宇宙戦艦でコールドスリープしたけど目が覚めたら異世界だった

兎屋亀吉

文字の大きさ
5 / 14

5.レトロ武器

しおりを挟む
 この宇宙には数多くの有人惑星が存在している。
 現存する有人惑星はそのほとんどが地球の人類を祖先とするホモサピエンスであるが、大宇宙の一部にはその星に古来より住んでいた固有人種とも呼べる人類の近縁種が存在していることもある。
 彼らは俺たちホモサピエンスとは異なる姿形や生態を持っていることが多い。
 俺は以前ある星の固有人種をWEB上に上がった動画で見たことがあるのだが、彼らの頭には角が生えていたのをはっきりと覚えている。

「彼らもこの星の固有人種なんだろうか」

『彼らの恰好や行動からは知性が感じられませんが』

「だよな」

 偵察用マイクロドローンが送ってきた映像の緑の巨人。
 彼らは羞恥心が無いのか全裸だ。
 巨大なナニがブラブラしている。
 そして野生動物を捕まえて生で食している。
 血が飛び散って非常にグロテスクだ。

「北京原人のほうがまだ文明的な生活をしているな」

『文明レベルはアウストラロピテクスぐらいでしょうか』

 どう考えても文化的な交流はできそうにない。
 そもそも意思疎通が難しそうだ。
 どちらかといえば先ほど町を形成していた普通の人類のほうが交流はできそうだ。
 だが彼らももしかしたらホモサピエンスとは違う可能性もある。
 ホモサピエンスであれば祖先は地球だ。
 星に入植して文明レベルが下がることなんてあるのだろうか。
 戦争か自然災害でテクノロジーを紛失するレベルの破壊と殺戮が起こったのか、それとも。

「わからんな。謎の重力波のことといい、わからないことだらけだ」

『引き続き、周辺の調査を行います』

 調査して謎が増えなければいいがな。





「どうなっているんだこの星は」

『電波も飛んでいませんし、衛星すら確認できないとは』

 まともな星なら星間通信電波や人工衛星の一つや二つ飛んでいるものなのだが、この星にはそういった科学文明的なものの影が皆無なのだ。
 人々は植物繊維や毛皮で作った原始的な服を着ているし、武器は剣や弓。
 おまけに謎のエネルギーボールを生身で放ったりする。
 これではまるで……。

「ファンタジー小説の中の世界だ」

『ファンタジー小説ですか』

「そうだ。それも古めのな」

 人々が剣やら弓で戦って、魔法を使う。
 そんな世界。
 そこに俺たちが紛れ込んでしまったとしか思えない。
 俺はここ数日で集めたこの世界の生物の画像をスクリーンに表示させる。

「最初に見たのがトロール、次がゴブリン、この豚みたいなのはオーク、角が生えてて空を飛ぶ馬がユニコーン、鷹とライオンが合わさったようなやつがグリフォン、そんでこのでかいトカゲがドラゴンだ」

『ここは我々の常識が通用しない異次元宇宙の星だという意味ですか?』

「全く異なる時空に存在する異世界なのか、それとも人類の誕生以前あたりから分岐してしまったパラレルワールドなのかはわからない。だが俺たちが今まで生きてきた世界とは繋がっていない世界なのだと思う」

『重力波に亜光速で接触した拍子に世界を超えてしまったと』

「そう考えるのが一番しっくりくる。どうせ考えてもわからないのならそう仮定して行動しよう」

『了解しました』

 もう元の世界に戻れないと思うとなんだかしんみりするが、俺は家族もいないし悲しいが友人もいなかった。
 そこまで落ち込むような要素は無いんだよな。
 それよりもこの宇宙戦艦にアクセスできるIDを持った人間がこの世界には俺しかいないことのほうが重要だ。
 宇宙戦艦は軍の持ち物だったわけだが、ここがすでに元の世界とは物理的に繋がっていない異世界であるならばこの船を軍に返すことは不可能。
 実質的にこの世界で唯一管理IDを持った俺のものということになる。
 貧民からやっとの思いで中尉にまでなったのに船が絶望的な状況に追い込まれたときにはさすがに心が折れかけたが、これで一気に船持ちだ。
 名誉だなんだので飾り立てられた中尉の肩書なんかよりもよほど成り上がった感はある。
 少なくとも文明の進んでいなさそうなこの星において、こんなに心強い住居兼兵器は無い。
 
「とりあえず大気に有毒な成分も含まれていないようだし、俺が直接偵察に行く」

『危険ではありませんか?』

「まあ危険を感じたらすぐに逃げるさ。武器類も多めに持って行く」

『了解しました。すぐに竪穴にエレベーターを設置します』

 正直俺はもう外に出たくてしょうがない気分だった。
 ターミナルから乗船して体感で200日は経っている。
 実際はプラス400年が経過しているということだ。
 いくら宇宙戦艦が広いからといって気が滅入るというものだ。
 まともな食料の生産がまだできていないというのもある。
 あと少しで野菜や穀物類が収穫できそうだが、外に食べ物があるのだから我慢して待つ必要はないだろう。
 最近ではトロールが生でかじる野生のイノシシでさえ美味そうだと思えてきたほどだ。
 限界は近い。
 



 艦内の居住スペースにある自室。
 そこには俺の私物が置かれている。
 中尉ともなると個室が与えられ、持ち込める私物もかなりの量まで許容される。
 普通は日用品や嗜好品、私服などだが、俺の場合は持ち込んだ私物のほとんどが武器だ。
 それも軍から支給されていたような実用的な最新装備ではない。
 どちらかといえば美術品や骨董品として扱われるような旧式の武器を俺はコレクションしている。
 やはり実弾銃や金属刀身のナイフは良い。
 これらの武器を眺めたり整備しているだけで軍役中の休暇はあっという間に時間が過ぎていったものだ。
 そして神はどうやら俺にこの武器たちを実際に装備して使用する機会を与えてくれたらしい。
 俺は武器を一つ一つ梱包してアタッシュケースに入れていく。
 カートにすべて乗せ、ブリッジに向かった。

「メティス、これらの武器をすべてスキャンして精巧なレプリカを作ってくれ。使用する金属や樹脂は現代のものに最適化してもいい。構造も多少であれば変えていい」

『使用目的はなんでしょうか』

「実戦だ」

『軍の最新装備に何か不満があるのでしょうか。どう考えてもこれらの武器よりも現在中尉が装備しているレーザーガンG3型とプラズマブレードB1型のほうが攻撃力、継戦能力、耐久性において勝っています』

「頼むよメティス、こいつらを実戦で使うのが俺の夢だったんだよ」

『なるほど、合理的に考えた結果ではなく感情的な理由からですか。AIには理解しがたい事象です。了解しました。すべての武器に10セットの複製を作っておきます』

「ああ、ありがとう。心配をかけてすまない。ちゃんとレーザーガンとプラズマブレードも装備していくから安心してくれ」

『心配などしていません。AIは心配などしません』

 そうかい。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに

試運転中
ファンタジー
山を割るほどに剣を極めたおとん「ケン」と、ケガなど何でも治してしまうおかん「セイ」。 そんな二人に山で育てられた息子「ケイ」は、15歳の大人の仲間入りを機に、王都の学園へと入学する。 両親の素性すらも知らず、その血を受け継いだ自分が、どれほど常軌を逸しているかもわからず。 気心の知れた仲間と、困ったり楽しんだりする学園生活のはずが…… 主人公最強だけど、何かがおかしい!? ちょっぴり異色な異世界学園ファンタジー。

処理中です...