魔法少年−幼馴染の死の真相を知るため、男の俺が魔法少年?になった件

神町 恵

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第1章 魔法少年

崩壊

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その翌日――。
母が沈んだ声で俺の部屋に入ってきた。

「圭斗……あのね……菜月ちゃんが……」

言葉の続きを待つ間、胸の奥で嫌な予感が広がっていった。

「……昨日、急に亡くなったの。菜月ちゃんのお母さんから電話があって……」

――何を言っているんだ?
俺は思わず耳を疑った。

「……は?」

頭が真っ白になった。
意味が分からない。いや、理解を拒んでいた。

昨日、確かに会ったばかりだ。
笑っていたのに。
最後は、バイバイって言って……なのに。

「……嘘、だろ……?」

母が困惑した表情で俺を見ていたが、その顔も遠く霞んでいた。
現実が音を立てて崩れていく感覚だけが、俺を押し潰していった。



葬式の日。
冷たい雨がしとしとと降り続き、傘を打つ音が重苦しく響いていた。

俺は祭壇に置かれた菜月の遺影の前に立ち尽くしていた。
写真の中の彼女は笑っている。昨日と変わらない、あの笑顔で――。

だが、もうそこにはいない。
棺の中には動かぬ菜月が眠っている。

握りしめた拳が震える。喉が焼けつくほど痛いのに、涙は出なかった。

「死因は……不明だって」
「持病もなかったのにね。可哀想に……」

親族らしき人たちの囁き声が耳に刺さる。
その声は冷たく無機質で、現実感を奪っていく。

菜月の母親は、娘の写真を抱きしめて泣き崩れていた。
けれどその光景さえ、俺にはどこか他人事のように感じられた。

――全部、悪い夢なんじゃないのか。
そう思わずにはいられなかった。

それでも時間は残酷に流れていき、葬式は終わった。

「先に帰ってて。……ちょっと一人になりたい。傘は持ってるから」

心配そうに見てくる両親にそう告げると、母は小さく「わかった」と答えて帰っていった。

残された俺は、雨の降りしきる中をただ歩いた。
川の土手に差しかかったとき、胸の奥に押し込めていたものが一気に溢れ出した。

「……っ……ああああああああーーーっ!!!」

叫び声は雨音にかき消され、それでも喉が裂けるほどに泣き叫んだ。
菜月を失った悲しみと、もっと何かできたはずだという後悔が、全身を引き裂いていく。



それからの日々は、色を失った世界だった。
学校には行かず、飯も喉を通らなかった。
部屋のカーテンは閉じ切ったまま、携帯の電源も入れない。

暗闇の中、浮かんでくるのは菜月の声、表情、最後の笑顔ばかり。
瞼を閉じても、その姿は鮮明に焼き付いて消えなかった。

「……なにがあったんだよ、菜月……」

答えなんて返ってこないと分かっていても、俺は何度も問いかけていた。



あの日から数週間が経ったある夜。
重苦しい沈黙の部屋に、不意に「コン、コン」と音が響いた。

「……風か……?」

重い身体を引きずって窓際へ向かい、カーテンを開けた瞬間――。

そこに立っていたのは、見知らぬ少女だった。

雨で濡れた黒髪を乱暴にかき上げ、目つきは鋭い。
その瞳はまるで俺の奥底を見透かすように、暗闇の中で静かに光っていた。

「佐々木圭斗、だな?」

心臓が跳ね上がる。

「……誰だよ」

窓を隔てて問うと、少女は真っ直ぐに俺を射抜くように言った。

「私は――長瀬咲希。菜月の親友。……あんたに話さなきゃいけないことがある」

冷たい雨の夜、俺と“彼女”の出会いが始まった。
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