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005話 魔石っていうものがあったね
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次の日、落とし穴に行ったらまた蛙が落ちていた。
こいつらバカなのかな。おいしくいただきました。
昨日放置していった、内臓など蛙の食べたくない部分がひどい臭いを放っていたので、この落とし穴は埋めて新しい落とし穴を掘ることにした。
落とし穴を掘るのは魔法の練習にちょうどいい。
前回よりも魔力が増えているのか、穴掘りが上手くなっているのか、前回よりも早く落とし穴が完成した。
あとは獲物が掛かるのを待つだけだ。また蛙が掛かる気がするけど。
洞窟に戻る途中で、一匹の兎のような魔獣を見つけた。
それは兎のような見た目だが、額から一本の角が生えている。前世の僕も見たことがある魔獣、ホーンラビットだった。
体長は僕の体長の3分の2くらいはあり、今の僕に狩れるか微妙だったが、とりあえずやってみることにした。
先手必勝とばかりに僕は、ありったけの魔力を込めた雷魔法をお見舞いした。母虎も雷魔法を使っていたし、種族特性的に雷魔法が得意な種族なのかもしれないと思ったのだ。
僕の身体から出た雷は、明らかに母虎のものよりも細くて威力は10分の1もなさそうだ。
それでも他の魔法と比べると、幾分かは威力があるので、僕が転生したこの虎みたいな種族は雷魔法が得意な種族みたいだ。
雷魔法はホーンラビットに当たったけれど、一撃では仕留めきれなかったみたいで、ホーンラビットはよろけながら逃げ始めた。
ホーンラビットは足が速くて、普通の状態では逃げられてしまったかもしれないが、雷魔法が当たってよろよろとしているホーンラビットは、僕でも捕まえることができた。
後ろから首に噛み付いて止めを刺した。これが自然の摂理だ。許せ兎よ。ホーンラビットのつぶらな瞳と目が合った気がした。
洞窟に戻った僕は、ホーンラビットの肉を焼いて食べることにした。
さっき蛙を食べたばかりだが、成長期の僕はすぐにお腹が減る。
薪を集めたり、ホーンラビットを解体したりするのに虎の手足は不便だ。
右往左往しているうちに、おもしろいことに気づいた。
この尻尾、伸びる。
母虎の尻尾が虎の尻尾にしては長かったので、大人になったら伸びるのだろうと思っていたが、まさかの伸縮自在だった。
母虎に崖から落とされたとき、兄弟たちは尻尾を使って落下スピードを落としたのかな、などと思いながら僕は尻尾を上手く使って、薪を拾ってホーンラビットをさばいた。
ホーンラビットを解体するのは、刃物がないので上手くいかなかったが、なんとか肉と毛皮と内臓に分けることができた。
毛皮は寝床にして、内臓の一部と肉を、尖らせた木の枝に刺して焚き火の周りで焼いていく。
適当にちぎったままの肉と、血の滴っているような内臓は最初は美味しそうには感じなかったが、こんがり焼けて脂が落ち始める頃にはごくりと生唾を飲み込むほど、食欲を掻き立てられた。
なんの味も付けていない、塩すら振っていないただ焼いただけの肉だが、この世界に転生してから初めてのちゃんと調理した食事に、僕は少しだけ感動した。
熱々で、まだジュージューという音を立てている肉にかぶりついた。ちょっぴり涙が出た。
焦りすぎて口の中を火傷してしまったようだ。治癒魔法で癒してから、少しフーフーしてから再度かぶりついた。
生肉よりも歯ごたえが増して、中から肉汁が溢れ出す肉は最高に美味しかった。
一つ前の前世ではジビエ料理として知られた兎肉のような臭みはなく、脂がのっていて鶏もも肉のような味がした。
