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38.島流し(島はまだ無い)
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太平洋に浮かぶ岩礁地帯。
現代では日本最南端の島として有名な島、沖ノ鳥島。
海面にちょんと出た地面が岩なのか島なのか、度々議論がなされている島だ。
現代では東京都の所有になっている島だけれど、俺は思うんだ。
ここって絶対東京じゃない。
日本地図を眺めて、沖の鳥島の位置から真っ直ぐ上を見るとそこには和歌山県があるわけだ。
ここが東京でいいのなら、ここが高知でもいいんじゃないかと俺は思ったんだ。
殿は最終的に現代の高知県である土佐藩の初代藩主となる。
つまりこの島は後に殿のものとなるわけだ。
今のところこんな岩礁を島として認識している人はいないだろうし、そもそも日本の侍たちの航海技術じゃあここまで来られるかどうかも分からない。
この時代は航海技術が進んだ海外であっても、海に出れば死ぬか生きるか運次第だ。
ここを護岸工事して、人工島にしたところで誰も気付かないだろう。
現代だったら日本が領海間際に人工島なんぞ造ろうものなら周辺諸国から袋叩きだろうが、この時代なら造り放題だ。
「ということで、君たち頑張ってね」
「い、いや、無理ですよ旦那」
「島を造るって、正気ですかい?」
彼らはあの山中で出会った野伏せりだ。
長野の山中に飛ばして温泉にぶち込んだらなかなか見れる姿になった。
あの後散々彼らの主張を聞き、一つ一つ考えを改めさせていったら彼らも腹の内側をすべてぶちまけてくれた。
それと同時に、織田信長がどうして天下を統一できなかったのかがなんとなく分かった気がした。
武士も人で、農民も人で、将軍も人、お坊さんも人。
織田信長はそれが分からなかった。
勝つか負けるか、斬るか斬られるか。
確かにこの時代はそういう時代だけど、人は人だ。
勝っても負けても生きているし、斬っても斬られても傷つく。
織田信長は人である前に武士なんだ。
でも武士には武士の気持ちしか分からない。
武士の前に人である人物じゃないと、天下は治められない。
まあ本能寺の変は当然の帰結だったわけだ。
信長への不満をゲロゲロとすべて吐き出した彼らは、実にすっきりとした顔をしていた。
結局のところ、誰かに聞いてもらいたかっただけなのかもしれない。
織田信長が天下に近づいていく世の中だけど、本当にそれでいいのかと。
まあ織田信長は天下を取らないんだけどね。
俺は彼らにそう断言した。
織田信長は天下を取らない、と。
そこから彼らは割と素直になってくれた。
俺だってそうそう人なんか斬りたくないんだよ。
だから彼らをこの沖ノ鳥島に送り、人工島を築かせることにしたというわけだ。
島流しってやつの酷い版だね。
島がまだ無いんだから。
でも俺も鬼じゃないよ。
こんなただの岩礁地帯を彼らだけの力で島にできるとは思ってない。
ちゃんと考えて島を持ってきた。
俺は収納の指輪から入れてきた大岩を取り出す。
ドシンと島が揺れ、海水がビシャビシャと顔にかかった。
ぺっぺっ、しょっぱいな。
「さっすが旦那です」
「大天狗の弟子っていうのは本当なんですね」
彼らには説明が面倒だったので鞍馬山の大天狗の一番弟子だと言っておいた。
信じないかなとも思ったんだけど、テレポートで長野の温泉に連れて行ったらすぐ信じた。
この時代はなんでも妖術で済むから。
彼らの頭が軽いだけかもしれないけど。
頭が軽かろうが、人工島を作るために働いてくれれば文句は無い。
「ちょっと離れてて」
「「へい」」
俺は奥義二之太刀要らずで大岩を半分にスライスする。
南蛮船をスパッと切り裂いた奥義は、大岩の硬さも関係なくトマトのように半分にスライスした。
「おお、すげぇ……」
「旦那、そいつは俺達でも会得できるんですかい?」
「うーん、どうだろう。剣術の稽古をしていけば、いつかできるようになるかもね」
実際に似たような技を北畠具教も使っていたわけだし。
元は塚原卜伝の技だ。
彼らくらい剣技を極めて行けば使えるようになるかもしれない。
「そうですか。暇なときでもいいので、剣術の稽古をつけてはくれませんかね」
「まあいいけど……」
最近は稽古を頼まれることが多いな。
さて、沖ノ鳥島にはとりあえず人が寝起きするくらいのスペースはできた。
半分に切った大岩を平らなほうを上にして岩礁地帯に置けば、平らな島が2つできるからね。
大岩は大体直径10メートルくらいのものだったから、大体160平方メートルくらいか。
10人くらいの男たちが寝起きするには少し狭い。
もっと島を広げていかなくては。
そのために必要なものといえば、もっとたくさんの岩とコンクリートだろうか。
さすがに岩と土だけでは島を造るなど無理だ。
人工島にはコンクリートがどうしても必要になる。
風雨や波に晒されてすぐに風化してしまうかもしれないが、これからどんどん拡張していく島だ。
10年や20年もてばいい。
コンクリートの造り方については問題ない。
こういうことは『よくわかる戦国時代』先生に聞けばなんでも教えてくれるからね。
俺はアプリを開き、検索する。
なるほど、原始的なものならそんなに難しくないんだな。
これなら戦国時代でも手に入りそうなものばかりだ。
ただ、大量に買うとなると難しいかもな。
銭も無限では無いし。
とりあえず岩と土だけでどこまでやれるかやってみるかな。
