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第四章 最強編
第144話 ゾロ目③
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キーラは思考を巡らせた。
(いままでのあたしならきっと、純粋にギャンブルを一つのゲームとして受けていたかもしれない。でもいまのあたしは違う。エストならきっと相手の魔法の正体を推測しながらやるだろうから、あたしもそうする)
キーラはそうやって心の中で拳を握り締めた。
「では、私のターンです。サイコロを振りますね」
ロコイサーはポケットから取り出した三つの立方体を小卓の上に放った。
カラカラと乾いた音を立てて何度か跳ねた後、動きが止まって三つの目を示した。
「3、4、4です。惜しい! もう少しでゾロ目だったのに! さて、二つが同じ数字です。さあ、次はあなたのターンですよ。魔法を発動しますか?」
「ええ、もちろん」
キーラは電池から自分の契約精霊スターレを呼び出した。電気を司る子猫型の精霊だ。
「どお? 可愛いでしょ?」
「ええ、まあ……」
キーラはスターレに目配せした。
スターレから電気が迸り、キーラの指先に電気の塊がバチッバチッと音を立てて浮かぶ。
「サイコロの目が出てから魔法を使うかどうか選ばせてくれるなんて親切よね。先に魔法を使うかどうかを決めてからサイコロを振るんだったら完全に運任せなのに、このルールだと魔法を使う子側が有利じゃない? ひたすら弱い魔法を使って狙い目を絞り、狙い目が出たときに強い魔法を使えばいいんだから」
「キーラ・ヌアさん。いまの発言を聞いて、これだけははっきりと言えます。あなたはギャンブルには向いていません」
「もしかして、あたしがゾロ目のことを失念していると思ってない? ちゃーんと覚えているわよ。できるだけゾロ目が出ないように、必要最小限の試行回数で勝利してみせるわ」
ロコイサーは鼻で笑って口を閉じたまま首を横に振った。
「どうぞ、撃ってください」
促されても、キーラは即座には魔法を撃たなかった。
弱い攻撃を出すのはいいが、あんまり弱すぎたら魔法が強化されたり弱体化されたりしても分からない。
だから少しだけ、ほんの少し強くして電撃を放った。
「あいったっ!」
キーラの電撃はロコイサーの指先に届き、ロコイサーはビクッと腕を跳ね上げた。
「これは敵へ二倍のダメージかしら。いきなり大当たりを引いたわね。3、4、4。二つが同じ数字のパターン。覚えたわよ」
「まさか初撃からこんなに強めで来るとは思っていませんでしたよ」
「なんか、怒ってる?」
「怒っていません。次、振りますよ」
ロコイサーはキーラに目を合わせず、三つのサイコロだけを見つめた。やはりムスッとしている。
しかし卓上を転がるサイコロの音は変わらない。軽快なステップを踏んだ後、三つのサイコロは沈黙する。
「2、3、5、ですね」
「バラバラね」
「いいえ、これは一部連番と見なされます。2と3が連続していますからね」
「へー、そうなんだ」
ロコイサーに促され、キーラは再び電撃を放った。今度はさっきより威力を小さくした。
キーラが放った電撃は二人の間で一瞬だけ静止し、キーラの方へと跳ね返った。
「うわっ、ビックリした!」
どうやら威力は半分になったようだった。元の威力を低くしたこともあり、キーラの指先に返ってきた電撃による影響は、キーラの指が少し痺れるだけにとどまった。
「悪運の強い人ですね。さ、次行きますよ」
「なんか雑……」
淡々とゲームを進行するダイスを見て、キーラは不安感を抱いた。
威力を調整している自分でさえ一回一回の魔法にドキドキしているのに、威力が分からないダイスがこの調子では、まるでダイスが勝つことが確定しているかのようではないか。
キーラは考えた。ダイス・ロコイサーの魔法の正体について。
