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転職
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メイドに連れられて、タニヤはとある部屋の前までやってきた。
「こちらでございます。どうぞ、お入りくださいませ」
メイドが扉を開けてくれたので中に入ると、そこには険しい顔をしたグリエラがいた。
グリエラの脇には二人の男もいる。彼らも怪訝な表情を浮かべていた。
「……あ、あの。どうかなさいましたか?」
タニヤは室内の者たちが醸し出す雰囲気に、不安を抱きながら声をかけた。
タニヤの存在に気がついたグリエラは、口の端を上げて意地の悪い笑顔を浮かべた。
「おや、どこの可愛らしいお嬢さんがきたのかと思ったね。ほら、どうだい。私の考えは間違っていなかったろう?」
グリエラの言葉に、タニヤに続いて室内に入ってきたメイドが激しく頷いている。
グリエラの脇にいた線の細い色白の男も、神妙に頷く。
しかし、がっしりとした身体つきの色黒の男は、困ったように頭を掻いていた。
「……え、あの。どういうことですか?」
室内の人々の態度に、タニヤは困惑しながら尋ねた。
クヌートも周りをきょろきょろと見てから、首を傾げて不思議そうな表情をしている。
「あの男ども、タニヤ様にはこの服は似合わないんじゃないかって言っていたのです。せっかくグリエラ様が見立ててくださったというのに、失礼しちゃいますよね!」
「こらこら、そんなことはいいのだよ。さあ、こちらにおいで」
タニヤの質問に、メイドが憤慨した様子で答えた。すると、グリエラがすぐにメイドを制してタニヤを手招きする。
タニヤは促されるままグリエラの元まで近づいたが、そばにいる男二人に向かって声をかけた。
「……に、似合いませんよね。すみません、服が乾いたらすぐに着替えますから」
「いいえ、とても良くお似合いですよ。せっかくグリエラ様が選んでくださったのですから、すぐに着替えるなんて言わずそのままお過ごしくださいね」
頭を下げて詫びたタニヤに、色白の男の方が優しく声をかけてきた。男が顔を上げてくださいというのでその通りにすると、今度は色黒の男の方が口を開いた。
「そうだぞ。俺らの仲間になるならあんなみすぼらしい姿をされてちゃ困るしな。汚ねえ服なんて捨てちまえよ」
色黒の男がそう言った途端、すぱんと乾いた音が室内に響いた。
メイドが怒りの形相で男の頭を引っ叩いたのだ。
「これだからガサツな男はいやよ。素直に綺麗、可愛いって言えないのなら、せめて黙っていてくださいませ」
「はあ? べつに似合わないって言っているわけじゃねえだろ」
「似合っていると思うのならそう言えばよいだけなのです! わざわざみすぼらしいとか言わなくていいのですわ」
タニヤはメイドと男のやり取りに圧倒されてしまった。
二人の間でおろおろしていると、グリエラが手を叩いた。
「いい加減におし。話ができないだろう?」
グリエラがそう声をかけると、二人はすぐに大人しくなった。
「さてタニヤ。さっきのモンスターの話の裏を取ってきたよ」
グリエラは何事もなかったかのように話をはじめた。彼女は真面目な顔をしてタニヤに書類を差し出してくる。
「……あ、はい。もう調べがついていたのですね」
タニヤは表情を引き締めて、差し出された書類を受け取った。
その書類にタニヤが目を通していると、クヌートが訝しんだ様子で書類を覗きこんできた。
「こちらでございます。どうぞ、お入りくださいませ」
メイドが扉を開けてくれたので中に入ると、そこには険しい顔をしたグリエラがいた。
グリエラの脇には二人の男もいる。彼らも怪訝な表情を浮かべていた。
「……あ、あの。どうかなさいましたか?」
タニヤは室内の者たちが醸し出す雰囲気に、不安を抱きながら声をかけた。
タニヤの存在に気がついたグリエラは、口の端を上げて意地の悪い笑顔を浮かべた。
「おや、どこの可愛らしいお嬢さんがきたのかと思ったね。ほら、どうだい。私の考えは間違っていなかったろう?」
グリエラの言葉に、タニヤに続いて室内に入ってきたメイドが激しく頷いている。
グリエラの脇にいた線の細い色白の男も、神妙に頷く。
しかし、がっしりとした身体つきの色黒の男は、困ったように頭を掻いていた。
「……え、あの。どういうことですか?」
室内の人々の態度に、タニヤは困惑しながら尋ねた。
クヌートも周りをきょろきょろと見てから、首を傾げて不思議そうな表情をしている。
「あの男ども、タニヤ様にはこの服は似合わないんじゃないかって言っていたのです。せっかくグリエラ様が見立ててくださったというのに、失礼しちゃいますよね!」
「こらこら、そんなことはいいのだよ。さあ、こちらにおいで」
タニヤの質問に、メイドが憤慨した様子で答えた。すると、グリエラがすぐにメイドを制してタニヤを手招きする。
タニヤは促されるままグリエラの元まで近づいたが、そばにいる男二人に向かって声をかけた。
「……に、似合いませんよね。すみません、服が乾いたらすぐに着替えますから」
「いいえ、とても良くお似合いですよ。せっかくグリエラ様が選んでくださったのですから、すぐに着替えるなんて言わずそのままお過ごしくださいね」
頭を下げて詫びたタニヤに、色白の男の方が優しく声をかけてきた。男が顔を上げてくださいというのでその通りにすると、今度は色黒の男の方が口を開いた。
「そうだぞ。俺らの仲間になるならあんなみすぼらしい姿をされてちゃ困るしな。汚ねえ服なんて捨てちまえよ」
色黒の男がそう言った途端、すぱんと乾いた音が室内に響いた。
メイドが怒りの形相で男の頭を引っ叩いたのだ。
「これだからガサツな男はいやよ。素直に綺麗、可愛いって言えないのなら、せめて黙っていてくださいませ」
「はあ? べつに似合わないって言っているわけじゃねえだろ」
「似合っていると思うのならそう言えばよいだけなのです! わざわざみすぼらしいとか言わなくていいのですわ」
タニヤはメイドと男のやり取りに圧倒されてしまった。
二人の間でおろおろしていると、グリエラが手を叩いた。
「いい加減におし。話ができないだろう?」
グリエラがそう声をかけると、二人はすぐに大人しくなった。
「さてタニヤ。さっきのモンスターの話の裏を取ってきたよ」
グリエラは何事もなかったかのように話をはじめた。彼女は真面目な顔をしてタニヤに書類を差し出してくる。
「……あ、はい。もう調べがついていたのですね」
タニヤは表情を引き締めて、差し出された書類を受け取った。
その書類にタニヤが目を通していると、クヌートが訝しんだ様子で書類を覗きこんできた。
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