転生した異世界と日本が繋がってしまった

兎屋亀吉

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12.冒険者ギルド

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 次の日は狩りをしながら日野のエクストラスキルの検証をした。
 日野のエクストラスキル【武器召喚(二丁拳銃)】はかなり使えるスキルだ。
 前日に話していた銃の中に直接弾丸や弾倉を召喚して一瞬でリロードするということは普通にできた。
 日野の話によれば少しコツがいるので素早くやるには練習が必要らしいが、練習次第ではMPが続く限りは撃ち続けることができるということだ。
 更には、召喚した武器を維持しておくのにはMPを全く消費している感じがないらしい。
 ということは、武器を消さずにとっておけば拳銃や弾、弾倉を大量生産できるということではないだろうか。
 そう思って実際に日野がやってみたのだが、できたのは弾や弾倉の量産だけだった。
 二丁拳銃とスキル名に書いてあるように、拳銃は二丁までしか出すことはできない。
 だが弾や弾倉だけでも大量生産することができるというのは僥倖だ。
 まだ魔力値が低くて弾を何回も召喚することができない日野にとっては特に。
 夜などのMPを使う機会のないときにあらかじめ弾や弾倉を召喚しておき、狩りのときにまとめて撃つことができるわけだからな。
 高速リロードはできないが、片方の銃だけを使って狩りをする分にはなんの問題もない。
 慣れない槍を使うのをやめ、使い慣れた拳銃で狩りをし始めた日野のレベルアップ効率はかなり上がった。
 次に次元の扉が開く時まで残り1日半を切った現在、日野はレベルを12、魔力値を38まで上げている。
 魔力値の上がり方がかなり良いように感じる。
 少なくとも俺よりは確実に良い。
 現地人よりも異世界人は成長が早いというのは物語のセオリーだからな。
 俺は前世は日本人だがこの身体は現地で生まれた身体だ。
 色々とチートは持っているものの素の成長力はやはり現地人クオリティなんだな。
 自衛隊とかがこっちの世界に来てレベル上げを始めたら現地の人間たちは太刀打ちできるのだろうか。
 日本の良心に期待するしかないな。
 ここがエルフ領だったのも不幸中の幸いだ。
 エルフは異世界人なみの成長力を持っているうえに寿命も長い。
 いくら異世界人とはいえ百年単位でレベル上げをしているエルフにやすやすと追いつくことはできないだろう。
 たとえ日本があちらの世界で扉を防衛しきれなかったとしても、こちらの世界が侵略される心配は今のところしなくてもいいような気がする。
 日本やあちらの世界の国々がどう出るのかは、まだ扉をくぐってみないとわからないけどな。
 何があっても対処できるように日野にはできるだけレベルを上げてもらいたかったが、このあたりが限界か。
 移動も考えると今日の夜までにはアルヴヘイムを出なければならない。
 もうレベル上げをしている時間はない。
 今日は日野のきっての願いである冒険者登録をしなければならないからな。
 今日まで日野はエルフを遠巻きに眺めるくらいしかできていない。
 だが冒険者ギルドにはおそらくエルフがいる。
 近くでエルフを見ることもできるだろう。
 話しかけることは危険かもしれないが、相手のレベルや魔力値、雰囲気次第ではなんとか軽い会話さえできる可能性もある。
 冒険者に登録し、エルフと話す。
 これが日野の異世界での最終目標なのだ。
 できるならば実現してやりたいが、エルフのほうは運次第だな。





「ここが、冒険者ギルド……ごくり……」

「いいか、何度も言うようだがエルフには」

「勝手に話しかけない、ですよね」

「そうだ」

 エルフはこの国では漏れなく特権階級だからな。
 エルフに手を出せば国が出張ってくる。
 俺はチート持ちの転生者だが、国と戦うというのは勘弁だ。
 そうなったらあのヘタレドラゴンでもけしかけて疲弊させるとしよう。
 あんな良い狩場に居座られても誰も討伐しなかったということはあいつをけしかければちっとはエルフたちも困るってことだろう。
 俺は対エルフの戦略をシミュレートしながら冒険者ギルドの扉を開いた。
 中からは安っぽい酒や食べ物の匂いと喧騒が流れ出す。
 相変わらず場末の酒場みたいなところだな。
 だが、前に来たときはもう少し整然としていたような気がする。
 ずいぶんとゴミ溜め感が増したな。
 ここにも10数年前にあったという元老院の政変とやらの影響があったということだろうか。
 国を跨ぐ冒険者ギルドという巨大組織も、その国に根付いている以上は権力の影響を全く受けないというわけにはいかないか。

「すごい、本当にファンタジー小説の中の冒険者ギルドみたいですね」

「そうか?俺がイメージしてたのはもう少しきっちりした銀行か役場みたいなところだったけどな」

 どうやらここにも俺の中のファンタジーと日野の中のファンタジーに齟齬があったようだ。
 冒険者ギルドがゴミゴミしていてゴブリンがデフォルメされている、どの小説だろうか。
 そんなどうでもいいことを考えていると、カウンター席で静かに酒を飲んでいた大男が一人立ち上がってこちらへと歩いてくる。
 大男は俺と目が合うと大きな傷のある右頬を引きつらせてにやりと笑った。

「ど、どうしますか。これ絶対テンプレですよ。僕にいちゃもんを付けに来たんですよ!」

「落ち着け。あいつは大丈夫だから」

「え?」

「よぉ、リノス。久しいな」

 大男はそう言って俺の顔面をその太い腕で思い切り殴りつけた。

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