(概念種の魔法で間違いなさそう。魔法を跳ね返せるということは、軌道? ベクトル? でもその二つのどちらかだった場合、直接戦闘したほうが手っ取り早そうよね。わざわざギャンブルで勝負を持ちかけてくるということは、戦闘向きではない魔法だということ。……必中? これも戦闘向きかな。賭けの概念種? でも、自然界のものではなく人間が作り出した概念の魔法なんて存在するのかしら? 魔法で操ったり生み出したりするエレメントは自然界に存在するものだけれど、それは概念種も変わらないはず。まだいまの段階では、こいつの魔法の正体は分からないわね)
――カラカラカラ。
サイコロは躊躇なく振られ、そして躊躇なく三つの目を出した。
「1、4、6。雑番ですね。さっさと魔法を撃ってください」
「雑番って、今度こそ完全にバラバラってことね」
キーラは先ほどと同程度の威力で魔法を放った。すると電撃は二人の間で一瞬静止した。
キーラはドキッとしたが、魔法はその場で弾けるように消失した。どうりで進行が雑なわけだ。
「消えるって知っていたのね?」
「そりゃあそうですよ。私が効果を設定したんですから。ああ、でも安心してくださいね。ゲームの途中で効果を変えるようなことはしませんから」
それもそうだ。
だが、だとしたら魔法がキーラに跳ね返る事象のほうが多く設定してあってもおかしくない。
圧倒的にキーラが不利だ。
だからこそ賭け金がローリスク・ハイリターンなのかもしれない。
「あなた、本当に魔導師? そんな芸当ができるのって、魔術師じゃないの?」
「先ほど私が言ったとおりですよ。私は魔導師です。でも、魔術師だと疑いたければお好きにどうぞ。私はなんら困りませんし、あなたが勝手に迷走するだけの話です」
エストならバシッと敵の正体や発言の意図を見抜くんだろうなぁ、などと考えながら、キーラはロコイサーにターン進行を催促した。
――カラカラカラ。
2、それから6。そして、三つ目のサイコロが千鳥足で少し粘ってから出した目は4だった。
「2、4、6。偶数連番ですねぇ」
ダイス・ロコイサーはポーカーフェイスに長けている。表情からは出目の効果が読めない。
「初めてのパターンだわ」
魔法への効果でまだ出ていないパターンは何だろうとキーラは考えた。
いちばん恐ろしいのは自分への二倍ダメージだ。そしてこの偶数連番がそれに該当する可能性は十分にある。
魔法の威力を弱くしたい。だが、弱すぎると威力の変化が分からない。
だが、そのことについて繰り返し考えているうちに、キーラは重要なことに気がついた。
この際、威力はどうでもいいのではないか。重要なのは魔法が相手に飛んでいくか、自分に返ってくるかだ。
それだけ分かれば、相手に魔法が飛ぶときに強めの魔法を放てばいい。威力は二倍になっても死なない程度にさえ抑えればいいのだ。
「何を悩んでいるんですか? 魔法、使わないんですか?」
ロコイサーの態度からして、魔法は自分に跳ね返ってきそうだと感じた。
それが敵のハッタリである可能性もあるが、何回裏をかけばいいか分からなくなった時点で、もはや読みというのは無意味だ。
余計なことは考えず、さっき決めた方針に従い抑えた威力の魔法を放つ。
「使うわよ」
キーラの指先から放たれた電撃は、二人の中間で静止してから跳ね返った。黄色い光が、ボールを咥えた犬みたいに一直線に返ってくる。
「あいたっ」
威力変化はなし。つまり偶数連番はキーラ自身に等倍ダメージということだ。
それにしても、自分にダメージが返ってくるパターンが多すぎではないか。やはりそういうふうに設定されているのだろうか。
あるいは、確率の概念種の使い手で確率を操作しているのだろうか。
だとしたら、このゲームに勝てる可能性はかなり低い。
「次は私のターンです。そろそろゾロ目が出てもいいころですねぇ。さあ、サイコロを振りますよ」
確率を操作できるなら、ゾロ目を出すことも簡単なはず。次で五回目だが、そろそろ出てもおかしくない。
いや、事はもっと深刻かもしれない。確率の操作によって、好きなタイミングでゾロ目を出すことが可能という可能性もある。これまでゾロ目が出なかったのは、魔法を特定されないためのカモフラージュかもしれない。
キーラは額にうっすらと汗を浮かべた。
一度そんなふうに考え出すと、焦燥感は止まらない。
「それっ」
いままでかけ声なんかなかったのに、ロコイサーがかけ声なんか付けてサイコロを振るものだから、キーラは気が気でなくなった。
