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10.邪竜戦
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僕は思いきり地面を蹴って、邪竜に肉薄する。
そのまま邪竜の足の子指を棍棒でぶん殴った。
邪竜は耳をつんざくような鳴き声をあげて暴れまわる。
ドシンドシンと地響きがあたりに響き渡る。
しかし、僕のほうも今ので棍棒が折れてしまった。
信じられないくらいに硬い。
防御が薄いと思って殴った足の小指がこんなに硬いなんて。
こいつを倒すのは骨が折れそうだ。
僕は折れた棍棒を放り捨てると、早々に人型で戦うのはあきらめてトレントに戻る。
全身から伸びた枝葉が絡み合い、1本の太い樹になっていく。
久しぶりに元に戻ったけれど、すっかり慣れてしまった便利な無数の根を操る感覚に、やっぱり僕の本来の姿はこちらなのだと実感する。
最初から全力だったけれど、ここからはもっと全力だ。
僕は無数の根を伸ばし、邪竜を絡めとって動けないようにする。
さすがの邪竜のパワーでも僕の根は引きちぎれないみたいだ。
よし、いけると思った瞬間、邪竜の口から超高温の炎が吐き出されて邪竜を絡めとっていた僕の根が焼き払われる。
くそっ、熱痛い。
だが、オークに火達磨にされたことがある僕は冷静だ。
冷静になれば我慢できない痛みじゃない。
しかしやっかいだ。
そうそう火を吐かれたんじゃ近づけない。
色々と戦法を試してみるか。
実験1。
魔法だ。
僕の強みはMP切れが無いこと。ちょっと不毛の大地になるけどね。
僕は空中に大量の火球を並べて邪竜に向けて一斉に放つ。
このくらいの魔力なら、周りから吸収しなくてもまだ大丈夫だ。
僕はさらにどんどん追加で火球を放っていく。
数百、数千と火球を放った僕は、火球をいったん止めてみる。
「やったか?」
お約束を言ってみたかったんだよ。
爆煙が晴れた中から出てきた邪竜はまったくの無傷だった。
だよね。やってないよね。
実験継続。
僕は今度は火球をビー玉ほどの大きさに圧縮して放ってみる。
邪竜は無傷。
それから火矢、火槍と色々試すも強靭な鱗に阻まれて邪竜にダメージを与えることはできない。
ダメージを与えられたのは最初の棍棒の攻撃のみ。
やはり、僕の根で直接貫くしかダメージを与える方法はないらしい。
しかし、近づくとあのブレスで焼払われる。
よし、実験2だ。
これは結構賭けに近いが、なんとなくいける気がする。
僕はおずおずと邪竜に近づいていく。
当然邪竜は火を吐いてくる。
僕は落ち着いて冷気を操る力を使う。
僕の体がたちまち凍りついた。
そのまま冷気の範囲を広げずに、自分の周囲の温度だけをどんどん下げていく。
そして、冷気と炎がぶつかり合って大量の水蒸気が立ち込める。
水蒸気が晴れるが、僕は生きている。
ちょっと焦げたが、ダメージは少ない。
勝った、と僕は思った。
炎で簡単に燃やせると思っていた邪竜は一瞬硬直して隙を見せてしまう。
僕はニヤリと嗤い、全力疾走で邪竜にしがみついて根で絡めとり、締め上げた。
体に僕の根がめり込む苦痛に邪竜は暴れたが、魔剣を何本も吸収している僕の鋭い根を突き刺すと、一周まわって冷静になったのか静かになった。
さすがに鱗の集中した急所には刺さらなかったが、僕の根は邪竜の手足の関節や、翼の付け根などに突き刺さり、動きを止めるのに成功している。
僕は最後のトドメとばかりに自分ごと邪竜を凍らせるために冷気を操る力を発動する。
これでもはや炎を吐こうとも僕を引き剥がすことはできなくなった。
炎を吐かれたら多少焦げるかもしれないけれど僕は絶対離さない。
持久戦になればさらに僕に有利だ。
こちらは相手が弱れば弱るほど相手から生命力を吸収できる。
これで僕の勝ちだとばかりに僕は邪竜の目を見るが、その目を見た瞬間ゾッとした。
そこにあるのは憤怒。
ただただ目の前の相手を殺したいという殺意。
まるで、その眼光になんらかの力があるかのように、睨まれた僕は動けなくなってしまう。
怒りという感情に質量があったとしたら、この森すべてが飲み込まれてしまうのではないかというくらいの激情がその瞳を通してビリビリと伝わってきて、僕を身動きできなくさせてしまう。
恐ろしい。
純粋にそう思った。
竜という存在を僕は舐めていたのかもしれない。
少し強くなったからといって、調子に乗っていたのかもしれない。
今はただただ目の前の圧倒的な存在から逃げたかった。
震えて動かない体を叱咤して、僕はよろよろと邪竜から離れる。
邪竜は動かない。
ただじっと僕の事を睨んでいる。
怖い。
邪竜が少しでも動いたら僕は死ぬ、そんな気がしている。
また一歩、僕が後ずさる。
まだ、邪竜は動かない。
あ…れ?動かないのか?
もしかしたら、見逃してくれるのか?
もしかして生きていられるのか?
僕の心に少しだけ希望が見え始めたことを見透かすかのように、邪竜が口を開いた。
開かれた口に周囲からなんらかのエネルギーが光となって集まっていく。
5,6メートル離れたこちらまで、焼けるような高熱が伝わってくるような眩い光の奔流。
それが集束し、僕に向かって放たれた。
僕の視界は真っ白に染まった。
これが、本当のドラゴンブレス。
じゃあ、さっきまで…口から吐いていたのは……なんだっ…たん…。
邪竜はつまらなさそうに一声吼えると、そのまま飛び立っていった。
邪竜のドラゴンブレスの射線上には、なにも残っていなかった。
そのまま邪竜の足の子指を棍棒でぶん殴った。
邪竜は耳をつんざくような鳴き声をあげて暴れまわる。
ドシンドシンと地響きがあたりに響き渡る。
しかし、僕のほうも今ので棍棒が折れてしまった。
信じられないくらいに硬い。
防御が薄いと思って殴った足の小指がこんなに硬いなんて。
こいつを倒すのは骨が折れそうだ。
僕は折れた棍棒を放り捨てると、早々に人型で戦うのはあきらめてトレントに戻る。
全身から伸びた枝葉が絡み合い、1本の太い樹になっていく。
久しぶりに元に戻ったけれど、すっかり慣れてしまった便利な無数の根を操る感覚に、やっぱり僕の本来の姿はこちらなのだと実感する。
最初から全力だったけれど、ここからはもっと全力だ。
僕は無数の根を伸ばし、邪竜を絡めとって動けないようにする。
さすがの邪竜のパワーでも僕の根は引きちぎれないみたいだ。
よし、いけると思った瞬間、邪竜の口から超高温の炎が吐き出されて邪竜を絡めとっていた僕の根が焼き払われる。
くそっ、熱痛い。
だが、オークに火達磨にされたことがある僕は冷静だ。
冷静になれば我慢できない痛みじゃない。
しかしやっかいだ。
そうそう火を吐かれたんじゃ近づけない。
色々と戦法を試してみるか。
実験1。
魔法だ。
僕の強みはMP切れが無いこと。ちょっと不毛の大地になるけどね。
僕は空中に大量の火球を並べて邪竜に向けて一斉に放つ。
このくらいの魔力なら、周りから吸収しなくてもまだ大丈夫だ。
僕はさらにどんどん追加で火球を放っていく。
数百、数千と火球を放った僕は、火球をいったん止めてみる。
「やったか?」
お約束を言ってみたかったんだよ。
爆煙が晴れた中から出てきた邪竜はまったくの無傷だった。
