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愛された王様
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この国は、大陸一の大きさと強さと豊かさを誇る文句なしの大国である。
代々続く王家には傑物が多く、賢王が続いた為、戦争や内乱で疲弊することもなく、ますます国は豊かになった。
当代の王も例に漏れず傑物であった。ただ一つ、欠点を述べるとすれば、無類の男好きだったのである。
英雄色を好むなどとも言われる通り、この国の王は総じて精力旺盛であり、大きな後宮を構えていたが、そこに男ばかりを集めたのは当代の王ただ一人である。
後宮での王は、影で節操なしと呼ばれていた。
なにせ、彼が集めた男性は年端もゆかぬ少年から、屈強な戦士、色街の男娼に、貴族の美少年、果ては先代の王に仕えていた宰相までいたのだから。
王の守備範囲の広さは相当なものであった。
そして、寝所で必ず言うのだ。
「朕だけを見ていろ。よそ見をするな。朕は其方だけを愛しているのだから」
最初はときめいた言葉も、王が同じ言葉を他の人間にも言っているのを知ると、興がさめる。
そして、必ず誰にでも同じ言葉をかけていると知ると、もはやその言葉を聞くと笑わずにいられなくなってしまう。
そうして、笑い出した愛妾達に彼が怒ることはない。
「其方の笑顔は格別だな」
そう褒めて、優しく褥へと誘うのだ。
そんな風であったから、節操なしの王様は、皆から愛されていた。
そして、後宮につきももの嫉妬や醜い争い事からも無縁で、皆が仲の良い、居心地の良い場所となっていた。
王が男好きであることで生じる問題がある。このままでは生まれるはずのないお世継ぎのことである。
王は煩い臣下らに笑い飛ばした。
「朕には十人も弟がいる。妹も八人いる。甥も姪も数えるのが億劫になる程いるのだぞ。そのうちの誰かに朕の後釜を任せれば良いのだ」
「それでは争い事が起こってしまいます」
普段は臣下らの言葉に寛容な王は、その訴えだけは耳をかさない。
「朕が子をなしたとて、争い事が起こる時は起こる。そんなことはその方達も知っているだろう」
引き留める臣下らを振り切って、執務を終えると真っ直ぐに後宮へと向かうのだ。
その日、王の渡りがあったのは、年端もゆかぬ少年、仁の部屋であった。
仁は王の顔を見ただけで笑い出してしまった。
「ふ、ふふ、ふふふ……。陛下ったら僕の部屋に来る時までそんな物持ってきて、あはは……、おっかしいの」
無礼な仁の言葉にも、王は怒ることはない。
「そんなにおかしいか? 其方はこの花が好きだと聞いていたのだがな」
「花が好きなのは楊さんだけだよ。陛下は最近、皆に花を持って行ってるって聞いてたけど、本当だったんだね」
「ふむ。皆、喜んでいたがな……」
「うん。僕も嬉しいよ」
「そうか、ならば良い。それより、もう他の男の話しはするな。朕のことだけ見て、朕のことだけ考えよ。朕は其方だけを愛しているのだから」
「うふふ。ありがとう。じゃあ、陛下も、僕だけ見て。今夜は何処へも行かないで、一緒にいてね」
仁の願いに、王様は優しく微笑んで頷いたのであった。
代々続く王家には傑物が多く、賢王が続いた為、戦争や内乱で疲弊することもなく、ますます国は豊かになった。
当代の王も例に漏れず傑物であった。ただ一つ、欠点を述べるとすれば、無類の男好きだったのである。
英雄色を好むなどとも言われる通り、この国の王は総じて精力旺盛であり、大きな後宮を構えていたが、そこに男ばかりを集めたのは当代の王ただ一人である。
後宮での王は、影で節操なしと呼ばれていた。
なにせ、彼が集めた男性は年端もゆかぬ少年から、屈強な戦士、色街の男娼に、貴族の美少年、果ては先代の王に仕えていた宰相までいたのだから。
王の守備範囲の広さは相当なものであった。
そして、寝所で必ず言うのだ。
「朕だけを見ていろ。よそ見をするな。朕は其方だけを愛しているのだから」
最初はときめいた言葉も、王が同じ言葉を他の人間にも言っているのを知ると、興がさめる。
そして、必ず誰にでも同じ言葉をかけていると知ると、もはやその言葉を聞くと笑わずにいられなくなってしまう。
そうして、笑い出した愛妾達に彼が怒ることはない。
「其方の笑顔は格別だな」
そう褒めて、優しく褥へと誘うのだ。
そんな風であったから、節操なしの王様は、皆から愛されていた。
そして、後宮につきももの嫉妬や醜い争い事からも無縁で、皆が仲の良い、居心地の良い場所となっていた。
王が男好きであることで生じる問題がある。このままでは生まれるはずのないお世継ぎのことである。
王は煩い臣下らに笑い飛ばした。
「朕には十人も弟がいる。妹も八人いる。甥も姪も数えるのが億劫になる程いるのだぞ。そのうちの誰かに朕の後釜を任せれば良いのだ」
「それでは争い事が起こってしまいます」
普段は臣下らの言葉に寛容な王は、その訴えだけは耳をかさない。
「朕が子をなしたとて、争い事が起こる時は起こる。そんなことはその方達も知っているだろう」
引き留める臣下らを振り切って、執務を終えると真っ直ぐに後宮へと向かうのだ。
その日、王の渡りがあったのは、年端もゆかぬ少年、仁の部屋であった。
仁は王の顔を見ただけで笑い出してしまった。
「ふ、ふふ、ふふふ……。陛下ったら僕の部屋に来る時までそんな物持ってきて、あはは……、おっかしいの」
無礼な仁の言葉にも、王は怒ることはない。
「そんなにおかしいか? 其方はこの花が好きだと聞いていたのだがな」
「花が好きなのは楊さんだけだよ。陛下は最近、皆に花を持って行ってるって聞いてたけど、本当だったんだね」
「ふむ。皆、喜んでいたがな……」
「うん。僕も嬉しいよ」
「そうか、ならば良い。それより、もう他の男の話しはするな。朕のことだけ見て、朕のことだけ考えよ。朕は其方だけを愛しているのだから」
「うふふ。ありがとう。じゃあ、陛下も、僕だけ見て。今夜は何処へも行かないで、一緒にいてね」
仁の願いに、王様は優しく微笑んで頷いたのであった。
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******
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