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105.侍パーティ
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グツグツと煮える芋煮。
その隣にはイノシシの内臓を八丁味噌ベースのたれで煮た未来の愛知県の名物料理、どて煮が煮込まれている。
いい匂いがしてこの場でもできそうな料理のレシピを他にも色々と提供したおかげで、もはや芋煮会というよりもB級グルメイベントのような様相になってきた。
すべて信長が作らせた料理だ。
城の中の人たちを匂いで誘い出すだけならば芋煮の匂いだけでも十分だと思うのだが、信長は他にも珍しい料理があるのならばここで作れるだけすべて作れと命じた。
作った料理は当然信長の元に持っていくわけだが、強烈に食欲をそそられる匂いに兵士たちが我慢できるはずもない。
信長は兵士たちにも同じ料理を作って食べることを許可した。
それからあちこちで大鍋で色々煮込まれ、串に刺さった色々な肉がタレを焦がしながら焼かれた。
珍しいものでは五平餅なんていうものもある。
未来では朝ドラで一躍有名になった料理だが、あれも中部地方から長野県南部のあたりの料理だ。
確か発祥は江戸時代あたりだったはずだからこれも少し早まってしまったな。
胡麻ベースのタレの焦げる匂いが食欲をそそる。
これほどの食べ物の匂いに包まれながら味のしない干し飯を齧り、塩辛い梅干を口に頬張る気持ちというのはどれほどのものなのだろうか。
俺だったら1日と正気を保っていられないだろう。
俺と違って強靭な精神力を持つこの時代の人だが、未来の料理の匂いには勝てなかったようで坊主の首を槍の先に掲げた農民たちが城門を開いたのはそれから2日後のことだった。
今回の戦にて、直接の戦功はあまりなかったものの勘九郎君をよく補佐したという理由から殿はまた少しだけ出世した。
また領地はもらえなかったけれど今回は仕方が無いだろう。
動員した兵力に対して奪い取った土地が少なすぎる。
指揮官クラスの侍から順に褒美を与えていったら殿には一欠けらの領地も残ってないだろう。
お給料が増えたことに満足しておこう。
箱屋山内の利益もあって、今殿は生涯で経験したことのないレベルの金持ちだ。
こういう時こそ詐欺などには気をつけなければならない。
前みたいなことにならないようにね。
「えぇ、殿が試練の塔に挑戦するんですか?」
詐欺はなかったが、殿が突然変なことを言い出した。
織田軍の有志で、試練の塔の2階層以上の調査を行なうというのだ。
まあいつかは1階層より上の調査は行なうとは思っていたが、まさか俺達にも関わりのあることだとは。
「ワシとお前、慶次郎、あと善住坊殿にも声をかけてほしい」
善住坊さんは殿の家臣である俺の弟子ではあるが、殿の直接の家臣ではない。
だから命令はできないのだが、善住坊さんは強いからね。
一緒に来てくれたら心強いってことだろう。
「何組かに分かれて探索するようだが、ワシらと同じ組には他に森勝三殿と柴田権六殿が同行する予定だ」
勝三君はともかく鬼柴田が一緒か。
あの人怖いんだよね。
まあ強さは折り紙つきだ。
問題はチームプレイができるかどうかだ。
1、2階層程度ならば個人の武勇で勝てない敵はいない。
だが3階層からはそうはいかない。
3階層からはゴブリンが武装し、集団行動を取る。
こちらも集団行動ができなければ、最悪死ぬこともありえる。
その代わりといってはなんだが、3階層からは金目の物が出る。
2階層までは箱の中身はすべて食べ物だ。
3階層に進み食えるわけでもない金目の物を手に入れるためには、命を賭けてもらわなければならない。
もちろん1、2階層でも人によっては命がけだが、よほどのことがない限りは死ぬようなことは無いはずだ。
だが3階層からはそうはいかない。
俺はダンジョンに誘い込んで人を殺したいわけではないのだが、リスクも無く金目の物を渡すと今以上に世が乱れる可能性がある。
だから残念だが、欲に目がくらんで身の丈に合わない階層に挑んだ人には一定数死んでもらわなければならないのだ。
侍に3階層を見せて大丈夫なのか心配になった。
「いつぞやは世話になったなっ!!」
お礼を言うだけなのに大声で言わないとダメなのかね。
耳がキンキンするほどの大音量で俺に話しかけるのは柴田権六こと柴田勝家だ。
大柄な身体に鋼のように鍛えられた筋肉を纏う初老の男。
身体もでかけりゃ声もでかい。
槍を持たせれば右に出る者なし。
怪力無双の鬼柴田。
嘘かホントか色々な逸話のある人物だ。
その怪力はある程度本当のようで、肩に担ぐのは単管パイプのような太さの鉄槍。
あれをダンジョンの中で振り回すつもりなのだろう。
1、2階層ではオーバーキルが過ぎる。
「今日はよろしくお願いします」
「では参ろうぞ!」
勝家以外は全員親しい友人知人家臣主君の関係であるこのパーティー。
だが仕切るのはやはりこの中で一番位の高い勝家だ。
個人の武勇だけではなく兵の指揮も上手だという定評のある勝家だが、果たしてダンジョン探索にそれが活かせるだろうか。
勝家の得意な戦法は確か先陣切っての突進だったかな。
大丈夫なんだろうか。
「むむ、この化け物めがっ!どぉぉりゃぁぁぁっ!!」
最初のゴブリンとの戦闘、勝家の鉄槍の一振りでひき肉となるゴブリン。
