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第十一話 一族からの手紙
第十一話 一族からの手紙
叔母が「私は公爵夫人よ」と名乗った翌日。
公爵邸には、朝から妙な静けさがあった。
使用人たちは普段通りに動いている。
だが、誰も余計なことを言わない。
玄関ホールで起きたことを、皆が覚えているのだ。
エレノアは執務室で、昨日の記録を確認していた。
ルークが読み上げる。
「男爵夫人、玄関ホールにて二度、自身を公爵夫人と発言」
「証人は?」
「侍女三名、従僕二名、門番一名、荷運び人二名。合計八名でございます」
「十分です」
エレノアは静かに頷いた。
そのとき、扉が叩かれる。
入ってきた若い従僕が、銀盆に手紙を三通載せていた。
「公爵様。分家の方々より、お手紙が届いております」
ルークの表情がわずかに変わる。
「分家から?」
エレノアは一通目を手に取った。
封蝋には、グランディア公爵家の分家筋にあたる侯爵家の紋章が押されている。
開封する。
文面は短かった。
――王宮舞踏会にて、アルベルト男爵家令嬢がグランディア公爵令嬢を名乗ったとの噂あり。事実確認を求む。
エレノアは二通目を開く。
――男爵夫人が公爵夫人を自称していると聞く。これは一族の許可によるものか。
三通目。
――公爵家の名が不当に扱われているならば、看過できぬ。
エレノアは手紙を机に並べた。
「早いですね」
ルークが静かに言う。
「王宮での一件が広まりましたから」
「一族も動きますな」
「ええ」
エレノアは窓の外を見る。
朝の光が薔薇に落ちている。
「当然です。これは、私だけの問題ではありません」
グランディア公爵家は、ひとつの屋敷だけで成り立つものではない。
本家。
分家。
一族の歴史。
そのすべての上に、今の名がある。
叔父一家が勝手に公爵家を名乗るということは、エレノアだけでなく、一族全体の名を傷つける行為だった。
「返書を」
「内容は?」
「事実確認中。ただし、正式な代理人、または公爵令嬢としての任命は一切していない、と」
「承知いたしました」
ルークが一礼する。
その日の昼。
食堂では、叔父一家がいつも通り席についていた。
いや、いつも以上に堂々としていた。
叔父は上座に座り、叔母はその隣。
セシリアは新しい髪飾りをつけて、王宮舞踏会の余韻に浸っているようだった。
「お父様、次に殿下にお会いする機会はいつかしら」
「そう遠くはないだろう」
叔父が満足げに答える。
「王太子殿下も、セシリアに興味を持たれたようだった」
「やっぱり」
セシリアが頬を染める。
「私、公爵令嬢として恥ずかしくないようにしなければ」
エレノアは席についた。
ルークが背後に控える。
「叔父様」
「なんだ」
「一族の分家から、問い合わせが来ています」
叔父の手が止まった。
叔母も顔を上げる。
「問い合わせ?」
「王宮舞踏会でのセシリアの名乗りについてです」
セシリアの顔が少し曇る。
「また、その話ですか」
「はい」
エレノアは淡々と続ける。
「それから、叔母様が公爵夫人を自称なさった件についても」
叔母の顔色が変わった。
「自称だなんて、人聞きの悪い」
「事実です」
「言葉のあやよ!」
「二度おっしゃいました」
叔母が言い返そうとしたところで、叔父が手を上げた。
「エレノア」
低い声だった。
「一族に余計なことを言う必要はない」
「余計なことではありません」
「屋敷内の些細な行き違いだ」
「王宮と社交界で起きています」
叔父の目が細くなる。
「話を大きくするな」
「大きくしたのは、叔父様たちです」
静かな言葉。
食堂が凍る。
セシリアが椅子を鳴らして立ち上がった。
「お姉様は、私が殿下と踊ったのがそんなに悔しいのですか?」
エレノアは首を横に振る。
「いいえ」
「では、どうして何度も私を男爵令嬢だなんて言うのです!」
「あなたが男爵令嬢だからです」
セシリアの目に涙が浮かぶ。
「ひどい……」
叔母が娘の肩を抱いた。
「可哀想に。公爵家のために頑張っているのに」
エレノアは、二人を静かに見つめる。
泣く。
怒る。
家族を持ち出す。
同情を求める。
だが、それでは身分は変わらない。
叔父がゆっくりと立ち上がった。
「エレノア。私が一族へ説明する」
「どのように?」
「後見人として、公爵家のために必要な社交を行っている、と」
「セシリアを公爵令嬢として扱わせたことも?」
「同じ血だ。細かく区別する必要はない」
「あります」
即答だった。
「公爵令嬢とは、公爵家直系の令嬢、または当主が正式に認めた者を指します。セシリアに、その資格はありません」
