ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉

文字の大きさ
112 / 159

112.いつかの借り

しおりを挟む
 僕はちらりと2人の男の後方を見る。
 装飾の多い鎧を着た男が一人、数人の護衛と共に戦いを見守っている。
 僕はその男を鑑定する。

固有名:フランクリン・ダグラス
 種族:人間
スキル:【剣術lv7】【盾術lv7】【火魔法lv6】【風魔法lv6】【煙魔法lv7】【竜力lv6】【雷光砲lv7】

 見たことのないスキルが3つある。
 煙魔法はまだ分かる。
 きっと煙を操る魔法なんだろう。
 毒煙や煙幕など、使い方の想像はつく。
 問題は竜力と雷光砲だ。
 いや、雷光砲も大体分かるか。
 たぶん僕のビームと同じようなスキルだ。
 ただ、この手のスキルは一日に使える回数によって威力が変わってくるから油断はできない。
 レベル×1発とかだったら単純に考えてビームの10倍の威力だ。
 反転魔法で速やかに消滅させないと被害がはかりしれないことになってしまうだろう。
 そのへんは警戒しておけばいい。
 だが竜力っていうスキルは想像もつかないな。
 竜の力と書いて竜力。
 竜に変身するようなスキルなのかな。
 いやそれなら竜化とかそういったネーミングになるか。
 実際に獣人の人が稀に持っているスキルに獣化というものがある。
 その名のとおり獣のような姿に変身するスキルだ。
 身体能力が何倍にもなったり、爪や牙が鋭くなるという効果があるらしい。
 このスキルは名前からはそういった変身系のスキルではないような気がする。

「おいおい、俺達の上司のことがずいぶん気になってるみたいじゃねえか」

「俺達に集中してねえと、また犯罪奴隷になっちまうかもしれねえぞ?」

 確かに、スキルのことは気になるけれど後ろの男に気を取られすぎるのもよくないか。
 僕は元盗賊の2人組に集中する。
 この2人の戦法は良く知っている。
 髭面が詐術でゆさぶりをかけて、狼獣人が高レベルのスキルで攻撃する。
 基本はそのパターンだ。
 髭面は魔法スキルも持っているし、あの斧は確か土を操るマジックアイテムだ。
 遠距離攻撃にも気をつけなければならない。
 僕があの頃よりも強くなったということを、この2人は知らないだろう。
 普通はこんな短期間でスキルレベルがいくつも上がっているとは思わないはずだ。
 あのときよりも大人数だからって僕に勝てると思ったら大間違いだと教えてあげよう。

「行くぜ、ロイド」

「ああ。右だ!!」

 どれだけ僕のスキルレベルが上がろうと、僕は詐術スキルに対抗できる精神系の耐性スキルを持っていない。
 精神系の耐性スキルは店では売っていないからね。
 だから僕はまたあのときのように右を見てしまう。
 狼獣人が凄まじい速さで踏み込んでくるのを目の端で捕らえた。
 あのときと一番違うのは、その攻撃が見えていることだろうか。
 視力強化スキルのおかげで動体視力が強化されて、その攻撃を目で捉えることができている。
 そしてなんといっても反転魔法のレベル。
 スキル効果10倍スキルをもってしても跳ね返せなかったレベル9のスラッシュ。
 それを今は難なく跳ね返すことができている。

「ぐぁっ」

 跳ね返ったスラッシュは狼獣人を襲う。
 さすがに自分の攻撃だから直撃はしなかったけれど、脇腹を浅く切り裂いた。
 確かあのとき僕も脇腹を切られた。
 お返しだ。
 あと肩も切られたし、全身の骨も折れた。
 倍返し……したら死んでしまうだろうか。
 なんとなく僕はこの人たちが嫌いでは無いんだよね。
 できれば殺したくはない。
 
「おいおい、ずいぶんとまた強くなっちまってるじゃねえかよ。大人の階段でも登ったのかよ」

「馬鹿、あれは迷信だぜお前」

 なんだか気になることを言っている。
 大人の階段登ったら強くなるんだろうか。

「なんのことかわからねえみてぇだな」

「童貞捨てるとスキルレベルが上がるってぇ迷信があるんだとよ」

 髭面が親切に教えてくれる。
 しかしなんだその謎の迷信。
 僕には必要ないけど、ちょっとだけ試してみたい気もする。
 問題は相手がいないことなのだけれど。
 プロの方に頼んでもいいのだろうか。

