ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉

文字の大きさ
151 / 159
復活のK

3.ワッフルの国

しおりを挟む
「どうするの?あの人たち、あなたを探していたみたい」

「どうもこうも、僕は別に正式になんでも屋として看板を出した覚えはないよ」

 僕のいきつけのバーに突然現れた警察官の2人組。
 警察が探偵やらなんやらに非合法な捜査を依頼するというのはドラマの中とかではよくある話だけれど、虚構と現実を一緒にしないで欲しいな。
 捜査に行き詰った警察が怪しげな探偵とバーで出会うのは空想の中のお話であって、実際には探偵なんて浮気調査やペットの捜索などが主な収入源だという。
 ましてや僕は探偵でもなんでもない。
 ただいきつけのバーの隣に座った人の頼みを何回か聞いてあげただけの一般人でしかない。
 最初のきっかけは隣に座ったのがバインバインのユナイテッドステイツオブおっぱいさんだったことかな。
 僕なんかにおっぱいをやたら押し付けてくるアメリカ人の女性がいて、案の定ハニートラップだったんだよね。
 バインバインに釣られて一緒にホテルに行ったら銃を持ったアウトローじゃないプロの戦闘職の人たちがたくさんいてね。
 戦闘職の皆さんは一瞬で菱縄縛りになってもらったんだけど、バインバインさんが何故か泣きながら身の上話を始めてね。
 泣き脅しだってことは分かっていたんだけど、拓君が欲しがってた限定美少女フィギュアをくれるって言うから僕はそのバインバインなアメリカン美女の依頼を受けたんだ。
 拓君は僕の大事なビジネスパートナーだからたまにモチベーションを上げておく必要がある。
 有名動画制作会社の影のオーナーともなればコネをコネコネして普通じゃ手に入らない美少女フィギュアの一つや二つは簡単に手に入るという大物感を演出しなくては拓君はすぐに僕のことを舐め腐る。
 しかしそのバインアメリカさんの依頼を受けて、少し無茶をしたせいで僕は裏社会で目立った。
 後から後からどうでもいい身の上話を聞かせてくる依頼人がいきつけのバーに押しかける始末。
 まあたまにミステリアスな中東美女とかが小洒落たカクテルなんか飲みながら僕に流し目を送ってくるものだから、ちょっと依頼を受けちゃったりしたけれど。
 でも僕は極力美女以外の依頼は断わるように努力していたんだ。
 本業の人とかがいたら仕事がなくなっちゃって困っちゃうかもしれないしね。
 なにより僕が落ち着いてお酒や料理を楽しめない。
 すでにいきつけのバーを変えるのも3回目だ。
 料理と地ビールが好みのバーを見つけるのはなかなか大変なのにな。
 Kだか毛だか知らないけれど、勝手に裏社会のなんでも屋にするのはやめて欲しいよね。
 僕はまっとうなユー〇ューバーなんだから。
 そんな非合法の依頼を受けているアウトローな人だと思われるのは致命的なスキャンダルだ。
 
「でもあの人たち困ってたみたい。私の立場から言っても、そのテロリストのことは放っておける話じゃないな」

「まあテロリストは怖いよね」

「ねえお願い。私からの頼みだと思ってあの人たちに協力してあげてくれない?私にできることならなんでもするから、ね?」

 なんでも、その言葉の持つ色気に僕の背筋がぞくりとする。
 お母様は僕のことを舐めている。
 僕が童貞だからって、なんでもするといってもけっきょくへたれてエロいことは要求しないと思っている。
 これはお母様から僕への挑戦なのではないだろうか。
 悔しかったら童貞という殻を打ち破って一夜の狼に変身してみなさい、という淫秘なメッセージなのではないだろうか。
 だとしたらなんて挑発的な言葉なんだ。
 やってやるよ。
 お母様の頼みを受けて、下衆いことを要求してやるよ。
 そのでかい乳を磨いて待ってろよ。





 テロ組織『ワールドエンド』。
 数々の国でテロ活動を行なった実績のある非合法組織。
 組織内には多くの能力者が在籍しており、時に一国の軍隊とも渡り合う武闘派組織だ。
 首領『サイボーグ』をはじめとして、『アイスマン』『剣鬼』『ドラグーン』などの多くの有名な能力殺人者を擁する。
 
「本拠地はベルギーのブリュッセル?すごいね、どうやって海外の情報を集めたの?」

「グギャグギャ(ダークウェブで)」

「なにそれ」

 グギャグギャとなにやらわけわからん呪文のような横文字を並べるゴブ次郎。
 ダメだ、完全に僕より時代に適応している。
 ゴブ次郎の言うことが全く理解できない僕だけれど、いいんだスマホは電話できれば、パソコンは検索できれば。

「グギャグギャグギャギャッギャ(ネットで調べられるのはこのへんまでですね)」

「いや、十分だよ。とりあえずブリュッセルに行ってみるから、後は現地でね」

「グギャ(了解)」

 攻撃は最大の防御と言うよね。
 戦っていうのは、相手の城を先に落としたほうが勝ちなんだ。
 だからテロリストが日本に入ってきていようが、そこで何人殺す予定だろうが関係ない。
 奴らのアジトをそこに残った構成員ごと潰す。
 さすがに全員で日本に入ってきたわけではないだろう。
 ワールドエンドは新興宗教系のそこそこ大きなテロ組織だし、そんな組織が全員仲良く日本にお引越ししていたとしたら日本政府や公安は間抜けすぎる。
 日本に入り込んだのは組織の全体数からしてみたらわずかな少数精鋭の実働部隊といったところだろう。
 奴らは日本に入り込んで意気揚々と人殺しをしようとしている間に、本拠地を失うのだ。
 日本に入り込んだ残党狩りはそれからでも遅くない。
 日本にだって警察や自衛隊がいるんだから、僕一人が頑張ることはないんだ。

「さて、行こうか。ベルギーか、ワッフルしか思いつかないな」

 僕はガルーダを召喚し、ゴブ次郎の夢幻魔法で姿を消した。
 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...