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花言葉と純白のレディー
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それに気付いた少女が、
「エマ!」
満面の笑みで駆け寄り二人は抱擁した。
アメリアである。
「どうしたの貴女、凄い花束よ!」
「女学校で仲良くなった皆が勝手に挿して行くの!」
振り向いてお得意のウインクをお礼に一つ。
そうすれば「きゃあ!」と一際目を蕩けさせた少女たちが喜びに声を上げる。
「こちらこの度、男爵位を叙爵となったご令嬢のアメリア・ジョンソンよ。幼馴染なの」
エマの紹介に疑わしい目を向けていたウィロウが目の色を変えた。
「まあっ! あの一等地に素晴らしい装飾店を構える!?」
それを聞いたアメリアが彼女を真っ直ぐに見つめて一礼すると、
「これほど麗しいご令嬢にまで存じていただけているだなんて、至極光栄ですわ。お近付きの印にお受け取り下さい。貴女の方がよくお似合いですレディー」
自身の花束から一本抜いて差し出した。
満更でもないウィロウが少し頬を染める。
「……ありがとう、フランネルフラワーね。気に入ったわ」
「高潔、誠実」それがこの花の花言葉である。
つまりはその言葉が誠実であることを表しており、ウィロウはその辺の男性よりもよっぽど紳士的な態度でロマンチックなアメリアをすぐに気に入った。
「アメリア、こちらはアイヴィーよ」
「初めましてアメリア様、どうか仲良くして下さいね」
「はい、アイヴィー様。エマのご友人方はお美しい方々ばかりですね。よろしくお願い致します」
にこにこと和やかな会話を楽しんでいると、重厚感ある扉が閉まり、これから始まる合図に皆がそれぞれの場所へと戻る。
その時アメリアがエマの腕を組んだ。
「あの時は少し意地悪しちゃったけれど……二人の気持ちが通じ合って本当に嬉しいと思っているの。やっとくっ付いたってね!」
「アメリア……」
「エマ、幸せになってね」
そんな風に真剣に告げるので、エマは涙ぐみながらも恨み言を口にした。
「嬉しい。嬉しいけど、何で今言うのよぉ。お化粧直しに行けないのにっ」
「あはは!」
満足そうに笑うアメリアが「またね」と残して離れて行く。
(絶対に狙って言ったのね!)
しん、と静まり返った室内で、これから一人ずつ名を呼ばれ王族への拝謁が行われるのだからと、気持ちと未だに揺れている涙腺を落ち着かせた。
繊細なデザインの絨毯を踏みしめ、細やかな細工の一巻した階段を上ると更に重厚感ある両扉脇には騎士が立つ。
張り詰める胸の高鳴りと息苦しさに深く呼吸をして逃していると、ついにエマの名前が呼ばれ入場を促された。
謁見の間の天井には天使と女神が微笑み合い戯れた姿が一面に描かれており、真っ白な壁には金に縁取られた大きな鏡が、これまでの成長を映すよう並ぶ。赤模様の絨毯の敷かれた先にはこの国の国王陛下と女王陛下がそれぞれ壇上に座っていた。
騎士が両脇に並ぶ間を歩み途切れたところで、エマはそこへ片膝をついて最上の礼をする。
名を呼ばれ顔を上げると、目元に皺を寄せ優しげな笑みを浮かべた女王が一言。
「祝福しましょう。王国の立派なレディーとして、美しく誠実でいるよう努めなさい」
それを聞いてエマはまた優美な所作で頭を下げた。
これで拝謁は以上となる。
この短い儀式を済ますと、来た扉とは別に案内をされ、豪奢な通路を通り階段を降りる。
次に待っていたのは壮麗で豪華絢爛な舞踏会の会場だ。
ここからは父の待つ観覧スペースで見守るため、母は待ち構えていたアランへとエスコートを任せた。
「エマ、おめでとう。とても綺麗だ」
「アラン……」