今回は何か仕掛けてくるんじゃないか。確率を操作してゾロ目を出してくるんじゃないか。
キーラは瞬きを忘れて机上を踊るサイコロに見入った。
サイコロはわずかな時間差で順に動きを止めた。
一つ目は3。二つ目も3。そして三つ目は……。
「おや、3、3、5ですか」
同じ数字が二つ。キーラは状況を飲み込むために一瞬固まったが、視覚情報と理解が一致したとき、思わずガッツポーズをした。
ダイス・ロコイサーはポーカーフェイスを貫いているが、キーラには関係のないことだ。同じ数字が二つのパターンは最初に経験している。そしてそのときにダイス・ロコイサーに二倍の魔法ダメージを与えている。
「行くわよ!」
問答無用とばかりに、キーラはスターレからもらった電気の塊を飛ばす。人が気絶する半分程度の威力。これが二倍になって、相手は気絶必至だ。
キーラの指先から放たれた電撃は、いままでで最も強い光を放ち直進する。
だがその光は途中で止まった。二人のちょうど中間の位置。これは想定と違う。最初にダイス・ロコイサーに電撃が直撃したときは、いったん止まるなんてことはなかった。
つまりこれは消滅か跳ね返りのどちらかだ。
キーラはとっさにスターレから電気をもらってバリアを張ろうとした。だがスターレを形作る電気はまったく動かなかった。
一ターンに使える魔法は一度だけ。魔法が無効化されたのだ。
キーラの焦りが二倍になったところで、先ほどキーラの放った電撃がキーラの体を焼いた。
電撃の威力が二倍になっていたが、威力のコントロールはうまくできていたようで、キーラは死には至らなかった。
しかし威力のコントロールがうまくできていただけに、キーラは意識を失い、そのまま後ろに倒れた。
「残念でしたね。これは3、3、5の同じ数字が二つのケース。最初に出た組み合わせと同じで相手に二倍のダメージと考えたのでしょうね。でも、違うんですよ。二つそろった数字がもう一つの数字よりも大きいものであれば、それは相手に二倍の威力の魔法効果を及ぼしますが、二つそろった数字がもう一つの数字よりも小さいものであれば、逆に自分に二倍の威力の魔法効果を及ぼすわけですよ。ああ、まったく早まってしまいましたな。ま、本人には聞こえていないでしょうが」
(いままでのあたしならきっと、純粋にギャンブルを一つのゲームとして受けていたかもしれない。でもいまのあたしは違う。エストならきっと相手の魔法の正体を推測しながらやるだろうから、あたしもそうする)
キーラはそうやって心の中で拳を握り締めた。
「では、私のターンです。サイコロを振りますね」
ロコイサーはポケットから取り出した三つの立方体を小卓の上に放った。
カラカラと乾いた音を立てて何度か跳ねた後、動きが止まって三つの目を示した。
「3、4、4です。惜しい! もう少しでゾロ目だったのに! さて、二つが同じ数字です。さあ、次はあなたのターンですよ。魔法を発動しますか?」
「ええ、もちろん」
キーラは電池から自分の契約精霊スターレを呼び出した。電気を司る子猫型の精霊だ。
「どお? 可愛いでしょ?」
「ええ、まあ……」
キーラはスターレに目配せした。
スターレから電気が迸り、キーラの指先に電気の塊がバチッバチッと音を立てて浮かぶ。
「サイコロの目が出てから魔法を使うかどうか選ばせてくれるなんて親切よね。先に魔法を使うかどうかを決めてからサイコロを振るんだったら完全に運任せなのに、このルールだと魔法を使う子側が有利じゃない? ひたすら弱い魔法を使って狙い目を絞り、狙い目が出たときに強い魔法を使えばいいんだから」
「キーラ・ヌアさん。いまの発言を聞いて、これだけははっきりと言えます。あなたはギャンブルには向いていません」
「もしかして、あたしがゾロ目のことを失念していると思ってない? ちゃーんと覚えているわよ。できるだけゾロ目が出ないように、必要最小限の試行回数で勝利してみせるわ」
ロコイサーは鼻で笑って口を閉じたまま首を横に振った。
「どうぞ、撃ってください」
促されても、キーラは即座には魔法を撃たなかった。
弱い攻撃を出すのはいいが、あんまり弱すぎたら魔法が強化されたり弱体化されたりしても分からない。
だから少しだけ、ほんの少し強くして電撃を放った。
「あいったっ!」
