トレントなどに転生して申し訳ありません燃やさないでアッ…。

兎屋亀吉

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11.初めての敗北

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 邪竜が去った場所に、ぽつんとひとつ残されたものがあった。

 それは、折れた棍棒だ。

 その棍棒から芽が生える。

 芽はにょきにょきと伸びてやがて一本の幼木になった。

 幼木は器用に2足歩行すると、全速力で走り始めた。







 僕は走った。

 ただただ、その場所にいたくなかった。

 死んだと思った。

 前世では1回死んだことがあるけれど、車にはねられて死ぬのとはわけが違う。

 塵も残らず消滅させられた。

 1日か、2日か、もっと走っていたかもしれない。

 僕はやっとのことでオークの集落があった場所まで逃げてきた。

 残っていたあばら家にまた30匹ほどのオークが住み着いていたのでおいしくいただいた。

 オークを吸収することでやっと人型の姿まで戻ることができた。

 僕は地面に寝転んで、息を大きく吸って吐き出す。

 「っはぁ~~~。負けちゃったな」

 思えばこの世界に生まれてから、一度も敗北らしい敗北を経験したことはなかった。

 それはそうだ、この森で負けるということは死ぬということなのだから。

 今まで僕に負けたモンスターはことごとく死んで僕に吸収されている。

 ならば生きている僕はもう一度あの竜に挑んでリベンジできるという意味で、まだ負けていないと言えるのだろうか。

 「すぐにまたあの竜に挑む気にはちょっとなれないな」

 単純に怖かった。

 恐ろしかった。

 まずはこの恐怖を克服しないことにはリベンジすることは叶わないだろう。

 それにしても、だ。

 僕の再生能力はちょっと異常なくらいじゃないか?

 あのときドラゴンブレスで消滅したにもかかわらず、残されていた僕の枝製棍棒から再生して生き残ることができた。

 これは、僕の体が1部でもどこかに残っていれば再生できるということだろうか。

 それとも再生できる範囲があるのだろうか。

 どちらにしろ実験のしようがないので、今度から危なそうな戦闘時には保険のために棍棒くらいの大きさの枝を敵に気づかれないように落としておこう。

 もう消滅させられるのはごめんだけどね。

 



 あれから数日、僕のメンタルは順調に回復してきている。

 邪竜に負けたすぐの頃にはもう邪竜なんて放っといて人間の町にケモミミハーレム探しに行きたいとか思っていたけれど、最近では邪竜に負けた悔しさが後になって湧いてきて打倒邪竜に燃えているくらいだ。

 すいません嘘です。

 燃えてはいない。

 あのムカつく邪竜を倒せたらいいな、くらいの気持ちだ。

 とりあえず邪竜は倒す方針だ。

 なんかあの竜を倒せたらもう怖いものはない気がする。

 安心して人間の国にハーレムしにいけるというものだ。

 邪竜を倒す上で、僕に足りないものを考えてみた。

 それは、必殺技だ。

 ドラゴンの吐く炎にも、もちろん本物のドラゴンブレスにも、僕の樹皮が耐えられない以上、攻撃はすべて避けたうえでドラゴンの鱗も貫ける一撃必殺の攻撃で倒す必要がある。

 強くて、できればかっこいい必殺技が欲しい。

 そこで僕が考えたのは無属性魔法だ。

 やっぱり異世界転生といえば無属性魔法だよね。

 もちろんそんな理由だけで僕が無属性魔法を選んだわけではない。

 今僕が使える魔法は、火球や石槍などのいわば初級魔法だ。

 この世界の魔法はイメージで発動するけれど、それだけで使うことができるのは初級魔法のみだ。

 おそらく、ここから先は科学や化学、物理学なんかの専門的な知識が必要になる。

 基本的な知識しか持っていない僕では初級程度か、圧縮するとか先を尖らすとか工夫をしても中級程度の威力の魔法しか使うことができないのだ。

 そこで、無属性魔法だ。

 無属性魔法とは、ようは水や火などの属性を付与しない魔法であると僕は認識している。

 単純に魔力を操作して、身体能力を強化したり、魔力を弾丸のように打ち出したりするかっこいい魔法だ。

 エミリーはあまり魔法には詳しくなかったが、少しだけ聞けた話ではおおむね間違っていないと思う。

 この無属性魔法ならば、イメージと大量の魔力だけで大威力の魔法を撃つことができるのではないかと僕は思っている。

 いいねえ。

 ロマンだねえ。

 必殺技っていうんだからやっぱり○○波ー!みたいなやつかな。

 もしくは魔力の剣みたいなのでズバズバ切り裂くのもかっこいいな。

 よし、両方考えよう。

 そしてかっこいい技名を考えよう。

 魔力の剣のほうは技名を叫ぶ機会がなさそうだから適当でいいけどなんちゃら波のほうは技名を叫ばないといけないから頑張って考えよう。



 クククッ、テンションが上がってきたぞー!!

 
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