ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉

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50.異世界見物

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 召喚スキルというのはなかなかに奥深いスキルだ。
 離れた場所から自分のいる場所に、生き物を召喚することができるスキル。
 つまりは空間を飛び越えることのできるスキルということだ。
 ましてや異世界召喚スキルなどは世界を超えているというのだから驚嘆に値する。
 僕がいつも白い鳩のシロを召喚しているのは、僕が以前暮らしていた世界なのだろうか。
 世界が無数に存在しているのだとしたら、同じ世界とはいえないのかもしれない。
 しかし、火竜王インフィニティと戦ったことで有名な勇者クニヒコは多分僕と同じ世界の出身だと思うんだよな。
 もしかしたら世界は無数に存在しているのかもしれないけれど、この世界と僕が前世で暮らしていた世界は密接な関係にあるのかもしれない。
 僕は前世で生まれてから死ぬまで29年間を過ごした世界を思い浮かべる。
 学生時代は家と学校の往復で、学校を卒業してからは家と職場の往復の毎日だった。
 旅行も数えるほどしか行ったことの無い僕は、もしかしたらあの世界のほんの一握りの範囲しか知らないのかもしれない。
 今思えばもったいないことをしたような気がする。
 もっと世界を見ておけばよかった。
 気が付けば僕は29年も暮らした世界よりも、こちらの世界のほうが知っている場所が多くなっていた。
 本当につまらない人生を送ってしまったな。
 後悔ばかりが頭に浮かぶ。
 僕が死んで16年か。
 死んでから生まれ変わるまでのタイムロスだってあるかもしれないし、時間の流れも同じとは限らないけれど、今あちらの世界はどうなっているのかな。
 ふと、頭にアイデアが浮かぶ。
 そうだ、見てみればいいじゃないか。
 使役契約を結んだ生物は、契約者と常に精神が繋がった状態にある。
 その状態ならたとえ距離が離れていようと、世界が隔たっていようと関係なく憑依することが可能だ。
 僕はシロとの繋がりを感じながら憑依スキルを発動した。
 視点が変わり、どこかの屋上のような場所に自分がいるのが分かる。
 ここはシロの巣だろうか。
 給水タンクの陰になって雨の当たらない場所に、軽く枯れ草が置かれて居心地を良くしている。
 鳩ってこんな感じのところに巣を作るんだな。
 僕はとりあえず巣を出て周囲を見渡してみる。
 ビルだらけだ。
 随分都会に住んでいるんだな。
 僕は前世で田舎でもないけど都会でもない感じの地方都市に住んでいたので、こうした都会の摩天楼は中学の修学旅行で行った東京でしか見たことがない。
 近くに特徴的なテレビ局の社屋が見えるのでたぶんここは東京だろう。
 同じ世界線の東京なのかは分からないけれど。
 適当に飛んでみて、カレンダーかなにか無いか探してみよう。
 僕は翼を広げ羽ばたいた。
 やっぱり鳥になって飛ぶというのは何度味わっても興奮する。
 東京の空はやっぱり空気が悪いや。
 異世界の澄んだ空気に慣れきった僕にはひどく汚れているように感じられる。
 シロの肺疾患が心配になるレベル。
 しばらく飛んで、疲れたので僕は偶然見つけた公園に降りた。
 あちらの世界は夜だったけれど、こちらの世界はまだ昼だ。
 時差のようなものがあるのかな。
 僕が強制労働させられている鉱山が北半球にあるのか南半球にあるのかなんて分からないから世界間に時差があるのかは分からないけど。
 真昼間の公園は人がまばらだ。
 多分今日は平日なのだろう。
 サボっているサラリーマン風の人と、老人が数人居るだけだ。
 おじいさんがちょうど新聞を広げたので近づいてちょっとだけ見せてもらう。
 これが今日の新聞であれば日付は僕が死んだ3年後くらいの日付になる。
 やはり世界間には時間の流れにずれがあるのだろうか。
 一面の見出し記事なども読んでみるけれど、それほど大したことは書かれていなかった。
 一面は国会議員が人の名前を呼び間違えたとかそんなどうでもいいことが書かれていたので、今日も日本は平和なようだ。
 常識などにも違いが見られないので、ここはやっぱり僕が29年暮らした世界の3年後ということになる。
 いい機会なのでもう少し東京見物してから身体に戻ることにしよう。
 僕は再び、東京の空に飛び立った。





 人間というのはあれができるようになったらこれもそれもと止め処ない欲望に苛まれる生き物である。
 東京に行ったら日本のものが食べたくなった。
 なんとかして鳩の姿で食べ物を食べることができないかと苦戦する僕。
 しかしやはりというかなんというか、鳩の味覚は人間のものと違ってジャンクフードをおいしく感じない。
 子供が落としてしまってコンビニのゴミ箱に捨てられようとしていたフランクフルトをちょろまかして食べてみたのだけれど、豚の餌のような味がした。
 豚の餌を食べたことが無いので予想でしかないけど。
 公園でパンくずとか食べてる鳩もいるから穀物から作られたものをおいしく感じるのは多分間違いないのだけれど、問題は濃い味だ。
 人間と鳩では塩分の摂取量に違いがある。
 犬や猫でもかなり塩分の薄いものを食べているのに、鳩が人間と同じ味の濃さのものを食べられるわけもない。
 ではどうすればいいのか。
 僕は考えに考え、異世界に食べ物を持っていけないかと思った。
 僕は【スキル効果10倍】というスキルを持っている。
 どんなスキルにもこのスキルが効果を発するのかは分からないけれど、召喚術スキルには確かに効力があるのを確認している。
 具体的には、1匹しか召喚できないものが10匹召喚できる。
 そんなに召喚してもしょうがないからいつもは使役契約を交わしたシロやクロ1羽と1匹しか召喚しないけれど、やろうと思えば10羽10匹までの鳩や猫を召喚できるということだ。
 それがどういうことなのかといえば、空間を越える際に空ける穴の大きさに余裕があるということだ。
 つまり、召喚や送還の際に一緒に食べ物も送れる可能性があるかもしれないということ。
 なんなら自分が付いていける可能性もあるかもしれない。
 自分が空間を通り抜けられるかどうかは、ちょっと怖いのでまたゴブリン君に協力してもらって後日実証実験をするとしよう。
 とりあえずは食べ物だ。
 僕は東京の街を飛びまわり、あらかじめ目星をつけておいたコンビニの裏に待機する。
 このコンビニは廃棄食品を裏のゴミ箱に入れる。
 ホームレスの方とは競合してしまうかもしれないけれど、僕だって譲ってあげられるほど心に余裕は無いんだ。
 僕は静かに廃棄弁当が来るのを待った。
 ガチャリという音がして、裏口が開き袋を持ったコンビニ店員が歩いてくる。
 ゴミ箱の蓋を開け、袋を入れた。
 ゴミ袋はポリタンクなので多分鳩の力でも辛うじて開けられる。
 コンビニ店員が去るのを待ち、僕はポリタンクの蓋を蹴り開けた。
 うまいこと爪が蓋に引っかかって開けることができた。
 よし、あとはシロに袋の上で待機を命じて身体に戻るだけだ。
 僕の意識が鳥の身体から人間の身体に戻る。
 頭がなにか柔らかいものに触れている。
 あったかくて、心地いい。

「起きたか?」

「会長、なにやってんの……」

 僕の頭は会長の膝枕の上に乗せられていた。
 リリー姉さんがよかったよぅ。
 まあいいか。
 気を取り直して、シロを召喚してみよう。


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