溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を

蝶野ともえ

文字の大きさ
19 / 48

18話「本当の繋がりとキスと」

しおりを挟む





   18話「本当の繋がりとキスと」





 「花霞ちゃん………。」

 
 突然の花霞の言葉に彼は驚いた顔を見せた。
 それもそのはずだ。
 あんな事があり、本当ならばショックを受けて泣き続けているはずだった。
 それなのに、彼への想いが溢れ出て止まらない。今、言わなければいけない。

 何故かそんな気がしたのだ。
 

 「自分でも都合がいいと思ってる………。期間限定の恋だったはずなのに、椋さんの優しさとか温かさに触れて、いつの間にか惹かれていたの。……椋さんに「好きだ。」って言われて、戸惑うよりも先に嬉しさを感じたんだ………。それが恋なのか、まだわからなくて。恋人と別れたばっかりだし、ありえない結婚のはずだから、この気持ちは違うって思うようにしてたの。」


 泣きはらした目は真っ赤になっている。
 きっと酷い顔になっている事だろう。
 けれど、花霞の言葉は止まらなかった。


 「でも、なくしてしまった指輪を見つけた瞬間。これで、椋さんとまた一緒に居られる。だから、早く会いたいって思ったの………。」
 「…………。」
 「あなたが大好きで、仕方がないの。ずっと夫婦で居たい………。」



 最後の言葉は小さくなってしまった。

 言い終わる前に、花霞の体は椋に引き寄せられ、あっという間に彼の胸の中に閉じのめられてしまったからだった。
 突き放されたわけではなく、彼が抱きしめてくれた。それだけが嬉しくて、花霞は彼の胸に顔を埋めた。


 「嬉しいよ………。本当に。俺を好きになってくれて。」
 「それは私の方だよ。」
 「…………これで、本当の家族になれるな。」
 「うん。………椋さん、大好きです………。」


 花霞はそう言って、彼の顔を見上げた。
 その意味を椋はすぐに理解してくれて、ゆっくりとキスをしてくれる。

 軽いキスから、あっという間に深いキスになる。いつも受け身だった花霞も、自分から椋の首に腕を絡めて、唇を押し付け、椋を求めた。
 それが嬉しかったのか、椋が微笑んだのが、目を瞑っていた花霞には何となくわかり、恥ずかしくなりながらも、共に微笑んでしまう。


 椋と今までも沢山キスをしてきた。毎日していたと思う。
 けれど、どんなキスよりも今のキスが1番幸せで、とても気持ちよく感じてしまう。そして、もっともっと彼の唇と舌を絡めて感じていたいと思ってしまう。

 幸せを感じながらも、少しずつ息苦しくなる。それでも、離れるのがイヤだった。
 それでも、椋は離れてしまう。


 「………椋さん………。」
 「………そんな顔しないで……。」
 「え………。」


 椋は頬を少し赤くし、困り顔を見せながら花霞を見て微笑んだ。


 「好きな人に好きって言われただけでも嬉しいのに、君とこんなキスをしたら………俺も我慢出来なくなる。しかも、もっと欲しいって顔が可愛すぎる。」
 「……………私も。」
 「ん?」
 

 彼が自分を求めてくれているのを知っている。
 その時でさえ、彼が欲しいと思っていながらも、我慢してしまった。
 その時よりも、自分の気持ちを理解して、彼をもっと好きになっている。

 
 先ほど、あんな事があったばかりだというのに、という気持ちもあるけれど、花霞だって彼からのキスを沢山受けて、体が熱を持たないはずもないのだ。


 「………私だって、我慢出来ません。」
 「花霞ちゃん…………。」


 花霞は椋に抱きつき、真っ赤な顔を隠しながらそう言う。
 恥ずかしさから胸が高鳴り鼓動が早くなる。花霞は先程よりも自分の顔を彼の胸に強く当てた。
 すると、自分も同じぐらい早い鼓動が彼の中心から伝わってきた。花霞は嬉しくなり、顔を上げて彼を見つめた。


 「………俺だって、緊張してる。いい大人なのに恥ずかしいな。」
 「………そんな事ないよ…………。」
 「あんな事があった後だ。花霞ちゃんを求めていいのか、って思うけれど………。それは建前で、今すぐにでも君を貰いたいって思ってる。」
 

 椋はそう言うと、花霞の頭を撫でた。
 いつもはそれを嬉しいと思うけれど、今は違った。もっと彼に触れて欲しい。キスして欲しい。そして、それ以上も。と、足りないと思ってしまうのだ。

 いつから自分はこんなに貪欲になってしまったのだろうか。
 そんな事を思いながらも、その気持ちは止まるはずもなかった。

 
 「椋さんをください。」
 「………あぁ。もう君のものだ。」


 そう言うと、花霞を抱きしめて、ゆっくりと抱き上げた。花霞は驚き、彼に抱きついてしまう。すると、彼は笑って「大丈夫。落とさないよ。」と言って、ゆっくり歩き始める。
 彼が連れていく場所など1つしかない。
 いつも2人で寝ているベットがある寝室だ。


 椋は、ゆっくりと花霞をベットに下ろすと、そのままベットに手をついて、花霞に頬や額、首筋などに小さくキスを落とす。
 その度に、くすぐったい気持ちになり、花霞はクスクスと笑ってしまう。


 「何だか、余裕だね………花霞ちゃん。」
 「そ、そんな事ないよ。緊張して、椋さんの事見れないよ。」
 「だめ。ちゃんと見て。」
 「でも………。」
 「誰にキスされて、気持ちよくされて、抱かれているのか………ちゃんと見て。俺も、花霞ちゃんを見てるから。」
 「………うん。」
 

 花霞は自分から体を浮かせて、椋にキスをした。椋はその同意の言葉と、キスで嬉しそうに微笑んだ後、花霞の頬に触れながらベットに沈むようなキスを繰り返した。


 その後の事は、花霞は朦朧としながらも彼を見つめていた。彼の指が体に触れると、熱を感じそこからどんどん温かさが広がっていった。
 キスをされれば、もっとして欲しいと願ってしまった。

 椋の言葉、ひとつひとつが嬉しくて、甘い声を出しながら、彼に返事をする。すると、彼はとても愛おしいものを見つめるように目を細めて花霞を見つめては、更に甘い言葉を紡いでくれた。


 水音と2人の吐息。

 シーツがすれる音と、ベットの軋む音。

 それの音たちが、花霞の耳に届き、目の前には彼の顔、そして彼の匂い。

 すべてで彼を感じらて、花霞は幸せなはずなのに、切なさも感じてしまう。
 不思議な感覚と気持ちよさに、つい瞳から涙が溢れてしまうと、椋はそれにすぐに気づき、「大丈夫?」と言いながら、指で涙を拭ってくれた。


 「何だか、幸せだなって………幸せなのに………もっと欲しくて切なくなるの。」
 「………花霞ちゃんは欲しがりだね。」
 「ん…………。」


 話ながらも、彼の動きは止まらず、花霞は甘い声が出そうになる。すると、彼は「声、我慢しないで。」と、言ってくるのだ。その言葉を何回言われてしまっただろうか。けれど、つい恥ずかしさから我慢してしまうのだ。


 「でも、俺ももっと欲しい。だから、花霞ちゃんをもっとくれたら。俺もあげる。」
 「………あげる。………あげるから、もっと椋さんが欲しい。」
 「うん………。」
 「っっ…………ぁ……………。」

 
 そう言い終わらないうちに、彼は花霞の体を激しく求めた。
 花霞はすぐに快楽の波に飲み込まれる。これで終わりではない。もっと彼を感じられる。もっと彼に触れていられる。


 それがわかると、花霞は安心してしまう。



 「…………花霞、好きだ。」
 「うん………大好き、椋さん………。」



 2人は熱を帯びた声で、言葉を重ねて、何度も何度も求めた。



 それは、2人が本当の恋人になった日の初めの夜であり、本当の夫婦になった瞬間でもあった。


 その長く甘い夜は、2人を幸せな時へと変えてくれた。





しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

ふしあわせに、殿下

古酒らずり
恋愛
帝国に祖国を滅ぼされた王女アウローラには、恋人以上で夫未満の不埒な相手がいる。 最強騎士にして魔性の美丈夫である、帝国皇子ヴァルフリード。 どう考えても女泣かせの男は、なぜかアウローラを強く正妻に迎えたがっている。だが、将来の皇太子妃なんて迷惑である。 そんな折、帝国から奇妙な挑戦状が届く。 ──推理ゲームに勝てば、滅ぼされた祖国が返還される。 ついでに、ヴァルフリード皇子を皇太子の座から引きずり下ろせるらしい。皇太子妃をやめるなら、まず皇太子からやめさせる、ということだろうか? ならば話は簡単。 くたばれ皇子。ゲームに勝利いたしましょう。 ※カクヨムにも掲載しています。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

処理中です...