ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉

文字の大きさ
69 / 159

69.再びvsガルーダ

しおりを挟む
 爆発したように水柱が立つ海面。
 ちょっと液体窒素の杭100本はやりすぎただろうか。
 液体窒素と海水との温度差によって爆発的に液体窒素が蒸発して辺り一面、白い煙が漂っている。
 シーサーペントは当然死んでいる。
 【回転lv10】で高速回転する液体窒素の杭の前には、水の盾なんて役に立たない。
 ぐっさぐさのカッチコチだ。
 瞬間冷凍されてるから味は落ちにくいかもしれない。
 僕は毛魔法でシーサーペントを引き上げる。
 このまま浜辺かどこかで焼いて食べたいところだけど、気絶したままのガルーダは起こしたほうがいいだろうか。
 僕は少し考えて、起こさない方針でいくことに決めた。
 肉が焼けるまでの間にもう1匹ガルーダを使役することにしよう。
 デイジーがいらなくなったわけではないんだ。
 乗り物として使うならもう1匹くらい居たほうがいいかと思っただけだ。
 僕は浜辺まで小船で行き、肉を焼く用意をしてからガルーダを召喚した。
 光の中からガルーダが現れる。
 今度の奴はデイジーよりも少し身体が大きくて顔に傷がある。
 オスメスの違いかな。
 まさかデイジーは子供だったとかそういうパターンじゃないよね。
 ボクシングに階級があるように、体格というのは結構大きな差だよ。
 それに傷。
 顔の半分くらいはあろうかという大きな傷があるのだ。
 死線をくぐってきた歴戦の個体かもしれない。
 とりあえず鑑定。

固有名:なし
 種族:ガルーダ
スキル:【風魔法lv7】【高速飛行lv9】【視力強化lv8】【爪硬化lv8】【フェザーブレイドlv9】【フェザースティングlv8】【気配察知lv9】

 ふーん。
 風魔法スキルはデイジーのほうが高いね。
 でも爪硬化とフェザーブレイドはこの個体のほうが高い。
 気になるのはデイジーが持っていなかったスキルを持っていることだ。
 【気配察知lv9】こんなスキルはデイジーは持っていない。
 これは多分会長が持ってるのと同じスキルだよな。
 以前会長がこのスキルを持っているという話を聞いて、主人公が持っていそうなスキルだと思った記憶がある。
 そんなスキルを持ったガルーダ。
 いいね。
 味方になったら心強い。
 僕は毛魔法の触腕を振るった。
 もちろん避けられる。
 スピード自慢のガルーダに僕の攻撃なんか当たるわけないよね。
 でもこれで僕を敵と認識してくれた。
 逃げられるのが一番困るからね。
 向こうからかかってきてくれないと僕にはガルーダを捕まえられる手段が無い。
 また網で捕まえてもよかったんだけど、なんかちょっとだけ戦ってみたいとか少年漫画っぽいことを考えてしまった。
 歴戦のガルーダは鋭い眼光で僕を睨みつけてくる。
 超怖い。
 やっぱ網で捕獲すればよかったかな。
 デイジーはピーピー鳴いて威嚇してくるイメージだったけれど、この個体は一切鳴かない。
 空中に静止してこちらをじっと睨みつけている。
 そしてふっと力を抜いたように降下すると、地面すれすれを高速飛行し始める。
 砂煙で目暗ましをするつもりか。
 風魔法も使っているようで、すぐにモクモクと砂煙が立ち込めて何も見えなくなった。
 同じガルーダでここまで戦い方が違うものか。
 僕にはハンカチで口を押さえて、反転魔法で防御を固めることしかできない。
 やっぱり僕も感知系のスキルを手に入れたほうが良いだろうか。
 砂煙で何も見えないけれど、反転魔法が何かを跳ね返した感触があった。
 質量的にガルーダ本体ではないな。
 デイジーのように自滅はしてくれなさそうだ。
 おそらく風魔法で小手調べの攻撃を行ったのだろう。
 なかなか慎重な性格だ。
 しかし困ったな。
 僕には超スピードで飛ぶガルーダを捕らえる手段が無いのだ。
 慎重になられたら打つ手無しだ。
 僕は苦し紛れに髪の触腕を長く伸ばし、でたらめに振るってみた。
 当然のごとく何も捕らえることはできなかったが、風圧で砂煙が少し晴れた。
 そしてその向こうに、歴戦のガルーダの姿も見えた。
 うーん、久しぶりに目潰し作戦でもやってみようかな。
 たぶん視覚を奪っても気配察知スキルがあるから戦えると思うけれど、とにかく怒らせないと僕に向かってきてくれない。
 僕は砂煙の晴れ間に光球を飛ばし、目を両手で押さえる。

「キェェェェッ!!」

 今まで一声も鳴かなかったガルーダから、悲鳴のような鳴き声が上がった。
 先ほどまでは小手調べ程度だった風魔法による攻撃が、バンバン飛んでくる。
 めっちゃ怒ってる。
 
「キェェェェェェッ!!!」

 ビュンビュンと風魔法が僕の周りの砂煙を吹き飛ばしていき、視界が晴れる。
 ついにはフェザースティングまで飛んできた。
 あんな予備動作の大きな攻撃を簡単に使うようなタイプには見えなかったのに。
 しょせんは大きな鳥よのう。
 僕はブラックキューブの中からある物を取り出す。
 それは3重の石箱に入れられた超危険物。
 異世界からジョークのつもりでお土産に持ってきたけれど、誰にも受け入れられることが無かったある缶詰だ。
 その名もシュールストレミング。
 正真正銘、あちらの世界で一番臭いとされる缶詰だ。
 ブラックキューブの中に入れることにより缶の中は無菌状態になり発酵自体は止まってしまったものの、菌達が今まで一生懸命分泌した匂い物質は健在のはず。
 僕は石箱を開け、その中の缶を取り出す。
 発酵により発生したガスによって破裂しそうなほどに張り詰めたその缶を、僕は毛魔法の触腕に持たせる。
 僕はそれに高速回転を加えて投擲した。
 急激な回転が加わることによって、空中で爆発する缶詰。
 
「キェェェェェェッ、ゥェェ……」

 歴戦のガルーダは墜落した。
 僕の完全勝利だ。
 現代兵器チートだ。 
 僕は歴戦のガルーダに使役魔法を撃ち込む。
 使役契約は5秒で完了した。
 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

処理中です...