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真実
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「いまものすごく重要なことをさらりと言ってくれたわね。瘴気が精霊から生み出されるものだなんて初耳だわ」
ライラは横目でちらりとイルシアを見る。イルシアはすぐにライラの視線に気がついて首を横に振った。
「俺だってそんなの聞いたことねえよ」
「そうよね。私だって師匠からも聞いたことがない話だわ」
「俺はライラと会うまでは独学で精霊術を学んでいたから、精霊に関する本はそれなりに読み漁ったつもりだぞ。精霊が堕落したら瘴気を出すとか、そんなことはどの本にだって書かれていなかった」
イルシアが怪訝そうな顔をしてクロードを見る。
「瘴気についての正しい情報が記載されている本は古い書物ばかりだ。そういった古書はすべて禁書に指定されている」
一般人がそう簡単に目にすることができる代物ではない、とクロードが苦々しい顔をして吐き捨てた。その様子に若干の違和感を覚えながら、ライラはクロードに疑問を投げかけた。
「いくら禁書だからって私たちのような術者でもその本を読むことはできないの? 瘴気の浄化ができるのは私たちだけなのだから、知っておいて損はない情報だと思うのだけど……」
「さすがに君でも読むことは不可能だ」
ライラの疑問に、クロードは肩をすくめながら答えた。
「瘴気について記載されている本はすべて王宮書庫で管理されている。王宮の禁書庫など、よほどのことがなければ入室の許可はおりない」
「……へえ、王宮書庫か。それじゃ私が入れるわけがないわね」
これでもかつてはそれなりに精霊術師として評価をうけていたと自負している。貴族からでも名指しで依頼がくるほどには知名度があった。
だからといって、平民の冒険者では王宮に足を踏み入れることはできない。
「あなたなら王宮の禁書庫に入室できる伝手があるのでしょうね」
侯爵さまですものね、と言ってライラはふんと鼻で笑った。
「それにしてもどうして禁書なのかしら? 大切な情報なのに王宮の書庫の中に閉じ込めてしまうなんて」
禁書に指定するほどだ。本の内容を知っている者には箝口令が出ていたのかもしれない。
しかし、せめて精霊術師だけにでも情報が共有されれば、瘴気の浄化に役立てることができるかもしれない。瘴気の影響で苦しむ人の数を減らすことができるかもしれないのにと考えてしまう。
「あなたはいつから瘴気の正体について知っていたの?」
ライラの質問に、クロードが一瞬だけ息を止めたように感じた。
クロードとはライラがミスリルランクの冒険者だったころから面識がある。
ライラとクロードが初めて出会ったのは、侯爵領で起きたとある瘴気騒ぎのときだ。
クロードや軍だけでは対処しきれず、冒険者組合を通して精霊術師として名を馳せていたライラの元に応援の要請がきたのだ。
もしその頃からクロードが真実を知っていたのであれば、非常に腹立たしい。信頼できると思ったからこそ、命を預ける気持ちで同じ任務についた。重要な情報が隠されていたのであれば、文句の一つも言いたくなる。
ライラがつい構えてしまっていると、クロードが思いがけないことを口にした。
「………………あの子が殺されたあとだ」
クロードの返答に、今度はライラが息を止める番になった。
「……あなた、いま何て言った、の?」
ライラがなんとか声を絞りだすと、クロードはゆっくりと深呼吸してから口を開いた。
「あの子を殺した犯人を捜している過程で得た知識だ。誓って君に領内の瘴気浄化を依頼したときには知らなかった」
ライラは横目でちらりとイルシアを見る。イルシアはすぐにライラの視線に気がついて首を横に振った。
「俺だってそんなの聞いたことねえよ」
「そうよね。私だって師匠からも聞いたことがない話だわ」
「俺はライラと会うまでは独学で精霊術を学んでいたから、精霊に関する本はそれなりに読み漁ったつもりだぞ。精霊が堕落したら瘴気を出すとか、そんなことはどの本にだって書かれていなかった」
イルシアが怪訝そうな顔をしてクロードを見る。
「瘴気についての正しい情報が記載されている本は古い書物ばかりだ。そういった古書はすべて禁書に指定されている」
一般人がそう簡単に目にすることができる代物ではない、とクロードが苦々しい顔をして吐き捨てた。その様子に若干の違和感を覚えながら、ライラはクロードに疑問を投げかけた。
「いくら禁書だからって私たちのような術者でもその本を読むことはできないの? 瘴気の浄化ができるのは私たちだけなのだから、知っておいて損はない情報だと思うのだけど……」
「さすがに君でも読むことは不可能だ」
ライラの疑問に、クロードは肩をすくめながら答えた。
「瘴気について記載されている本はすべて王宮書庫で管理されている。王宮の禁書庫など、よほどのことがなければ入室の許可はおりない」
「……へえ、王宮書庫か。それじゃ私が入れるわけがないわね」
これでもかつてはそれなりに精霊術師として評価をうけていたと自負している。貴族からでも名指しで依頼がくるほどには知名度があった。
だからといって、平民の冒険者では王宮に足を踏み入れることはできない。
「あなたなら王宮の禁書庫に入室できる伝手があるのでしょうね」
侯爵さまですものね、と言ってライラはふんと鼻で笑った。
「それにしてもどうして禁書なのかしら? 大切な情報なのに王宮の書庫の中に閉じ込めてしまうなんて」
禁書に指定するほどだ。本の内容を知っている者には箝口令が出ていたのかもしれない。
しかし、せめて精霊術師だけにでも情報が共有されれば、瘴気の浄化に役立てることができるかもしれない。瘴気の影響で苦しむ人の数を減らすことができるかもしれないのにと考えてしまう。
「あなたはいつから瘴気の正体について知っていたの?」
ライラの質問に、クロードが一瞬だけ息を止めたように感じた。
クロードとはライラがミスリルランクの冒険者だったころから面識がある。
ライラとクロードが初めて出会ったのは、侯爵領で起きたとある瘴気騒ぎのときだ。
クロードや軍だけでは対処しきれず、冒険者組合を通して精霊術師として名を馳せていたライラの元に応援の要請がきたのだ。
もしその頃からクロードが真実を知っていたのであれば、非常に腹立たしい。信頼できると思ったからこそ、命を預ける気持ちで同じ任務についた。重要な情報が隠されていたのであれば、文句の一つも言いたくなる。
ライラがつい構えてしまっていると、クロードが思いがけないことを口にした。
「………………あの子が殺されたあとだ」
クロードの返答に、今度はライラが息を止める番になった。
「……あなた、いま何て言った、の?」
ライラがなんとか声を絞りだすと、クロードはゆっくりと深呼吸してから口を開いた。
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