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107.帝国サイド
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私、ナナリーは帝国の3級市民の出です。
他の国の階級で言うのならば平民です。
しかし鑑定スキルを持っていて古代語も多少読めるおかげで、なんとか軍でもわずかばかりの出世をつかみ取ることができました。
帝国軍は人員を広く募集してはいますが、3級市民出身の兵士が出世するのは非常に難しいことなのです。
武術が優れているわけでもなく、希少な魔法スキルを持っているわけでもない女の私が男に媚びることもなく出世の道を掴めたのはひとえに鑑定スキルのおかげと言ってもいいでしょう。
鑑定スキルを持たせて生んでくれて、古代語の勉強のために学校にも入れてくれた両親に感謝しなくてはなりません。
軍において鑑定スキルを持つものの仕事は多岐にわたります。
軍が訓練で行うダンジョン遠征で出たアイテムの鑑定や、新しく軍に入隊するもののスキル鑑定、敵情視察などです。
今までそういった仕事をこつこつと頑張ってきたおかげで軍での階級が上がり、この度私は新しい部隊に配属になることが決まったのです。
精鋭ばかりの部隊だと聞いているのでガチガチに緊張しています。
そして少しだけ気が重いです。
確かに出世で、栄転であるのですが、部隊長が少し悪い意味で有名人なのです。
私はポルコ・レイアース隊長に憧れていたので隊長の部隊を希望していたのですが、隊長は先日任務先で殉職されてしまったのです。
残念です。
そのために私の希望は棄却されてしまい、その隊の配属になってしまったというわけです。
その部隊長の名前はフランクリン・ダグラス。
元老院の一角であるダグラス家の分家の出なのだそうです。
別名猛獣使いとも呼ばれていますね。
その名の由来は彼の3人の副官にあります。
副官3人にも二つ名がついており、悪鬼ゲイル、扇動者ロイド、そして狂犬ラズリーというらしいです。
3人とも貧民街の4級市民出身であるにも関わらず、一部隊の副官にまで成り上がった傑物です。
この3人は任務の達成率が異常に高いのだそうです。
その達成率はなんとほぼ100パーセント。
昨年くらいに扇動者ロイドと狂犬ラズリーが組んだ仕事で一度だけミスをしたのですが、それ以外は過去に一度も失敗したことはないそうです。
とても有能な副官だと思います。
しかしそれは仕事面だけで、その性格は破天荒としか言いようがないのです。
聞くところによれば、ダグラス隊長以外の命令を聞き入れず、その振る舞いはまるで山賊のようであるのだとか。
正直怖いです。
私のような小動物はかみ殺されてしまうんじゃないかという恐怖があります。
私はダグラス隊長が猛獣の手綱を手放さないように祈って入隊の挨拶に向かいました。
「へぇ、お前が新しい鑑定士か。なかなかかわいい顔してんな。俺の女にならねえか?」
「ひぇっ」
「ゲイル、あんまりからかうんじゃねえぜ。お嬢ちゃんビビって泣きそうになっちまってるじゃねえか」
私の前には頭がつるつるのオーガみたいな大男と髭を生やした山賊のボスみたいな男、そして野生動物のようにしなやかな筋肉をした狼獣人の男が立ちはだかります。
ごめんなさいお母さん、私はここまでのようです。
きっと大勢の男たちに慰み者にされて廃人のようになって捨てられるんです。
「おいおい、本気にするなよ。誰がおめえみてえなしょんべん臭いガキを抱くかよ。緊張ほぐしてやろうと思っただけだぜ」
「こいつの冗談は笑えねえからな。お嬢ちゃん、歓迎するぜ。ま、楽にいこうや」
どうやら私はからかわれていたようです。
なんとか生き永らえました。
「我が部隊へようこそ、ナナリーさん。私が部隊長のフランクリン・ダグラスです。ダグラスでも隊長でも好きなように呼んでください」
「は、はい、ナナリーです。では、ダグラス隊長と呼ばせていただきますっ。よ、よろしくお願いします」
ダグラス隊長は副官のお三方とは違い、貴公子然とした方です。
少しカールがかかった栗色の髪に青い瞳、細身でとても端正なお顔立ちをされております。
そして1級市民出身らしく指の先まで洗練された所作です。
私たちとは違う人種のように思えてきます。
逆の意味で同じ人種とは思えないお三方もおられますが。
「ははは、そんなに固くならなくてもいいよ。この男たちは顔は怖いが何もしなければ噛みついたりしない。もしこの3人が何か困ったことをしたら私に言いたまえ」
「い、いえ、私は、そんな……」
なんとも返しにくいお言葉です。
しかし副官3人の手綱はダグラス隊長がしっかりと握っているようで少しだけ安心しました。
これならば無体なことをされるような心配はなさそうです。
部隊の雰囲気の心配が晴れると今度は仕事内容の心配が出てきます。
いったいこの部隊で私はどんなことをするのでしょう。
私にできるのは鑑定だけですけどね。
今は戦時中ですので、きっと敵と戦う場面も出てくると思います。
果たして私は生き残れるのでしょうか。
色々な心配が私の頭を埋め尽くします。
「心配ねーさ。後方の安全は必ず確保する」
鋭い瞳の狼獣人、ラズリーさんが励ましの声をかけてくれます。
私の顔に現れたわずかな不安の色を読み取って声をかけたのだとしたら、とても空気の読める人だと思います。
3人の中では一番話しやすいタイプかもしれませんね。
私の心は少しだけ不安から解放されます。
このお三方の武勇伝は悪名と同じくらい広まっているのです。
きっと、大丈夫ですよね?
