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第二章 距離が縮まるオリエンテーション!
14話 低級悪魔騒ぎ!?
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──プップッー!
突然、車のクラクションの音がひびいた。
私達がいるペンチのすぐそばには、山の頂上まで続いている道路がある。
音に驚いて振り向いた時には、一台の車のうしろ姿が見えた。
なんだか恥ずかしくなって、お互い無言のまま前を向く。
でも、不思議と気まずさはなくて。
心地のいい無音が続いた。
どれくらい……、たった頃かな。
ぽつりと魔央くんが呟いた。
「そろそろ……、戻ろっか」
「……うん。そうだね」
まだ二人でこうしていたい。
なんて、贅沢なわがままだ。
でも……、でも魔央くんの声にも、同じ想いがこめられていたと思うのは、気のせいじゃないよね?
◇◇◆◇◇
「ちょっと遅くなっちゃったね。早く戻ろう」
そう言って飛ぶスピードを速めた魔央くんに、うなずいたとき。
『きゃぁぁぁぁぁ!!』
耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。
「今のはっ!?」
「低級悪魔の気配……、一華は先に部屋に戻ってて」
「わ、私も行くよっ!」
「──わかった。危ないから、絶対に俺のそばを離れないで。いいね?」
「うん!」
◇◇◆◇◇
……魔央くんが感じとった低級悪魔の気配は、木が生い茂る山奥だった。
おろしてもらい歩いて、悲鳴をあげた人を探す。
あたりは真っ暗だ。
何も見えず、目を凝らしていれば魔央くんがボウッと火の玉を出した。
「わっ、すごい!」
「これで明るいでしょう? これは一華についてくるから、動いても大丈夫だよ」
悲鳴を聞いてからあった、体の芯が冷えていく感覚。でもそれは、魔央くんの火の玉のおかげか、あたたかくなっていった。
『誰かっ! 誰か助けてっ!! お願い……!』
「魔央くんっ、あっちから声が!」
「うん、急ごう」
声のした方へ走っていくと、いままさに女の子へ人型の黒いモヤが襲いかかろうとしていた!
「そんな! ……魔央くんっ!」
すがるような目で、私は魔央くんを見た。
魔央くんはうなずいたあと、バサリと翼を動かし素早い動きで低級悪魔のもとへ。
「──目ざわりだ、地獄へ堕ちろ。低級悪魔」
魔央くんが手を横へスッとはらうと、赤く燃え盛《さか》る炎が低級悪魔をつつんだ!
低級悪魔を魔央くんにまかせて、私は女の子のもとへ行く。
「大丈夫!?」
「あ、わっ私……」
女の子は恐怖からか、ガタガタと体が震えている。
「もう大丈夫だよ。魔央くんがやっつけてくれるから!」
大丈夫だよ、と何度も言いながら背中をさすってあげる。
そうすると、ホッとした顔をして女の子は意識を失った。
「……魔央くんはっ!?」
魔央くんの方を見れば、燃えている低級悪魔をじっと見つめていた。
「……魔央、くん?」
「ん?」
私が呼ぶと笑顔でこちらに来た魔央くん。
「ううんっ……なんでもないっ。それより、怪我はない? 魔央くん」
「大丈夫だよ」
──バサリ。
どこからか音がした。
「神城さん!!」
上空から声が聞こえて上を向けば、急降下してくる天内くんの姿が。
きっと赤く燃えている炎を見て、ここがわかったんだと思う。
燃えている低級悪魔を見て、天内くんは難しい顔をした。
「これは、黒羽が?」
「うん、魔央くんが倒してくれたんだよ!」
「そうか……」
無言のまま立つ天内くん。
「それがどうかしたの?」
「──攻撃の術を使ってはいけない。その掟があることを忘れたのか? 黒羽」
天内くんは視線を魔央くんに向ける。
「そんなっ! 魔央くんは私が、あの子を助けてってわがままを言ったから使ったんだよ!」
魔央くんただ、優しさからしてくれたことなのにっ。
「だからっ、魔央くんを……」
「あぁ。今回は、黒羽は悪くないんだ」
「……へ?」
「僕のかわりに対処してもらい、感謝する。黒羽」
天内くんは、魔央くんに向かって頭を下げた。
魔央くんは、そんな天内くんを興味なさげに見つめている。
「礼には及ばないよ。俺は、一華の願いを叶えただけ」
頭を上げた天内くんは、絞り出すように苦々しい声を出した。
「黒羽たちの監視もそうだが、悪さをする低級悪魔も見つけ次第対処するのが、天使である僕の役目」
「……だから?」
言葉を区切った天内くんに、魔央くんは先をうながした。
「……すまない」
そう言って、もう一度頭を下げた天内くん。
「……謝らないでくれる? 君の謝罪なんていらないよ。さ、戻ろう一華」
「あ、待って魔央くん! 襲われてた子は、どうしたら……」
「その心配はいらない、神城さん」
天内くんは、自分の翼から羽根を一枚抜き取ると何かをとなえる。
気を失っている女の子に向けて、その羽根をふーっと飛ばした。
──バアァァァ。
光った羽根がサラサラと崩れ落ちて、女の子に降り注いだ。
次の瞬間、女の子の姿が消えた!
