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10.ドラゴン
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日野はミスリルの武器で順調にゴブリンを狩り、昼頃にはレベルを4まで上げることができた。
レベルが上がるごとに必要経験値のようなものが上がるのかレベルは上がりにくくなるが、この調子ならばなんとか今日中にレベル6くらいまでは上げることができそうだ。
「午後からは魔法の練習をしながら魔物を狩っていきたいんですけど、いいですか?」
「ああ、魔法は切り札になるからな。練習はしておいたほうがいい」
何がなんでも今日中にレベルを限界まで上げなければならないというわけでもない。
魔法の練習も強くなるためには重要なことだ。
日野は湖に向かって魔法を撃って練習し始める。
魔法の音で魔物が近づいてくるが、そっちは俺が片付けておくか。
俺も弓の練習になって一石二鳥だ。
10年以上狩人として弓を愛用しているが、弓は俺の本来の武器ではないからな。
まだまだ技術が荒い部分が多々ある。
これを機に腕を上げるのもいいだろう。
曲射の練習でもするか。
俺は集まってきた魔物の位置関係を確認しながら天に向かって矢を放ち続けた。
10分ほどで日野の魔法が止まる。
どうやら魔力切れのようだ。
「はぁはぁ、なんか身体がだるいです」
「魔力欠乏の症状だ。日野の魔力値ならちょっと休憩すれば治るはずだ」
日野の魔力値は現在16だ。
魔力値はMPでもあるから、16ではそんなに魔法を撃ち続けることはできない。
すぐに魔力が枯渇して魔法を撃てなくなるが、その分自然回復も早い。
15分ほど休憩すると、日野はまた魔法を撃ち始めた。
俺もまた曲射の練習を始める。
その日は日が暮れるまでそのサイクルの繰り返しだった。
暖かな日差しが差し込む森の湖畔に、耳をつんざく獣の声が響き渡る。
『グルルルッ。矮小な人間よ、ここを我の縄張りと知って踏み込んだのか』
脳内に直接響くような気持ち悪い声。
俺と日野を高いところから見下ろすトカゲ面。
ドラゴンだ。
どこからどう見てもドラゴンだ。
念話まで使えるとなるとこいつはマジもんのドラゴンに違いない。
どうにも魔物園で他の冒険者を見ないと思えば、こんなのが住み着いていやがったか。
今日も元気に日野のレベル上げだとゴブリンの縄張りに来てみれば、こいつが突然現れたから驚いた。
この世界のスキルには目に見えない熟練度というものが存在しており、使い込んでいけばどんどん強くなっていく。
俺の気配察知スキルはまだまだ熟練度が低いんだ。
昨日はドラゴンの気配に全く気が付かなかった。
100メートルや200メートルの距離にこんなのがいればさすがの俺も気が付くと思うから縄張りというのは結構広いのかもしれない。
『応えよ人間!!貴様ら我が縄張りに足を踏み入れて生きて帰れるとは思うまいな!!』
荒い鼻息がこちらまで伝わってくる。
怒っているようだ。
ドラゴンは狭量で偉そうで怒りやすいからな。
俺はアイテムボックスからノブナガの契約書を取り出し、召喚する。
「グルォ!」
「日野、ノブナガの下に隠れていろ。ノブナガ、流れ弾が来るかもしれないから日野を守ってやってくれ」
「わかりました。お気をつけて」
「グルォ」
ノブナガはマジもんのドラゴンを前にして少し緊張しているようだが、俺の言いつけどおり日野に覆いかぶさり守る姿勢をとる。
いい子だ。
『亜竜など呼んで何になる。我は竜種。そんな竜もどき爪の一振りぞ』
「うるせぇトカゲだ。俺はお前みたいな偉そうなトカゲが大嫌いなんだよ」
『貴様、よほど死にたいらしいな』
「来い、デュランダル」
俺の呼びかけに呼応して、天高くに大穴が開き一振りの巨剣が飛んでくる。