キーラの電撃はロコイサーの指先に届き、ロコイサーはビクッと腕を跳ね上げた。
「これは敵へ二倍のダメージかしら。いきなり大当たりを引いたわね。3、4、4。二つが同じ数字のパターン。覚えたわよ」
「まさか初撃からこんなに強めで来るとは思っていませんでしたよ」
「なんか、怒ってる?」
「怒っていません。次、振りますよ」
ロコイサーはキーラに目を合わせず、三つのサイコロだけを見つめた。やはりムスッとしている。
しかし卓上を転がるサイコロの音は変わらない。軽快なステップを踏んだ後、三つのサイコロは沈黙する。
「2、3、5、ですね」
「バラバラね」
「いいえ、これは一部連番と見なされます。2と3が連続していますからね」
「へー、そうなんだ」
ロコイサーに促され、キーラは再び電撃を放った。今度はさっきより威力を小さくした。
キーラが放った電撃は二人の間で一瞬だけ静止し、キーラの方へと跳ね返った。
「うわっ、ビックリした!」
どうやら威力は半分になったようだった。元の威力を低くしたこともあり、キーラの指先に返ってきた電撃による影響は、キーラの指が少し痺れるだけにとどまった。
「悪運の強い人ですね。さ、次行きますよ」
「なんか雑……」
淡々とゲームを進行するダイスを見て、キーラは不安感を抱いた。
威力を調整している自分でさえ一回一回の魔法にドキドキしているのに、威力が分からないダイスがこの調子では、まるでダイスが勝つことが確定しているかのようではないか。
キーラは考えた。ダイス・ロコイサーの魔法の正体について。
(概念種の魔法で間違いなさそう。魔法を跳ね返せるということは、軌道? ベクトル? でもその二つのどちらかだった場合、直接戦闘したほうが手っ取り早そうよね。わざわざギャンブルで勝負を持ちかけてくるということは、戦闘向きではない魔法だということ。……必中? これも戦闘向きかな。賭けの概念種? でも、自然界のものではなく人間が作り出した概念の魔法なんて存在するのかしら? 魔法で操ったり生み出したりするエレメントは自然界に存在するものだけれど、それは概念種も変わらないはず。まだいまの段階では、こいつの魔法の正体は分からないわね)
――カラカラカラ。
サイコロは躊躇なく振られ、そして躊躇なく三つの目を出した。
「1、4、6。雑番ですね。さっさと魔法を撃ってください」
「雑番って、今度こそ完全にバラバラってことね」
キーラは先ほどと同程度の威力で魔法を放った。すると電撃は二人の間で一瞬静止した。
キーラはドキッとしたが、魔法はその場で弾けるように消失した。どうりで進行が雑なわけだ。
「消えるって知っていたのね?」
「そりゃあそうですよ。私が効果を設定したんですから。ああ、でも安心してくださいね。ゲームの途中で効果を変えるようなことはしませんから」
それもそうだ。
だが、だとしたら魔法がキーラに跳ね返る事象のほうが多く設定してあってもおかしくない。
圧倒的にキーラが不利だ。
だからこそ賭け金がローリスク・ハイリターンなのかもしれない。
「あなた、本当に魔導師? そんな芸当ができるのって、魔術師じゃないの?」
「先ほど私が言ったとおりですよ。私は魔導師です。でも、魔術師だと疑いたければお好きにどうぞ。私はなんら困りませんし、あなたが勝手に迷走するだけの話です」
エストならバシッと敵の正体や発言の意図を見抜くんだろうなぁ、などと考えながら、キーラはロコイサーにターン進行を催促した。
――カラカラカラ。
2、それから6。そして、三つ目のサイコロが千鳥足で少し粘ってから出した目は4だった。
「2、4、6。偶数連番ですねぇ」
ダイス・ロコイサーはポーカーフェイスに長けている。表情からは出目の効果が読めない。
「初めてのパターンだわ」
魔法への効果でまだ出ていないパターンは何だろうとキーラは考えた。
いちばん恐ろしいのは自分への二倍ダメージだ。そしてこの偶数連番がそれに該当する可能性は十分にある。
魔法の威力を弱くしたい。だが、弱すぎると威力の変化が分からない。
だが、そのことについて繰り返し考えているうちに、キーラは重要なことに気がついた。
この際、威力はどうでもいいのではないか。重要なのは魔法が相手に飛んでいくか、自分に返ってくるかだ。