叔父の顔が赤くなる。
「資格、資格と……!」
声が荒くなる。
「私はお前の父の弟だぞ!」
「はい」
「私にも、グランディアの血が流れている!」
「叔父様は、アルベルト男爵家の当主です」
その一言で、叔父の口が閉じた。
男爵。
その言葉が、彼には屈辱なのだろう。
けれど、それが事実だ。
昼食は、気まずい空気のまま終わった。
午後になると、さらに二通の手紙が届いた。
ひとつは一族長老から。
もうひとつは、王宮記録局からだった。
ルークが王宮からの封書を開く。
「王宮記録局より、確認依頼でございます」
「読み上げてください」
「王宮舞踏会にて、セシリア・フォン・グランディアを名乗る者あり。王宮登録上、該当者なし。身分確認を求む」
部屋の空気が変わった。
ついに、王宮側も正式に動いた。
エレノアは手紙を受け取る。
「返答します」
「どのように?」
「セシリアは、アルベルト男爵家令嬢。グランディア公爵家の令嬢として登録した事実はない、と」
「承知いたしました」
次に、長老からの手紙を開く。
そこには、重い筆致でこう記されていた。
――一族会議を開く必要あり。
エレノアはしばらく文面を見つめた。
いよいよだった。
叔父一家は、まだ自分たちの嘘が軽いものだと思っている。
見栄。
社交上の方便。
家族だから許される曖昧さ。
だが、一族は違う。
王宮は違う。
記録は違う。
「ルーク」
「はい」
「一族会議の準備を」
老執事は深く頭を下げた。
「承知いたしました」
夕暮れ。
廊下の向こうで、セシリアの声が聞こえた。
「お父様、一族会議って何ですの?」
叔父の声は低い。
「気にするな。私が何とかする」
叔母が不安そうに言う。
「でも、王宮まで問い合わせてきたのでしょう?」
「黙れ」
苛立った声。
「ここで怯めば、すべて失う」
エレノアは、扉のこちら側で静かに目を伏せた。
すべて失う。
その言葉だけは正しかった。
ただし、失うのはこれからだ。
名も。
財産も。
居場所も。
家族という言い訳も。
エレノアは執務室に戻り、記録簿の新しい頁を開いた。
――分家より正式な問い合わせ。王宮記録局より身分確認。長老より一族会議要請。
ペンを置く。
インクは、すぐに乾いた。
薔薇の咲く庭に、夕闇が落ちていく。
静かな戦いは、次の段階へ進んだ。
もう、屋敷の中だけでは終わらない。
叔母が「私は公爵夫人よ」と名乗った翌日。
公爵邸には、朝から妙な静けさがあった。
使用人たちは普段通りに動いている。
だが、誰も余計なことを言わない。
玄関ホールで起きたことを、皆が覚えているのだ。
エレノアは執務室で、昨日の記録を確認していた。
ルークが読み上げる。
「男爵夫人、玄関ホールにて二度、自身を公爵夫人と発言」
「証人は?」
「侍女三名、従僕二名、門番一名、荷運び人二名。合計八名でございます」
「十分です」
エレノアは静かに頷いた。
そのとき、扉が叩かれる。
入ってきた若い従僕が、銀盆に手紙を三通載せていた。
「公爵様。分家の方々より、お手紙が届いております」
ルークの表情がわずかに変わる。
「分家から?」
エレノアは一通目を手に取った。
封蝋には、グランディア公爵家の分家筋にあたる侯爵家の紋章が押されている。
開封する。
文面は短かった。
――王宮舞踏会にて、アルベルト男爵家令嬢がグランディア公爵令嬢を名乗ったとの噂あり。事実確認を求む。
エレノアは二通目を開く。
――男爵夫人が公爵夫人を自称していると聞く。これは一族の許可によるものか。
三通目。
――公爵家の名が不当に扱われているならば、看過できぬ。
エレノアは手紙を机に並べた。
「早いですね」
ルークが静かに言う。
「王宮での一件が広まりましたから」
「一族も動きますな」
「ええ」
エレノアは窓の外を見る。
朝の光が薔薇に落ちている。
「当然です。これは、私だけの問題ではありません」
グランディア公爵家は、ひとつの屋敷だけで成り立つものではない。
本家。
分家。
一族の歴史。
そのすべての上に、今の名がある。
叔父一家が勝手に公爵家を名乗るということは、エレノアだけでなく、一族全体の名を傷つける行為だった。
「返書を」
「内容は?」
「事実確認中。ただし、正式な代理人、または公爵令嬢としての任命は一切していない、と」
「承知いたしました」
ルークが一礼する。
その日の昼。
食堂では、叔父一家がいつも通り席についていた。
いや、いつも以上に堂々としていた。
叔父は上座に座り、叔母はその隣。
セシリアは新しい髪飾りをつけて、王宮舞踏会の余韻に浸っているようだった。
「お父様、次に殿下にお会いする機会はいつかしら」