巨剣はトカゲの手羽先をかすめて俺の心臓目掛けてまっしぐらだ。
「おっと、殺す気かよ」
当たる直前で身をかわして避ける。
巨剣は砂煙をまき散らしながら地面に突き刺さった。
『グォォォォッ、な、なんだその剣は。我の鱗を切り裂くとは、神器か?』
「神器ではない」
神器というのは神が作ったアイテムのことだ。
この剣は神が作ったわけではない。
ちゃんと人の手によって作られたものだ。
ただその素材が特別だっただけ。
これは運命神がこの世界に送り込んだ滅びた世界の竜の牙を鍛えて造った剣なのだ。
硬くて切れ味がいいのでデュランダルという名を付けた。
こいつには意思のようなものが宿っており、アイテムボックスに何度入れても勝手に出てくるので家の裏庭に突き刺しておいたのだ。
主に薪割りなどに使っていた。
世界の裏側にあっても呼べば俺の胸目掛けて飛んでくるなかなか可愛い奴だ。
ただ剣なのでそのまま抱きしめてやることはできないけどな。
心臓串刺しになっちまう。
「デュランダル、久しぶりに竜の血を吸わせてやるぞ。うれしいか?」
柄だけで1メートル以上あるその巨剣を持ち上げると、歓喜するような刀身の震えを感じる。
こいつは竜の血が大好きだからな。
たくさん吸わせてやろう。
『ま、待て、話せばわかる』
「俺トカゲ語わからないんで」
『話が通じておるであろうがぁぁぁぁぁっ。アッ』
まるで時が止まったような静寂が俺を包み込む。
電気信号が神経を伝って命令を伝えるよりも前に、俺の身体は高速で動き出す。
30年近く使い込んだ剣術スキルと、エクストラスキル【時短】が合わさり一瞬の間にドラゴンの身体は傷だらけになった。
『ゲフッ、し、死ぬ……』
「まだ死んでないのか。しぶといトカゲだ」
『ま、待て。いえ待ってください。我が、いえ私が悪かったです。あなた様には絶対逆らいません。靴でもなんでも舐めますから命だけは助けてください』
こいつ、ドラゴンの誇りはないのか。
まあ他のドラゴンとはちょっと違うようだし、命だけは取らずにおいてやるか。
レベルが上がるごとに必要経験値のようなものが上がるのかレベルは上がりにくくなるが、この調子ならばなんとか今日中にレベル6くらいまでは上げることができそうだ。
「午後からは魔法の練習をしながら魔物を狩っていきたいんですけど、いいですか?」
「ああ、魔法は切り札になるからな。練習はしておいたほうがいい」
何がなんでも今日中にレベルを限界まで上げなければならないというわけでもない。
魔法の練習も強くなるためには重要なことだ。
日野は湖に向かって魔法を撃って練習し始める。
魔法の音で魔物が近づいてくるが、そっちは俺が片付けておくか。
俺も弓の練習になって一石二鳥だ。
10年以上狩人として弓を愛用しているが、弓は俺の本来の武器ではないからな。
まだまだ技術が荒い部分が多々ある。
これを機に腕を上げるのもいいだろう。
曲射の練習でもするか。
俺は集まってきた魔物の位置関係を確認しながら天に向かって矢を放ち続けた。
10分ほどで日野の魔法が止まる。
どうやら魔力切れのようだ。
「はぁはぁ、なんか身体がだるいです」
「魔力欠乏の症状だ。日野の魔力値ならちょっと休憩すれば治るはずだ」
日野の魔力値は現在16だ。
魔力値はMPでもあるから、16ではそんなに魔法を撃ち続けることはできない。
すぐに魔力が枯渇して魔法を撃てなくなるが、その分自然回復も早い。
15分ほど休憩すると、日野はまた魔法を撃ち始めた。
俺もまた曲射の練習を始める。
その日は日が暮れるまでそのサイクルの繰り返しだった。
暖かな日差しが差し込む森の湖畔に、耳をつんざく獣の声が響き渡る。
『グルルルッ。矮小な人間よ、ここを我の縄張りと知って踏み込んだのか』
