おっぱいポイント

兎屋亀吉

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14.女で男で時々モンスター、真の姿はおっさん

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「だから私はモンスターじゃないんですって」

「どうやってそれを証明する?」

「さっきからあなた何様なんですか?なんでいち冒険者に過ぎないあなたにモンスターじゃない証明をしないといけないんですか?あなたになんの権限があるんですか?」

「冒険者はモンスターを殺すのが義務だ!!」

「そうなんですか?ほら皆さん、首を横に振ってますよ」

「お前らこいつの味方するのかよ!!」

「お前こそ頭がおかしいのか?この姉ちゃんがモンスターだったとしても、俺はこんな人間みたいにしゃべるモンスター殺すのはごめんだぜ!」

 口論は俺の優勢だが、混迷の様相を呈してきた。
 俺を殺す派は3人ほどで、それ以外は殺したくない派だ。
 もはやテンプレ的展開とは程遠い泥沼の口論が繰り広げられる。
 冒険者ならもっとすぐに手が出るのかと思っていたが、こいつら結構理性的。
 ゆえに口論は終わらない。
 もううんざりしてきたところにようやく受付のお姉さんが上司を連れてきてくれた。
 出てきたのは耳の長い超絶イケメン。
 エルフという種族だとケルビム君の知識にはある。
 生まれた時からイケメンの人生勝ち組種族。
 だが女も男も美形ぞろいで長命でさらに魔法スキル標準装備というハイスペック過ぎる種族ゆえに、奴隷としてよく狙われてしまうという可哀想な種族でもある。
 イケメンもなかなか大変なんだな。

「これはどういう状況なんですか?」

 丁寧な口調ながらもタマタマがひゅんとなるような力を感じさせる声音だ。
 あ、今タマタマなかった。
 無いけどちゃんとヒュンとはなるんだな。
 
「ギルド長、こいつがさっきモンスターに変身したんだ!こいつは人間に変化したモンスターに違いないぜ!!」

「そうなんですか?」

 ギルド長と呼ばれたイケメンエルフは男の話を鵜呑みにはせず、受付嬢のお姉さんに話を聞く。

「いえ、それは私には分かりかねます。ただこちらの方のの説明では、変身という人間以外に姿を変えることができるスキルであるとのことです。さきほど見せていただいた姿もオーガでしたし、私としてもオーガが人化するよりも人間がオーガに変身するほうがありえる話だと思うのですが」

「そうですね。たとえ人間に化けることができるスキルを持ったオーガがいたとしても、それほど知能が高くないオーガに人間の国にもぐりこむのは不可能でしょう。それに、そのスキルが変身なのか人化なのかは他の姿に変身して見せてもらえば簡単に分かるのではないですか?」

 盲点だったな。
 俺は早速ゴブリンの姿に変身して見せる。
 ゴブリンは小柄だが、それでも服が脱げるほどじゃない。
 さきほどの失敗を無駄にはしない。

「これでこの子のスキルが変身であると証明されましたね。この子に詰め寄ったものたちはさっさと謝ってこの件はおしまいです」

 超絶イケメンエルフはさらっと問題を解決して帰っていった。
 なんというイケメン力。
 
「「「悪かった……」」」

 最期まで強硬な態度をとり続けた冒険者を中心に、俺に次々謝っていく。
 なにこれ、俺の知ってる冒険者と違う。
 王都の冒険者はもっとどうしようもない荒くれで、ひねくれていた。
 これがギルド長の格の違いだろうか。
 このギルドを拠点に活動している冒険者たちは、荒くれながらもどこかお行儀がいいような気がする。
 すごいな。
 最北の街に行ってみて、そこも王都の冒険者ギルドような雰囲気だったらここに戻ってきてここで活動するのも悪くないな。






 次の日、俺は初めての依頼を受けることにした。
 昨日はいろいろあったからそのまま宿に帰った。
 他の冒険者とも少しギクシャクしていたからな。
 今日は何食わぬ顔で20代男冒険者ケルビムとしてさらっと依頼を受けるつもりだ。
 昨日の今日で怪しまれるかもしれないが、冒険者はスキルをすべてさらけ出すようなことはなく、ギルド職員も申告されていないスキルについては詮索しようがない。
 あきらかになんらかのスキルで男になっている俺についても、ギルド職員のほうからなにか言われることもないというわけだ。
 
「あの、ご本人でしょうか?」

 なるほど、そういうアプローチのしかたもあるわけだ。

「本人です」

「でも昨日は女性でしたよね?」

「それは私のスキルに深く関係することですのでお話することはできません」

「ですが、あなたが他人のギルドカードを使用している可能性もあります」

「なるほど。ではどうすれば?」

「昨日のスキルを使用する姿を見せていただくか、昨日の姿になっていただけますか?」

「別室でもいいですか?」

「はい。構いません」

 俺は今の話を聞いていたものがいたかどうかさりげなくうかがうが、寝坊して出遅れたのが幸いしたようでギルド内の人はまばらで近くに誰もいなかった。
 ギルド職員の案内で別室に通され、そこで女の姿に変化する。

「これで構いませんか?」

「すごい……。いったいどうなっているんですか?」

「スキルです」

「そうでしたね。確かにケルビムさん本人であると確認いたしました」

 それからギルド職員に依頼についての説明を受けたりしてから俺ははじめての依頼を受けた。
 はじめての依頼といえばもちろん薬草採取だ。
 冒険者にはFからSまでの7段階のランクがあり、現在の俺のランクは最低ランクのFランク。
 薬草採取の依頼は一つ上のEランクの依頼。
 格上の依頼だが、冒険者は一つ上のランクの依頼まで受けられるため受けることはできる。
 ギルド職員にはFランクのおつかいクエストから始めたほうがいいと勧められたが、Eランクといえば何を隠そうケルビムさんがよく受けていたゴブリンの駆除依頼と同等の依頼。
 ケルビムさんにできて俺にできないことはないはずだ。
 俺は意気揚々と町の外に向かった。


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