チートをもらえるけど戦国時代に飛ばされるボタン 押す/押さない

兎屋亀吉

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チートをもらえるけど平安時代に飛ばされるボタン 押す/押さない

10.ひのきの棒を装備した

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「この槍が、あの日の雷の正体か」

 金太郎さんは俺の腕のお墓に刺してあった神槍グングニルを引き抜き、静かに観察する。
 俺が馬鹿な事故によって右腕に大怪我を負った日、金太郎さんは足柄山の山頂付近で雷のような轟音を聞いたそうだ。
 雲一つない天気だったため、妖かなにかが引き起こした事象だと思ったのだという。
 しばらくして音がしたあたりの様子を見に行ってみれば、腕から血を流した俺が倒れていたというわけだ。
 そりゃあ俺のことを人ならざる者だと疑うはずだ。
 実際はただのマヌケな人間だったんですが。
 
「あの日も思ったが、この槍は尋常の武器ではないな。俺の力でも重くてまともに振ることができん」

「え、重い?」

 俺にはグングニルはまるでアルミでできているかのごとく軽く感じるのだが、金太郎さんは違うらしい。
 持つ人によって重さが変わっているのだろうか。
 さすがはSランクの武器だ、意味がわからん。

「まあいい、危険なものならしまっておけ」

「はい」

 俺は言われたとおりグングニルを収納の指輪に収めた。
 誰かの手に渡って時代を動かしてほしかったが、誰にでも使えるものではないのなら意味がない。
 もしかしたらレアアイテムは俺にしか使えない機能とかが付いているのかもしれないな。
 それはそれでちょっとだけ優越感を感じる。

「普通の武器は持っておらんのか」

「いくつかありますよ。大斧と金棒と普通の槍と、あとはひのきの棒くらいですかね」

「武術の心得は?」

「全く」

「ひのきの棒でも持っておけ」

 俺もそれが一番しっくりくると思ってました。
 今日はこれから金太郎さんに付いて山に入るのだ。
 熊や狼、猪などの危険な野生動物も出没することがあるそうなので、何か武器となるもの探していた。
 しかしグングニルは論外としてろくに使える武器がなかった。
 そもそも武道経験ゼロの俺が持っていきなり戦える武器なんかこの世に存在していないのだ。
 身軽にしておいていざとなったら全力で逃げたほうがまだ生存確率は高くなるだろう。
 ひのきの棒でも杖にしてついていくとしよう。
 金太郎さんは森の中でも使いやすそうな短弓を肩にかけ、手には1メートルくらいの短い槍のようなものを持っている。
 まさかりは担がないんですかね。

「ん?なんだ、そんなにじろじろ見て」

「いや、まさかりを武器にしたりはしないのかなと」

「まさかりなんか木を切り倒すときくらいしか使わんだろ。武器とするには取り回しが悪すぎる」

「ですよね」

 後世では足柄山の金太郎といえばまさかり担いでいると教えてあげたらどんな反応をするだろうか。
 おかっぱ頭に真っ赤な前掛けがトレードマークなほうがショックが大きいかもしれない。
 実物の毛皮纏った蛮族スタイルもそう変わりないか。
 
「いくぞ」

「はい」

 颯爽と歩きだした金太郎さんの後ろを慌てて追う。
 ちなみに足には八重さんが編んでくれた草鞋を履いている。
 俺の持ってる履物ってビーチサンダルしかないからね。
 草鞋も同じようなものだと思うだろうが、これが意外と違うのだ。
 藁紐で足に縛り付けることができるため、サンダルのような感じになって簡単には脱げない。
 地肌に履くとチクチクしてしまうのが難点だな。
 足袋を履いてその上から履くのが正解だろう。
 早くガチャで日用品を充実させなくては。
 ちなみに今日の朝のガチャの結果は次のとおり。

Sランク
 なし

Aランク
 ・万能薬

Bランク
 ・高級ワイン

Cランク
 ・ぶどうジュース×10
 ・しょうゆ×10
 ・味噌×10
 ・日本酒×10

Dランク
 ・爪楊枝
 ・ティッシュ
 ・耳かき
 ・三角定規

 贅沢は言いたくないが、ぱっとせんな。
 Aランクの万能薬というのが気になって飲んでみたのだが、やはり腕は生えてこなかった。
 下していた腹が治ったので、おそらく病気系に効力を発揮するタイプの回復アイテムなのだろう。
 過去3回のガチャの結果を見てみると、ランクごとのアイテムの傾向が見えてくる。
 Dランクは現代なら数百円以内で買えるようなものが多い。
 Cランクは食べ物や飲み物が多いが、量が多く金額にすると結構な額になりそうだ。
 Bランクはファンタジーな力は持たないけれど、かなりの業物だったり高級品だったりする物。
 Aランクはファンタジーが混ざり始める。
 Sランクは天井知らずのファンタジー。
 こうして見ると、実際の生活に役立つのはCランクより下のアイテムなのだと気付かされる。
 それが分かっていながらも、少しでもいいレアリティのアイテムが出て欲しいと願ってしまうのがガチャの魔力だよな。
 そんなことを考えながら歩いていると、目的地である草原についた。
 ここで薬の原料となる草を摘んで帰るのが今日の俺たちの仕事なのだ。

「驚いた。てっきりついてこられないと思っていたが、お前は意外と体力があるな」

 金太郎さんの言葉にはっとする。
 そういえば、俺はこんな速度で歩けるような人間だっただろうか。
 ろくすぽ運動もしないような現代人だぞ。
 少し階段を上がっただけで息切れをする程度には運動不足だったはずだ。
 これも仙丹を口にして仙人となった影響だろうか。
 力が漲ってどこまでも歩いていけそうな気がした。
 
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