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散策
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「すごいわね。こっちは馬なのに走ってついてきているわ。すぐに追いつかれてしまいそう」
「もう少し街から離れたいので速度を上げます。――危ないので前を向いてください!」
ライラが顔を覗かせて背後を見ていると、エリクが手綱を握る手に力を入れた。二人を乗せた馬が速度を上げる。
ライラは慌てて顔を引っ込めると、彼の身体にしっかりとしがみついた。
「こんな状況ですが、今日あなたにお伝えしたかった話をしてもよろしいでしょうか?」
馬を走らせて五分ほど経った頃、エリクが真剣な様子で声をかけてきた。
彼はライラの返事を待たずに一人で勝手に話しだす。
「私が誤解だと言っていたのは、あなたのことを報告している相手についてです。元ご主人だと思っていらっしゃるのでしょう?」
そう淡々と問われて、ライラはエリクにしがみついている腕につい力が入ってしまった。
「……あら、違うのかしら?」
「私にあなたのことを監視するように命じてきたのは別のお方です。私はその方のご命令でこの地におります」
「……ふーん、そのお方って誰なのかしら?」
平静を装ってライラは尋ねた。
「第二王子殿下です」
エリクが思いがけない人物をあげたので、ライラは咄嗟に彼の顔を見上げてしまった。
てっきり今日は彼から元夫の話をされると思っていた。
なぜ王族が絡む話になるのか理解できずに顔をしかめる。
「どうしてここで殿下が出てくるのかしら?」
「どちらかといえば、私があなたにそう言いたいですよ。どうしてあなたがここで出てくるのか、と。我々が作戦活動をしている地域へ割り込んできたのは、あなたなのですからね」
エリクがもう勘弁してほしいといった様子で、深くため息をつく。
その態度にむっとしてライラは彼を睨みつけた。
「あなたの言っていることがさっぱりわからないわ」
「ここにいらっしゃったのは偶然なのでしょう。ですが、来てしまったのであれば無視するわけにはいきません」
ライラがじっとエリクの顔を見上げていると、前を向いていた彼がちらりとこちらに視線を向けてきた。
「どう対処するべきか上の方々で意見が分かれていましてね。あなたをここから追い払うか、それとも仲間に取り込むべきか」
「……なによそれ。私の知らないところで勝手にいろいろと言われていたのね」
エリクがニコリと笑って頷いてからまた前を向く。
ライラは第二王子とは面識がある。侯爵家にいたころは個人的に親しくさせていただいていた。
元冒険者という経歴が王宮内では珍しかったからだろう。
まだ若く好奇心旺盛な第二王子はライラの話を聞きたがってよく茶会に招かれた。
「あなたの言う上って、殿下とその周辺の方々ってことなのね」
「殿下はライラ殿のことを信用なさっておられます。全てを打ち明けてあなたの判断に任せるとおっしゃられているのですが……」
「殿下がいくら私を信用してくださっていても、周りの方々はそうはいかないでしょう」
「ええ、そうなのです。とくに侯爵閣下の存在がやっかいで……」
エリクが気まずそうに言った。
クロードの王宮内の立ち位置は、第二王子の周辺にいる者たちとは異なる。
王宮内では次の王に誰を推すかでいくつかの勢力に別れているのだ。
「私がここにいるとクロードが首を突っ込んでくるから、作戦とやらに支障がでると心配する方々がいらっしゃるのね」
「……概ねその通りです。話が早くて助かります」
ふと、マスターは自分を追い払いたいと思っている側の者なのではないか、とライラは思った。
ライラはすぐに頭を振ってマスターのことを考えるのはやめた。いまそれを気にしている時間はない。
まっすぐ前を向いてからエリクに質問をした。
「……その作戦って何なのかしら。殿下はここで何をなさろうとしているの?」
「殿下は……」
エリクが質問に答えようと口を開いたとき、背後から物凄い殺気を感じた。
エリクは慌てて手綱を引いて馬を止める。ライラは馬から振り落とされないように必死で彼にしがみついた。
