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6.第一村人
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俺の異世界生活も数えるところ2週間が経過しようとしている。
2週間も1日ラーメン1個生活を続けた俺の体は、切実に他の栄養ある食べ物を欲している。
このままではなんらかの栄養素の欠乏症で体に不調が現れるのは確実だ。
思い返せばまだ初期DPというものが豊富だった時に食べた鍋焼きうどん(30DP)、美味であった。
最近ではこのままではいかんと、栄養の豊富そうな食品を豊漁だった時などに食べたりしているのだが、そういった高栄養素食品に限って、DPが高い。
バナナ1本分のDPでカップラーメンが3個食べられるのだ。
さらに、追い討ちをかけるようにこの極寒の気候が、俺に暖かいカップラーメンを選ばせる。
ああ、すみませんカンダタさん、俺はもう挫けそうです。
もう石油ストーブの灯油が切れそうなんです。
あれが切れてしまったときには、この氷雪気候の冷風にさらされた船内の気温は一気に低下してしまうだろう。
そうなったら俺は、コタツに全身をうずめるしかない。
きっとトイレに行くのが苦痛になるだろう。
しょうがない、カップラーメンを2、3日我慢して灯油を出そう。
今の俺にとって、命綱であるカップラーメンを断つことが俺の体にどんな影響を与えるのか、予想は出来ないが、生きてさえいればなんとかなる。
俺が苦肉の策を実施することを決めたそのとき、背後からざっざっと大地を踏みしめるような音が聞こえた。
それも大人数で歩いているような騒がしい音だ。
いつものように氷上で釣り糸を垂れていた俺は、とっさに振り返る。
すると、俺の船が停泊している大陸のほうから、けっこうな数の人が歩いてくるのが見えた。
まずいな、カンダタさんが人間は争ってばかりだと言っていたから、もしかしたら襲いかかって来るかもしれない。
俺はまだレベル1だし、使えるスキルも水魔法レベル2だけだ。
こんな極寒の大陸に人なんか住んでいると思ってなかったから現地住民との折衝なんて予想できなかった。
まあ、仮に想定していても飯を食うDPもない今の現状で何かができたとは思わないけど。
せめて話の分かる人たちだといいのだけど。
でも北の大地に住まう人ってバリバリ弱肉強食の戦闘民族みたいなのしか想像できないけどね。
俺が諦めの境地でレイプ目になっていると、もこもこの毛皮を着た男達が集まってきた。
みんな何か動物の牙か何かで出来た立派な槍を持っている。
うわー、そんな大きな牙が生えてるような動物とか狩れるんだ。
男達はみな険しい表情で油断なく構え、近づいてきて、俺の前でぴたりと止まった。
あぁ、これもうダメだわ。
死んだわ。
なんだよ、やれよ、やればいいだろ。
それともなにか、俺の尻が目的か?