「そう遠くはないだろう」
叔父が満足げに答える。
「王太子殿下も、セシリアに興味を持たれたようだった」
「やっぱり」
セシリアが頬を染める。
「私、公爵令嬢として恥ずかしくないようにしなければ」
エレノアは席についた。
ルークが背後に控える。
「叔父様」
「なんだ」
「一族の分家から、問い合わせが来ています」
叔父の手が止まった。
叔母も顔を上げる。
「問い合わせ?」
「王宮舞踏会でのセシリアの名乗りについてです」
セシリアの顔が少し曇る。
「また、その話ですか」
「はい」
エレノアは淡々と続ける。
「それから、叔母様が公爵夫人を自称なさった件についても」
叔母の顔色が変わった。
「自称だなんて、人聞きの悪い」
「事実です」
「言葉のあやよ!」
「二度おっしゃいました」
叔母が言い返そうとしたところで、叔父が手を上げた。
「エレノア」
低い声だった。
「一族に余計なことを言う必要はない」
「余計なことではありません」
「屋敷内の些細な行き違いだ」
「王宮と社交界で起きています」
叔父の目が細くなる。
「話を大きくするな」
「大きくしたのは、叔父様たちです」
静かな言葉。
食堂が凍る。
セシリアが椅子を鳴らして立ち上がった。
「お姉様は、私が殿下と踊ったのがそんなに悔しいのですか?」
エレノアは首を横に振る。
「いいえ」
「では、どうして何度も私を男爵令嬢だなんて言うのです!」
「あなたが男爵令嬢だからです」
セシリアの目に涙が浮かぶ。
「ひどい……」
叔母が娘の肩を抱いた。
「可哀想に。公爵家のために頑張っているのに」
エレノアは、二人を静かに見つめる。
泣く。
怒る。
家族を持ち出す。
同情を求める。
だが、それでは身分は変わらない。
叔父がゆっくりと立ち上がった。
「エレノア。私が一族へ説明する」
「どのように?」
「後見人として、公爵家のために必要な社交を行っている、と」
「セシリアを公爵令嬢として扱わせたことも?」
「同じ血だ。細かく区別する必要はない」
「あります」
即答だった。
「公爵令嬢とは、公爵家直系の令嬢、または当主が正式に認めた者を指します。セシリアに、その資格はありません」
叔父の顔が赤くなる。
「資格、資格と……!」
声が荒くなる。
「私はお前の父の弟だぞ!」
「はい」
「私にも、グランディアの血が流れている!」
「叔父様は、アルベルト男爵家の当主です」
その一言で、叔父の口が閉じた。
男爵。
その言葉が、彼には屈辱なのだろう。
けれど、それが事実だ。
昼食は、気まずい空気のまま終わった。
午後になると、さらに二通の手紙が届いた。
ひとつは一族長老から。
もうひとつは、王宮記録局からだった。
ルークが王宮からの封書を開く。
「王宮記録局より、確認依頼でございます」
「読み上げてください」
「王宮舞踏会にて、セシリア・フォン・グランディアを名乗る者あり。王宮登録上、該当者なし。身分確認を求む」
部屋の空気が変わった。
ついに、王宮側も正式に動いた。
エレノアは手紙を受け取る。
「返答します」
「どのように?」
「セシリアは、アルベルト男爵家令嬢。グランディア公爵家の令嬢として登録した事実はない、と」
「承知いたしました」
次に、長老からの手紙を開く。
そこには、重い筆致でこう記されていた。
――一族会議を開く必要あり。
エレノアはしばらく文面を見つめた。
いよいよだった。
叔父一家は、まだ自分たちの嘘が軽いものだと思っている。
見栄。
社交上の方便。
家族だから許される曖昧さ。
だが、一族は違う。
王宮は違う。
記録は違う。
「ルーク」
「はい」
「一族会議の準備を」
老執事は深く頭を下げた。
「承知いたしました」
夕暮れ。
廊下の向こうで、セシリアの声が聞こえた。
「お父様、一族会議って何ですの?」
叔父の声は低い。
「気にするな。私が何とかする」
叔母が不安そうに言う。
「でも、王宮まで問い合わせてきたのでしょう?」
「黙れ」
苛立った声。
「ここで怯めば、すべて失う」
エレノアは、扉のこちら側で静かに目を伏せた。
すべて失う。
その言葉だけは正しかった。
ただし、失うのはこれからだ。
名も。
財産も。
居場所も。
家族という言い訳も。
エレノアは執務室に戻り、記録簿の新しい頁を開いた。
――分家より正式な問い合わせ。王宮記録局より身分確認。長老より一族会議要請。
ペンを置く。
インクは、すぐに乾いた。
薔薇の咲く庭に、夕闇が落ちていく。
静かな戦いは、次の段階へ進んだ。
もう、屋敷の中だけでは終わらない。
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