49 / 159
49.ゴブリンと僕
しおりを挟む
唐突だけれど、召喚生物に名前を付けることにした。
というのも、普通は召喚士は使役契約のときに名前をつけるのが普通だと会長に言われたからだ。
会長は良いとこのボンボンなだけあってなかなか知識が豊富だ。
一般的な召喚士のことも少しは知っていたみたいで、使役契約のことを教えてもらった。
なんでも召喚士は使役契約を結ぶときに、名前を付けることによって契約をより強固なものにするそうだ。
あと契約にかかる時間は僕と大差ないらしい。
【スキル効果10倍】の効力がそこに効いていないとすると、契約数とかだろうか。
使役魔法で契約できる生物の数はスキルレベルと同数だから、僕の場合はその10倍までいけるのだろうか。
今度やってみよう。
さて、肝心の名前だ。
猫は黒いからクロ。
鳩は白いからシロだ。
安直だけど僕にネーミングセンスなんて期待されても困る。
2匹を呼び出し、名前を付けるとなんとなく2匹から意思のようなものを感じられるようになった。
どちらもお腹が空いている。
クロにはオークの肉を与える。
シロにはトウモロコシの粉だ。
値段に差があって申し訳ない。
2匹はあっという間に食べ終え、僕の膝に乗って眠り始める。
可愛いな。
猫も可愛いけれど鳩もなかなかだ。
公園で見かけるグレーの鳩はちょっと怖い顔してるなと昔から思っていたけれど、手品師がシルクハットから出すような真っ白な鳩はどこか愛嬌のある顔をしている。
この調子でゴブリンとも使役契約を結びたいところだけど、一筋縄ではいかないだろう。
ゴブリンはそこそこ知能の高い魔物だ。
数が増えれば集落を作ったり道具を使ったりすることもあるくらいだ。
意思の力も鳩や猫とは比べ物にならない。
猫でさえ5分くらいずっと睨めっこしてやっと使役できたのに、ゴブリンなんてどれだけの時間がかかるのか分からない。
気長にやるしかないだろう。
僕はゴブリンを呼び出して毛魔法でガチガチに拘束して使役魔法を撃ち込んだ。
「グギャ、グギャギャギャ……」
ゴブリンは意思の宿った瞳で僕を見返す。
へっ人間ごときに使役されるくらいなら死んだほうがマシだぜ、とでも言っているのかもしれない。
僕にだって人間のプライドというものがある。
ゴブリンに精神力で負けるわけにはいかない。
僕とゴブリンは睨みあいを続けた。
30分ほど睨み合いを続けると、僕もゴブリンも額に脂汗が浮いて疲弊してくる。
僕は凝縮スキルでコップに水を注ぎ、一口飲む。
ゴブリンは一瞬物欲しそうな顔でこちらを見るけれども、すぐにその表情を消しこちらを睨みつける。
そろそろ限界に達しているはずだ。
そしてその時は来た。
「グギャ……」
ゴブリンが俺の負けだぜみたいな顔をして一声鳴く。
途端に使役契約が結ばれ、ゴブリンと僕の間に繋がりが生まれる。
「お前の名前はゴブ之助だ。よろしく」
「グギャギャ……」
よろしくだぜ、アニキ……。
ゴブ之助が思念でそう伝えてくる。
僕はゴブ之助と握手を交わし、送還した。
心強い召喚生物を使役することができた。
ゴブ之助なら外套を着て目深にフードを被ったら人間の子供に見えるかもしれない。
鉱山の外でおつかいとかを頼むということも可能かもな。
僕はそんなことを思いながらクロとシロを撫でる。
しかし次の瞬間驚愕に声を漏らした。
「え!!なんで!?」
「ちょ、どうしたのよ……」
普段あまり大声を出さない僕が大声で叫んだことに驚いたのか、外で見張りをしていたリリー姉さんが布をめくって様子を見に来た。
僕は平静を装いながら姉さんを心配させないように一言二言言葉を返した。
姉さんと話していたら少し落ち着いてきた。
