転生した異世界と日本が繋がってしまった

兎屋亀吉

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15.日本

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「誰か出てきます!」

「片方は日野三等陸曹です!!」

 岐阜城の天守閣にある次元の扉は、青い制服姿の警官たちによって包囲されていた。
 しかし中には数名の迷彩服姿の自衛官の姿もあり、戻ってきた日野を見て喜びの声を上げる。
 俺の想像通りこちらの世界とあちらの世界の時間の流れに約7倍の違いがあるのならば、こちらの世界はまだ1日しか経っていないことになる。
 しかし自衛官たちの反応は1日ぶりに同僚を見たという顔ではない。
 これはこちらの世界でもきちんと7日の時間が経過していると考えてよさそうだ。
 俺の40数年がこちらで6年くらいになってしまったのは転生したときに時間軸がずれたからだな。

「すみませんが離れてください!未知の病原菌に感染している可能性があります!!すぐに防護服を用意してこの場を封鎖してください!!」

 日野がそう叫んだ瞬間場は騒然となり、警察官たちは一斉に口と鼻を押さえて離れていく。
 少し混乱していたようだが、すぐに上司っぽい人物が声をかけて足並みがそろう。
 こういう統率の取れた動きはかっこいいな。

「あの警察官の中に数人混ざっているのは同僚の自衛官か?」

「はい。第10通信大隊の同僚の人たちでした」

 突如として現れた扉に人が入って出てこない。
 扉は一度閉じた後押しても引いてもスライドしてもうんともすんともいわない。
 こんな事件は扉を包囲して待つしかないだろうな。
 日野の同僚の自衛官たちは顔の確認のために捜査協力を求められた人たちだろう。
 しばらく待っていると、防護服を着た警察官たちが戻ってくる。
 消毒液を散布しながら透明なカーテンで岐阜城の天守閣を密封していく警察官たち。
 顔ぶれを見るに先ほどこの扉を包囲していた警察官たちとは別口のようだ。
 すべての入り口が封鎖され、室内から空気が漏れ出る部分をあらかた塞いだ警察官たちは最後に俺たちのもとへ近づいてきた。 

「日野将吾さんで間違いありませんね?」

「間違いありません」

「隣の方はどなたでしょう」

 扉に入ったまま行方不明になったのは日野一人だけだ。
 それなのに帰ってきてみれば二人になっていたらそりゃあおかしいよな。
 しかし俺のことを話すということは異世界について話すということだ。
 そのへんの下っ端に伝えるわけにはいかないだろう。 

「それは少し込み入った話ですので少し立場のある方でなければ……」

「どういうことです?」

「この扉に関わることです」

「なるほど。わかりました。上司を連れて参ります」

「あとできれば山下二等陸佐に連絡を取りたいのですが……」

「上田一等陸尉が岐阜に来ておりますが、呼んできましょうか?」

「そうですね、上田一等陸尉ならお話ししても問題ないかもしれません。お願いします」

「わかりました。あと、お2人はこちらを着ておいてください」

 警察官は防護服を俺たちに差し出した。
 これ、どうやって着るんだ?




 警察官に教わってごつい宇宙服みたいな防護服を着こんだ俺たちは、警察側の上司と自衛隊側の上司の2人と対面していた。

「まずは無断欠勤をしてすみませんでした。御覧のとおりの事情がありまして」

 日野が異世界で過ごしたのは7日。
 その間に、日野の長期休暇は終わってしまっていた。
 今日を含めた5日間日野は無断欠勤をしてしまったのだ。

「わかっている。非現実的な話だが、現実の話であるのは先ほど実際に目にした隊員たちから聞いている。それで、この扉の向こう側で何があったんだ。そちらの御仁は誰なんだ」

「それは私たちもお聞きしたいですね。この扉はなんなんです?危険なものならば警察だけの手には負えない可能性もある」

 日野の直属の上司であるという上田一等陸尉と、この扉を包囲していた岐阜県警の三島警部補が同じごつい防護服の中からくぐもった声で質問してくる。
 この扉に関しては神が作ったとしか言いようがないのだが、果たして信じてもらえるだろうか。

「そうですね。まずはこちらの方を紹介しておきます。扉の向こう側で出会って大変良くしていただいたリノスさんです」

「リノスです。ファミリーネームはありません。どうぞリノスと呼んでください」
 
「リノスさんですか。日本の方ではないですよね」

「ええ、出身地なんかはこれからの話に関わってくるのですが」

 俺はこの扉の向こうにこの世界とは異なる世界が広がっており、俺がそこの生まれであることを説明した。
 当然なぜ言葉が通じるのかということにも触れられることになり、俺が元はこの世界で生きていた日本人であちらの世界に記憶を保持したまま転生して暮らしていたことも説明した。

「うーむ、にわかには信じられん。まだこの扉に仕掛けがあり、リノスさんがうちの隊員を拉致したと言われたほうが信じられる」

「上田一尉、自分があちらの世界に行っていたというのは本当の話です。証拠も提示できるかと」

「証拠?あちらの世界の物質か何かかね」

「そうですね。リノスさんから貰ったナイフは確かこちらの世界には存在しない金属でできていたはずです。でもそれよりももっとわかりやすいものがあります」

 そう言うと日野は小さな声でファイアボールと唱え、防護服に包まれた手の平の上に火の球を生み出した。

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