「ど、どうなってるの?」
「ホテルの前へ移動させたんだ」
「すごい……ら天使ってそんなことも出来るの?」
「一日に何度も出来るわけじゃないが。悪魔に襲われた記憶も、消しておいた。不思議に思うだろうけど、すぐに自分の部屋へ戻るはずだ」
「よかった! ……でもどうしてあの子は、こんな山奥にいたんだろ……」
この質問には、魔央くんが答えてくれた。
「あれは獲物を誘い出して襲うタイプの、低級悪魔だったんだ。ここに来たのは、あの子の意思じゃないと思うよ」
そんな低級悪魔がいるなんて、知らなかった。
……そもそも、ちょっと前まで私は、悪魔や天使が実在するなんて思っていなかったから、初耳なのは当然だ。
「今度こそ戻ろう、一華。体が冷えただろうし」
「うん……、そうだね」
突然、車のクラクションの音がひびいた。
私達がいるペンチのすぐそばには、山の頂上まで続いている道路がある。
音に驚いて振り向いた時には、一台の車のうしろ姿が見えた。
なんだか恥ずかしくなって、お互い無言のまま前を向く。
でも、不思議と気まずさはなくて。
心地のいい無音が続いた。
どれくらい……、たった頃かな。
ぽつりと魔央くんが呟いた。
「そろそろ……、戻ろっか」
「……うん。そうだね」
まだ二人でこうしていたい。
なんて、贅沢なわがままだ。
でも……、でも魔央くんの声にも、同じ想いがこめられていたと思うのは、気のせいじゃないよね?
◇◇◆◇◇
「ちょっと遅くなっちゃったね。早く戻ろう」
そう言って飛ぶスピードを速めた魔央くんに、うなずいたとき。
『きゃぁぁぁぁぁ!!』
耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。
「今のはっ!?」
「低級悪魔の気配……、一華は先に部屋に戻ってて」
「わ、私も行くよっ!」
「──わかった。危ないから、絶対に俺のそばを離れないで。いいね?」
「うん!」
◇◇◆◇◇
……魔央くんが感じとった低級悪魔の気配は、木が生い茂る山奥だった。
おろしてもらい歩いて、悲鳴をあげた人を探す。
あたりは真っ暗だ。
何も見えず、目を凝らしていれば魔央くんがボウッと火の玉を出した。
「わっ、すごい!」
「これで明るいでしょう? これは一華についてくるから、動いても大丈夫だよ」
悲鳴を聞いてからあった、体の芯が冷えていく感覚。でもそれは、魔央くんの火の玉のおかげか、あたたかくなっていった。
『誰かっ! 誰か助けてっ!! お願い……!』
「魔央くんっ、あっちから声が!」
「うん、急ごう」
声のした方へ走っていくと、いままさに女の子へ人型の黒いモヤが襲いかかろうとしていた!
