宇宙戦艦でコールドスリープしたけど目が覚めたら異世界だった

兎屋亀吉

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4.地上の様子

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「400年ぶりの食事がこれとはな」

 俺は銀のフィルムを破り、エネルギーバー(ポテト味)をかじる。
 まあまあ美味いのが腹立たしい。
 食感はぼそぼそのクッキーのようだし水分が少なくて口の中が乾くのだが、適度な塩味と旨味、ジャガイモのフレーバーが食欲をそそる。
 何より極限まで腹が減っていたために余計に美味く感じる。

『現在穀物と野菜を促成栽培中です。1週間ほどお待ちください』

「せいぜい楽しみにしておくよ」

 ポンコツ食料プラントは従来のアミノ酸合成による食糧生産だけでなく、植物を種から育てる機能が搭載されている。
 やはりケミカルフードはどれだけリアルに作ろうと本物には及ばない。
 俺は本物の野菜が食べたいがためにアミノ酸合成方式ではなく、促成栽培方式で食料生産を行うことにしたのだ。
 その結果がこのエネルギーバーだ。
 本物を生産するにはやはり時間がかかる。
 肉や魚はどうせアミノ酸合成方式でしか生産することができないのでそちらだけ食べてもよかったが、付け合わせ程度でも野菜が全くないというのは少し飾り気がない気がしてやめた。
 野菜ができるまではこの味気ない食事で我慢しておくさ。
 チョコレート味やチーズ味など色々な味があるし、食べられないよりはマシだ。
 
「不満はあるがそれは時間が解決してくれるだろう。次はどうするか」

 電力の問題と食料の問題が解決したならば、次は現状把握だろうか。
 ここがどこなのか。
 地上はどうなっているのか。

「作業用ドローンを使って地上までの竪穴を掘るか。しっかりと硬化ジェルを使って掘削面を固め、地上までのエレベーターを建設してくれ」

『了解しました。作業を開始します』

 地上までは直線距離で1500メートルもあるんだ。
 人力で上がるのは少し辛い。
 まずは竪穴からドローンを飛ばして周辺の調査を行い、周囲の安全が確認され次第エレベーターで俺が地上に出るのがいいだろう。
 コロニーの人造恒星の光で育った俺でさえ日の光が恋しくなってくる。
 早く地上に出たいものだ。





『地上への竪穴開通しました』

「よし、ドローンを飛ばしてくれ」

『偵察用マイクロドローン30機射出します』

 周囲の土を圧縮し、鉱物資源を抜き出したおかげで艦の周りにはある程度の空間が出来上がった。
 地下1500メートルにできた空洞に宇宙戦艦なんて秘密結社のアジトのようでなかなか楽しい状況じゃないか。
 だがそんな状況を楽しめるのは自由に地上に出られるやつだけだ。
 宇宙戦艦ごと地下1500メートルに生き埋めにされている身では素直に楽しむことはできない。
 静音モーターのわずかな音を響かせながら飛んでいくドローンたちに期待だ。
 30機の小さなドローンはまだエレベーターも設置されていないただの竪穴に入っていき、地上を目指す。
 軍用のマイクロドローンは機体こそ5センチほどと小さいが、時速100キロを超える速度で飛行する。
 ドローンは1500メートルの竪穴を1分ほどで抜けた。

「これは、廃墟か?」

『そのようですね。室内に生体反応はありません』

 ドローンのカメラによって映し出される映像には、レンガと土で作られた簡素な建物の内部が映し出されていた。
 壁は崩れかけ、屋根には穴が開いている。
 とても人の住めるような状態ではない。

「随分と原始的な生活様式だ」

 廃墟の中には以前人が住んでいたような形跡はあるが、その生活は現代人とは思えないほどに原始的なものを連想させる。
 粘土で作られたかまどに、水瓶と思われる素焼きの器。
 想像するに燃料は薪か炭で、水は毎日井戸に汲みに行くようなそんな生活。
 
「自然派団体の研修施設か何かか?」

 たまにいるのだ、遺伝子操作もナノマシンも再生医療も、外科手術さえ受け付けない完全自然派思想の人間というのが。
 人間は自然とともに生き、神から与えられた100年余りの人生を全うするのが人間本来の生き方であり、それを歪めるテクノロジーは悪だと主張する思想を持った人々だ。
 確かにテクノローは一度人類を滅ぼしかけたから彼らの言うことも間違いではないのかもしれない。
 だがどう考えても便利な生活に慣れた現代人がテクノロジーを捨て、太古の暮らしに戻れるとは思えない。
 人間がそんなに理性的な生き物だったらそもそも過去に滅亡の危機にまで追い込まれてはいないだろう。
 多くの人はテクノロジーの恩恵を受けたいと思っているし、不便な生活なんてしたくないと思っている。
 思想自体を否定はしないが、やるなら勝手にやってほしい。
 自然派団体の奴らは押しつけがましい連中が多すぎる。
 俺は100年そこらで死にたくはないというのに。
 この廃墟は彼らの研修施設によく似ている。
 ガスや電気すらも使わないのは正直理解に苦しむ。
 こんな設備では毎食料理を作るのでさえ重労働だろう。
 この星があの連中の権勢の強い星だったら俺はさっさとおさらばしたい。
 ドローンはがら空きの窓枠から廃墟の外に出た。
 廃墟の外には同じような廃墟が並んでいる。

「ここは廃棄された町か何かか?」

『もう少し高度を上げてみます』

 メティスの操作により、ドローンは高度を上げていく。
 先ほどまで見ていた廃墟が小さくなっていき、その周囲の全容が映り込む。

「これは、貧民街か……」

 俺たちの真上には町があった。
 それも高い外壁がある結構ちゃんとした町だ。
 そして竪穴の出口があったのはそんな町の貧民街だった。
 どの建物もボロボロで、その日の暮らしもおぼつかない貧しい人間たちが暮らす町だ。

「こりゃあひどい。俺の生まれ育ったところでももう少しマシだったぞ」

 少なくとも燃料が薪や炭で、かまどで飯を作るっていうことは無かった。
 この星は燃料資源に乏しい星なのだろうか。
 だがそれでも恒星の光がふんだんに降り注いでいるのだから恒星光発電くらいはできるだろう。
 貧民街に電気が来ていないというのはひどすぎる。
 足りていないのは鉱物資源か?
 いや、艦の周囲の地中から採掘しただけでポンコツ食料プラントやメイン電源を修理できるほどの鉱物資源を得ることができたのだからそれはないだろう。

「いやまて。よく見るとこの町、なんかおかしいな」

 貧民街どころか、町全体に電力が来ていないじゃないか。
 どうなっているんだ。

「どこの辺境惑星だ?今時町全体に電力が来ていないなんておかしすぎるだろ」

『ウィリアム中尉、3番ドローンの映像をご覧ください』

「は?なんだこれ……」

 いち早く町の外部に偵察に出ていたドローンのうち、北西に向かった3番の映像。
 そこには緑の肌をした巨大な2足歩行の霊長類らしきものの姿が映し出されていた。


 
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