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第六章 試練編
第210話 三つの試練①
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ネアは試練は三つあると言った。一つの試練をクリアするごとに特殊な力を一つ得ることができるという。
魔導師、魔術師だの何だのと、この小さい世界の枠に収まっているうちは決して紅い狂気には勝てない。
この世界の理から外れた力をくれるということで、それをもらわない手はない。
「三つの試練のうちの二つは、実はこの世界に最初から存在していた。とある場所に行けばそれらの試練を受けられる」
ネアの説明に合わせ、俺とエアの前に立体的な世界地図のホログラムが出現した。
大陸は国境が分かるよう描かれており、現在地が赤く点灯している。
大陸の西側には未開の大陸がある。そこまでは文献で読んだことがあって知っていたし、実際に行ったこともある。
そんな俺が初めて見る場所が二箇所あった。そのうちの一つは明らかに世界から孤立していた。
「何だ、これは。島が浮いているのか?」
「いや、これは遺跡だ。この浮いているものが丸ごと遺跡なんだ」
護神中立国の南端とシミアン王国の南端を結ぶ中間地点。そこは海洋の上空だ。
護神中立国は南端から北西に向かって海岸線があり、シミアン王国は南端から北東に向かって海岸線があるから、座標的には両国を斜辺とする三角形状の海の底辺の中点にあたる。
空を自在に飛べるとしても通常はここを通ることはなく、偶然に見つけることなどまずないだろう。
「これがまるごと遺跡だと? 諸島連合の島一つ分くらいの大きさがあるぞ」
「そう。これは天空の超巨大遺跡。ここ全体が迷路になっていて、最奥部にはガーディアン・機工巨人が待ち受ける。そいつを倒すことが一つ目の試練だ」
「そいつを倒せば何の力が得られるんだ?」
「機工巨人を精霊として召喚することが可能になる」
召喚。それはこの世界に存在しない摂理だ。いや、そう思っていただけかもしれないが。
ここでいう精霊というのも、学院の校長先生やネアと同じくこの世界ではない世界の存在だ。
そこまでは分かった。だが、問題は機工巨人の強さだ。役に立つほど強いのだろうか。
弱ければ簡単に機工巨人を獲得できるだろうが、戦闘で役に立たないだろう。
逆に俺と同等かそれ以上に強ければ、戦闘で使えば心強いだろうが、その前に俺が倒すことが難しいだろう。
「君の考えていることは分かるよ。機工巨人は君単体より強い。でも極端な差ではない。エアと二人で戦えばきっと勝てるさ」
俺より強い、か。断言されてしまった。悔しいがそれも一つの情報であり、俺の戦力の一つだ。
ネアの言葉がどれほど真実なのかは、実際に試せば分かることだ。元々俺は挑むべき強者を探すのが趣味だったのだから、ちょうどいいではないか。腕が鳴るというものだ。
「で、二つ目の試練は? これか?」
そう言いながら俺が指差したのは、諸島連合の北西にして未開の大陸の北東、広大な海域の中央部。そこは明らかに海面より下に位置する場所だった。
海底にあるそれは、中世のお城のような外観をしている。世界地図上では小さいが、これがランドマークではなく等比縮尺であるならば、かなり巨大な建造物ということになる。
「そう。海底神殿。完全に水没していて空気のない場所だよ。空気の操作型魔導師である君は誰よりも資源に恵まれた魔導師だけれど、ここで初めてほかの魔導師と同じ感覚を味わうだろう。地上から空気を持ち込む工夫が必要だ」
「ここでは何と戦うんだ?」
「戦うのが目的ではない。神殿の奥に到達することが目的だ。といっても深海イーターは棲んでいるから、遭遇すれば彼らと戦う必要はあるけれどね」
俺はここでひと呼吸置いた。話を聞くだけで喉が渇く。高難度への期待感よりも緊張感のほうが勝っている。
俺は茶をすすり、喉を潤した。エアも同じように喉が渇いたのか、俺とほぼ同じタイミングでコップに手をつけた。
「神殿の奥に辿り着いたら、今度は何がもらえるんだ?」