内臓は、食べられそうなレバーや砂肝にあたる部分をまとめて同じ木の枝に刺して焼いてみた。コリコリとした食感だったり、テュルッとした食感だったり、ちょっとした珍味を楽しんだ。
そして焼き鳥でいうとハツにあたる部分を食べたとき、ガリッという硬いものを噛んだような感覚が、歯から伝わってくる。
すぐに吐き出してみると、それは紫がかった黒色をした、丸くてツルツルとした宝石だった。
これは魔石だ。完全に忘れていたけれど、この世界の魔獣は心臓に魔力の器があり、死ぬと結晶化して魔石となるのだった。
この世界では魔力を持った動物を魔獣や魔物、モンスターなどと呼び、討伐して得た魔石は魔道具や儀式魔法に使う素材として、人々の暮らしを豊かにするために使われていたはずだ。
僕が生きていた時代では、冒険者ギルドというものがあって、討伐依頼などの仲介や、素材の買取などを行っていて、魔石の安定供給も冒険者ギルドが受け持っていた。
魔獣には魔石があるということをすっかり忘れていたので、昨日と今日で食べた2匹の蛙は魔石を取らずに埋めてしまった。
魔石のために掘り返すのも面倒だし、そこまで魔石が欲しいわけではないので掘り返さないけれども、なんとなくもったいないことをした気分だ。
これからは狩った魔物からはちゃんと魔石をとらないと。
魔石をたくさん貯めて魔道具を作ったりして、この洞窟での暮らしを少しずつ近代的にしていくのもいいかもしれない。
今は森で野生の魔獣として生活してはいるけれども、僕は少し前まで電化製品が当たり前の生活を送っていたのだ。
いいことがあまりなかったような前世ではあるけれども、文明の水準だけは高かった。
前世で20数年間過ごして、便利な機械文明が当たり前のように感じてしまっていたけれど、転生した当初はなんという高度な文明社会だろうと驚いていたのだ。
便利なものに慣れてしまうと、不便な生活が余計に不便に感じてしまうものだ。
僕は電子レンジや冷蔵庫のある生活に懐かしさを感じながら、ホーンラビットの毛皮に包まって眠った。
こいつらバカなのかな。おいしくいただきました。
昨日放置していった、内臓など蛙の食べたくない部分がひどい臭いを放っていたので、この落とし穴は埋めて新しい落とし穴を掘ることにした。
落とし穴を掘るのは魔法の練習にちょうどいい。
前回よりも魔力が増えているのか、穴掘りが上手くなっているのか、前回よりも早く落とし穴が完成した。
あとは獲物が掛かるのを待つだけだ。また蛙が掛かる気がするけど。
洞窟に戻る途中で、一匹の兎のような魔獣を見つけた。
それは兎のような見た目だが、額から一本の角が生えている。前世の僕も見たことがある魔獣、ホーンラビットだった。
体長は僕の体長の3分の2くらいはあり、今の僕に狩れるか微妙だったが、とりあえずやってみることにした。
先手必勝とばかりに僕は、ありったけの魔力を込めた雷魔法をお見舞いした。母虎も雷魔法を使っていたし、種族特性的に雷魔法が得意な種族なのかもしれないと思ったのだ。
僕の身体から出た雷は、明らかに母虎のものよりも細くて威力は10分の1もなさそうだ。
それでも他の魔法と比べると、幾分かは威力があるので、僕が転生したこの虎みたいな種族は雷魔法が得意な種族みたいだ。
雷魔法はホーンラビットに当たったけれど、一撃では仕留めきれなかったみたいで、ホーンラビットはよろけながら逃げ始めた。
ホーンラビットは足が速くて、普通の状態では逃げられてしまったかもしれないが、雷魔法が当たってよろよろとしているホーンラビットは、僕でも捕まえることができた。
後ろから首に噛み付いて止めを刺した。これが自然の摂理だ。許せ兎よ。ホーンラビットのつぶらな瞳と目が合った気がした。
洞窟に戻った僕は、ホーンラビットの肉を焼いて食べることにした。