馬が落ち着いたのでライラは顔を上げる。
すると、行先を遮るように前方に誰かが立っていた。
「もう少し街から離れたいので速度を上げます。――危ないので前を向いてください!」
ライラが顔を覗かせて背後を見ていると、エリクが手綱を握る手に力を入れた。二人を乗せた馬が速度を上げる。
ライラは慌てて顔を引っ込めると、彼の身体にしっかりとしがみついた。
「こんな状況ですが、今日あなたにお伝えしたかった話をしてもよろしいでしょうか?」
馬を走らせて五分ほど経った頃、エリクが真剣な様子で声をかけてきた。
彼はライラの返事を待たずに一人で勝手に話しだす。
「私が誤解だと言っていたのは、あなたのことを報告している相手についてです。元ご主人だと思っていらっしゃるのでしょう?」
そう淡々と問われて、ライラはエリクにしがみついている腕につい力が入ってしまった。
「……あら、違うのかしら?」
「私にあなたのことを監視するように命じてきたのは別のお方です。私はその方のご命令でこの地におります」
「……ふーん、そのお方って誰なのかしら?」
平静を装ってライラは尋ねた。
「第二王子殿下です」
エリクが思いがけない人物をあげたので、ライラは咄嗟に彼の顔を見上げてしまった。
てっきり今日は彼から元夫の話をされると思っていた。
なぜ王族が絡む話になるのか理解できずに顔をしかめる。
「どうしてここで殿下が出てくるのかしら?」
「どちらかといえば、私があなたにそう言いたいですよ。どうしてあなたがここで出てくるのか、と。我々が作戦活動をしている地域へ割り込んできたのは、あなたなのですからね」
エリクがもう勘弁してほしいといった様子で、深くため息をつく。
その態度にむっとしてライラは彼を睨みつけた。
「あなたの言っていることがさっぱりわからないわ」
「ここにいらっしゃったのは偶然なのでしょう。ですが、来てしまったのであれば無視するわけにはいきません」
ライラがじっとエリクの顔を見上げていると、前を向いていた彼がちらりとこちらに視線を向けてきた。
「どう対処するべきか上の方々で意見が分かれていましてね。あなたをここから追い払うか、それとも仲間に取り込むべきか」
「……なによそれ。私の知らないところで勝手にいろいろと言われていたのね」
エリクがニコリと笑って頷いてからまた前を向く。
ライラは第二王子とは面識がある。侯爵家にいたころは個人的に親しくさせていただいていた。
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「あなたの言う上って、殿下とその周辺の方々ってことなのね」
「殿下はライラ殿のことを信用なさっておられます。全てを打ち明けてあなたの判断に任せるとおっしゃられているのですが……」
「殿下がいくら私を信用してくださっていても、周りの方々はそうはいかないでしょう」
「ええ、そうなのです。とくに侯爵閣下の存在がやっかいで……」
エリクが気まずそうに言った。
クロードの王宮内の立ち位置は、第二王子の周辺にいる者たちとは異なる。
王宮内では次の王に誰を推すかでいくつかの勢力に別れているのだ。
「私がここにいるとクロードが首を突っ込んでくるから、作戦とやらに支障がでると心配する方々がいらっしゃるのね」
「……概ねその通りです。話が早くて助かります」
ふと、マスターは自分を追い払いたいと思っている側の者なのではないか、とライラは思った。
ライラはすぐに頭を振ってマスターのことを考えるのはやめた。いまそれを気にしている時間はない。
まっすぐ前を向いてからエリクに質問をした。
「……その作戦って何なのかしら。殿下はここで何をなさろうとしているの?」
「殿下は……」
エリクが質問に答えようと口を開いたとき、背後から物凄い殺気を感じた。
エリクは慌てて手綱を引いて馬を止める。ライラは馬から振り落とされないように必死で彼にしがみついた。
馬が落ち着いたのでライラは顔を上げる。
すると、行先を遮るように前方に誰かが立っていた。
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