早く戦争なんて終わってほしいですね。
私は心からそう思います。
他の国の階級で言うのならば平民です。
しかし鑑定スキルを持っていて古代語も多少読めるおかげで、なんとか軍でもわずかばかりの出世をつかみ取ることができました。
帝国軍は人員を広く募集してはいますが、3級市民出身の兵士が出世するのは非常に難しいことなのです。
武術が優れているわけでもなく、希少な魔法スキルを持っているわけでもない女の私が男に媚びることもなく出世の道を掴めたのはひとえに鑑定スキルのおかげと言ってもいいでしょう。
鑑定スキルを持たせて生んでくれて、古代語の勉強のために学校にも入れてくれた両親に感謝しなくてはなりません。
軍において鑑定スキルを持つものの仕事は多岐にわたります。
軍が訓練で行うダンジョン遠征で出たアイテムの鑑定や、新しく軍に入隊するもののスキル鑑定、敵情視察などです。
今までそういった仕事をこつこつと頑張ってきたおかげで軍での階級が上がり、この度私は新しい部隊に配属になることが決まったのです。
精鋭ばかりの部隊だと聞いているのでガチガチに緊張しています。
そして少しだけ気が重いです。
確かに出世で、栄転であるのですが、部隊長が少し悪い意味で有名人なのです。
私はポルコ・レイアース隊長に憧れていたので隊長の部隊を希望していたのですが、隊長は先日任務先で殉職されてしまったのです。
残念です。
そのために私の希望は棄却されてしまい、その隊の配属になってしまったというわけです。
その部隊長の名前はフランクリン・ダグラス。
元老院の一角であるダグラス家の分家の出なのだそうです。
別名猛獣使いとも呼ばれていますね。
その名の由来は彼の3人の副官にあります。
副官3人にも二つ名がついており、悪鬼ゲイル、扇動者ロイド、そして狂犬ラズリーというらしいです。
3人とも貧民街の4級市民出身であるにも関わらず、一部隊の副官にまで成り上がった傑物です。
この3人は任務の達成率が異常に高いのだそうです。
その達成率はなんとほぼ100パーセント。
昨年くらいに扇動者ロイドと狂犬ラズリーが組んだ仕事で一度だけミスをしたのですが、それ以外は過去に一度も失敗したことはないそうです。
とても有能な副官だと思います。
しかしそれは仕事面だけで、その性格は破天荒としか言いようがないのです。
聞くところによれば、ダグラス隊長以外の命令を聞き入れず、その振る舞いはまるで山賊のようであるのだとか。
正直怖いです。
私のような小動物はかみ殺されてしまうんじゃないかという恐怖があります。
私はダグラス隊長が猛獣の手綱を手放さないように祈って入隊の挨拶に向かいました。
「へぇ、お前が新しい鑑定士か。なかなかかわいい顔してんな。俺の女にならねえか?」
「ひぇっ」
「ゲイル、あんまりからかうんじゃねえぜ。お嬢ちゃんビビって泣きそうになっちまってるじゃねえか」
私の前には頭がつるつるのオーガみたいな大男と髭を生やした山賊のボスみたいな男、そして野生動物のようにしなやかな筋肉をした狼獣人の男が立ちはだかります。
ごめんなさいお母さん、私はここまでのようです。
きっと大勢の男たちに慰み者にされて廃人のようになって捨てられるんです。
「おいおい、本気にするなよ。誰がおめえみてえなしょんべん臭いガキを抱くかよ。緊張ほぐしてやろうと思っただけだぜ」
「こいつの冗談は笑えねえからな。お嬢ちゃん、歓迎するぜ。ま、楽にいこうや」
どうやら私はからかわれていたようです。
なんとか生き永らえました。
「我が部隊へようこそ、ナナリーさん。私が部隊長のフランクリン・ダグラスです。ダグラスでも隊長でも好きなように呼んでください」
「は、はい、ナナリーです。では、ダグラス隊長と呼ばせていただきますっ。よ、よろしくお願いします」
ダグラス隊長は副官のお三方とは違い、貴公子然とした方です。
少しカールがかかった栗色の髪に青い瞳、細身でとても端正なお顔立ちをされております。
そして1級市民出身らしく指の先まで洗練された所作です。
私たちとは違う人種のように思えてきます。
逆の意味で同じ人種とは思えないお三方もおられますが。
「ははは、そんなに固くならなくてもいいよ。この男たちは顔は怖いが何もしなければ噛みついたりしない。もしこの3人が何か困ったことをしたら私に言いたまえ」
「い、いえ、私は、そんな……」
なんとも返しにくいお言葉です。
しかし副官3人の手綱はダグラス隊長がしっかりと握っているようで少しだけ安心しました。
これならば無体なことをされるような心配はなさそうです。
部隊の雰囲気の心配が晴れると今度は仕事内容の心配が出てきます。
いったいこの部隊で私はどんなことをするのでしょう。
私にできるのは鑑定だけですけどね。
今は戦時中ですので、きっと敵と戦う場面も出てくると思います。
果たして私は生き残れるのでしょうか。
色々な心配が私の頭を埋め尽くします。
「心配ねーさ。後方の安全は必ず確保する」
鋭い瞳の狼獣人、ラズリーさんが励ましの声をかけてくれます。
私の顔に現れたわずかな不安の色を読み取って声をかけたのだとしたら、とても空気の読める人だと思います。
3人の中では一番話しやすいタイプかもしれませんね。
私の心は少しだけ不安から解放されます。
このお三方の武勇伝は悪名と同じくらい広まっているのです。
きっと、大丈夫ですよね?
早く戦争なんて終わってほしいですね。
私は心からそう思います。
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