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7.傷薬
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金太郎さんと八重さんの家の庭先にある、俺の腕が埋まっているという場所に左腕1本でグングニルを突き立てた。
一応お墓のようなものだ。
成仏しろよ、俺。
神槍グングニルは危険物なので本来ならば収納の指輪に入れてしまっておきたいところだが、いきなり消えたらお前が持ってたあの槍どこいったとなるだろう。
ここに刺しておけば俺がなんらかの感傷からこの槍を刺したと思ってあの2人は不用意に触りはしないだろう。
家の外なので盗まれる危険性はあるけれど、盗まれたら盗まれたでいい。
正直あんな危険なものは俺の手には負えん。
あの槍がもし悪人の元に渡ればもしかしたら世界に破壊の波が押し寄せるかもしれない。
しかししっかりと世界の秩序を守れる人の手に渡れば束の間の平和が訪れたりする可能性だってある。
力というのはそういうものだ。
無責任だが、世界の情勢なんかいつだって運任せじゃないか。
少しくらいイレギュラーな要素が混じったところでそれはそれだ。
歴史は確実に変わってしまうだろうが、俺がこの時代にトリップした時点ですでに未来なんか変わっていることだろう。
バタフライエフェクトとかいうので、俺が起こした蝶の羽ばたきのような小さな風が未来を大きく変えてしまうことだってあるのだ。
そもそも有名な物理学者によれば未来というのは一つではないらしい。
俺がこの時代にトリップした世界と俺がトリップしなかった世界はすでに分かれ、別の未来をたどっていることだろう。
パラレルワールドというやつだ。
神槍グングニルが盗まれて世界が大変なことになる未来もまた、パラレルな世界線の中には存在しているに違いない。
「さて、アイテムの検証の続きをするか」
アイテムの検証はあの2人がいないときじゃないとできないからね。
同じくガチャも。
やってもいいがもし米俵のような大きなものが出たらどうしても現実化のときにドスンと重たい音がしてしまう。
2人がその程度のことで俺のことを怪しんだりするとは思えないけれど、転んだのかと勘違いさせて心配させてしまうのは申し訳ない。
2人が帰ってくるまでに、アイテムの検証と今日の分のガチャを済ませてしまおう。
俺は縁側に座り、Sランクのアイテムである仙丹を取り出した。
こいつがSランク最後のアイテムなんだよな。
仙丹といえば飲めば不老不死の仙人になれるといわれている伝説上の霊薬だ。
俺はこのアイテムに、もしかしたら腕が治るのではないかという仄かな期待を寄せていた。
仙人になれると言われている薬なのだから、そのくらいのことが起こっても不思議ではない。
「まあまずは傷薬から試すか」
Aランクのアイテムにも、薬のアイテムがあった。
その名も傷薬。
そのまんまの名前だ。
これがファンタジーの中に出てくるHPを回復してくれる薬なのか、それともオ〇ナイン軟膏のような普通の傷薬なのかは微妙なラインだ。
Dランクのたわしは普通のたわしだった。
ひのきの棒も普通の棒。
Cランクは食べ物と飲み物。
米俵に入った米とペットボトルに入った水だ。
まだ口にしてはいないが、おそらく普通の食べ物と飲みものだろう。
Bランクは日本昔話の鬼が持っていそうな金棒。
重くて持ち上がらなかったが、おそらく普通の武器だと思う。
そしてAランク。
この傷薬と丈夫な戦斧だ。
戦斧を持ち上げてみると、グングニルのように軽々持ち上がった。
身の丈ほどもある巨大なロマン武器なのにだ。
これはおそらく、普通の武器ではないだろう。
デザインからグングニルにも感じた、気品のようなものを感じる。
ネトゲで例えるならば、運営側の力の入り方が違うのだ。
では何が普通の武器と違うのかといえば、まずはこの軽さだろう。
重たそうに見えるのに軽々持ち上がる不思議な金属で作られていること。
あとはアイテム名から考えるに、耐久性に重きを置いた武器なのではなかろうか。
俺は戦斧を左手1本で振り上げ、近くの岩に思い切り叩きつけてみた。
怪力無双でもない俺の一撃は岩に白い線を引くだけに終わったが、甲高い金属音が山にこだまする。
これは刃いってしまったかなと思って斧の刃を見ると、美しい鏡面仕上げのまま傷一つ付いていなかった。
やはりこれもグングニルのような破壊力はないもののファンタジーな武器なのか。
同じAランクのアイテムである傷薬に期待が高まる。
俺はまだ生傷が癒えていない右腕の断面に塗ってみることにした。
肘の少し上で切断された腕には、血止めと化膿止めが塗り込まれて綺麗なサラシが巻かれている。
左腕1本では結び目が解けず、布を乱暴に取り払った。
「いてて、まだ全然肉丸見えだな」
血は止まっているものの、断面はまだグロテスクな状態から進展していなかった。
何日眠っていたかはわからないが、そんなに早く治るもんでもないか。
俺は普通の軟膏のような丸い容器に入った薬を、右腕の断面にそっと塗っていく。
色は緑色で、匂いは無い。
塗った瞬間傷が熱くなったので少し手を止める。
「すげ、治ってる」
薬を塗った場所が生々しい傷から綺麗な肌に戻っていた。
痛みもない。
これはすごい。
あっという間に傷口全面が綺麗に塞がった。
「でも、こうじゃないんだよな……」
動くたび痛む傷が綺麗に塞がったのは素晴らしいことだ。
もしこの傷薬を腕に木の枝が刺さった時点で塗っていたらきっと腕を切断するようなことにもなっていなかっただろう。
これからも怪我をしたときは安心だ。
だが、今はそうじゃない。