「魔法の進化。この世界の魔法は、発生型と操作型の魔法に限り進化する余地があるんだ。本来は魔法を完全に極めた者だけが辿り着く境地なんだけど、報酬として魔法を進化させてあげるっていうことさ」
「進化? どう進化するんだ?」
「厳密に言うと、魔法を極めるというのは君の元の世界の科学知識を有しながら科学常識に囚われない状態かつ、魔法を完全に自由自在に使いこなせる状態のことを言う。はっきり言って、何も知らずにその極致に到達するのは不可能だよ」
結局、ネアの回答は魔法の進化というのがどういう変化なのか、その答えにはなっていなかった。
はぐらかされたのだろう。ネアの顔をチラと見ると、ニコッと笑った。
これは訊いても秘密にされるパターンだ。クリアしてのお楽しみというわけだ。
「そうか。で、最後の試練は?」
これまで即答していたネアだが、最後だけは一瞬の間を開けた。
そして、改めてニコリと笑った。
「ここだよ。ここで僕が君に試練を課す」
「あんたと戦うのか?」
「いや、僕は試練になるほど強くはないよ。ここでの試練はほか二つの試練をクリアすれば教える。最後の試練をクリアすれば、僕が君たちにかかっている制限を解除する。君たちの能力はさらに上の次元に達することになる」
俺は再び茶をすすった。
「与太話かもしれないが、いちおう訊いておく。最後の試練の報酬はあんたの采配しだいなんだろう? だったら試練なんかなしで能力をくれればいいのにって思うんだが、駄目なのか? あんただって紅い狂気を倒してほしいんだろ?」
先に最後の試練の報酬を得られれば、一つ目と二つ目の試練もだいぶ楽になるだろう。
もちろん、そんな甘い話があるはずがない。そんなことは分かっているのだ。
「君も本当は分かっていると思うけれど、この試練は君に新たな力を与えることだけが目的ではない。君の精神面を成長させるための試練でもあるんだ。紅い狂気と戦うにあたっては、メンタルパワーこそが何よりも重要な要素さ。それに僕は装置みたいなものだから、君たちが試練をクリアしなければ、僕も人に能力を与える能力を得られない」
「そうか。十分に理解した」
三つの試練の説明を終えたネアは、椅子から降りてテーブルの横に立った。
俺とエアもそれにならうと、世界地図のホログラムが消え、テーブルの茶菓子も消え、最後にはテーブルと椅子も消えた。
魔導師、魔術師だの何だのと、この小さい世界の枠に収まっているうちは決して紅い狂気には勝てない。
この世界の理から外れた力をくれるということで、それをもらわない手はない。
「三つの試練のうちの二つは、実はこの世界に最初から存在していた。とある場所に行けばそれらの試練を受けられる」
ネアの説明に合わせ、俺とエアの前に立体的な世界地図のホログラムが出現した。
大陸は国境が分かるよう描かれており、現在地が赤く点灯している。
大陸の西側には未開の大陸がある。そこまでは文献で読んだことがあって知っていたし、実際に行ったこともある。
そんな俺が初めて見る場所が二箇所あった。そのうちの一つは明らかに世界から孤立していた。
「何だ、これは。島が浮いているのか?」
「いや、これは遺跡だ。この浮いているものが丸ごと遺跡なんだ」
護神中立国の南端とシミアン王国の南端を結ぶ中間地点。そこは海洋の上空だ。
護神中立国は南端から北西に向かって海岸線があり、シミアン王国は南端から北東に向かって海岸線があるから、座標的には両国を斜辺とする三角形状の海の底辺の中点にあたる。
空を自在に飛べるとしても通常はここを通ることはなく、偶然に見つけることなどまずないだろう。
「これがまるごと遺跡だと? 諸島連合の島一つ分くらいの大きさがあるぞ」
「そう。これは天空の超巨大遺跡。ここ全体が迷路になっていて、最奥部にはガーディアン・機工巨人が待ち受ける。そいつを倒すことが一つ目の試練だ」
「そいつを倒せば何の力が得られるんだ?」
「機工巨人を精霊として召喚することが可能になる」
召喚。それはこの世界に存在しない摂理だ。いや、そう思っていただけかもしれないが。
ここでいう精霊というのも、学院の校長先生やネアと同じくこの世界ではない世界の存在だ。
そこまでは分かった。だが、問題は機工巨人の強さだ。役に立つほど強いのだろうか。