くそう、死んでもやらんからな、尻の純潔は。
守り通して死んでやる。
俺が純潔を守る覚悟を決めると同時に、もこもこの男達も動いた。
男達の人垣が割れて、真ん中から初老の男が出てきた。
動物の牙や角で出来た装飾がついた、ちょっとだけ他の男達よりも豪華なもこもこを着ている。
たぶんこの男が、こいつらの長かなにかなのだろう。
「若者よ、まずは大勢で押しかけて驚かせてしまってすまない。だが、どうか我らの話を聞いてくれ」
おお、理知的だ。
これは話が通じる系戦闘民族の線でよさそうだ。
そして、ちょっとだけ心配していた言葉が分からない可能性のほうも大丈夫だった。
ちゃんとなに言ってるか分かる。
きっとダンジョンコアの翻訳機能とかだろう。
あのダンジョンコアにはまだ色々と隠し機能とかがありそうだ。
とにかくなにか答えないと。
こういうのは舐められたらいかん。
本当はオシッコちびりそうだけど、余裕のよっちゃんみたいな顔をしてないと。
「こちらとしても、いきなりその槍でグサリとやられない限りは話くらいいくらでも聞くよ。とりあえずその槍を下ろさないか?」
言ってやったぜ。
本当はそんな槍怖くないけど穏便なやり取りに武力をチラつかせて来るならこちらも相応の対処をさせてもらいますよ的な雰囲気が伝わっただろう。
本当はめっちゃ怖いけどな!その槍。
「おお、すまない、威圧してしまったか。だが、この槍は我らバルロイ族の魂だ。いつでも自身と共にある分身といっても過言ではない。手放すことはできないが、少し下がらせよう。おまえたち、少し離れておれ!」
もこもこの男達はざっざっと後ずさり、20歩ほど離れた。
軍隊のように統制の取れた動きだ。
俺を一息で突き刺せる間合いには長ひとりだけが残る。
本当に武力を行使する気はないのかもしれない。
ただ単に俺が弱そうだから長ひとりでどうとでもできると思われているだけかもしれないが。
「それで、話というのは?」
船に住んでる俺を追い出そうとか、船をよこせとかそういう話ではなさそうな気がする。
いや、まだなんとも分からないが、なんとなく、この長は俺と友好的に接しようと必死になっているような、そんな気がするのだ。
「単刀直入に言おう。食料など持っていないだろうか。持っていたら、我らと物々交換してはくれんだろうか」
なるほど、そう来ましたか。
だがしかし、今現状、食料が欲しいのは俺のほうである。
俺だってお腹ぺこぺこである。
彼らに分けてあげる食料はないが、打開策に思い当たるところがあるので最後まで聞いてみる。
聞くところによれば、このもこもこたちはもう少し南のほうから逃げてきたらしい。
このもこもこを着込んだ民族、バルロイ族は元々ここから2ヶ月ほど歩いた場所にある海沿いの平原に住んでいたらしい。
そこはここよりも寒さが緩く、高山植物のような植物が辛うじて育つくらいの気候らしい。
ツンドラ地帯というやつかな。
そこで彼らはトナカイみたいな動物を放牧したり、海の強力な魔物を狩ったりしてまったりと暮らしていた。
だが、そこにある日突然ダンジョンができてしまったらしい。
突如として彼らの集落のど真ん中に出来た竪穴は、見る見るうちに大きくなり、巨大な洞窟となった次の瞬間、中から大量の魔物が溢れ出てきたらしい。
この世界においてダンジョンができるのは日常茶飯事であり、彼らも対処法を知っていた。
歴戦の戦士たちにより、魔王を倒しダンジョンの侵攻を止めようとしたそうだ。
だが、戦士達の体力にも限界がある。
弱いけれども数だけは多い魔物たちと、少数精鋭の戦士達の相性は悪い。
無限かと思うほどの魔物が次から次に湧いてきて、ついには戦士達の体力が底をつき、敗走したそうだ。