俺が求めていたのは、イモリのように腕が新しく生えてくるようなそんな光景だ。
Aランクのアイテムでもそれができないということは、残る希望はSランクのアイテムである仙丹だけか。
一応お墓のようなものだ。
成仏しろよ、俺。
神槍グングニルは危険物なので本来ならば収納の指輪に入れてしまっておきたいところだが、いきなり消えたらお前が持ってたあの槍どこいったとなるだろう。
ここに刺しておけば俺がなんらかの感傷からこの槍を刺したと思ってあの2人は不用意に触りはしないだろう。
家の外なので盗まれる危険性はあるけれど、盗まれたら盗まれたでいい。
正直あんな危険なものは俺の手には負えん。
あの槍がもし悪人の元に渡ればもしかしたら世界に破壊の波が押し寄せるかもしれない。
しかししっかりと世界の秩序を守れる人の手に渡れば束の間の平和が訪れたりする可能性だってある。
力というのはそういうものだ。
無責任だが、世界の情勢なんかいつだって運任せじゃないか。
少しくらいイレギュラーな要素が混じったところでそれはそれだ。
歴史は確実に変わってしまうだろうが、俺がこの時代にトリップした時点ですでに未来なんか変わっていることだろう。
バタフライエフェクトとかいうので、俺が起こした蝶の羽ばたきのような小さな風が未来を大きく変えてしまうことだってあるのだ。
そもそも有名な物理学者によれば未来というのは一つではないらしい。
俺がこの時代にトリップした世界と俺がトリップしなかった世界はすでに分かれ、別の未来をたどっていることだろう。
パラレルワールドというやつだ。
神槍グングニルが盗まれて世界が大変なことになる未来もまた、パラレルな世界線の中には存在しているに違いない。
「さて、アイテムの検証の続きをするか」
アイテムの検証はあの2人がいないときじゃないとできないからね。
同じくガチャも。
やってもいいがもし米俵のような大きなものが出たらどうしても現実化のときにドスンと重たい音がしてしまう。
2人がその程度のことで俺のことを怪しんだりするとは思えないけれど、転んだのかと勘違いさせて心配させてしまうのは申し訳ない。
2人が帰ってくるまでに、アイテムの検証と今日の分のガチャを済ませてしまおう。
俺は縁側に座り、Sランクのアイテムである仙丹を取り出した。
こいつがSランク最後のアイテムなんだよな。
仙丹といえば飲めば不老不死の仙人になれるといわれている伝説上の霊薬だ。
俺はこのアイテムに、もしかしたら腕が治るのではないかという仄かな期待を寄せていた。
仙人になれると言われている薬なのだから、そのくらいのことが起こっても不思議ではない。
「まあまずは傷薬から試すか」
Aランクのアイテムにも、薬のアイテムがあった。
その名も傷薬。
そのまんまの名前だ。
これがファンタジーの中に出てくるHPを回復してくれる薬なのか、それともオ〇ナイン軟膏のような普通の傷薬なのかは微妙なラインだ。
Dランクのたわしは普通のたわしだった。
ひのきの棒も普通の棒。
Cランクは食べ物と飲み物。
米俵に入った米とペットボトルに入った水だ。
まだ口にしてはいないが、おそらく普通の食べ物と飲みものだろう。
Bランクは日本昔話の鬼が持っていそうな金棒。
重くて持ち上がらなかったが、おそらく普通の武器だと思う。
そしてAランク。
この傷薬と丈夫な戦斧だ。
戦斧を持ち上げてみると、グングニルのように軽々持ち上がった。
身の丈ほどもある巨大なロマン武器なのにだ。
これはおそらく、普通の武器ではないだろう。
デザインからグングニルにも感じた、気品のようなものを感じる。
ネトゲで例えるならば、運営側の力の入り方が違うのだ。
では何が普通の武器と違うのかといえば、まずはこの軽さだろう。
重たそうに見えるのに軽々持ち上がる不思議な金属で作られていること。
あとはアイテム名から考えるに、耐久性に重きを置いた武器なのではなかろうか。
俺は戦斧を左手1本で振り上げ、近くの岩に思い切り叩きつけてみた。
怪力無双でもない俺の一撃は岩に白い線を引くだけに終わったが、甲高い金属音が山にこだまする。
これは刃いってしまったかなと思って斧の刃を見ると、美しい鏡面仕上げのまま傷一つ付いていなかった。
やはりこれもグングニルのような破壊力はないもののファンタジーな武器なのか。
同じAランクのアイテムである傷薬に期待が高まる。
俺はまだ生傷が癒えていない右腕の断面に塗ってみることにした。
肘の少し上で切断された腕には、血止めと化膿止めが塗り込まれて綺麗なサラシが巻かれている。
左腕1本では結び目が解けず、布を乱暴に取り払った。
「いてて、まだ全然肉丸見えだな」
血は止まっているものの、断面はまだグロテスクな状態から進展していなかった。
何日眠っていたかはわからないが、そんなに早く治るもんでもないか。
俺は普通の軟膏のような丸い容器に入った薬を、右腕の断面にそっと塗っていく。
色は緑色で、匂いは無い。
塗った瞬間傷が熱くなったので少し手を止める。
「すげ、治ってる」
薬を塗った場所が生々しい傷から綺麗な肌に戻っていた。
痛みもない。
これはすごい。
あっという間に傷口全面が綺麗に塞がった。
「でも、こうじゃないんだよな……」
動くたび痛む傷が綺麗に塞がったのは素晴らしいことだ。
もしこの傷薬を腕に木の枝が刺さった時点で塗っていたらきっと腕を切断するようなことにもなっていなかっただろう。
これからも怪我をしたときは安心だ。
だが、今はそうじゃない。
俺が求めていたのは、イモリのように腕が新しく生えてくるようなそんな光景だ。
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