異世界の神様

神町 恵

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第3章 魔法世界

再会

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神庁の会議室に張り詰めていた空気は、長丁場の面接によりすでにやや緩み始めていた。
神であるケイを中心に、左右に座るのは兵器の神・アキラ、そして元ゾルア帝国の黒体傭兵であり現在は用心棒のキラ・ウルフ。

三人の面接官は、眼前の面接票と評価シートを前に、疲労の色を隠しきれずにいた。

 

「……ハァ……」

アキラの深いため息に、ペンが止まる。

「ため息なんて吐いてどうした?」

ケイが問うと、アキラは淡々と答えた。

「能力面では合格圏内の者もいた。だが……**“お前と合う人間”**という意味では、まだ一人もいない。どう見ても、あの性格には耐えられそうにない」

「それって褒めてる?」

ケイが苦笑する傍らで、キラも一言。

「全員、生理的に受け付けない」

「そっちは全否定かよ……」

ケイが肩をすくめた瞬間だった。

 

──コン、コン、コン。

扉を叩く音が三度響く。
ケイが姿勢を整え、「どうぞ」と静かに告げた。

開かれた扉の先から、一人の少女が歩み入ってくる。
黒のスーツに身を包み、凛とした態度で一礼し、口を開く。

「失礼します」

 

その瞬間、ケイの表情が凍りついた。

視界に映った少女の顔――どこか懐かしい面影。
その瞳、その髪、その姿勢。そのすべてが、ケイの中の記憶と一致した。

(……一之瀬、渚……!?)

彼女はかつて、ケイが17625次元12星で救済神務を行った際に出会い、救い出した少女だった。
人権を剥奪され、名も尊厳も失いながら、それでも強く生きようとしていた少女。

(なぜここに……!?)

動揺を隠しつつ、ケイは自然な振る舞いを装い、着席を促す。

「では、お名前をお願いします」

「一之瀬渚と申します。よろしくお願いいたします」

その声の落ち着きと礼儀正しさに、ケイは思わず心を揺さぶられた。

(……まさか、サファ連邦に来ていたなんて……)

そして彼は、面接資料に目を落とした瞬間、二度目の驚愕に見舞われる。

 

「――いや、資格多すぎだろ……」

思わず心の中でつぶやく。

(TOEIC800点、英検2級、サファ語まで修得……それに秘書検定1級、ITパスポート……)

(これ、経った一年間で全部取ったのか?)

「……勉強は得意な方ですか?」

ケイが何気なく尋ねると、渚は笑みを浮かべて答える。

「高校在学中は学年一桁台でした」

(確か、彼女の高校って偏差値67だったよな……)

ケイは背筋に冷たいものを感じながらも、面接を進める。
志望動機、自己PR……彼女の言葉は明確で、説得力に満ちていた。

明らかに、どの応募者よりも飛び抜けていた。

 

すべての面接が終了し、三人は評価資料を並べていた。

「さて……良い感じの人、いたか?」

ケイの問いに、アキラが静かに応える。

「最も秘書に適任なのは……一之瀬渚さんだと俺は思う。資料だけでなく、面接での態度、受け答え、すべてにおいて抜きん出ていた」

「俺もだな。生理的に受け付ける唯一の存在だった」

キラの珍しく同意する発言に、ケイは視線を落とした。

 

だが、ケイの心は揺れていた。

(渚は……俺に関わってはいけない存在だ)

(あの世界で、ようやく平穏を手にしたんだ……ここに連れてきたら、また危険な目に遭うかもしれない)

――過去に失った仲間の顔が、脳裏をよぎる。
アラン。ライ。二度と戻らぬ命。
そして、また誰かを巻き込む可能性。

 

「……」

ケイは拳を握り締めた。

「一度、考えさせてくれ」

アキラとキラはうなずいた。

「最終的な決定は、お前に委ねる」

「……わかった」

そして、静かに会議室の灯が落とされた。

この選択が、未来をどう変えていくのか――
神である彼にも、それはまだ見えていなかった。
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