ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉

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133.巨大スライム

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「クロード、あれ、なんなの?」

「たぶんスライム、だと思うけど……」

 こんなに大きなスライムは見たことがない。
 地面の割れ目から這い出すスライムの全長は軽く10メートルはあるだろう。
 大昔にこのあたりを不毛の大地にしたというグラトニースライムはもっと大きかったらしいけれど、この大きさでも十分に脅威だ。
 僕は巨大スライムを鑑定する。

固有名:なし
 種族:スライム(変異種)
スキル:【食い溜め】【スキル吸収】【物理攻撃耐性lv6】【魔法攻撃耐性lv5】【水魔法lv6】【土魔法lv6】【マナドレイン】

 すごいぶっ壊れスキルを持っているな。
 【スキル吸収】これが一番厄介かもしれない。
 正直あまり近づきたくないな。
 僕がこれまでこつこつ買い集めてきたスキルがこんな粘液に奪われるのなんて我慢ならない。
 スキル吸収の発動条件次第では、かなり苦戦するかもしれない。
 
「志織ちゃん。異世界ごっこはそろそろ終わりにするよ。先にあっちに帰ってて」

「へ、クロード?ちょっ……」

 僕はシロを召喚し、何か言おうとする志織ちゃんと一緒に送還する。
 志織ちゃんは空間の穴に吸い込まれていった。
 シロに一瞬だけ憑依して確認すると、志織ちゃんと出会ったあのビルの屋上にちゃんと送還されていた。
 僕は少しほっとする。
 以前こちらの世界の人を向こうの世界に連れて行こうとしたとき、空間の穴に入れなかったからだ。
 勢いでみんなを連れてきてしまったけれど、還せなくなったらどうしようかと少し不安だった。
 感情だけで行動するものじゃないね。
 まあこれで全員還せるということが分かった。

「ゴブ次郎。忍ゴブリンたちと協力してみんなを集めて」

「グギャグギャ(了解)」

 幸いなことに、巨大スライムの動きは鈍い。
 邪魔なクラスメイトたちを向こうの世界に還すくらいの時間はもにょもにょしていてくれそうだ。
 ゴブ次郎たちが剣を突きつけてクラスメイトたちを一箇所に集めてくれる。
 田中君は動けそうにないのでゴブリンの1匹が担いできてくれた。

「お、おい、なんだよこれ……」

「あのドロドロなんなの?」

「こいつらあのときのゴブリンじゃ……。俺達殺されるのか?」

 今はクラスメイトたちの疑問に答えている時間は無い。
 僕はまず向こうの世界に一度戻る。
 この人数を還すには鳩じゃあ空間の穴が小さすぎる。
 ガルーダかドラゴンレベルの大きな穴じゃないとダメだ。
 しかしあちらの世界に今いるガルーダやドラゴンはすべてアリゾナだ。
 送還したらクラスメイトたちが一緒にアメリカに送還されてしまう。
 一度日本にガルーダを召喚して、また異世界に行って召喚し直さなくては。

「ちょっとクロード、いきなり日本に……」

「ごめん志織ちゃん、今は説明している暇は無いんだ。クラスメイトたちもここに戻すけど、放っておいていいから。なんなら先に家に帰ってもいい」

「え!?ちょ、ちょっと……」

 僕はビルの屋上にガルーダを召喚し、そのままゴブ次郎の召喚と送還によって異世界に戻る。
 日本のビルの屋上に召喚したガルーダを指定して召喚。
 こちらの世界に来たときと同じように毛魔法でクラスメイト全員に触れ、ガルーダを送還。
 クラスメイトたちの異世界転移は終了となった。
 あとは好きにしてくれ。
 僕はあの厄介なスライムをなんとかするとしよう。
 僕はまた異世界に戻った。

「ありがとう、ゴブ次郎」

「グギャグギャグギャ(それでどうするんです?)」

「うーん、近づきたくないね」

 どうしたものか。
 僕が悩んでいると、1匹の忍ゴブリンがなにやら粘液のようなものを持って来た。

「どうした?ゴブ左衛門」

「グギャグギャ(これを使っては?)」

「これは、へー。なるほど」

 ゴブ左衛門が持ってきたのは、1匹のスライムだった。
 それも普通のスライムではなく、スキルを持ったスライムだ。

固有名:なし
 種族:スライム
スキル:【風魔法lv1】

 どうやら魔法スキルを持って生まれたはいいが、魔力が低くて使えなかった個体のようだ。
 人間の中にもそういう人はいるらしいので、スライムの中にいてもおかしくはない。
 しかしこれはなかなか使えるぞ。
 僕は使役魔法をスライムに撃ち込んで使役契約を結ぶ。
 名前はそのままスライムでいいか。
 単細胞生物っぽい見た目のスライムは見た目に反してそこそこ意思が強く、猫と同じくらいの時間がかかった。
 あの巨大スライムを使役する作戦は無理そうだ。
 残酷なようだが、捨て駒作戦でいかせてもらう。
 僕はスライムに命じ、巨大スライムの周りをうろつかせる。
 鑑定でスライムのスキルを常にモニターしておく。
 巨大スライムは通常スライムよりも動きが遅いようで、果敢に触手を伸ばしてスライムを捕まえようとするが一向に捕まる気配はない。
 スキルもなくなっていないので、どうやら近づいただけでスキルが吸収されるようなことはなさそうだ。
 さて、次だ。
 僕はスライムに巨大スライムに触れてみるように命じる。
 スライムは細い触手を伸ばして巨大スライムにちょんちょんと触れる。
 スキルは無くならない。
 触っても大丈夫と。
 あとは、捕食かな。
 短い付き合いだったけど、楽しかったよスライム。
 僕はスライムにその場に制止するよう命令する。
 巨大スライムがのろのろと触手を伸ばし、スライムを絡め取る。
 スライムはあっというまに飲み込まれてしまった。
 しかし巨大スライムのスキルに風魔法が増えることは無い。
 スキル吸収というのはいったいどのタイミングで発動するんだ?
 そう思った次の瞬間、巨大スライムに風魔法のスキルが生える。
 時間差?いや、消化か。
 捕食し、消化するとその生き物が持っていたスキルを手に入れることができるスキル。
 くそぅ、僕が欲しい、そのチートスキル。
 しかし残念なことに僕に強奪系のスキルは無い。
 目の前のスライムが持っているということは、他にもスキルを奪うスキルというものが存在しているのだろうか。
 恐ろしいことだ。
 幸いなことに巨大スライムのスキルは食べられない限りは大丈夫だろう。
 とすれば、これはただのスライム駆除。
 何の問題もないな。

「ビーム×100」

 破壊の極光が巨大スライムを包み込む。
 ビームは魔法攻撃ではないので物理攻撃の範疇だと思うが、たかがレベル6の物理攻撃耐性で耐えられるかな。
 巨大スライムはあっけなく蒸発して消えた。

「はぁ、ビビッて損した……」

 僕はクラスメイトたちがいなくなった荒野で一人呟いた。


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