さっき蛙を食べたばかりだが、成長期の僕はすぐにお腹が減る。
薪を集めたり、ホーンラビットを解体したりするのに虎の手足は不便だ。
右往左往しているうちに、おもしろいことに気づいた。
この尻尾、伸びる。
母虎の尻尾が虎の尻尾にしては長かったので、大人になったら伸びるのだろうと思っていたが、まさかの伸縮自在だった。
母虎に崖から落とされたとき、兄弟たちは尻尾を使って落下スピードを落としたのかな、などと思いながら僕は尻尾を上手く使って、薪を拾ってホーンラビットをさばいた。
ホーンラビットを解体するのは、刃物がないので上手くいかなかったが、なんとか肉と毛皮と内臓に分けることができた。
毛皮は寝床にして、内臓の一部と肉を、尖らせた木の枝に刺して焚き火の周りで焼いていく。
適当にちぎったままの肉と、血の滴っているような内臓は最初は美味しそうには感じなかったが、こんがり焼けて脂が落ち始める頃にはごくりと生唾を飲み込むほど、食欲を掻き立てられた。
なんの味も付けていない、塩すら振っていないただ焼いただけの肉だが、この世界に転生してから初めてのちゃんと調理した食事に、僕は少しだけ感動した。
熱々で、まだジュージューという音を立てている肉にかぶりついた。ちょっぴり涙が出た。
焦りすぎて口の中を火傷してしまったようだ。治癒魔法で癒してから、少しフーフーしてから再度かぶりついた。
生肉よりも歯ごたえが増して、中から肉汁が溢れ出す肉は最高に美味しかった。
一つ前の前世ではジビエ料理として知られた兎肉のような臭みはなく、脂がのっていて鶏もも肉のような味がした。
内臓は、食べられそうなレバーや砂肝にあたる部分をまとめて同じ木の枝に刺して焼いてみた。コリコリとした食感だったり、テュルッとした食感だったり、ちょっとした珍味を楽しんだ。
そして焼き鳥でいうとハツにあたる部分を食べたとき、ガリッという硬いものを噛んだような感覚が、歯から伝わってくる。
すぐに吐き出してみると、それは紫がかった黒色をした、丸くてツルツルとした宝石だった。
これは魔石だ。完全に忘れていたけれど、この世界の魔獣は心臓に魔力の器があり、死ぬと結晶化して魔石となるのだった。
この世界では魔力を持った動物を魔獣や魔物、モンスターなどと呼び、討伐して得た魔石は魔道具や儀式魔法に使う素材として、人々の暮らしを豊かにするために使われていたはずだ。
僕が生きていた時代では、冒険者ギルドというものがあって、討伐依頼などの仲介や、素材の買取などを行っていて、魔石の安定供給も冒険者ギルドが受け持っていた。
魔獣には魔石があるということをすっかり忘れていたので、昨日と今日で食べた2匹の蛙は魔石を取らずに埋めてしまった。
魔石のために掘り返すのも面倒だし、そこまで魔石が欲しいわけではないので掘り返さないけれども、なんとなくもったいないことをした気分だ。
これからは狩った魔物からはちゃんと魔石をとらないと。
魔石をたくさん貯めて魔道具を作ったりして、この洞窟での暮らしを少しずつ近代的にしていくのもいいかもしれない。
今は森で野生の魔獣として生活してはいるけれども、僕は少し前まで電化製品が当たり前の生活を送っていたのだ。
いいことがあまりなかったような前世ではあるけれども、文明の水準だけは高かった。
前世で20数年間過ごして、便利な機械文明が当たり前のように感じてしまっていたけれど、転生した当初はなんという高度な文明社会だろうと驚いていたのだ。
便利なものに慣れてしまうと、不便な生活が余計に不便に感じてしまうものだ。
僕は電子レンジや冷蔵庫のある生活に懐かしさを感じながら、ホーンラビットの毛皮に包まって眠った。
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