ユークロニア 〜蒼い輝に包まれて〜

雨宮濛

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神の化身

遠い、透い、記憶。Part 2.

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「どこ行こっか~?」

 先輩はとてもご機嫌だった。まぁ、普段はこんな事しないし、私もたまには遊ぶのも悪くないかな......

「先輩、そんなにはしゃいでると怪我しますよ。」

「大丈夫だって~!いざとなったら、空星チャン!助けてね!」

 先輩の笑顔がとても素敵だった。私の腕を引っ張ってくれる優しい手、先輩は心強かった。私も、いつかこの人みたいになれるかな?

「あ!このコスメ新作のやつじゃん!この色めっちゃ空星チャンに似合いそう!」

 最近流行りのリップを先輩が見せてきた。こんな私に似合う物なんてあるんだ。先輩に言われれば少し自信が湧いてきた。

「そうですか?じゃぁ、このリップ、プレゼントしてください。私は先輩に似合いそうな色違いのリップ、プレゼントしますから。」

 私は違うカラーのリップを手に取った。

「え!?めちゃそれ良いじゃん!買お買お!」

 2人で違うレジに並び、プレゼント用に梱包してもらい、互いにプレゼントし合った。

「ねー!空星チャンが選んでくれたリップ付けたんだけどマジセンス良すぎ!天才!?」

 流石に大袈裟ではないだろうか。でも、喜んでくれているのは嘘ではない。


 この笑顔、が、とても、ダイスキだ。


 数時間後、私達はそろそろ帰ろうかと話していた。
 その時、地獄は訪れる。

「きゃぁぁぁあ!通り魔よ!」

「おぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」

 町中、ナイフを構えた通り魔が先輩を襲った。
 先輩の腹部が裂け、血が吹き出した。
 これは助からない。素人の私でも確信した。先輩は、確実に死ぬ。救急車を呼んだって、絶対に間に合わない。

「せん、ぱい......?」

 私は立ち崩れた。何もできず、先輩を見つめる事しかできなかった。

 瀬乃凛杏はもう......

「空星チャン......私の、名前、呼んで......?」

 瀬乃凛杏は掠れた声で、もう消え去りそうな光で言った。空星を悲しませないように痛みに耐えて。

「凛杏、凛杏さん......!」

 空星の目から、涙が溢れていた。
 もう2度と会えなくなる。この光をくれた貴方が消えてしまうと......

 凛杏は微笑んだ。精一杯の力を込めて。

「ありがとう。空星...」

 1998年 9月14日 日本 東京都 渋谷区

 瀬乃凛杏セノ リアン 死亡 享年17歳


 1998年 9月17日 日本 東京都 渋谷区

 ベランダへ上がり、足にひんやりと感覚が伝わる。
 そよ風が吹き、髪がなびく。
 最後の景色だった。

 この腐った世界が。

「ねぇ、凛杏さん、貴女の居ない世界なんて生きる価値が無い。だからもう......」

 ベランダから飛び降り、銃声の様な音を立て地面に叩きつけられた。
 鋭い痛みが身体中に痺れ、視界は真っ赤に染まり、段々と意識が遠のいた。

 紳崎空星の1度目の人生は自殺にて終了した。

 紳崎空星シンザキ アキホ 死亡 享年16歳
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