サイドの髪を耳に掛け、上品に着飾ったアランもそれは素敵だが。よく知る彼の傍は心底安心して笑みが零れた。
「エマ!」
満面の笑みで駆け寄り二人は抱擁した。
アメリアである。
「どうしたの貴女、凄い花束よ!」
「女学校で仲良くなった皆が勝手に挿して行くの!」
振り向いてお得意のウインクをお礼に一つ。
そうすれば「きゃあ!」と一際目を蕩けさせた少女たちが喜びに声を上げる。
「こちらこの度、男爵位を叙爵となったご令嬢のアメリア・ジョンソンよ。幼馴染なの」
エマの紹介に疑わしい目を向けていたウィロウが目の色を変えた。
「まあっ! あの一等地に素晴らしい装飾店を構える!?」
それを聞いたアメリアが彼女を真っ直ぐに見つめて一礼すると、
「これほど麗しいご令嬢にまで存じていただけているだなんて、至極光栄ですわ。お近付きの印にお受け取り下さい。貴女の方がよくお似合いですレディー」
自身の花束から一本抜いて差し出した。
満更でもないウィロウが少し頬を染める。
「……ありがとう、フランネルフラワーね。気に入ったわ」
「高潔、誠実」それがこの花の花言葉である。
つまりはその言葉が誠実であることを表しており、ウィロウはその辺の男性よりもよっぽど紳士的な態度でロマンチックなアメリアをすぐに気に入った。
「アメリア、こちらはアイヴィーよ」
「初めましてアメリア様、どうか仲良くして下さいね」
「はい、アイヴィー様。エマのご友人方はお美しい方々ばかりですね。よろしくお願い致します」
にこにこと和やかな会話を楽しんでいると、重厚感ある扉が閉まり、これから始まる合図に皆がそれぞれの場所へと戻る。
その時アメリアがエマの腕を組んだ。
「あの時は少し意地悪しちゃったけれど……二人の気持ちが通じ合って本当に嬉しいと思っているの。やっとくっ付いたってね!」
「アメリア……」
「エマ、幸せになってね」
そんな風に真剣に告げるので、エマは涙ぐみながらも恨み言を口にした。
「嬉しい。嬉しいけど、何で今言うのよぉ。お化粧直しに行けないのにっ」
「あはは!」
満足そうに笑うアメリアが「またね」と残して離れて行く。
(絶対に狙って言ったのね!)
しん、と静まり返った室内で、これから一人ずつ名を呼ばれ王族への拝謁が行われるのだからと、気持ちと未だに揺れている涙腺を落ち着かせた。
繊細なデザインの絨毯を踏みしめ、細やかな細工の一巻した階段を上ると更に重厚感ある両扉脇には騎士が立つ。
張り詰める胸の高鳴りと息苦しさに深く呼吸をして逃していると、ついにエマの名前が呼ばれ入場を促された。
謁見の間の天井には天使と女神が微笑み合い戯れた姿が一面に描かれており、真っ白な壁には金に縁取られた大きな鏡が、これまでの成長を映すよう並ぶ。赤模様の絨毯の敷かれた先にはこの国の国王陛下と女王陛下がそれぞれ壇上に座っていた。
騎士が両脇に並ぶ間を歩み途切れたところで、エマはそこへ片膝をついて最上の礼をする。
名を呼ばれ顔を上げると、目元に皺を寄せ優しげな笑みを浮かべた女王が一言。
「祝福しましょう。王国の立派なレディーとして、美しく誠実でいるよう努めなさい」
それを聞いてエマはまた優美な所作で頭を下げた。
これで拝謁は以上となる。
この短い儀式を済ますと、来た扉とは別に案内をされ、豪奢な通路を通り階段を降りる。
次に待っていたのは壮麗で豪華絢爛な舞踏会の会場だ。
ここからは父の待つ観覧スペースで見守るため、母は待ち構えていたアランへとエスコートを任せた。
「エマ、おめでとう。とても綺麗だ」
「アラン……」
サイドの髪を耳に掛け、上品に着飾ったアランもそれは素敵だが。よく知る彼の傍は心底安心して笑みが零れた。
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