転生した異世界と日本が繋がってしまった

兎屋亀吉

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14.異世界生活の終わり

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「結局、エルフとは話せなかったな」

「残念ですね。でもまたこちらの世界に来る機会もあるでしょう」

「そうだな」

 冒険者ギルドならばエルフの一人や二人いるだろうとは思っていたのだが、運の悪いことに昨日は会うことができなかった。
 冒険者などをやっているエルフならば特権階級の閉塞感を嫌った人物であることが予想できるので普通に話ができるかもと思ったのだがな。
 すでに俺たちはアルヴヘイムの街を離れ俺の暮らしていたエルフ領の外れの家に帰ってきており、日野は明日次元の扉を潜って元の世界へと帰る。
 こちらの世界が生まれ故郷である俺と違って、日野が再びこちらの世界に来られるかどうかは日本政府次第だろう。
 だが悲観することはない。
 なにせ日野はすでにレベルを12まで上げているうえに貴重なエクストラスキル持ちだ。
 これから日本が異世界と関わっていくうえでは外せない人材だろう。
 政府主導でこちらの世界を探索することになったとしても、日野は一緒に来られるのではないかと俺は思っている。

「はぁ、長いようで短い1週間でした」

「俺にとっても久しぶりに長い1週間だったよ」

 短調な狩人の生活は時間があっという間に過ぎてしまう。
 昨日と同じように今日が過ぎ、また同じような明日を過ごす。
 そんな狩人の生活が嫌いではないのだが、どうしても日々に刺激が足りないと思ってしまうこともある。
 久しぶりに誰かと過ごす日常は、面倒なことも多いが楽しかった。
 次元の扉から出てきたのが日野でよかったと心から思う。
 嫌な奴だったら倉庫に閉じ込めて1週間後に次元の扉に向かって投げ込んでいたかもしれない。
 
「そろそろだな。あいつを召喚してくれ」

「はい」

 日野はヘタレドラゴンを召喚するための契約書をくるくると開いていく。
 描かれた魔法陣に魔力を流せば、空間に穴が開いて見たことのあるトカゲ面が出てきた。

『うぃっす。呼びました?』

「俺たちはこれから次元の扉を潜って別の世界へと向かう。お前はここでこの家を守護しろ。近隣の村から人が来るかもしれないから、そのときは俺は留守にしていると伝えろ。7日後には一度帰ってくる予定だからそのときまた来てくれってな」

『えぇ、なんか留守番ってドラゴンのする仕事じゃなくないですか?もっとこうなんか……』

「もっとなんだよ。強敵と戦いたいなら俺が相手してやろうか?」

『い、いえ。結構です。留守番頑張ります』

「ああ、頼んだぞ」

 ドラゴンを留守番にしておけば野盗なんかじゃ相手にならないから問題はないな。
 この家はあちらの世界とこちらの世界を繋ぐ重要な場所だ。
 警備には少し力を入れておかないとな。
 このドラゴンは少し中身がアレなのが心配だが、鑑定スキルでステータスを見るに他のドラゴンよりも魔力値は高めなのだ。
 留守番くらいできると信じたい。

「じゃあいくか、日野」

「はい」

 俺と日野は家に入り色々なセキュリティを作動させてから寝室に向かった。
 いや、元寝室か。
 次元の扉のある部屋でなんて安心して眠れないから俺の寝室は別の部屋に移した。
 今は完全に次元の扉だけがある部屋となっている。
 これから政府関係のお偉いさんとかも来るかもしれないから、ソファーやセンターテーブルなどを置いて応接室にでもするか。
 あちらの世界で家具を買ってこよう。

「1分前か。扉が開いたらまずは防疫だな。日野がなんともないから大丈夫だと思うが、一応ここは別の世界だからな」

「そうですね。未知の病原菌を運んでしまっているかもしれませんから」

「俺に至っては同じ人類かどうかも怪しい」

「見たところアングロサクソン系の人種のように見えますけど、遺伝子レベルで同じホモサピエンスかどうかはわからないですよね」

 むしろ同じホモサピエンスだったときのほうが不思議に思ってしまうだろうな。
 全く違う世界で、生態系も違うのになぜ同じホモサピエンスなんだと。
 俺はこの世界でチンパンジーなんて見たことがない。
 同じホモサピエンスならば起源も同じサルであるはずだろう。
 しかしこの世界には同種のサルから進化したとみられる他の生き物はおらず人間だけが生き残っている。
 さっぱりわからない。
 実に面白くない。
 エルフとかドワーフとか獣人とか魔物とか、わけのわからん生き物もいるし魔法とかスキルとかステータスとか神とかもっとわけがわからない。
 こんなわけのわからない世界で同じ遺伝子の人類がいたら本当に神がどっかから遺伝子を持ってきて生み出したんじゃないかって思ってしまう。
 実際に神様とか大精霊とかそういった超常の存在に会ったことがあるわけだしな。
 運命神のお仲間的な感じで生命神とか創造神とか、そういう奴が人間や他の生き物を作ったのかもしれない。

「なんにせよしばらくは病院暮らしだな。病気なわけじゃないから病院食に期待だ」

「ハンバーガーが出るといいですね」

 ハンバーガーはさすがに病院食では出ないんじゃないだろうか。

「おっと、10秒前だ。6、5、4、3、2、1」

 正午ちょうど。
 扉が光りだす。
 先ほどまでは押しても引いてもスライドしてもびくともしなかった観音開きの白銀の扉が滑らかに開いていく。
 おそらく向こう側ではこの扉を警察か自衛隊が包囲しているだろうから、早く入らないと向こうからこちらに入ってきてしまいそうだ。
 俺と日野は顔を見合わせ、互いに頷くと光る扉の中へと足を踏み入れた。



 
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