それだけ分かれば、相手に魔法が飛ぶときに強めの魔法を放てばいい。威力は二倍になっても死なない程度にさえ抑えればいいのだ。
「何を悩んでいるんですか? 魔法、使わないんですか?」
ロコイサーの態度からして、魔法は自分に跳ね返ってきそうだと感じた。
それが敵のハッタリである可能性もあるが、何回裏をかけばいいか分からなくなった時点で、もはや読みというのは無意味だ。
余計なことは考えず、さっき決めた方針に従い抑えた威力の魔法を放つ。
「使うわよ」
キーラの指先から放たれた電撃は、二人の中間で静止してから跳ね返った。黄色い光が、ボールを咥えた犬みたいに一直線に返ってくる。
「あいたっ」
威力変化はなし。つまり偶数連番はキーラ自身に等倍ダメージということだ。
それにしても、自分にダメージが返ってくるパターンが多すぎではないか。やはりそういうふうに設定されているのだろうか。
あるいは、確率の概念種の使い手で確率を操作しているのだろうか。
だとしたら、このゲームに勝てる可能性はかなり低い。
「次は私のターンです。そろそろゾロ目が出てもいいころですねぇ。さあ、サイコロを振りますよ」
確率を操作できるなら、ゾロ目を出すことも簡単なはず。次で五回目だが、そろそろ出てもおかしくない。
いや、事はもっと深刻かもしれない。確率の操作によって、好きなタイミングでゾロ目を出すことが可能という可能性もある。これまでゾロ目が出なかったのは、魔法を特定されないためのカモフラージュかもしれない。
キーラは額にうっすらと汗を浮かべた。
一度そんなふうに考え出すと、焦燥感は止まらない。
「それっ」
いままでかけ声なんかなかったのに、ロコイサーがかけ声なんか付けてサイコロを振るものだから、キーラは気が気でなくなった。
今回は何か仕掛けてくるんじゃないか。確率を操作してゾロ目を出してくるんじゃないか。
キーラは瞬きを忘れて机上を踊るサイコロに見入った。
サイコロはわずかな時間差で順に動きを止めた。
一つ目は3。二つ目も3。そして三つ目は……。
「おや、3、3、5ですか」
同じ数字が二つ。キーラは状況を飲み込むために一瞬固まったが、視覚情報と理解が一致したとき、思わずガッツポーズをした。
ダイス・ロコイサーはポーカーフェイスを貫いているが、キーラには関係のないことだ。同じ数字が二つのパターンは最初に経験している。そしてそのときにダイス・ロコイサーに二倍の魔法ダメージを与えている。
「行くわよ!」
問答無用とばかりに、キーラはスターレからもらった電気の塊を飛ばす。人が気絶する半分程度の威力。これが二倍になって、相手は気絶必至だ。
キーラの指先から放たれた電撃は、いままでで最も強い光を放ち直進する。
だがその光は途中で止まった。二人のちょうど中間の位置。これは想定と違う。最初にダイス・ロコイサーに電撃が直撃したときは、いったん止まるなんてことはなかった。
つまりこれは消滅か跳ね返りのどちらかだ。
キーラはとっさにスターレから電気をもらってバリアを張ろうとした。だがスターレを形作る電気はまったく動かなかった。
一ターンに使える魔法は一度だけ。魔法が無効化されたのだ。
キーラの焦りが二倍になったところで、先ほどキーラの放った電撃がキーラの体を焼いた。
電撃の威力が二倍になっていたが、威力のコントロールはうまくできていたようで、キーラは死には至らなかった。
しかし威力のコントロールがうまくできていただけに、キーラは意識を失い、そのまま後ろに倒れた。
「残念でしたね。これは3、3、5の同じ数字が二つのケース。最初に出た組み合わせと同じで相手に二倍のダメージと考えたのでしょうね。でも、違うんですよ。二つそろった数字がもう一つの数字よりも大きいものであれば、それは相手に二倍の威力の魔法効果を及ぼしますが、二つそろった数字がもう一つの数字よりも小さいものであれば、逆に自分に二倍の威力の魔法効果を及ぼすわけですよ。ああ、まったく早まってしまいましたな。ま、本人には聞こえていないでしょうが」
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