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復活のK
10.サイボーグ
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まだラスボスが1匹捕まっていないとはいえ、日本に入国したほとんどのテロリストを始末することができて少しすっきりした気分だ。
ラスボスは現在ゴブリンお庭番衆が探してくれていることだし、すぐに見つかることだろう。
僕の仕事はほとんど終わったようなものだ。
お母さまにどんなエロいことを頼もうかと妄想しながらいつものバーの扉をくぐる。
「らっしゃい。客が来てるぜ」
「客?」
ダンディズムを追求したらおカマみたいになってしまったマスターが割れたケツ顎で奥の席を指し示す。
そこには僕を探してこのバーをうろついていたあの2人組の警察官の片割れ(残念ながら男のほう)がかっこつけた仕草で度数の高そうな酒を飲んで顔をしかめていた。
なんで男のほうだけなんだろうか。
逆だったら大歓迎だったんだけどな。
僕警察官って基本的に信用してないんだよね。
婦警さんだったらそのマイナスに傾いた信用度もゼロくらいにはなるのだけれど、男はダメだな。
僕は警戒心マックスで男性警官の隣の席に座る。
「マスター、今日はラムが飲みたい気分だからなんかおすすめのラムをロックで」
マスターは短い返事とともに少し色の濃いダークラムを出してくれる。
以前僕がラムはダークラムが好きだと言ったのを覚えていてくれたのだろう。
こういう細かい気づかいがこの店を気に入っている理由なんだよな。
「で、僕になにか用があったんじゃないの?ていうかなんで男一人で来たの?あの可愛い婦警さんはどうしたの」
「あいつなら出世して今は俺の上司だよ」
「えぇ、それはまた……なんといったらいいのか」
確かあの人はこの男性警官の後輩だったはずだ。
それがあっという間に追い抜かれて自分の上司になってしまうとは。
残酷なこともあるものだ。
「あいつちゃっかり真田さんの名刺をもらってやがってな。それも個人的な携帯番号も書かれたプライベートなやつをだ。真田さんとのつながりなんて警察官僚共が喉から手が出るほど欲しいものだ。あっという間に今の上司が飛ばされてその椅子にあいつが座ってるってわけだ」
「なかなか要領のいい人みたいだね。でも、お兄さんはお母さまに会ったときに名刺もらわなかったの?」
「そんな厚かましいこと頼めるわけないだろ。それに俺は男だし女性に簡単に電話番号教えてくださいとか言えないだろ」
「そうかもね」
下手したらセクハラだとか言われたりしちゃいそうだし、そうでなくとも個人的な連絡先を教えてくださいなんて言いづらい。
その点女性ならそこまで嫌悪感は抱かれにくい。
お母さまはそんなことで嫌悪感は抱かなかったかもしれないけれど、常識的に考えて今回はあの女性警官さんに分があったということだろう。
「まあしょうがないね。きっと次があるさ」
「いや、俺はそこまで出世したいとも思ってない。だからいいんだが、今日はそんなことを言いにきたわけじゃないんだ」
お兄さんは急に真面目な顔になって僕の顔をじっと見つめる。
なんだよ、やるのか。
ファイティングポーズ。
「あんたが、Kなんだってな」
「ああ、なんだそんなことか。誰かから聞いたの?」
「ああ、改めて情報屋を当たってみたらあんたの容姿に関する情報が出てきてな」
「有名人みたいで照れるな」
なんだかリベンジポルノされた気分だ。
僕にはまだそんな写真はないんだけどね。
いつかは絶対そんな写真を撮りまくってやるけどね。
もうやりまくりだよ。
「あんたも人が悪い。今朝テロリスト共を長野県の山中で逮捕した」
「まだ大ボスが逃げているし1人殺してしまった」
「警察が対応していたら警察側にも死者や怪我人が大勢出ていただろうし、テロリストも殺さず捕らえることが難しかっただろう。礼を言う。助かった」
「ということは報酬は警察側からも出るってこと?」
「ああ、上司になった俺の後輩がかなりの額の予算をもぎ取ってくれた。なんでも言ってくれ。予算全額現金でもいいぞ」
「わかった。考えておく」
正直欲しいものはたくさんある。
どれにしようか迷うな。
今回はお母さまにエロいことを要求しようと思っていたから金銭や物品の報酬は考えていなかった。
しかし慈善事業ではなくちゃんとした仕事になった以上は逃がした大ボスも捕まえて警察に引き渡したいところだな。
「ん?」
背後に突然ゴブ次郎が現れ、肩をトントンされる。
なんだろうか。
「グギャグギャ(来ました)」
「はい?何が?」
僕がゴブ次郎にそう聞き返した瞬間、轟音とともに店の壁が破壊される。
外部からものすごい衝撃が加えられたようで瓦礫の破片が散弾銃のように飛んできた。
客が少ない時間帯でよかった。
僕は数人の客とマスターを反転魔法で守る。
「ここに、Kとかいうクソ野郎がいるって聞いたんだがなぁ!!いるなら出てきやがれファッキン野郎が!!」
Kという名前を正式に名乗った覚えはないのでもしかしたら別の人を指しているかもしれないけれど、おそらく僕を指していると思われる。
