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花言葉と純白のレディー
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宮廷に着くと門番が案内状の確認をして、許可を出すと前の人間に並び入るよう促した。
待合室といってもそこですら大きなホールでエマは緊張していたが、横にいるグレーのドレスに身を包む母が「大丈夫よ」と安心させてくれる。
様々な白いドレスで着飾った騒がしい少女たちの中で、見知った顔を見つけて母の了解を得ると駆け寄った。
こうなってしまえば家庭教師の「慎ましくですよ!」など言う言葉はどこかへ吹き飛ぶ。
「アイヴィー!」
「エマさん、お久しぶりです!」
王国屈指の高嶺の花である女神、アイヴィーが一際輝いた笑顔でエマの手を取る。
「貴女は本当に綺麗ね」
「エマさんこそ、洗練された華やかさが。やはり婚約者様のおかげもおありでしょうか?」
「ふふ、そうかもしれないわね」
「ご結婚も間近なのでは?」
それを聞いて頬を染めていると、背後から公爵令嬢のエルシーまでやって来た。
「御機嫌よう、美しいお二人方!」
「まあまあ、エルシー様。お声掛けありがとうございます。お噂は兼兼、何でもお茶会の女王様なのだとか?」
「いやだわエマ、貴女のおかげでしょう?」
「ほんと、エルシー様には敵いませんわ」
時が経てばそれも笑い話になろう。
あの時の卒業パーティーでの慈悲深い行いから、噂好きの令嬢、そして何も知らぬ男性からはアプローチを掛けられていると聞く。
するとそんなエルシーが小声であれからを教えてくれた。
「当事者の貴女だから教えておくわ。あれから彼女、領地でも更に田舎にある屋敷で療養するのですって。何でも自分から懇願したそうよ」
「何故そこまでお詳しくていらっしゃいますの?」
「あら。物語はきちんと最後まで読むものでしょう?」
当然のように言ってのける。
貴族の好奇心とは時に残酷だと思いながらも、「確かにあれほどのことをしてしまえばね」などと感じてしまうエマもまた、貴族として生きる人間の一人だった。
「それではまた後でね!」
エルシーの言葉に二人は簡易的な礼を取った。
そこへアイヴィーが耳打ちをする。
「聞いた話に寄りますと、それはもう厳しい洗練をされたようですよ、繋がってらした方々にも。何だかんだと申されておりましても、エルシー様も大切なご友人のエマさんをお守りしたかったのでしょうね。本当に大変でしたね」
「まあ……どうりであそこの公爵家のご令嬢方が大人しいと」
完全にエルシーの娯楽を満たすことに使われた彼女。
その娯楽に自分も含まれているのだろうが、感謝せざるを得なかった。あの時に決着を付けなければ、今日この日に起こっていたことだったのかもしれないのだから……。
エマは少し身震いをした。
「あらあそこ、ウィロウ様ではないでしょうか?」
「ほんと、嫌悪感に歪める顔でも見に行きましょうよ」
二人は何事もなかったように、くすくすと笑って彼女の側まで歩み寄る。
「御機嫌よう、ウィロウ」
次代の社交界の花と称され聖女のように慈悲深く儚げな笑みで振り向くと、一瞬で鬱陶しそうな目付きに一変させた。
「何よ、エマじゃない。しかもアイヴィーまで連れて……嫌がらせ?」
「本日もお美しいですウィロウ様」
「ふん、アイヴィー。貴女が言うと嫌味にしか聞こえないわ」
この場、もはや母親同士とその娘同士が分かれて挨拶を交わしながら待機する中、取り繕う必要もないウィロウが自身の存在を脅かす二人の登場にあからさまな顔をしてそう言葉を吐いた。
気兼ねない談笑をしていると、何やら入口の方が騒がしい。
三人は一体何事だと目を凝らしてみると……。
周りに色めいた貴族令嬢を侍らし、「この花を貰って下さいまし」、「ずるいわ、私が先よ!」と抱えきれない花束を持って現れる少女がいた。
