ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉

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110.帝国サイド4(後半主人公サイド)

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「あ、あれはいったいなんなんでしょうか」

「ナナリー、いったい何が居た」

「スキルレベル10のスキルがずらりと並んでいる少年が居ます」

「なんだと!?」

 驚いたのは私のほうですよ。
 昨日初めて間近でドラゴンを見たときよりもびっくりしました。
 種族は人間(変異種)となっています。
 人間の変異種とはいったいなんなのでしょうか。
 見たことがありません。
 
「おいおい、そいつはもしかして黒髪のガキじゃねえよな?」

「え、ラズリーさん知ってるんですか?」

「どうにも嫌な予感のする奴を一人だけ知ってるだけだ。そいつは犯罪奴隷に堕ちて鉱山で強制労働してるはずなんだがな。で、どうなんだ黒髪なのか?」

「く、黒髪です……」

「マジかよ……」

 ラズリーさんの額から汗が一筋流れ落ちます。
 こんなラズリーさんは初めて見ました。
 私まで緊張してしまいます。

「隊長、あのときのガキだ。俺の隣の房に居た」

「なに?お前たちがやられた奴か。レベル10のスキルの持ち主だったのか」

「いや、あんときゃそんなもん持っているように見えなかったぜ。俺のスラッシュだって食らってたからな」

「じゃあなんらかの要因でこの短期間にスキルレベルが上がったということか」

「だろうな」

 どうするのでしょうか。
 あの少年のレベル10のスキルは脅威ですが、幸いと言っていいのか武術系のスキルや攻撃魔法の使えそうな魔法スキルはありません。
 しかしだからと言って勝てるとも思えません。
 それにドラゴン召喚やガルーダ召喚など、自爆に使えそうなスキルも気になります。
 もしかしてどこかの国の工作員の出身なのでしょうか。
 戦うのかどうかの判断は隊長たちに任せますが、戦うという判断をした場合は私だけ逃げさせてもらいましょう。
 敵前逃亡で帝国には要られなくなるかもしれませんが、死ぬよりはマシです。

「俺は撤退を進言するぜ」

 めずらしくラズリーさんが弱気な発言です。
 先ほどからの会話から察するに、昨年の任務失敗にあの少年が関わっているのでしょう。
 
「俺も撤退したほうがいいと思う。あの時でさえ相打ちだったんだ。更に強くなった奴に勝てるとは思えん」

 ロイドさんも撤退案です。
 やはりお二人は一度戦っているから、あの少年の脅威をリアルに感じているのでしょう。
 私も心の中で撤退に賛成しておきます。
 命あっての物種ですよ。

「てめえら怖気づいたのかよ。一度負けたのならリベンジするべきだろうが!」

「うるせえな。てめえにゃ分かんねえんだよ、あいつの気持ち悪さが!」

「あの野朗の得体の知れなさは一度戦ってみねえとわからねえよな」

「それがビビってるって言ってんだよ。相打ちになって野朗にタマでも取られたか?それに潜入任務のときと違って今度の作戦は俺達やドラゴンだっているだろうが。あのときとは状況が違うぜ」

「お前たち、やめないか!」

 敵を目前にして言い争いを始めてしまった副官のお三方を隊長が諌めます。
 さすがは猛獣使い。
 お三方はピタリと言い争いを辞めました。
 皆固唾を呑んで隊長の言葉を待ちます。
 どれだけ言い争ったところで、結局最終的には隊長の判断ですからね。

「正直言って、撤退したいところだな。だがそうもいかない。この作戦は皇帝陛下直々に下された作戦だ。ドラゴンまで貸与された。敵が強かったんで撤退しましたで済むと思えん」

「じゃあどうするんです」

「玉砕する」

「は!?正気ですか?」

「まあ落ち着け。ただやられるんじゃない。死なないようにやられるんだ」

「んなむちゃくちゃな……」

「とにかくひと当たりしないことには撤退もままならん。ドラゴンでも盾にして生き残れ。あれがすべて殺されるようなことがあればさすがに敵の戦力が我々の戦力を上回っていたことを上層部も認めざるを得んだろう。ドラゴンが死に次第、各自できれば死なない程度に大怪我を負って戦線を離脱しろ」

「隊長、今までで一番最低の作戦ですぜ」

「状況が最低なのだ。しょうがないだろ。帝国軍と王国軍が戦線に整列し始めたら行動を開始する」

「「「了解」」」

 大怪我を負うのは嫌です。
 私は密かにノーと答えました。
 帝国軍の掛け声にノーはありません。
 私もこの部隊に染まってしまったようですね。






 会長の眉がピクリと動く。
 敵を察知したのかもしれない。
 会長はリグリット様に報告に向かった。

「ゴブ次郎」

「グギャ(ここに)」

「敵はどこだ。え、背後?どうやって回り込んだんだ。ドラゴンがいた?空に?」

 へぇ、ドラゴンか。
 どんなのか見てみたいな。
 僕のブルードラゴンとどっちが強いかな。
 まあブルードラゴンは召喚しないんだけどね。
 リリー姉さんに見せるとうるさいから。
 そんじょそこらのドラゴンよりも僕のガルーダのほうが強いというのに、思春期の少年のごとくドラゴンドラゴンと。
 最強種という言葉の響きが戦闘種族の血を滾らせるのかもしれない。
 僕は空を見上げる。
 確かにとても高いところにドラゴンが飛んでいる。
 下から見たら鳥にしか見えないな。
 視力強化をオンにして見れば、それが赤い色の鱗をした大きなドラゴンだということが分かる。

固有名:リオン
 種族:レッドドラゴン
スキル:【火魔法lv9】【風魔法lv7】【土魔法lv8】【身体強化lv8】【視力強化lv8】【高速飛行lv9】【爪硬化lv7】【炎熱竜鱗lv9】【ドラゴンブレスlv9】

 こんなもんか。
 氷竜王のスキルを見た後では、そんなことを思ってしまう。
 名前がついているということは誰かに使役されているということだろうね。
 
「クロード!」

 リグリット様が血相変えて駆けて来る。
 リグリット様も歳相応の反応をすることがあるんだな。
 
「ゴブ次郎はリグリット様の護衛を任せる」

「グギャ(了解)」

「後方の奇襲部隊には僕たち4人で対処しよう。リグリット様、少々護衛から離れますが優秀な忍を残していくので安心してください」

「あ、ああ。僕は構わないが、お前たちだけで大丈夫なのか?」

「まあ戦力が足りなかったら召喚しますよ」

「わかった。頼んだぞ」

「了解しました」

 人間相手の戦いはやっぱり嫌だなあ。
 まあ骨の2、3本でも折れば足手まといになるか。
 戦争では殺すよりも足手まといを増やしたほうが敵の負担が増えると拓君の読んでいた(略)。
 僕は軽くストレッチをして、身体を解す。
 別に肉弾戦でバンバンやりあうわけでもないので気分の問題だ。
 さて、やろうか。



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