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110.足利義昭
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足利義昭は室町幕府第12代将軍足利義晴と5摂家の一角である近衛家の姫との間に生まれる。
足利将軍家では慣例として跡継ぎの長男以外の男児は全員仏門に入らないとならない。
よって次男であった義昭もお寺に入門してお坊さんとなる。
しばらくの僧侶生活をしていたが25歳のときに兄である13代将軍足利義輝が戦国一のボンバー野郎と名高い松永久秀たち三好一派に暗殺され、自分にも危険が降りかかったために寺を脱出。
その後各地の大名のもとを転々とする生活が始まる。
この人生のどん底時代を支えたのが細川藤孝などの幕臣たちだったんだよね。
6年にも渡る安定しない居候生活の末に、ついには織田信長の支援を得て征夷大将軍に登りつめる。
ここでエンドロールが流れたらいいシンデレラストーリーなんだけど、ここからどんどん転落していってしまう。
ついこの間まで信長が大忙しで走り回っていた信長包囲網だ。
今や浅井・朝倉も竹田も壊滅状態だけれど、あれで信長はかなり苦しめられた。
当然そんなことをしでかした将軍義昭を許しておくはずがない。
少数の兵を集めて抵抗した義昭だったがあっという間に信長に敗れ、京都から追放されてしまった。
これだけの敵対行為を働いた敵を信長は普段なら許さないのだけれど、一度担いだ神輿への義理なのか元将軍家に対するわずかばかりの敬意なのか信長は命までは取らなかった。
その後義昭は再び歴史に名を残すようなこともなく本能寺の変が起こり、時代は豊臣、徳川と変わっていく。
秀吉は将軍になるために一度義昭に養子縁組を申し入れているようだが、それも断られている。
だが元将軍家としての誇りを失わない程度の領地を義昭に与えて大名として遇した。
余生は61歳まで生き、それは安らかな人生だったそうな。
なんとも言えない気持ちになってくる。
義昭は将軍なんてものにならないほうが幸せだったのではないだろうか。
そしてどこで光秀が出てくるのかわからない。
明智光秀もまた謎が多い武将だ。
出自ですらはっきりとしない。
まあ明智城の戦いのときあの城が生まれ故郷だって信長が言っていたからおそらくそれは本当のことだろう。
しかしどんな人生をたどって義昭と知り合い、今信長に仕えるに至っているのかがよくわからないんだよね。
斎藤道三に仕えていたときもあったみたいだし、朝倉義景に仕えていたときもあったみたいだ。
斎藤家は土岐家と縁の深い家だからわからんでもないけど、朝倉っていったい光秀とどういう関係なのかな。
この時代の士官っていったら大体縁故採用だから朝倉ともたぶん縁はあるんだと思うけど。
朝倉時代の光秀もおかしなことだらけだ。
義昭が各地の大名に上洛のための協力要請を出しているとき、光秀はどうやら朝倉義景のもとに仕えていた。
そのときに義昭と出会ったようなのだが、『よくわかる戦国時代』で検索した結果そのとき光秀は義昭に「義景は頼りにならないが、信長は頼りがいのある男だ」と言って信長を勧めたようなのだ。
その後義昭は光秀を間に挟んで信長に協力要請を出している。
でもそれって変だよね。
自分が仕えている主君を落として信長を推すというのは普通じゃない。
信長の奥さんである濃姫は光秀が以前仕えていた斎藤道三の娘で、光秀自身とも血縁関係があるらしいけれど、それだけで信長をそんなに持ち上げるだろうか。
いやでも、よく考えたら厄介ごとを主君である義景から信長にスルーパスしただけのような気もするしな。
「わからん、さっぱりわからん」
「はいはい、ちょっと頭を冷やしましょうね」
難しいことの考えすぎで発熱してきていた俺の頭に、雪さんが持ってきてくれた冷えたおしぼりが乗せられる。
冷蔵庫で冷やしたようなキンキンではないけれど、井戸水で心地よく冷やされたおしぼりが脳みそを冷却してくれる。
はあ気持ちいい。
「そんなに難しく考えなくとも、案外謀反の理由なんて簡単なものかもしれませんよ。柴田勝家様がそんな難しいことを考えて謀反を起こしたと思えますか?」
「そういえばあの人も以前謀反を起こしているんだったね」
あのイノシシ武者の鬼柴田がそんな難しい理由で謀反を起こすとは思えない。
まあ猪突猛進な分頭のいい誰かに唆されればすぐにかっとなってやりそうではあるけれど。
逆に考えればイノシシ武者じゃないんだから光秀がそんな簡単に誰かに唆されるかな。
少なくとも足利義昭に何か言われたからと言ってはい信長を討ちますって簡単には言わないと思う。
一応将軍職はまだ辞してはいないとはいえ、実質将軍の地位からは落とされているんだ。
義昭にはすでに人を従わせる力はない。
よって義昭は黒幕候補から外してもいいと思う。
「いまのところ四国説が俺の中では最有力かな」
わざわざこの東海地方から四国まで行ってせこせこと話をまとめたのに信長によって面子を潰されて板挟みにされてしまったときの光秀の気持ちは想像するまでもない。