そして長は集落を捨てることを決断した。
しかし、彼らが住んでいた集落こそが人が住める土地と住めない土地との境界線。
そこから北にはおおよそ生き物が住むことができない極寒の氷雪気候地帯が続いている。
じゃあなんでこのもこもこたちは南に逃げずにこんな北の果てまで来てしまったのかというと、それはバルロイ族に伝わる言い伝えに理由があるらしい。
なんでも北の最果てには神が乗り捨てなさったお船があり、それこそがなんでも願いが叶う神器的なアレであるみたいなぼんやりした伝説があるらしい。
魔法があってダンジョンがあるこの世界だ、そんなものがあると信じてしまうのもしょうがないだろう。
それ以外にも南には蛮族的なヒャッハー民族が住んでいたりとか色々と複雑な事情はあるようだが、概ね神器頼りだったみたいだ。
そんなこんなで最果てまで来て、そこには金属でできた船の傍らに俺の姿があったと。
なるほど、運命感じちゃうよね。
俺も運命感じちゃってるよ。
俺にとってもこの出会いは渡りに船だ。
その願い、叶えてあげようじゃないの。
2週間も1日ラーメン1個生活を続けた俺の体は、切実に他の栄養ある食べ物を欲している。
このままではなんらかの栄養素の欠乏症で体に不調が現れるのは確実だ。
思い返せばまだ初期DPというものが豊富だった時に食べた鍋焼きうどん(30DP)、美味であった。
最近ではこのままではいかんと、栄養の豊富そうな食品を豊漁だった時などに食べたりしているのだが、そういった高栄養素食品に限って、DPが高い。
バナナ1本分のDPでカップラーメンが3個食べられるのだ。
さらに、追い討ちをかけるようにこの極寒の気候が、俺に暖かいカップラーメンを選ばせる。
ああ、すみませんカンダタさん、俺はもう挫けそうです。
もう石油ストーブの灯油が切れそうなんです。
あれが切れてしまったときには、この氷雪気候の冷風にさらされた船内の気温は一気に低下してしまうだろう。
そうなったら俺は、コタツに全身をうずめるしかない。
きっとトイレに行くのが苦痛になるだろう。
しょうがない、カップラーメンを2、3日我慢して灯油を出そう。
今の俺にとって、命綱であるカップラーメンを断つことが俺の体にどんな影響を与えるのか、予想は出来ないが、生きてさえいればなんとかなる。
俺が苦肉の策を実施することを決めたそのとき、背後からざっざっと大地を踏みしめるような音が聞こえた。
それも大人数で歩いているような騒がしい音だ。
いつものように氷上で釣り糸を垂れていた俺は、とっさに振り返る。
すると、俺の船が停泊している大陸のほうから、けっこうな数の人が歩いてくるのが見えた。
まずいな、カンダタさんが人間は争ってばかりだと言っていたから、もしかしたら襲いかかって来るかもしれない。
俺はまだレベル1だし、使えるスキルも水魔法レベル2だけだ。
こんな極寒の大陸に人なんか住んでいると思ってなかったから現地住民との折衝なんて予想できなかった。
まあ、仮に想定していても飯を食うDPもない今の現状で何かができたとは思わないけど。
せめて話の分かる人たちだといいのだけど。
でも北の大地に住まう人ってバリバリ弱肉強食の戦闘民族みたいなのしか想像できないけどね。
俺が諦めの境地でレイプ目になっていると、もこもこの毛皮を着た男達が集まってきた。
みんな何か動物の牙か何かで出来た立派な槍を持っている。
うわー、そんな大きな牙が生えてるような動物とか狩れるんだ。
男達はみな険しい表情で油断なく構え、近づいてきて、俺の前でぴたりと止まった。
あぁ、これもうダメだわ。
死んだわ。
なんだよ、やれよ、やればいいだろ。
それともなにか、俺の尻が目的か?
くそう、死んでもやらんからな、尻の純潔は。
守り通して死んでやる。
俺が純潔を守る覚悟を決めると同時に、もこもこの男達も動いた。
男達の人垣が割れて、真ん中から初老の男が出てきた。
動物の牙や角で出来た装飾がついた、ちょっとだけ他の男達よりも豪華なもこもこを着ている。
たぶんこの男が、こいつらの長かなにかなのだろう。
「若者よ、まずは大勢で押しかけて驚かせてしまってすまない。だが、どうか我らの話を聞いてくれ」
おお、理知的だ。
これは話が通じる系戦闘民族の線でよさそうだ。
そして、ちょっとだけ心配していた言葉が分からない可能性のほうも大丈夫だった。
ちゃんとなに言ってるか分かる。
きっとダンジョンコアの翻訳機能とかだろう。
あのダンジョンコアにはまだ色々と隠し機能とかがありそうだ。
とにかくなにか答えないと。
こういうのは舐められたらいかん。
本当はオシッコちびりそうだけど、余裕のよっちゃんみたいな顔をしてないと。
「こちらとしても、いきなりその槍でグサリとやられない限りは話くらいいくらでも聞くよ。とりあえずその槍を下ろさないか?」
言ってやったぜ。
本当はそんな槍怖くないけど穏便なやり取りに武力をチラつかせて来るならこちらも相応の対処をさせてもらいますよ的な雰囲気が伝わっただろう。
本当はめっちゃ怖いけどな!その槍。
「おお、すまない、威圧してしまったか。だが、この槍は我らバルロイ族の魂だ。いつでも自身と共にある分身といっても過言ではない。手放すことはできないが、少し下がらせよう。おまえたち、少し離れておれ!」
もこもこの男達はざっざっと後ずさり、20歩ほど離れた。
軍隊のように統制の取れた動きだ。
俺を一息で突き刺せる間合いには長ひとりだけが残る。
本当に武力を行使する気はないのかもしれない。
ただ単に俺が弱そうだから長ひとりでどうとでもできると思われているだけかもしれないが。
「それで、話というのは?」
船に住んでる俺を追い出そうとか、船をよこせとかそういう話ではなさそうな気がする。
いや、まだなんとも分からないが、なんとなく、この長は俺と友好的に接しようと必死になっているような、そんな気がするのだ。
「単刀直入に言おう。食料など持っていないだろうか。持っていたら、我らと物々交換してはくれんだろうか」
なるほど、そう来ましたか。
だがしかし、今現状、食料が欲しいのは俺のほうである。
俺だってお腹ぺこぺこである。
彼らに分けてあげる食料はないが、打開策に思い当たるところがあるので最後まで聞いてみる。
聞くところによれば、このもこもこたちはもう少し南のほうから逃げてきたらしい。
このもこもこを着込んだ民族、バルロイ族は元々ここから2ヶ月ほど歩いた場所にある海沿いの平原に住んでいたらしい。
そこはここよりも寒さが緩く、高山植物のような植物が辛うじて育つくらいの気候らしい。
ツンドラ地帯というやつかな。
そこで彼らはトナカイみたいな動物を放牧したり、海の強力な魔物を狩ったりしてまったりと暮らしていた。
だが、そこにある日突然ダンジョンができてしまったらしい。
突如として彼らの集落のど真ん中に出来た竪穴は、見る見るうちに大きくなり、巨大な洞窟となった次の瞬間、中から大量の魔物が溢れ出てきたらしい。
この世界においてダンジョンができるのは日常茶飯事であり、彼らも対処法を知っていた。
歴戦の戦士たちにより、魔王を倒しダンジョンの侵攻を止めようとしたそうだ。
だが、戦士達の体力にも限界がある。
弱いけれども数だけは多い魔物たちと、少数精鋭の戦士達の相性は悪い。
無限かと思うほどの魔物が次から次に湧いてきて、ついには戦士達の体力が底をつき、敗走したそうだ。
そして長は集落を捨てることを決断した。
しかし、彼らが住んでいた集落こそが人が住める土地と住めない土地との境界線。
そこから北にはおおよそ生き物が住むことができない極寒の氷雪気候地帯が続いている。
じゃあなんでこのもこもこたちは南に逃げずにこんな北の果てまで来てしまったのかというと、それはバルロイ族に伝わる言い伝えに理由があるらしい。
なんでも北の最果てには神が乗り捨てなさったお船があり、それこそがなんでも願いが叶う神器的なアレであるみたいなぼんやりした伝説があるらしい。
魔法があってダンジョンがあるこの世界だ、そんなものがあると信じてしまうのもしょうがないだろう。
それ以外にも南には蛮族的なヒャッハー民族が住んでいたりとか色々と複雑な事情はあるようだが、概ね神器頼りだったみたいだ。
そんなこんなで最果てまで来て、そこには金属でできた船の傍らに俺の姿があったと。
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