すごい力だけど、やっぱり個人プレーが基本だな。
俺達何もやることないし。
箱に入った米を回収して先に進む。
3階層はまだまだ遠いな。
その隣にはイノシシの内臓を八丁味噌ベースのたれで煮た未来の愛知県の名物料理、どて煮が煮込まれている。
いい匂いがしてこの場でもできそうな料理のレシピを他にも色々と提供したおかげで、もはや芋煮会というよりもB級グルメイベントのような様相になってきた。
すべて信長が作らせた料理だ。
城の中の人たちを匂いで誘い出すだけならば芋煮の匂いだけでも十分だと思うのだが、信長は他にも珍しい料理があるのならばここで作れるだけすべて作れと命じた。
作った料理は当然信長の元に持っていくわけだが、強烈に食欲をそそられる匂いに兵士たちが我慢できるはずもない。
信長は兵士たちにも同じ料理を作って食べることを許可した。
それからあちこちで大鍋で色々煮込まれ、串に刺さった色々な肉がタレを焦がしながら焼かれた。
珍しいものでは五平餅なんていうものもある。
未来では朝ドラで一躍有名になった料理だが、あれも中部地方から長野県南部のあたりの料理だ。
確か発祥は江戸時代あたりだったはずだからこれも少し早まってしまったな。
胡麻ベースのタレの焦げる匂いが食欲をそそる。
これほどの食べ物の匂いに包まれながら味のしない干し飯を齧り、塩辛い梅干を口に頬張る気持ちというのはどれほどのものなのだろうか。
俺だったら1日と正気を保っていられないだろう。
俺と違って強靭な精神力を持つこの時代の人だが、未来の料理の匂いには勝てなかったようで坊主の首を槍の先に掲げた農民たちが城門を開いたのはそれから2日後のことだった。
今回の戦にて、直接の戦功はあまりなかったものの勘九郎君をよく補佐したという理由から殿はまた少しだけ出世した。
また領地はもらえなかったけれど今回は仕方が無いだろう。
動員した兵力に対して奪い取った土地が少なすぎる。
指揮官クラスの侍から順に褒美を与えていったら殿には一欠けらの領地も残ってないだろう。
お給料が増えたことに満足しておこう。
箱屋山内の利益もあって、今殿は生涯で経験したことのないレベルの金持ちだ。
こういう時こそ詐欺などには気をつけなければならない。
前みたいなことにならないようにね。
「えぇ、殿が試練の塔に挑戦するんですか?」
詐欺はなかったが、殿が突然変なことを言い出した。
織田軍の有志で、試練の塔の2階層以上の調査を行なうというのだ。
まあいつかは1階層より上の調査は行なうとは思っていたが、まさか俺達にも関わりのあることだとは。
「ワシとお前、慶次郎、あと善住坊殿にも声をかけてほしい」
善住坊さんは殿の家臣である俺の弟子ではあるが、殿の直接の家臣ではない。
だから命令はできないのだが、善住坊さんは強いからね。
一緒に来てくれたら心強いってことだろう。
「何組かに分かれて探索するようだが、ワシらと同じ組には他に森勝三殿と柴田権六殿が同行する予定だ」
勝三君はともかく鬼柴田が一緒か。
あの人怖いんだよね。
まあ強さは折り紙つきだ。
問題はチームプレイができるかどうかだ。
1、2階層程度ならば個人の武勇で勝てない敵はいない。
だが3階層からはそうはいかない。
3階層からはゴブリンが武装し、集団行動を取る。
こちらも集団行動ができなければ、最悪死ぬこともありえる。
その代わりといってはなんだが、3階層からは金目の物が出る。
2階層までは箱の中身はすべて食べ物だ。
3階層に進み食えるわけでもない金目の物を手に入れるためには、命を賭けてもらわなければならない。
もちろん1、2階層でも人によっては命がけだが、よほどのことがない限りは死ぬようなことは無いはずだ。
だが3階層からはそうはいかない。
俺はダンジョンに誘い込んで人を殺したいわけではないのだが、リスクも無く金目の物を渡すと今以上に世が乱れる可能性がある。
だから残念だが、欲に目がくらんで身の丈に合わない階層に挑んだ人には一定数死んでもらわなければならないのだ。
侍に3階層を見せて大丈夫なのか心配になった。
「いつぞやは世話になったなっ!!」
お礼を言うだけなのに大声で言わないとダメなのかね。
耳がキンキンするほどの大音量で俺に話しかけるのは柴田権六こと柴田勝家だ。
大柄な身体に鋼のように鍛えられた筋肉を纏う初老の男。
身体もでかけりゃ声もでかい。
槍を持たせれば右に出る者なし。
怪力無双の鬼柴田。
嘘かホントか色々な逸話のある人物だ。
その怪力はある程度本当のようで、肩に担ぐのは単管パイプのような太さの鉄槍。
あれをダンジョンの中で振り回すつもりなのだろう。
1、2階層ではオーバーキルが過ぎる。
「今日はよろしくお願いします」
「では参ろうぞ!」
勝家以外は全員親しい友人知人家臣主君の関係であるこのパーティー。
だが仕切るのはやはりこの中で一番位の高い勝家だ。
個人の武勇だけではなく兵の指揮も上手だという定評のある勝家だが、果たしてダンジョン探索にそれが活かせるだろうか。
勝家の得意な戦法は確か先陣切っての突進だったかな。
大丈夫なんだろうか。
「むむ、この化け物めがっ!どぉぉりゃぁぁぁっ!!」
最初のゴブリンとの戦闘、勝家の鉄槍の一振りでひき肉となるゴブリン。
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