コンクリートは表面を整えたり、岩を固定したりするのに使えばいいだろう。
現代では日本最南端の島として有名な島、沖ノ鳥島。
海面にちょんと出た地面が岩なのか島なのか、度々議論がなされている島だ。
現代では東京都の所有になっている島だけれど、俺は思うんだ。
ここって絶対東京じゃない。
日本地図を眺めて、沖の鳥島の位置から真っ直ぐ上を見るとそこには和歌山県があるわけだ。
ここが東京でいいのなら、ここが高知でもいいんじゃないかと俺は思ったんだ。
殿は最終的に現代の高知県である土佐藩の初代藩主となる。
つまりこの島は後に殿のものとなるわけだ。
今のところこんな岩礁を島として認識している人はいないだろうし、そもそも日本の侍たちの航海技術じゃあここまで来られるかどうかも分からない。
この時代は航海技術が進んだ海外であっても、海に出れば死ぬか生きるか運次第だ。
ここを護岸工事して、人工島にしたところで誰も気付かないだろう。
現代だったら日本が領海間際に人工島なんぞ造ろうものなら周辺諸国から袋叩きだろうが、この時代なら造り放題だ。
「ということで、君たち頑張ってね」
「い、いや、無理ですよ旦那」
「島を造るって、正気ですかい?」
彼らはあの山中で出会った野伏せりだ。
長野の山中に飛ばして温泉にぶち込んだらなかなか見れる姿になった。
あの後散々彼らの主張を聞き、一つ一つ考えを改めさせていったら彼らも腹の内側をすべてぶちまけてくれた。
それと同時に、織田信長がどうして天下を統一できなかったのかがなんとなく分かった気がした。
武士も人で、農民も人で、将軍も人、お坊さんも人。
織田信長はそれが分からなかった。
勝つか負けるか、斬るか斬られるか。
確かにこの時代はそういう時代だけど、人は人だ。
勝っても負けても生きているし、斬っても斬られても傷つく。
織田信長は人である前に武士なんだ。
でも武士には武士の気持ちしか分からない。
武士の前に人である人物じゃないと、天下は治められない。
まあ本能寺の変は当然の帰結だったわけだ。
信長への不満をゲロゲロとすべて吐き出した彼らは、実にすっきりとした顔をしていた。
結局のところ、誰かに聞いてもらいたかっただけなのかもしれない。
織田信長が天下に近づいていく世の中だけど、本当にそれでいいのかと。
まあ織田信長は天下を取らないんだけどね。
俺は彼らにそう断言した。
織田信長は天下を取らない、と。
そこから彼らは割と素直になってくれた。
俺だってそうそう人なんか斬りたくないんだよ。
だから彼らをこの沖ノ鳥島に送り、人工島を築かせることにしたというわけだ。
島流しってやつの酷い版だね。
島がまだ無いんだから。
でも俺も鬼じゃないよ。
こんなただの岩礁地帯を彼らだけの力で島にできるとは思ってない。
ちゃんと考えて島を持ってきた。
俺は収納の指輪から入れてきた大岩を取り出す。
ドシンと島が揺れ、海水がビシャビシャと顔にかかった。
ぺっぺっ、しょっぱいな。
「さっすが旦那です」
「大天狗の弟子っていうのは本当なんですね」
彼らには説明が面倒だったので鞍馬山の大天狗の一番弟子だと言っておいた。
信じないかなとも思ったんだけど、テレポートで長野の温泉に連れて行ったらすぐ信じた。
この時代はなんでも妖術で済むから。
彼らの頭が軽いだけかもしれないけど。
頭が軽かろうが、人工島を作るために働いてくれれば文句は無い。
「ちょっと離れてて」
「「へい」」
俺は奥義二之太刀要らずで大岩を半分にスライスする。
南蛮船をスパッと切り裂いた奥義は、大岩の硬さも関係なくトマトのように半分にスライスした。
「おお、すげぇ……」
「旦那、そいつは俺達でも会得できるんですかい?」
「うーん、どうだろう。剣術の稽古をしていけば、いつかできるようになるかもね」
実際に似たような技を北畠具教も使っていたわけだし。
元は塚原卜伝の技だ。
彼らくらい剣技を極めて行けば使えるようになるかもしれない。
「そうですか。暇なときでもいいので、剣術の稽古をつけてはくれませんかね」
「まあいいけど……」
最近は稽古を頼まれることが多いな。
さて、沖ノ鳥島にはとりあえず人が寝起きするくらいのスペースはできた。
半分に切った大岩を平らなほうを上にして岩礁地帯に置けば、平らな島が2つできるからね。
大岩は大体直径10メートルくらいのものだったから、大体160平方メートルくらいか。
10人くらいの男たちが寝起きするには少し狭い。
もっと島を広げていかなくては。
そのために必要なものといえば、もっとたくさんの岩とコンクリートだろうか。
さすがに岩と土だけでは島を造るなど無理だ。
人工島にはコンクリートがどうしても必要になる。
風雨や波に晒されてすぐに風化してしまうかもしれないが、これからどんどん拡張していく島だ。
10年や20年もてばいい。
コンクリートの造り方については問題ない。
こういうことは『よくわかる戦国時代』先生に聞けばなんでも教えてくれるからね。
俺はアプリを開き、検索する。
なるほど、原始的なものならそんなに難しくないんだな。
これなら戦国時代でも手に入りそうなものばかりだ。
ただ、大量に買うとなると難しいかもな。
銭も無限では無いし。
とりあえず岩と土だけでどこまでやれるかやってみるかな。
コンクリートは表面を整えたり、岩を固定したりするのに使えばいいだろう。
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