「何あれ舞台女優じゃない」
ウィロウが蔑みを含めて言うと、花束で前が見えないのか横にした時。
エマが目を輝かせた。
待合室といってもそこですら大きなホールでエマは緊張していたが、横にいるグレーのドレスに身を包む母が「大丈夫よ」と安心させてくれる。
様々な白いドレスで着飾った騒がしい少女たちの中で、見知った顔を見つけて母の了解を得ると駆け寄った。
こうなってしまえば家庭教師の「慎ましくですよ!」など言う言葉はどこかへ吹き飛ぶ。
「アイヴィー!」
「エマさん、お久しぶりです!」
王国屈指の高嶺の花である女神、アイヴィーが一際輝いた笑顔でエマの手を取る。
「貴女は本当に綺麗ね」
「エマさんこそ、洗練された華やかさが。やはり婚約者様のおかげもおありでしょうか?」
「ふふ、そうかもしれないわね」
「ご結婚も間近なのでは?」
それを聞いて頬を染めていると、背後から公爵令嬢のエルシーまでやって来た。
「御機嫌よう、美しいお二人方!」
「まあまあ、エルシー様。お声掛けありがとうございます。お噂は兼兼、何でもお茶会の女王様なのだとか?」
「いやだわエマ、貴女のおかげでしょう?」
「ほんと、エルシー様には敵いませんわ」
時が経てばそれも笑い話になろう。
あの時の卒業パーティーでの慈悲深い行いから、噂好きの令嬢、そして何も知らぬ男性からはアプローチを掛けられていると聞く。
するとそんなエルシーが小声であれからを教えてくれた。
「当事者の貴女だから教えておくわ。あれから彼女、領地でも更に田舎にある屋敷で療養するのですって。何でも自分から懇願したそうよ」
「何故そこまでお詳しくていらっしゃいますの?」
「あら。物語はきちんと最後まで読むものでしょう?」
当然のように言ってのける。
貴族の好奇心とは時に残酷だと思いながらも、「確かにあれほどのことをしてしまえばね」などと感じてしまうエマもまた、貴族として生きる人間の一人だった。
「それではまた後でね!」
エルシーの言葉に二人は簡易的な礼を取った。
そこへアイヴィーが耳打ちをする。
「聞いた話に寄りますと、それはもう厳しい洗練をされたようですよ、繋がってらした方々にも。何だかんだと申されておりましても、エルシー様も大切なご友人のエマさんをお守りしたかったのでしょうね。本当に大変でしたね」
「まあ……どうりであそこの公爵家のご令嬢方が大人しいと」
完全にエルシーの娯楽を満たすことに使われた彼女。
その娯楽に自分も含まれているのだろうが、感謝せざるを得なかった。あの時に決着を付けなければ、今日この日に起こっていたことだったのかもしれないのだから……。
エマは少し身震いをした。
「あらあそこ、ウィロウ様ではないでしょうか?」
「ほんと、嫌悪感に歪める顔でも見に行きましょうよ」
二人は何事もなかったように、くすくすと笑って彼女の側まで歩み寄る。
「御機嫌よう、ウィロウ」
次代の社交界の花と称され聖女のように慈悲深く儚げな笑みで振り向くと、一瞬で鬱陶しそうな目付きに一変させた。
「何よ、エマじゃない。しかもアイヴィーまで連れて……嫌がらせ?」
「本日もお美しいですウィロウ様」
「ふん、アイヴィー。貴女が言うと嫌味にしか聞こえないわ」
この場、もはや母親同士とその娘同士が分かれて挨拶を交わしながら待機する中、取り繕う必要もないウィロウが自身の存在を脅かす二人の登場にあからさまな顔をしてそう言葉を吐いた。
気兼ねない談笑をしていると、何やら入口の方が騒がしい。
三人は一体何事だと目を凝らしてみると……。
周りに色めいた貴族令嬢を侍らし、「この花を貰って下さいまし」、「ずるいわ、私が先よ!」と抱えきれない花束を持って現れる少女がいた。
「何あれ舞台女優じゃない」
ウィロウが蔑みを含めて言うと、花束で前が見えないのか横にした時。
エマが目を輝かせた。
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