転生した異世界と日本が繋がってしまった

兎屋亀吉

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7.貧民街のドン(即退場)

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「なんだてめえは!!」

「それはこちらのセリフだろ。人の家で勝手にふんぞり返りやがって。この趣味の悪い調度品を抱えてさっさと出ていけ。それで特別に許してやる」

「人の家だぁ?ここはもう何年も前から俺様のものだ。お前こそ人の家にずかずか上がり込んでなんなんだ。おい、見張りの奴らはなにをしてやがる!」

「へ、へい、少々お待ちを」

 見張りのやつらというのは俺の家の玄関先でカードゲームに夢中になっていたやつらのことだろうか。
 あれで見張りの役割をちゃんと果たせていたのかは知らないが、そいつらなら俺の精霊魔法によって一瞬で酸素を奪い取られて昏倒している。
 
「お、お頭!全員倒されてやす!!」

「なんだと!?お前らがやったのか!?」

「だったらなんだっていうんだ。俺の家に無断で上がり込んでいた強盗を退治しただけのことだろうが」

「さっきから俺の家俺の家と、なんだってんだ」

「この土地とその上に建つ家の権利書を持った正式な持ち主だって言ってんだよ」

 俺は土地と建物の権利書をアイテムボックスから取り出して見せつける。
 ちゃんと役場に行って立ち合い人に金を払って作成した公正証書だ。
 なんの文句があるっていうのか。

「はははっ、そういうことかよ。こりゃあドグラスの失脚前の証書だ。行政執行官のドグラスは12年前の政変で処刑されている。今じゃこんな証書は無効だぜ」

「行政執行官が処刑されたくらいで公正証書が無効になるわけないだろ」

「なったんだよ。この区画だけはな。政変のどさくさに紛れて裏社会の覇権争いが起きた。その結果多くの闇組織が滅び、新たな闇組織が生まれた。今この貧民街を治めてんのはこの俺様、バルディッシュ様なんだよ。お前はその事務所に押しかけてここを自分の家だと言い張っている状況だ。いいか、生きて帰れると思うなよ」

 意味がわからん。
 裏社会の覇権争いでなに勝手に人の家を商品にしてくれちゃってんだよ。
 俺の家は俺の家で、裏社会の覇権をとった奴のトロフィーじゃねえんだよ。
 だがまあ、状況は大体わかった。
 ようはここは行政府の統治が及ばない棄民の街になってしまったというわけか。

「だからといってはいそうですかと引き下がれるわけもないがな。お前たちはとりあえず俺の家から出ていけ」

「まだ言いやがるか!!お前らさっさとこいつらをぶっ殺せ!!」

「「「へいっ」」」

 面倒だ。
 全員気絶しとけ。
 俺は精霊魔法で俺と日野以外の人間の鼻と口の周りを高濃度の一酸化炭素で覆い、窒息させる。
 効果は劇的だ。
 ボスを含んだ組織の構成員たちはすぐにふらつき始め、やがていびきをかいて眠り始めた。
 典型的な酸素欠乏の症状だ。
 このまま一酸化炭素で覆い続ければやがて死に至るだろうが、さすがにそこまでするほどの恨みはない。
 俺は一酸化炭素を霧散させた。

「結構人数が多いな。表に運ぶから手伝ってくれ」

「はい。しかしこんな人数をたった一瞬ですか。魔法ってすごいんですね」

「まあ技名を叫ぶタイプの魔法じゃあ同じことをやるのは難しいだろうがな」

 通常の魔法でも威力や範囲なんかはある程度コントロールすることができるだろうが、ここまで細かく魔法の対象を指定することはできない。
 精霊魔法はその点かなり細かいコントロールが可能だから便利だな。

「リノスさんが使っているのは普通の魔法じゃないんですか?」

「そうだ。俺のは精霊魔法。ドラゴンやワイバーン、エルフなんかが使う魔法だ」

「それも転生者の特典ですか?」

「まあそんなようなものだな。運命神が送り込んできた滅びた世界の竜だとかいう腐ったドラゴンの臭い血を浴びたらドラゴンのスキルが使えるようになった」

「うへぇ……」

 そんなに嫌な顔をしなくてもいいのに。
 もう10年以上経ってるから臭わないぞ。





 次の日。
 悪の組織によって悪趣味になってしまった家の調度品をすべてアイテムボックスにしまい、持っていた最低限の調度品を部屋に置いただけで昨日は日が暮れてしまった。
 貴重な7日のうちの1日を移動と片付けに取られてしまったな。
 それもこれもあの悪党どもが悪い。
 あいつらがいなかったら昨日のうちにレベル上げに入れたというのに。
 俺は少しいら立ちを感じながら洗面所に向かう。
 今日もまた日野が先に起きて髭を剃っていた。

「おはよう。また眠れなかったのか?」

「おはようございます。いえ、一昨日眠れなかったので昨日はめちゃくちゃ早く寝ちゃって。結果的に早起きできました」

 遠足の次の日かよ。
 まあ眠れたのならいいか。

「昨日はエルフもあまり見られなかっただろ。今日はたくさん見られるといいな」

「そうですね。エルフ領の主都って聞いていたのでもっとエルフであふれているのかと思っていました」

「エルフが治めているっていうだけで住んでいるのは人間のほうが多いんだよ。どこ行っても人間は数だけは多いからな」

「そうなんですね。じゃあ貴族や王族は全員エルフなんでしょうか」

「そうだ。ここではエルフってだけで特権階級なんだよ。昔は人間はみんな奴隷だったそうなんだが、虐げすぎて反乱が相次いだらしくてな。しょうがないからエルフは自分たちの位を一段上げて人間たちを平民にしたんだとよ」

「なんだかどこかで聞いたことがあるような歴史ですね」

 たしかにどこぞの自由の国と同じような歴史だ。
 まあ形式上は人類皆平等と言っているかそうではないかの違いはあるがな。
 エルフ共はあちらの世界の白人至上主義者よりも自尊心が強い。
 それと単純だがエルフは強い。
 人間たちは奴隷解放戦争に勝てなかったのだろう。
 それでこんな国の成り立ちになってしまっている。

「エルフを見かけても気軽に声はかけないほうがいいぞ。まずは俺に聞いてくれ。声をかけても大丈夫そうなエルフとそうでないエルフがいるんだが、その見分けは難しい。俺の知り合いだったら何も問題はないんだが、俺もそんなにエルフの知り合いが多いわけじゃないからな」

「わ、わかりました。気を付けます。とりあえずは見るだけにしておきます」

 見ただけでもいちゃもんをつけてくるやつはいるだろうが、まあそのときはそのときだ。


 
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