なぜ僕がこんなに驚いているのかといえば、今さっき使役契約を結んで送還したゴブ之助との繋がりが突然消えたからだ。
あれだけ時間をかけて苦労して使役したのに。
ゴブ之助が自力で使役契約を破ることは不可能のはずだ。
そもそも一度結ばれた使役契約を契約者本人以外が解くことはほぼ不可能だ。
可能性があるとすれば迷宮の宝箱から稀に出るといわれている、マジックアイテムを使うくらいか。
盗賊の持っていたマジックウェポンもマジックアイテムの一種だ。
あれは戦いに特化したマジックアイテムだけど、他人のかけた魔法を解除することに特化したマジックアイテムなどがあっても不思議ではない。
しかしそれを言ってしまえばたかがゴブリン1匹に使用するかどうかという問題がある。
僕だったらしない。
だとするならばもう一つの可能性が高いか。
すなわち、死んだという可能性だ。
よくよく考えてみれば、ゴブリンというのはすごく儚い命ではなかろうか。
僕も見習い時代に散々ゴブリン狩りで生活させてもらっていたし、ゴブ之助がたまたま冒険者に見つかって狩られていたとしてもそれほど不思議ではない。
僕がゴブ之助を送還した場所が見習いの森あたりだったら、ゴブ之助の生存確率は絶望的だ。
今後ゴブリンと使役契約を結ぶときには、そのあたりのことも考慮しなくてはいけない。
安全に暮らせる場所に待機させるか、人間から徹底的に逃げるように命令しておくか。
それでも偶然人間に出会って殺されてしまう確率は低くないだろう。
この世界にはゴブリンが安心して暮らせる場所などほとんど無いんだな。
ゴブリンに厳しい世界だ。
まあ生態がエロ同人みたいだからしょうがないか。
ゴブリンを使役するのは難しいな。
何か工夫が必要かもしれない。
僕はゴブ之助の冥福を祈って虚空に手を合わせ、黙祷した。
というのも、普通は召喚士は使役契約のときに名前をつけるのが普通だと会長に言われたからだ。
会長は良いとこのボンボンなだけあってなかなか知識が豊富だ。
一般的な召喚士のことも少しは知っていたみたいで、使役契約のことを教えてもらった。
なんでも召喚士は使役契約を結ぶときに、名前を付けることによって契約をより強固なものにするそうだ。
あと契約にかかる時間は僕と大差ないらしい。
【スキル効果10倍】の効力がそこに効いていないとすると、契約数とかだろうか。
使役魔法で契約できる生物の数はスキルレベルと同数だから、僕の場合はその10倍までいけるのだろうか。
今度やってみよう。
さて、肝心の名前だ。
猫は黒いからクロ。
鳩は白いからシロだ。
安直だけど僕にネーミングセンスなんて期待されても困る。
2匹を呼び出し、名前を付けるとなんとなく2匹から意思のようなものを感じられるようになった。
どちらもお腹が空いている。
クロにはオークの肉を与える。
シロにはトウモロコシの粉だ。
値段に差があって申し訳ない。
2匹はあっという間に食べ終え、僕の膝に乗って眠り始める。
可愛いな。
猫も可愛いけれど鳩もなかなかだ。
公園で見かけるグレーの鳩はちょっと怖い顔してるなと昔から思っていたけれど、手品師がシルクハットから出すような真っ白な鳩はどこか愛嬌のある顔をしている。
この調子でゴブリンとも使役契約を結びたいところだけど、一筋縄ではいかないだろう。
ゴブリンはそこそこ知能の高い魔物だ。
数が増えれば集落を作ったり道具を使ったりすることもあるくらいだ。
意思の力も鳩や猫とは比べ物にならない。
猫でさえ5分くらいずっと睨めっこしてやっと使役できたのに、ゴブリンなんてどれだけの時間がかかるのか分からない。
気長にやるしかないだろう。
僕はゴブリンを呼び出して毛魔法でガチガチに拘束して使役魔法を撃ち込んだ。
「グギャ、グギャギャギャ……」