同じことをされたら俺も謀反を起こしているだろう。
というかそれ以外が原因だったら逆に光秀仏だな。
仏の顔も三度までだったのかな。
足利将軍家では慣例として跡継ぎの長男以外の男児は全員仏門に入らないとならない。
よって次男であった義昭もお寺に入門してお坊さんとなる。
しばらくの僧侶生活をしていたが25歳のときに兄である13代将軍足利義輝が戦国一のボンバー野郎と名高い松永久秀たち三好一派に暗殺され、自分にも危険が降りかかったために寺を脱出。
その後各地の大名のもとを転々とする生活が始まる。
この人生のどん底時代を支えたのが細川藤孝などの幕臣たちだったんだよね。
6年にも渡る安定しない居候生活の末に、ついには織田信長の支援を得て征夷大将軍に登りつめる。
ここでエンドロールが流れたらいいシンデレラストーリーなんだけど、ここからどんどん転落していってしまう。
ついこの間まで信長が大忙しで走り回っていた信長包囲網だ。
今や浅井・朝倉も竹田も壊滅状態だけれど、あれで信長はかなり苦しめられた。
当然そんなことをしでかした将軍義昭を許しておくはずがない。
少数の兵を集めて抵抗した義昭だったがあっという間に信長に敗れ、京都から追放されてしまった。
これだけの敵対行為を働いた敵を信長は普段なら許さないのだけれど、一度担いだ神輿への義理なのか元将軍家に対するわずかばかりの敬意なのか信長は命までは取らなかった。
その後義昭は再び歴史に名を残すようなこともなく本能寺の変が起こり、時代は豊臣、徳川と変わっていく。
秀吉は将軍になるために一度義昭に養子縁組を申し入れているようだが、それも断られている。
だが元将軍家としての誇りを失わない程度の領地を義昭に与えて大名として遇した。
余生は61歳まで生き、それは安らかな人生だったそうな。
なんとも言えない気持ちになってくる。
義昭は将軍なんてものにならないほうが幸せだったのではないだろうか。
そしてどこで光秀が出てくるのかわからない。
明智光秀もまた謎が多い武将だ。
出自ですらはっきりとしない。
まあ明智城の戦いのときあの城が生まれ故郷だって信長が言っていたからおそらくそれは本当のことだろう。
しかしどんな人生をたどって義昭と知り合い、今信長に仕えるに至っているのかがよくわからないんだよね。
斎藤道三に仕えていたときもあったみたいだし、朝倉義景に仕えていたときもあったみたいだ。
斎藤家は土岐家と縁の深い家だからわからんでもないけど、朝倉っていったい光秀とどういう関係なのかな。
この時代の士官っていったら大体縁故採用だから朝倉ともたぶん縁はあるんだと思うけど。
朝倉時代の光秀もおかしなことだらけだ。
義昭が各地の大名に上洛のための協力要請を出しているとき、光秀はどうやら朝倉義景のもとに仕えていた。
そのときに義昭と出会ったようなのだが、『よくわかる戦国時代』で検索した結果そのとき光秀は義昭に「義景は頼りにならないが、信長は頼りがいのある男だ」と言って信長を勧めたようなのだ。
その後義昭は光秀を間に挟んで信長に協力要請を出している。
でもそれって変だよね。
自分が仕えている主君を落として信長を推すというのは普通じゃない。
信長の奥さんである濃姫は光秀が以前仕えていた斎藤道三の娘で、光秀自身とも血縁関係があるらしいけれど、それだけで信長をそんなに持ち上げるだろうか。
いやでも、よく考えたら厄介ごとを主君である義景から信長にスルーパスしただけのような気もするしな。
「わからん、さっぱりわからん」
「はいはい、ちょっと頭を冷やしましょうね」
難しいことの考えすぎで発熱してきていた俺の頭に、雪さんが持ってきてくれた冷えたおしぼりが乗せられる。
冷蔵庫で冷やしたようなキンキンではないけれど、井戸水で心地よく冷やされたおしぼりが脳みそを冷却してくれる。
はあ気持ちいい。
「そんなに難しく考えなくとも、案外謀反の理由なんて簡単なものかもしれませんよ。柴田勝家様がそんな難しいことを考えて謀反を起こしたと思えますか?」
「そういえばあの人も以前謀反を起こしているんだったね」
あのイノシシ武者の鬼柴田がそんな難しい理由で謀反を起こすとは思えない。
まあ猪突猛進な分頭のいい誰かに唆されればすぐにかっとなってやりそうではあるけれど。
逆に考えればイノシシ武者じゃないんだから光秀がそんな簡単に誰かに唆されるかな。
少なくとも足利義昭に何か言われたからと言ってはい信長を討ちますって簡単には言わないと思う。
一応将軍職はまだ辞してはいないとはいえ、実質将軍の地位からは落とされているんだ。
義昭にはすでに人を従わせる力はない。
よって義昭は黒幕候補から外してもいいと思う。
「いまのところ四国説が俺の中では最有力かな」
わざわざこの東海地方から四国まで行ってせこせこと話をまとめたのに信長によって面子を潰されて板挟みにされてしまったときの光秀の気持ちは想像するまでもない。
同じことをされたら俺も謀反を起こしているだろう。
というかそれ以外が原因だったら逆に光秀仏だな。
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