「ちなみに、娼婦で童貞卒業すると一生スキルレベルが5以上にならないって迷信もあるな」

 素人童貞に厳しい迷信だ。
 
「こいつの初めては娼婦だから迷信だってのは確かだぜ」

「馬鹿言ってんじゃねえ。あいつは娼婦だが、俺は本気だったんだからギリセーフだろうが」

 なんだか戦う気分じゃなくなってきたな。
 どうにも心情的にやり辛い。
 
「はぁ、おふざけはこれまでだ」

 2人の雰囲気は一瞬にして変わる。
 ピリピリとした緊張が場を包む。

「こちらには鑑定士がいる。てめぇがクソみてぇに強いってのは最初から分かってたことだ」

「だが俺達も軍人だ。尻尾巻いて逃げることはできねぇ」

 気付いていたのか。
 僕のスキルレベルが高いということに、最初から。
 僕には分からない感覚だな。
 負けると分かっていても立ち向かわなければならないなんて。

「俺達の全力の一撃を持って、てめぇに挑む!」

 やっぱりこの人たちのことは嫌いじゃないな。
 この胸の奥が熱くなってくるような不思議な感覚。
 戦いが楽しいなんて物語の主人公みたいなことを思ったことはあまり無いけれど、今この一瞬だけはなぜだかワクワクするような不思議な感覚を覚える。
 
「行くぞ、ロイド!!」

「ああ、地流壁!!」

 髭面が地面に斧を突き立てる。
 周囲の地面が流動し、障害物が生まれる。
 障害物の間を狼獣人は飛び回る。
 そのしなやかな脚力によって緩急を付けられた動きには、強化された動体視力もついていくのがやっとだ。
 後方からは援護のように火球が飛んでくる。
 僕は火球を跳ね返すも、その火球に水球がぶつかり水蒸気が生まれ視界を遮った。
 髭面め、戦い方がうまいな。

「スラッシュ×10」

 狼獣人は障害物の間を飛びまわりながらスラッシュを放ってくる。
 これが一番厄介だ。
 僕の反転魔法は魔法スキルで、向こうは一般スキル。
 こちらは魔力を消費するのに対して向こうは魔力を全く使わない。
 消耗戦になったら少し厄介だった。
 だがきっとそんな無様な戦いをあの男は望まないだろう。
 僕は放たれたスラッシュを跳ね返す。
 今度は1発も狼獣人の男には当たらなかった。
 攻撃を放ったその場から次の瞬間には移動しているのだ、同じ場所に攻撃を跳ね返しても当たるはずはない。
 強いな。
 この2人は本当に強い。
 ずっと戦っていたいような不思議な感覚に囚われる。
 だけどそんなわけにはいかないよね。
 僕はビームで障害物を破壊する。

「くそっ!はぁぁぁぁぁぁっ」

「右だ!」

 僕は右を見る。
 そこには本当に狼獣人の男がいる。
 反転魔法に剣が叩き込まれる。
 かかった力がそのまま反転され、剣は折れる。
 左に展開していた反転魔法がなにかを跳ね返した感触。
 そこには斧が肩に突き刺さった髭面。
 反転魔法に跳ね返された斧が肩に刺さってしまったのだろう。
 狼獣人を囮にして、本命は髭面か。
 しかしこれで、肩を切られたお返しもできた。
 あとは骨の2、3本でも折れれば満足だ。
 
「ぐっ、いってぇ……」

「はぁはぁ、さすがだな。マジでつえぇぜてめぇはよ。俺達の負けだ。殺れよ」

 遠慮なく。
 あのときの借りは、あのときの技で返す。
 僕は毛魔法で髪を伸ばし、竜の尾の形に編みこんでいく。
 さっき水を含ませたら、重さが増して威力が上がったので同じようにする。
 
「あのときの借りを返すよ」

 黒い竜の尾を振るった。
 2人の男は弾き飛ばされ、10メートル以上吹き飛ぶ。
 頑丈そうだから死んでないと思うけどな。
 なんだかすっきりした気分だ。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...