弱ければ簡単に機工巨人を獲得できるだろうが、戦闘で役に立たないだろう。
逆に俺と同等かそれ以上に強ければ、戦闘で使えば心強いだろうが、その前に俺が倒すことが難しいだろう。
「君の考えていることは分かるよ。機工巨人は君単体より強い。でも極端な差ではない。エアと二人で戦えばきっと勝てるさ」
俺より強い、か。断言されてしまった。悔しいがそれも一つの情報であり、俺の戦力の一つだ。
ネアの言葉がどれほど真実なのかは、実際に試せば分かることだ。元々俺は挑むべき強者を探すのが趣味だったのだから、ちょうどいいではないか。腕が鳴るというものだ。
「で、二つ目の試練は? これか?」
そう言いながら俺が指差したのは、諸島連合の北西にして未開の大陸の北東、広大な海域の中央部。そこは明らかに海面より下に位置する場所だった。
海底にあるそれは、中世のお城のような外観をしている。世界地図上では小さいが、これがランドマークではなく等比縮尺であるならば、かなり巨大な建造物ということになる。
「そう。海底神殿。完全に水没していて空気のない場所だよ。空気の操作型魔導師である君は誰よりも資源に恵まれた魔導師だけれど、ここで初めてほかの魔導師と同じ感覚を味わうだろう。地上から空気を持ち込む工夫が必要だ」
「ここでは何と戦うんだ?」
「戦うのが目的ではない。神殿の奥に到達することが目的だ。といっても深海イーターは棲んでいるから、遭遇すれば彼らと戦う必要はあるけれどね」
俺はここでひと呼吸置いた。話を聞くだけで喉が渇く。高難度への期待感よりも緊張感のほうが勝っている。
俺は茶をすすり、喉を潤した。エアも同じように喉が渇いたのか、俺とほぼ同じタイミングでコップに手をつけた。
「神殿の奥に辿り着いたら、今度は何がもらえるんだ?」
「魔法の進化。この世界の魔法は、発生型と操作型の魔法に限り進化する余地があるんだ。本来は魔法を完全に極めた者だけが辿り着く境地なんだけど、報酬として魔法を進化させてあげるっていうことさ」
「進化? どう進化するんだ?」
「厳密に言うと、魔法を極めるというのは君の元の世界の科学知識を有しながら科学常識に囚われない状態かつ、魔法を完全に自由自在に使いこなせる状態のことを言う。はっきり言って、何も知らずにその極致に到達するのは不可能だよ」
結局、ネアの回答は魔法の進化というのがどういう変化なのか、その答えにはなっていなかった。
はぐらかされたのだろう。ネアの顔をチラと見ると、ニコッと笑った。
これは訊いても秘密にされるパターンだ。クリアしてのお楽しみというわけだ。
「そうか。で、最後の試練は?」
これまで即答していたネアだが、最後だけは一瞬の間を開けた。
そして、改めてニコリと笑った。
「ここだよ。ここで僕が君に試練を課す」
「あんたと戦うのか?」
「いや、僕は試練になるほど強くはないよ。ここでの試練はほか二つの試練をクリアすれば教える。最後の試練をクリアすれば、僕が君たちにかかっている制限を解除する。君たちの能力はさらに上の次元に達することになる」
俺は再び茶をすすった。
「与太話かもしれないが、いちおう訊いておく。最後の試練の報酬はあんたの采配しだいなんだろう? だったら試練なんかなしで能力をくれればいいのにって思うんだが、駄目なのか? あんただって紅い狂気を倒してほしいんだろ?」
先に最後の試練の報酬を得られれば、一つ目と二つ目の試練もだいぶ楽になるだろう。
もちろん、そんな甘い話があるはずがない。そんなことは分かっているのだ。
「君も本当は分かっていると思うけれど、この試練は君に新たな力を与えることだけが目的ではない。君の精神面を成長させるための試練でもあるんだ。紅い狂気と戦うにあたっては、メンタルパワーこそが何よりも重要な要素さ。それに僕は装置みたいなものだから、君たちが試練をクリアしなければ、僕も人に能力を与える能力を得られない」
「そうか。十分に理解した」
三つの試練の説明を終えたネアは、椅子から降りてテーブルの横に立った。
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