脳内に直接響くような気持ち悪い声。
俺と日野を高いところから見下ろすトカゲ面。
ドラゴンだ。
どこからどう見てもドラゴンだ。
念話まで使えるとなるとこいつはマジもんのドラゴンに違いない。
どうにも魔物園で他の冒険者を見ないと思えば、こんなのが住み着いていやがったか。
今日も元気に日野のレベル上げだとゴブリンの縄張りに来てみれば、こいつが突然現れたから驚いた。
この世界のスキルには目に見えない熟練度というものが存在しており、使い込んでいけばどんどん強くなっていく。
俺の気配察知スキルはまだまだ熟練度が低いんだ。
昨日はドラゴンの気配に全く気が付かなかった。
100メートルや200メートルの距離にこんなのがいればさすがの俺も気が付くと思うから縄張りというのは結構広いのかもしれない。
『応えよ人間!!貴様ら我が縄張りに足を踏み入れて生きて帰れるとは思うまいな!!』
荒い鼻息がこちらまで伝わってくる。
怒っているようだ。
ドラゴンは狭量で偉そうで怒りやすいからな。
俺はアイテムボックスからノブナガの契約書を取り出し、召喚する。
「グルォ!」
「日野、ノブナガの下に隠れていろ。ノブナガ、流れ弾が来るかもしれないから日野を守ってやってくれ」
「わかりました。お気をつけて」
「グルォ」
ノブナガはマジもんのドラゴンを前にして少し緊張しているようだが、俺の言いつけどおり日野に覆いかぶさり守る姿勢をとる。
いい子だ。
『亜竜など呼んで何になる。我は竜種。そんな竜もどき爪の一振りぞ』
「うるせぇトカゲだ。俺はお前みたいな偉そうなトカゲが大嫌いなんだよ」
『貴様、よほど死にたいらしいな』
「来い、デュランダル」
俺の呼びかけに呼応して、天高くに大穴が開き一振りの巨剣が飛んでくる。
巨剣はトカゲの手羽先をかすめて俺の心臓目掛けてまっしぐらだ。
「おっと、殺す気かよ」
当たる直前で身をかわして避ける。
巨剣は砂煙をまき散らしながら地面に突き刺さった。
『グォォォォッ、な、なんだその剣は。我の鱗を切り裂くとは、神器か?』
「神器ではない」
神器というのは神が作ったアイテムのことだ。
この剣は神が作ったわけではない。
ちゃんと人の手によって作られたものだ。
ただその素材が特別だっただけ。
これは運命神がこの世界に送り込んだ滅びた世界の竜の牙を鍛えて造った剣なのだ。
硬くて切れ味がいいのでデュランダルという名を付けた。
こいつには意思のようなものが宿っており、アイテムボックスに何度入れても勝手に出てくるので家の裏庭に突き刺しておいたのだ。
主に薪割りなどに使っていた。
世界の裏側にあっても呼べば俺の胸目掛けて飛んでくるなかなか可愛い奴だ。
ただ剣なのでそのまま抱きしめてやることはできないけどな。
心臓串刺しになっちまう。
「デュランダル、久しぶりに竜の血を吸わせてやるぞ。うれしいか?」
柄だけで1メートル以上あるその巨剣を持ち上げると、歓喜するような刀身の震えを感じる。
こいつは竜の血が大好きだからな。
たくさん吸わせてやろう。
『ま、待て、話せばわかる』
「俺トカゲ語わからないんで」
『話が通じておるであろうがぁぁぁぁぁっ。アッ』
まるで時が止まったような静寂が俺を包み込む。
電気信号が神経を伝って命令を伝えるよりも前に、俺の身体は高速で動き出す。
30年近く使い込んだ剣術スキルと、エクストラスキル【時短】が合わさり一瞬の間にドラゴンの身体は傷だらけになった。
『ゲフッ、し、死ぬ……』
「まだ死んでないのか。しぶといトカゲだ」
『ま、待て。いえ待ってください。我が、いえ私が悪かったです。あなた様には絶対逆らいません。靴でもなんでも舐めますから命だけは助けてください』
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