界に焦りが増す。
『お前の存在が、鍵だ』
ハリーの言葉が蘇る。
鍵たる僕が見つけられず、シルヴィは消えるのか?
殿下が血を吐いた姿が蘇る。耐えられない恐怖がよぎった。
嫌だ…!
その瞬間、体が熱を帯びた。自分の手足どころか細胞までも感じられる。体の全てが息づく感覚に満ちた。
これが、魔力か!
全身でそれを認識した途端、魔力が体から溢れ出た。
かすかに何かが動いたのを感じた。
『シルヴィ!!!』
自分のつかんだばかりの魔力を全て出して叫んだ。
「シルヴィ」の意識がしっかりと浮かび上がった。赤や黄の光も入り込んできて、彼女を包んだ。
そして白い世界は消え去り、僕は意識が自分の身体に戻っていることを感じた。
だけど、シルヴィが魔力を庭に開放したのを見届けると、せっかく戻った意識は薄れていった。
かすかに
『よくやった。』
と頭に響く声がした気がした。
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