壁を壊して入店してきたその男は、両腕が金属でできていた。
なるほど、こいつがテロリスト共の親玉か。
ラスボスは現在ゴブリンお庭番衆が探してくれていることだし、すぐに見つかることだろう。
僕の仕事はほとんど終わったようなものだ。
お母さまにどんなエロいことを頼もうかと妄想しながらいつものバーの扉をくぐる。
「らっしゃい。客が来てるぜ」
「客?」
ダンディズムを追求したらおカマみたいになってしまったマスターが割れたケツ顎で奥の席を指し示す。
そこには僕を探してこのバーをうろついていたあの2人組の警察官の片割れ(残念ながら男のほう)がかっこつけた仕草で度数の高そうな酒を飲んで顔をしかめていた。
なんで男のほうだけなんだろうか。
逆だったら大歓迎だったんだけどな。
僕警察官って基本的に信用してないんだよね。
婦警さんだったらそのマイナスに傾いた信用度もゼロくらいにはなるのだけれど、男はダメだな。
僕は警戒心マックスで男性警官の隣の席に座る。
「マスター、今日はラムが飲みたい気分だからなんかおすすめのラムをロックで」
マスターは短い返事とともに少し色の濃いダークラムを出してくれる。
以前僕がラムはダークラムが好きだと言ったのを覚えていてくれたのだろう。
こういう細かい気づかいがこの店を気に入っている理由なんだよな。
「で、僕になにか用があったんじゃないの?ていうかなんで男一人で来たの?あの可愛い婦警さんはどうしたの」
「あいつなら出世して今は俺の上司だよ」
「えぇ、それはまた……なんといったらいいのか」
確かあの人はこの男性警官の後輩だったはずだ。
それがあっという間に追い抜かれて自分の上司になってしまうとは。
残酷なこともあるものだ。
「あいつちゃっかり真田さんの名刺をもらってやがってな。それも個人的な携帯番号も書かれたプライベートなやつをだ。真田さんとのつながりなんて警察官僚共が喉から手が出るほど欲しいものだ。あっという間に今の上司が飛ばされてその椅子にあいつが座ってるってわけだ」
「なかなか要領のいい人みたいだね。でも、お兄さんはお母さまに会ったときに名刺もらわなかったの?」
「そんな厚かましいこと頼めるわけないだろ。それに俺は男だし女性に簡単に電話番号教えてくださいとか言えないだろ」
「そうかもね」
下手したらセクハラだとか言われたりしちゃいそうだし、そうでなくとも個人的な連絡先を教えてくださいなんて言いづらい。
その点女性ならそこまで嫌悪感は抱かれにくい。
お母さまはそんなことで嫌悪感は抱かなかったかもしれないけれど、常識的に考えて今回はあの女性警官さんに分があったということだろう。
「まあしょうがないね。きっと次があるさ」
「いや、俺はそこまで出世したいとも思ってない。だからいいんだが、今日はそんなことを言いにきたわけじゃないんだ」
お兄さんは急に真面目な顔になって僕の顔をじっと見つめる。
なんだよ、やるのか。
ファイティングポーズ。
「あんたが、Kなんだってな」
「ああ、なんだそんなことか。誰かから聞いたの?」
「ああ、改めて情報屋を当たってみたらあんたの容姿に関する情報が出てきてな」
「有名人みたいで照れるな」
なんだかリベンジポルノされた気分だ。
僕にはまだそんな写真はないんだけどね。
いつかは絶対そんな写真を撮りまくってやるけどね。
もうやりまくりだよ。
「あんたも人が悪い。今朝テロリスト共を長野県の山中で逮捕した」
「まだ大ボスが逃げているし1人殺してしまった」
「警察が対応していたら警察側にも死者や怪我人が大勢出ていただろうし、テロリストも殺さず捕らえることが難しかっただろう。礼を言う。助かった」
「ということは報酬は警察側からも出るってこと?」
「ああ、上司になった俺の後輩がかなりの額の予算をもぎ取ってくれた。なんでも言ってくれ。予算全額現金でもいいぞ」
「わかった。考えておく」
正直欲しいものはたくさんある。
どれにしようか迷うな。
今回はお母さまにエロいことを要求しようと思っていたから金銭や物品の報酬は考えていなかった。
しかし慈善事業ではなくちゃんとした仕事になった以上は逃がした大ボスも捕まえて警察に引き渡したいところだな。
「ん?」
背後に突然ゴブ次郎が現れ、肩をトントンされる。
なんだろうか。
「グギャグギャ(来ました)」
「はい?何が?」
僕がゴブ次郎にそう聞き返した瞬間、轟音とともに店の壁が破壊される。
外部からものすごい衝撃が加えられたようで瓦礫の破片が散弾銃のように飛んできた。
客が少ない時間帯でよかった。
僕は数人の客とマスターを反転魔法で守る。
「ここに、Kとかいうクソ野郎がいるって聞いたんだがなぁ!!いるなら出てきやがれファッキン野郎が!!」
Kという名前を正式に名乗った覚えはないのでもしかしたら別の人を指しているかもしれないけれど、おそらく僕を指していると思われる。
壁を壊して入店してきたその男は、両腕が金属でできていた。
なるほど、こいつがテロリスト共の親玉か。
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