ラブホオーナーは愛しの彼女を溺愛したくて仕方がない

九条 いち

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瀬崎

ストップ

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「こんなにしてるのに……」

「! ……凪、あんま煽らんでくれ」


手を掴まれ、ズボンから手を離される。

下も反応しているのに、彼がどうしてしたくないのかさっぱりわからなかった。

そんなに嫌なのだろうか。


「……私なんかと、したくない、ですよね」


目頭が熱くなる。

私は顔が見えないように彼の厚い胸に顔をうずめる。

ダメだ。

泣いたらめんどくさい女だと思われてしまう。

出てきそうになる涙を堪えながら、何もないかのように声を出す。


「すいません。付き合わせちゃって。ありがとうございました。気持ちよかったで――」


瀬崎さんに顔を上に向けられる。

彼の真っすぐな目と合い、目を逸らせない。


「……泣いてるんか」


聞かれてギクッとしたが、まだ涙は出ていない。

大丈夫だと自分に言い聞かせて答える。


「いいえ。たくさんイっちゃいましたから。その時に潤んだんだと思います。」


彼は眉間にしわを寄せる。

いつもよりしわが濃く深く刻まれこまれている。

彼がそうするのは、不快な時か考えこんでいる時。

いつもは大体後者だが、今は不快だと咎められているように感じた。

嫌悪感を抱かせてしまっただろうか。それならきっと、今日でこの関係は終わってしまう。

そうでなくても、こんな風に途中で終わって次がある可能性なんてないに等しい。

それでも、瀬崎さんは私の憧れの人だ。

このままでは終わりたくない。

私はバレないように素早くシーツで涙を拭き、彼の方に向き直す。


「それじゃあ、目隠しをしましょう」


私は起き上がり、ベッドの近くにあるテーブルの上にあったタオルを手に取る。

昨日の夜、畳んでそのまま机の上に置き忘れていたんだと思う。

いつもはズボラな自分が嫌になるが、この時だけはありがたく感じた。


「なんでや」


彼のお腹の辺りに体重をかけないようにして跨る。

縦に丸めたタオルを彼の目に覆い、後ろで縛る。

瀬崎さんは特に抵抗もせず従ってくれるが、困惑していた。

私の意図を掴みかねているようだった。

彼の怒張をジーンズ越しにさする。


「瀬崎さん、私は瀬崎さんとしたいです」


彼の怒張がピクピクと反応するのが手から伝わってきて安心する。


「瀬崎さんの身体もしたそうです。でも、瀬崎さんの気持ちは、そうじゃないですよね」

「っ! そんなことは――「いいんです!」

「瀬崎さんは好きな人を想像しててください」

「凪……」

「大丈夫です。瀬崎さんは気持ちよくなってください、さっきのお礼です」


ベルトを外し、ジーンズの前をくつろげる。

彼が起き上がり、私の肩を掴む。彼の目にはタオルはなかった。


「凪、そんなことしたらいかん。自分が傷つくだけや」

「……大丈夫ですよ」

「俺は嫌や」


……瀬崎さんにはっきりと嫌だと言われてしまった。


「凪、大丈夫か」


彼は枕元に振り返り、さっき外したタオルを取って私の目元を拭う。



ああ、涙抑えきれなかったんだ。


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