ゴブリンは意思の宿った瞳で僕を見返す。
へっ人間ごときに使役されるくらいなら死んだほうがマシだぜ、とでも言っているのかもしれない。
僕にだって人間のプライドというものがある。
ゴブリンに精神力で負けるわけにはいかない。
僕とゴブリンは睨みあいを続けた。
30分ほど睨み合いを続けると、僕もゴブリンも額に脂汗が浮いて疲弊してくる。
僕は凝縮スキルでコップに水を注ぎ、一口飲む。
ゴブリンは一瞬物欲しそうな顔でこちらを見るけれども、すぐにその表情を消しこちらを睨みつける。
そろそろ限界に達しているはずだ。
そしてその時は来た。
「グギャ……」
ゴブリンが俺の負けだぜみたいな顔をして一声鳴く。
途端に使役契約が結ばれ、ゴブリンと僕の間に繋がりが生まれる。
「お前の名前はゴブ之助だ。よろしく」
「グギャギャ……」
よろしくだぜ、アニキ……。
ゴブ之助が思念でそう伝えてくる。
僕はゴブ之助と握手を交わし、送還した。
心強い召喚生物を使役することができた。
ゴブ之助なら外套を着て目深にフードを被ったら人間の子供に見えるかもしれない。
鉱山の外でおつかいとかを頼むということも可能かもな。
僕はそんなことを思いながらクロとシロを撫でる。
しかし次の瞬間驚愕に声を漏らした。
「え!!なんで!?」
「ちょ、どうしたのよ……」
普段あまり大声を出さない僕が大声で叫んだことに驚いたのか、外で見張りをしていたリリー姉さんが布をめくって様子を見に来た。
僕は平静を装いながら姉さんを心配させないように一言二言言葉を返した。
姉さんと話していたら少し落ち着いてきた。
なぜ僕がこんなに驚いているのかといえば、今さっき使役契約を結んで送還したゴブ之助との繋がりが突然消えたからだ。
あれだけ時間をかけて苦労して使役したのに。
ゴブ之助が自力で使役契約を破ることは不可能のはずだ。
そもそも一度結ばれた使役契約を契約者本人以外が解くことはほぼ不可能だ。
可能性があるとすれば迷宮の宝箱から稀に出るといわれている、マジックアイテムを使うくらいか。
盗賊の持っていたマジックウェポンもマジックアイテムの一種だ。
あれは戦いに特化したマジックアイテムだけど、他人のかけた魔法を解除することに特化したマジックアイテムなどがあっても不思議ではない。
しかしそれを言ってしまえばたかがゴブリン1匹に使用するかどうかという問題がある。
僕だったらしない。
だとするならばもう一つの可能性が高いか。
すなわち、死んだという可能性だ。
よくよく考えてみれば、ゴブリンというのはすごく儚い命ではなかろうか。
僕も見習い時代に散々ゴブリン狩りで生活させてもらっていたし、ゴブ之助がたまたま冒険者に見つかって狩られていたとしてもそれほど不思議ではない。
僕がゴブ之助を送還した場所が見習いの森あたりだったら、ゴブ之助の生存確率は絶望的だ。
今後ゴブリンと使役契約を結ぶときには、そのあたりのことも考慮しなくてはいけない。
安全に暮らせる場所に待機させるか、人間から徹底的に逃げるように命令しておくか。
それでも偶然人間に出会って殺されてしまう確率は低くないだろう。
この世界にはゴブリンが安心して暮らせる場所などほとんど無いんだな。
ゴブリンに厳しい世界だ。
まあ生態がエロ同人みたいだからしょうがないか。
ゴブリンを使役するのは難しいな。
何か工夫が必要かもしれない。
僕はゴブ之助の冥福を祈って虚空に手を合わせ、黙祷した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4,011
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる