鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする

蝶野ともえ

文字の大きさ
28 / 35

27話「作り物」

しおりを挟む





   27話「作り物」





 「ねぇ……どういう事、教えて…………」



 リアムが言っている事が理解出来なかった。
 璃真が前にも死んでいるとはどういう事なのか。全くわからなかった。頭がガンガンする。目の前が歪んで、現実の世界ではないようだった。
 ふらつく体を何とか自分で支えながら、空澄はリアムを見つめた。彼は弱った空澄を見ると楽しそうに笑った。


 「だから、そのままだよ。あいつは1度死んでる」
 「でも、私と一緒に暮らしてた。白骨の遺体が見つかるまで…………」


 そこまで言ってから、空澄は気づいてしまった。リアムはどこから現れた?
 璃真の姿になって、空霞の前に現れたのだ。そして、璃真の体からふわりと出てきたのがリアムだった。そして、彼が離れた瞬間、璃真は白骨になった。
 そう、リアムは璃真から出てきた。


 「………まさか………」
 「やっと理解したか。そう………あいつの体の中にいたのは俺だよ。10年前死んでから、動かしていたのは俺だったんだよ」
 「10年前に………あの事故があった時に璃真は死んでたって事なの?」
 「あぁ………その体を俺がもらったってわけ………けど、あいつは俺を逆に利用したんだ!!」


 楽しそうに笑っていたリアムの表情が一変した。思い出したように憤怒して、大きな声を出したのだ。空澄は大きな声と彼の態度の変化に驚き体をビクッとさせた。

 彼の急変した様子に空澄は驚き、思わず後ずさってしまう。
 が、そんな空澄を見てリアムは、またニヤリと笑った。


 「怖がるなよ。俺と結婚するんだ。……お嫁さんには、俺の事を教えてあげないとね」


 そう言って、リアムは楽しい話をするかのように、ニコニコと明るい口調で話し始めた。
 その姿に恐怖を感じていた空澄だったが、話を聞いていくうちに、彼の話に夢中になっていったのだった。









  ☆★☆



 リアムは日本とフィンランドのハーフだった。フィンランド人の母親が魔女であったが、父は一般人。リアムの魔力はそれほど強いものではなかった。だが、母親の祖母が純血だったようで、リアムの母は魔力が強かった。そのため、母には及ばないもののリアムも子どもの頃から魔力が高かった。他の魔王の友達にも尊敬される存在となっていた。
 そして、リアムは昔から魔王に憧れていた。自分の魔法を使って、人を助ける。まるで、ヒーローのようだと憧れ、自分の将来はキラキラと輝くものに思えていた。

 だが、ある時、純血の血を持つ魔王に会ったことがあった。戦争が始まると、1人で相手国を焼き尽くす事が出来るほどの力の持ち主で、見た瞬間にあまりの膨大の魔力を感じてしまい、リアムは戦慄し、その純血の魔王を直視する事すら出来なかった。
 自分の価値観というものが、なんて愚かな考えだったとわかったり、そして衝撃が走ったのだった。


 それからと言うもの、純血に嫉妬し、憧れをいだき、リアムは調べものに没頭した。
 そこで、純血のように莫大な魔力を得る方法を知った。それは一時的なものであれば、純血の体液を体内に取り入れる事。そして、もう1つが結婚だった。
 それを知ったリアムは純血の末裔がいる場所を調べた。そこで、魔女にもならずにノウノウと生きている日本人の女がいると噂を聞いたのだった。
 その女は生まれながらにして強い魔女になれる資質をもちながら、両親がそれを隠し魔女になることを止めているという。
 
 それを知ったリアムは、これはチャンスだと知った。魔女としての力がないのであれば、彼女は対抗する事は出来ない。それに、その女と恋人になり結婚してしまえばいいだけなのだ。それに、リアムにとっては幸運な事にその女の両親は死んでいた。
 そうとわかると、リアムはすぐに日本へと向かった。


 だが、物事はそんなに上手く運ばないものだった。
 花里空澄という純血の魔女のひく女の周りには、使い魔の鴉がいた。使い魔だが、呪いによって鴉にされた純血の魔王だった。そのため、リアムよりも魔力も魔法も強く、空澄に近づくことが出来なかったのだ。

 それに、幼馴染みの新堂璃真という男もやっかいだった。魔力を持たない一般人だというのに、妙に勘が鋭いようで、監視をしているといつもリアムの方をちらりと気にして視線を送ってきていた。


 そんな時に、絶好のチャンスが訪れたのだ。
 璃真が事故に遭ったのだ。不運な事故だった。だが、その男に同情する事などなかった。これは、璃真を使って空澄に近づけるのだ。

 リアムの得意魔法は「憑依」。人体や動物など生き物に入り込み、言葉通り操れるのだ。もちろん、様々な人間に憑依をして空澄へと近づいていた。だが、全て鴉や幼馴染みにばれてしまい、失敗していのだ。
 だが、幼馴染みの体に入ってしまえば、鴉も容易には近づけない。空澄と璃真は仲がいい幼馴染みで共に暮らしているほどだった。それに、恋人にもなりやすいだろう。

 道路に倒れ血を流している璃真を見て、リアムはニヤリと微笑んでしまう。

 ゆっくりと近づき、璃真の傍にしゃがんだ。
 虫の息なのか、浅い呼吸とヒューヒューという乾いた息が出ている男は、朦朧とした瞳で、リアムを見た。


 「………おま……えが、……いつも見てた奴か………」
 「あぁ………おまえの体を貰う。安心しろ、璃真として生きてやる」


 そう言うと、リアムは璃真の体に触れて、小さな声で呪文を唱え始めた。
 すると、横たわる男は弱々しく口元を緩めた。何故この状況で笑えるのだ?と、怪訝な視線で璃真を見つめる。


 「……空澄………が独りぼっちじゃ………なくなる………。あいつは泣き虫だから………」
 

 そう言って目を閉じた。
 監視をしていてわかってはいた。この男は純血の魔女に好意を持っていたのだ。だからこそ、空澄を一人きりにしたくなかったのだろう。
 ならば、俺がこの体を使うことは調度いいことだろう。そんな風に思った。

 呪文を唱え終え、死にそうになっている璃真の体に憑依をする。

 が、その時だった。
 最後の力で、璃真が何かを呟いた。
 その瞬間、リアムの体は縄で締め付けられたように動かなくなった。


 『なっ!!何だこれ…………』
 「………うまく、いったかな」


 先ほどまで死にそうになっていた男、璃真が血まみれになりながら立ち上がった。
 だが、おかしいのだ。確かにリアムは璃真の体に入っているが、全く体が動かない。だが、確かに男の体は動いている。


 『これはどういう事だ!?』


 その声は外にはもれていない。璃真の体の中だけで響いていた。それに、この男には聞こえているようだった。


 「僕が魔法をかけたんだよ。君を封じる僕の体の中に封じる魔法をね」
 『なっ………おまえ、魔王じゃないはずじゃ………』
 「そう、魔王じゃない。いや………純粋な魔王ではない、かな?」
 『作り物の魔王…………か!!』
 「そう。空澄の両親が遺したものでこっそり勉強したんだ。あの鴉も手伝ってくれたけどね」
 『………早く俺を解放しろ!』
 「だって、君が出ていったら僕は死んでしまうだろ?まぁ、あと10年だけだから。そしたら、おまえはあいつと結婚すればいいさ。まぁ、出来ればだけどね」
 『じゅ………10年だとっっ』


 そうやって、リアムは璃真の体に閉じ込められていたのだった。







 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

処理中です...