だよね。やってないよね。
実験継続。
僕は今度は火球をビー玉ほどの大きさに圧縮して放ってみる。
邪竜は無傷。
それから火矢、火槍と色々試すも強靭な鱗に阻まれて邪竜にダメージを与えることはできない。
ダメージを与えられたのは最初の棍棒の攻撃のみ。
やはり、僕の根で直接貫くしかダメージを与える方法はないらしい。
しかし、近づくとあのブレスで焼払われる。
よし、実験2だ。
これは結構賭けに近いが、なんとなくいける気がする。
僕はおずおずと邪竜に近づいていく。
当然邪竜は火を吐いてくる。
僕は落ち着いて冷気を操る力を使う。
僕の体がたちまち凍りついた。
そのまま冷気の範囲を広げずに、自分の周囲の温度だけをどんどん下げていく。
そして、冷気と炎がぶつかり合って大量の水蒸気が立ち込める。
水蒸気が晴れるが、僕は生きている。
ちょっと焦げたが、ダメージは少ない。
勝った、と僕は思った。
炎で簡単に燃やせると思っていた邪竜は一瞬硬直して隙を見せてしまう。
僕はニヤリと嗤い、全力疾走で邪竜にしがみついて根で絡めとり、締め上げた。
体に僕の根がめり込む苦痛に邪竜は暴れたが、魔剣を何本も吸収している僕の鋭い根を突き刺すと、一周まわって冷静になったのか静かになった。
さすがに鱗の集中した急所には刺さらなかったが、僕の根は邪竜の手足の関節や、翼の付け根などに突き刺さり、動きを止めるのに成功している。
僕は最後のトドメとばかりに自分ごと邪竜を凍らせるために冷気を操る力を発動する。
これでもはや炎を吐こうとも僕を引き剥がすことはできなくなった。
炎を吐かれたら多少焦げるかもしれないけれど僕は絶対離さない。
持久戦になればさらに僕に有利だ。
こちらは相手が弱れば弱るほど相手から生命力を吸収できる。
これで僕の勝ちだとばかりに僕は邪竜の目を見るが、その目を見た瞬間ゾッとした。
そこにあるのは憤怒。
ただただ目の前の相手を殺したいという殺意。
まるで、その眼光になんらかの力があるかのように、睨まれた僕は動けなくなってしまう。
怒りという感情に質量があったとしたら、この森すべてが飲み込まれてしまうのではないかというくらいの激情がその瞳を通してビリビリと伝わってきて、僕を身動きできなくさせてしまう。
恐ろしい。
純粋にそう思った。
竜という存在を僕は舐めていたのかもしれない。
少し強くなったからといって、調子に乗っていたのかもしれない。
今はただただ目の前の圧倒的な存在から逃げたかった。
震えて動かない体を叱咤して、僕はよろよろと邪竜から離れる。
邪竜は動かない。
ただじっと僕の事を睨んでいる。
怖い。
邪竜が少しでも動いたら僕は死ぬ、そんな気がしている。
また一歩、僕が後ずさる。
まだ、邪竜は動かない。
あ…れ?動かないのか?
もしかしたら、見逃してくれるのか?
もしかして生きていられるのか?
僕の心に少しだけ希望が見え始めたことを見透かすかのように、邪竜が口を開いた。
開かれた口に周囲からなんらかのエネルギーが光となって集まっていく。
5,6メートル離れたこちらまで、焼けるような高熱が伝わってくるような眩い光の奔流。
それが集束し、僕に向かって放たれた。
僕の視界は真っ白に染まった。
これが、本当のドラゴンブレス。
じゃあ、さっきまで…口から吐いていたのは……なんだっ…たん…。
邪竜はつまらなさそうに一声吼えると、そのまま飛び立っていった。
邪竜のドラゴンブレスの射線上には、なにも残っていなかった。
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