「そんな! ……魔央くんっ!」
すがるような目で、私は魔央くんを見た。
魔央くんはうなずいたあと、バサリと翼を動かし素早い動きで低級悪魔のもとへ。
「──目ざわりだ、地獄へ堕ちろ。低級悪魔」
魔央くんが手を横へスッとはらうと、赤く燃え盛《さか》る炎が低級悪魔をつつんだ!
低級悪魔を魔央くんにまかせて、私は女の子のもとへ行く。
「大丈夫!?」
「あ、わっ私……」
女の子は恐怖からか、ガタガタと体が震えている。
「もう大丈夫だよ。魔央くんがやっつけてくれるから!」
大丈夫だよ、と何度も言いながら背中をさすってあげる。
そうすると、ホッとした顔をして女の子は意識を失った。
「……魔央くんはっ!?」
魔央くんの方を見れば、燃えている低級悪魔をじっと見つめていた。
「……魔央、くん?」
「ん?」
私が呼ぶと笑顔でこちらに来た魔央くん。
「ううんっ……なんでもないっ。それより、怪我はない? 魔央くん」
「大丈夫だよ」
──バサリ。
どこからか音がした。
「神城さん!!」
上空から声が聞こえて上を向けば、急降下してくる天内くんの姿が。
きっと赤く燃えている炎を見て、ここがわかったんだと思う。
燃えている低級悪魔を見て、天内くんは難しい顔をした。
「これは、黒羽が?」
「うん、魔央くんが倒してくれたんだよ!」
「そうか……」
無言のまま立つ天内くん。
「それがどうかしたの?」
「──攻撃の術を使ってはいけない。その掟があることを忘れたのか? 黒羽」
天内くんは視線を魔央くんに向ける。
「そんなっ! 魔央くんは私が、あの子を助けてってわがままを言ったから使ったんだよ!」
魔央くんただ、優しさからしてくれたことなのにっ。
「だからっ、魔央くんを……」
「あぁ。今回は、黒羽は悪くないんだ」
「……へ?」
「僕のかわりに対処してもらい、感謝する。黒羽」
天内くんは、魔央くんに向かって頭を下げた。
魔央くんは、そんな天内くんを興味なさげに見つめている。
「礼には及ばないよ。俺は、一華の願いを叶えただけ」
頭を上げた天内くんは、絞り出すように苦々しい声を出した。
「黒羽たちの監視もそうだが、悪さをする低級悪魔も見つけ次第対処するのが、天使である僕の役目」
「……だから?」
言葉を区切った天内くんに、魔央くんは先をうながした。
「……すまない」
そう言って、もう一度頭を下げた天内くん。
「……謝らないでくれる? 君の謝罪なんていらないよ。さ、戻ろう一華」
「あ、待って魔央くん! 襲われてた子は、どうしたら……」
「その心配はいらない、神城さん」
天内くんは、自分の翼から羽根を一枚抜き取ると何かをとなえる。
気を失っている女の子に向けて、その羽根をふーっと飛ばした。
──バアァァァ。
光った羽根がサラサラと崩れ落ちて、女の子に降り注いだ。
次の瞬間、女の子の姿が消えた!
「ど、どうなってるの?」
「ホテルの前へ移動させたんだ」
「すごい……ら天使ってそんなことも出来るの?」
「一日に何度も出来るわけじゃないが。悪魔に襲われた記憶も、消しておいた。不思議に思うだろうけど、すぐに自分の部屋へ戻るはずだ」
「よかった! ……でもどうしてあの子は、こんな山奥にいたんだろ……」
この質問には、魔央くんが答えてくれた。
「あれは獲物を誘い出して襲うタイプの、低級悪魔だったんだ。ここに来たのは、あの子の意思じゃないと思うよ」
そんな低級悪魔がいるなんて、知らなかった。
……そもそも、ちょっと前まで私は、悪魔や天使が実在するなんて思っていなかったから、初耳なのは当然だ。
「今度こそ戻ろう、一華。体が冷えただろうし」
「うん……、そうだね」
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